この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

珠代&アルナ

雛/珠代 > (目を覚ませば、少し薄暗い室内に僅かな夕日が射しこんでいた。もう夏は過ぎてしまって、長月になっていたのだとようやく実感する。どうやって帰還したのかも思い出せないけれど、大方軍の誰かが連れて戻ってくれたのだと思う。運ばれていく真朱の亡き骸に縋りついたりはしなかった。艶やかな尾鰭から滴った水滴が地面に点々と落ちていくのを、打ち上げ花火が終わってしまった後のように呆然と、ただ見つめていた。)   (9/6 21:56:05)
雛/珠代 > 「あ……本宮……。」(長い宵宮が、終わった。あの水笛、結局渡せなかった。真朱が気に入りそうだと思ったのに。せめて本宮に持っていって備えてあげよう。そう思って巾着を探るも、なぜか見当たらない。昨日は討伐に出てしまって渡せなかった。私と竜灯以外の誰も、この水笛は知らないはずなのに……。少し考えて、自分自身の記憶が欠けている可能性に思い当った。もしも真朱が、また能力を行使していたのなら。私はきっと、真朱に会えていたんだ。だから真朱は、最期に珠希を――恋人を、呼んだんだ。)「あ…ぁ、…真朱っ……」(ぽろぽろと落ちた。行かなくちゃ。終われない。真朱はもういないし、本当は何があったかなんて、もう誰にも分からない。でも終われない。珠希の夏が、まだ終わらない。紅だけを引いてワンピースを羽織り、暮れ始めた街へ飛び出した。今度こそ、本宮へ。)   (9/6 21:56:16)


アリア/アルナ > (昨夜まで行われていた宵宮を経て本宮が行われている境内にて、既に空を淡い夜の黒に染まり始め、境内は提灯の明かりと山鉾や屋台によって、キラキラと賑わいを見せていた。…そして、その中で境内の隅の隅、暗く人気のない森の1つの木の上でゆらゆらと何か黒い影が動いていた)「うぅ…っ?…あれ…ここは…?…」(本宮の賑わいによって目を覚ました小さな少女は、木から白い蜘蛛の糸を使ってぶら下がり逆さ状態のままで目を擦って辺りを見回して)「ふぁ……そういえば…昨日誰か私と同じ生き物の血の匂いがして…探して疲れちゃったのでした…」(なんて、欠伸をしながら昨夜までの記憶を辿って、何かを探してここに来たのを思い出せば、伸びをしながらゆっくりと糸を伸ばして地面に足をつけて)   (9/6 22:32:47)
アリア/アルナ > 「でも…確か…探しに来たはいいものの、誰もいなくて血の匂いだけ残ってたのです…もうここにはいないのですかね…」(たどり着いた時には既に軍人たちが処理を済ませた後だったようで、そこには拭き取られたものの血の匂いだけが残っており、目的のものが現れないか森の夜闇に身を潜めて待っていたのであった)「んゅっ…にしても…とても…美味しそうな匂いなのです…」(ふと屋台から流れてきた料理の美味しそうな匂いを嗅ぎ取りスンスンと鼻をぴくつかせれば、匂いにつられるまま屋台近くの林まで近づいていってしまい)「わぁ…とても…とても美味しそうなのです…でも…でも…アルナには…お金もありませんし…でも美味しそう…ジュルリッ」(屋台に並べられた料理達をキラキラと目を輝かせながら眺めて、しかし、自分にはあれらを手に入れることはできないという葛藤に悲しげにシュンッと落ち込みながらも、再び視線を屋台に戻せば目に入った綿菓子やリンゴ飴を見て口からよだれを垂らしており)   (9/6 22:33:02)


雛/珠代 > 「はぁっ…はっ……」(宿舎を飛び出した勢いのまま、千景神社まで走ってきてしまった。境内へと続く石段を駆け上がりながら、その途中で真朱と珠希が手を繋いで歩いていく場面がパッと浮かんで、思わず立ち止まり振り返る。ないはずの記憶が蘇ったような気がして、もういないはずの真朱の声が聞こえような気がして。上がってしまった息が苦しい。残りの段をのろのろと登り切り、もう一度振り返った。尊華の街に灯った本宮の火が、聳え立つ山鉾が、夕闇に輝いている。遠くのお囃子が晩夏の生ぬるい風に乗って聞こえてくる。終わらないのに、夏だけが終わっていく。真朱はいってしまったのに、私だけが取り残されたままで。)   (9/6 23:44:17)
雛/珠代 > (二礼、二拍手、一礼。とにかく気持ちを落ち着けようと参拝を済ませたものの、何かを願うことはしなかった。いざ来てみれば何をしたかったのか自分でも分からなくなってしまっていたから。境内に所狭しと連なった屋台を何とはなしに眺めながら歩いても、竜灯のところに顔を出す気にもなれず、行く当てがなかった。……もう帰ろうかしら。そう思ったけれど、ふと目に入った素足が気になって目を止めた。小柄な少女が物欲しそうに屋台をじっと見つめている。その黒いローブの裾が風に揺れて黒の琉金が思い浮かんだのも束の間、深いガーネットのような瞳がきらめいているのを見て思い直す。まるい目をした金魚はもういない。)「あの……こんばんは。おひとりかしら。」(今は誰かと関わりたい気分ではなかったけれど、仕方がないと割り切って声をかけた。見たところ近くに親もいないし、祭りに素足で来たなんて何かおかしい。末の妹と同じくらいの年頃の、困ったことに巻き込まれているかもしれない少女を見過ごすことはできなかった。)   (9/6 23:44:51)