この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

竜灯&糸依

清けき莞爾

シロー/竜灯 > ちょうど暮れ頃の帝都榮郷。千景祭・宵宮。年にたった一度の千景祭、中でも一番盛り上がる今夜に向けて、気合いに気合いを入れた竜灯。その気合いの入れようは、軍人でありながらこっそりと副業をするだけでなく、その屋台を見れば一目瞭然だった。たこ焼き、お好み焼き、りんご飴に射的。焼きそば、りんご飴、かき氷に綿飴、ラムネにビール、果てには金魚すくい。台に貼り付けられた品書きが文字で埋め尽くされんばかりの品揃えで悪目立ちする、見るからに頭の悪いソレ。兎角気合いが入ってる事だけはよく分かる筈。王国との戦争も終わり、宵宮に来る王国人の姿も多く見られるようになったここ数年。つい最近軍へと復帰した竜灯は、数年前とはまるで違う熱気にうんうんと屋台の中で頷いた。)「うん、良いの。祭りというのはこうでなくちゃあの。」   (8/23 15:03:01)
シロー/竜灯 > ((黒髪ばかりだった以前とはうって変わり、浴衣に身を包んだ王国人の姿、彼等彼女等のはしゃぐ声に頬を緩ませると、普段の羽織の代わりに羽織った暗緑色の法被の襟を掴み、ぴしっと伸ばすと気合を入れた。)「さぁさぁいらっしゃい!宵宮に来たならここは外せんぜ!!宵宮名物、竜胆車が目印の屋台と言えばここ!西に東に東奔西走、どれだけ探しよってもここに敵う店は無い!さぁ!そこの浴衣の美人さんもどうちや!今なら安くするぜよ!!」((人集りを抜けて、丁度近くを通りかかった浴衣のあなたに目を付けた竜灯は、トレードマークの赤いハチマキの代わりに巻かれた白いねじり鉢巻を後ろ手に縛り直し、あなたの聞き慣れたひどい訛りで呼び掛けた。   (8/23 15:03:03)


清瀬/糸依 > 「ふぅ…今夜はいと暑しかし……」(赤提灯の向こうの橙の光は蛍のように揺らぎながら道端に犇めき、夥しい数の下駄の行方をさながら、先程過ぎた夕暮れを宵にまで延長したかのように照らしている。帝都榮郷が賑わうこの行事、数年前はもっと淑やかに慎ましく行われていた筈のそれは、停戦協定を置いてからというものの成を潜めた模様。暮明の中に黒や茶だけでなく彩を放つ頭髪、西洋を取り入れ着飾られた一枚布の浴衣達、祭り囃子、すれ違う人の声。聴覚や視角を通して伝わるのは、賑やかさだった。良くも悪くも収まらぬ熱気、漂う海月が三匹縫われた青い扇子で風を送れば、汗の屯する首元がすうっと冷えた。……しかし浴衣は暑い、それでも人々がこれを着るのには、祭りという場における特別感というのが働いているのだろう。かくいう私も、母から譲り受けた浴衣を身に纏っている。此方へ戻ってくる際この祭りの為に渡された紫の浴衣、藤の花が丁度良い塩梅に上品で、似合うかはともかく綺麗だなぁと月並みに思った。履き慣れぬ下駄をかぽ、かぽと鳴らし、箸巻きを片手に練り歩く。)   (8/23 15:38:44)
清瀬/糸依 > 「へぇ、風車。懐かしきこと……」(ふと目に留まったのはくるくると踊る風車。白と様々な色の組み合わせ、実用性はともかく清潔感もあって中々趣を感じる、店番の兄ちゃんは耳に風車掛けてる変な人だったけれど。一つ貰いたいのだが今は両手が塞がっている、泣く泣く店を後にして、それはすぐに聞こえてきた。独特な訛りの大声、見えなくてもわかる、“奴”だろう。関わらないのが身のため、と早足に通りすぎようとした。……多分、私だよな。あの大声のせいか彼の屋台の付近は酷く空いている、皆懸命な判断だ。浴衣姿の女は周りには私しか居ない、名指しされていないということは気付かれていないのだろうか。多分無視したら面倒臭い、とても。ふわっと後ろで纏めた髪と蝶々結びにした赤の紐を揺らし、諦めの色と共にゆっくりと歩みを進める。……成る程、一目見てらしいなと思った。良いとこ取りを極限にまで下手に扱えばこうなるのだろうか、調和どころか寧ろ互いが互いを貶しまくりではないか。ゆっくりと咀嚼した箸巻きを飲み込み、呆れと熱を孕んだ息をふうっと吹けば、無言で貴方を見つめようか。)   (8/23 15:38:46)


シロー/竜灯 > 「ほうじゃほうじゃ、おまんぜ────」((言葉が最後まで続く事はついぞ無かった。こっちこっちと手招きするまではしっかり貴女の顔を見ていなかった。取り敢えず一丁上がり、なんて思いでいたからに違いない。近付いてきた貴女に漸く視線を合わせて、固まったのは言うまでもなかった。ぱく、と一度口を動かしてから、遠くを見るように瞳を細める。それに加えて数度の瞬きを重ねるなど、たっぷり数秒。互いに青と黒を交わらせる、刹那の交錯を経てようやっと気付いたらしく、慌てて竜灯は屋台から外へと出てきた。がしゃん、と何かにつまづく音が聞こえるくらいには慌てていたらしく、少したたらを踏みながら躍り出ると、貴女の目の前でやって来て両肩を掴むと、ぱぁと表情を輝かせた。)   (8/23 15:57:31)
シロー/竜灯 > 「───糸依さん!どこいっとったぜよ、俺ぜよ、竜灯じゃ。最近軍に戻ってきよったら、おまんが居らんで探したぜよ!兵舎の部屋にもおらんし!!今まで何やっとったがか、全く。」((ちらり、と自分の服装を見るが残念ながら軍服では無かった。完全にお祭り気分の法被姿だと言うことに気付くと、ほんの少しだけ困ったように肩を竦め。兎角久しぶりだと感情のまま、心底嬉しそうに糸依さんの体を僅かに揺らして笑った。全く、本当に。梟さんも居らんと思えば糸依さんもおらんきに、心配した。───しかし自分も3年前、何も言わずに軍を離れたのも事実。せめて空白の時間も埋めようと、まずは貴女の近況を聞こうと問い詰めた。   (8/23 15:57:32)


清瀬/糸依 > (自身が想像した筋書き通りに事が運んでいくと、人は逆に滑稽だと感じるらしい。水槽の中で酸素を求める金魚のように開く口、間抜けな面のまま瞬きを繰り返しては不器用に躓きながら出てくる様。演技ではないであろう、霊妙な雰囲気に似合わぬその反応が、やはり彼が竜灯本人である証拠。三流芸人のの劇場の視聴者となっている私だが、慌てている他人を見て落ち着いているだけ。こんなところで出くわすだなんて思ってもいなかったし、これから繰り広げられるであろう質問の応酬を上手くこなせる気がしない。思考を巡らせているとあれよあれよという間に彼に肩を掴まれており、取り敢えずは手に持ったものが落下しておじゃんになってしまわないように注意を払うことにした。)「…ああ、名は憶えております。が、仮に知り合いではあるものの女性に問いの追い討ちをかけるなど、相変わらず礼儀は身に付いていないようで? 落ち着きたまへ、此所で話に華を咲かせたとて、貴殿の店は貴殿以外に誰が見るというのです」   (8/23 16:29:03)
清瀬/糸依 > (瞳を煌めかせ揚々とする貴方とは反対に、仕事をサボっていたからか私の表情筋まで働いてくれない。まぁ大喧嘩の幕切れだったのだ、初めから再開の感動など存在しようがなかっただけのこと。彼が軍を辞めてから今まで何をしているのかすらわからなかった。再び軍に舞い戻って来た、というのは噂に聞いていたが、まさか本当だったとは。目の前の相手は、昔の事などとうに忘れているのか気にしていないのか、負い目は感じられない。通行人の目線は刺さるし、このままでは彼の無茶苦茶な質問責めにあって無事には帰れなくなるだろう。一度落ち着かせよう、と右手の扇子を自身の帯に差し込み、肩を押して揺さぶる手を止めさせる。貴方の後ろにあるけばけばしい屋台を指差し、視線は貴方に向けたまま言い聞かせてみよう。)   (8/23 16:29:13)


シロー/竜灯 > (相変わらず、堅苦しい喋り方だ。凝り固まった昔言葉に懐かしさを覚えて口元の笑みが穏やかに弧を描く。何時ぞやのサシ飲みだったか、感情が昂った時の口調が素だとして、やはり糸依さんはこの口調が糸依さんらしい。どっちが好きかと言われれば前者かもだが、らしさはこちらだ。故に懐かしくて表情を綻ばせながら、貴女の冷たい返答にも眉を困らせて笑えるのだった。)「相変わらず糸依さんは手痛いの。浴衣まっこと似合っちょる、せっかく美人なんぜ、それに久しぶりの再会やき少しくらい笑ってくれてもええやいか。」((静止を受けると抵抗することなく腕を離し、普段通りの笑顔で応酬すると、何やら屋台の横に置いてあった木箱を二つ、足で引き摺って少しは人目が集中しないであろう屋台の横に設置すると、手招きして貴女を呼び付けた。)「積もる話は取り敢えず座ってからにしようぜよ、いつかの続き、糸依さんとしたいき、付き合うてくれ。」((屋台の中に手を伸ばすと、地面を引き摺って氷水が並々と揺れる箱を引き摺り。中の瓶ラムネやら瓶ビールやらを貴女に見せた。   (8/23 16:50:00)


清瀬/糸依 > 「笑うて欲しいのであれば容易い事、貴殿が愉快な事を一つ唱えれば笑うてみせましょうぞ」(どうやら軟派癖も其のままの様子。罵声を浴びせても良かったのだが、今夜は折角の宵宮。大分アレのことも忘れてきたし、今回は止めておこう。…笑顔が眩しい。偽物であれ常時と遜色ない笑みを浮かべることができるというのは羨ましいものだ。私は笑えても作れない、愛想笑いなんて、社交辞令なんて、上手く出来た試しがない。偽作を良いとは思わないが、出来ないよりもずっと得しているのだろう。無愛想だと言われる度に他人を妬ましく思った時期もあった。…けれど今は何とも思わない。友好関係を広げずとも生きていける世界は楽だ。一人沸々と思考を巡らせ、逃避という罪の意識から逃れんと毛先を指で遊ばせる。ふと字を呼ばれ顔を上げれば、屋台の影に腰掛ける貴方に手招きをされていた。)   (8/23 17:29:11)
清瀬/糸依 > 「…………。長話は、勘弁して下さいね」(募る話、結局彼も覚えていたらしい。私の落ち度が顕著に出ていたから忘れてくれてたら良かったんだけど。腰掛けてしまえば何かと聞かれるだろう、彼のお願いに応えてあげようという情けはなかった。…が、どこかで謝らなければいけない、なんて胸の痼が邪魔をする。ここで帰れば次、その次とつっかえは取れぬまま。祭りの熱に、人の視線に、足の疲労に背中を押される。道の手前側に置かれた木箱に腰掛ければ、ため息の後に一つ忠告を。中にあったラムネの瓶に手を伸ばした所で、自分が浴衣を身につけていたことを思い出す。左手を使わぬよう右腕を上げ袖を捲り、冷えた水の中に手を入れる。…そういえば、さっき浴衣褒められたな。と少し誇らしくなりつつ、鼻緒に痛め付けられた足をふらふらと揺らした。)   (8/23 17:29:13)


シロー/竜灯 > 「さて、それはどうかの。生憎話したいことが山積みぜ。」((どんな風に言われても、どんなに冷たくあしらわれようともそれが変わることは無いのだろう。友人の一人である貴女との再会、最初から手短にというのが無理な話だ。着物の袖を捲って濡らさぬよう瓶ラムネを手に取る貴女を横目にそのま視線を落とされた貴女の顔へとやった。...変わらんのう。一々何がとは言わないが。遅ればせながら自分も水底から瓶ラムネを手に取って、ちゅぽん、と軽い音と共にビー玉を落とし、溢れん内に一口。───さて、も肩幅程に開いた両膝に腕を預けて前傾姿勢を取ると、距離を詰めるかのように貴女の顔を覗き込んだ。)   (8/23 17:52:19)
シロー/竜灯 > 「⋯⋯さて、とりあえずは久しぶりやの、糸依さん。俺は、戦えない軍人などに意味は無いと思うたから、軍を辞めちょった。このまま軍人をしていても伝説になるなんて、無理やと思うたからの。」((からから、とラムネ瓶を揺らして、呟いた。自分の話はこれ以上は必要無い。何より気になるの糸依さんが何をしていたかだ。いざ本題、と言わんばかりに瞳を細めると、首を傾げて貴女を見やった。)「⋯⋯んな事よりも、おまんぜよ、糸依さん。なんで居らんかったがか?おまんも軍人辞めよったがか?あんなに誰より軍人でおる事に誇り持っちょったじゃやいか、糸依さん。」   (8/23 17:52:20)


清瀬/糸依 > (屋台の灯りと雑木林を背に、長い長い夏の一夜の話が始まる。すっきりと弾ける炭酸に乗せた彼の語りは、整頓され簡潔に。序章はこの程度で良いだろう? とでも言うように。彼が軍人を辞めた理由は、そういえばよく彼の口から聞いていた“伝説”だった。シュクロズアに致命傷を負わせた、というだけで留まらなかった貴方、高いのは向上心だけでなくハードルもらしい。…いや、この場合理想像、なのだろうか? 後から思い返してなんとなく思ったことだが、彼を嘘つきと呼ぶのは相応しくなかったのやも知れない。過ぎた日の事に思いを馳せつつ、言の葉の軍に向け左手に残った最後の一口を。残ったゴミは一度地に放り、ラムネの蓋はまだ開けずに脇に置いて貴方の話を聞く。――蜩が打つ相槌、風の変わりに手で転がるガラスの音、軍服を纏わぬ二人の兵のうち、法被の方が浴衣の方を覗き込む。)   (8/24 07:29:16)
清瀬/糸依 > 「………まず。久しゅうかな、竜灯殿。此のまま風の行方に連られるがまま消えぬるかと思いましたが……噂は誠だったようで。私は軍を辞めたらず、が…………」(大丈夫、何れ皆に知れ渡ること。後か先かの問題。言葉を進める毎に行方を失くす瞳、無意識にも顔は俯き、重い前髪がはらりと睫を撫でる。ゆっくりと瞼で蓋をし、一度開いて自身の手に視線を下ろす。生命線と知能線の間のちょっとした空間、小指からそっと手を握れば水滴に濡れた指先が露出する。この手だけが命を摘み取れた、神罰の制約の元に魔術師のみが戦地に立てた。誇りなどではない、意地と柵に囚われているだけだった。下唇を噛み、手の甲を上にした両手でぐっと浴衣に影を落とし、行ったのは何とも弱々しい発露。)「………魔術が、いえ…。信仰を、失いまして」(たったこれだけなのに、胃の中や臓器までもがかき混ぜられ食道を昇ってくる感覚に襲われる。更に何かを呟きかけた口は、不自然な呼吸の裏に自然と閉ざされて。自分からというのはどうにも辛い、これ以上はまた貴方が聞いてくれないと。)   (8/24 07:29:25)


シロー/竜灯 > 「うん。久しぶりぜ、うん」(凝り固めた様な昔言葉、3年ぶり、久しぶりの再会だというのに相も変わらず。まあだが特に変わった様子は無い⋯⋯⋯⋯⋯⋯と思う。普段からおまんはこの調子だった筈。久しぶり、なんて挨拶から始まった言葉は貴女らしく静かな声音で進み、次の瞬間には本題。貴女の近況が聞ける、と頷きと共に相槌を返すだけに留め、じっ、と前屈みになって貴女を見遣った。)「⋯」((おかしい。漸く微かな、ほんの僅かな違和感に気付いた。この話し合いの前にもし瓶麦酒を掴んでいたなら、恐らく気づけなかったであろう、その程度の機敏。悲しげに⋯いや、憂いげにというのが近いだろうか、そっと伏せられた瞳の蒼がくすんだ。例えぼうっとした遠くを見通すかのような瞳でも、貴女の瞳には確かな意思が宿っていた筈なのに、まるで虚無。ごくり、と息を飲んだか、喉仏が上下した。そっと伏せられた瞳を覗き込むかのように背を曲げると、拳を握った貴女から、理解し難い言葉が飛び出した。)   (8/25 15:17:32)
シロー/竜灯 > 「⋯⋯ん?糸依さん?」(刹那、理解が追い付かずに彼らしくはないが、沈黙で間を取って、貴女の名を呼び返した。問い掛けるような声色で、顔を覗き込んで眉を顰めた。⋯⋯苦しそうに開かれた貴女の口からその続きが語られる事は無く、祭りのざわめきが遠のいて感じた、静寂の後にようやっと口を開いた。)「⋯おまん、どうした?⋯一体、何があった?俺には言えんことやか、糸依さん」((言葉の意味を理解出来ていない訳ではなかった。予想外の言葉に追いつかなかっただけで、時間を要したが反芻して、言葉の意味する所を掴んだ。───聞いたことはある、精神的ショックで魔術を行使できなくなった魔術師も多く居ると。⋯⋯一体、おまんに何が。初めて見せる真面目な表情で竜灯は、逃げる貴女の瞳を追いかけて合わせた。じゃり、と竜灯の座る木箱が体重移動に合わせてずれ動いた。)「分かる、おまんは、嘘つかん人だ。教えとうせ、なんでそがな事になっちょるんだ」   (8/25 15:17:33)


清瀬/糸依 > 「…………」(茹だり籠る暑さも、私を呼ぶ隣の声も、視界でちらつく捻り鉢巻も朧の中。全てを透明で柔らかな水羊羹の中で過ごしているようだった。胃液と熱湯を含んだガーゼが喉に媚り付き、不信もいう熱に浮かされている。この程度大丈夫だと思っていたのに、シミュレーションと実行とでは中々どうも違うらしい。足の親指と人差し指の間で響く痛みがじーん、じーんと銅鑼を鳴らして、通り風が嗚咽と温さを昇らせる。)(貴方“には”じゃない、貴方“にも”…誰にも言えないこと。恐怖の根源にこの胸の内をさらけ出せる程、苦悩と対峙することに長けていない。事実は小説より奇なり、誰にも想像のつかない波乱万丈があるが、人々を感嘆とさせるような綺麗な救いはない。ヒットセラーも、ハッピーエンドを辿る主人公になれるのも、この世界には一握り。   (8/25 17:09:42)
清瀬/糸依 > ──提灯の落とす黒い蛾を追いかけ瞳をふよふと泳がせれば、貴方と目があった。なんだ、そんな真面目な顔も出来るんじゃないか、幾分か印象も良く見えるだろうに。…と、貴方の心配を無下にするような事をほんのりと考えながら、ガラス壁の向こうの言葉を並べ直す。……どうして、こんな事になってるか。どうして、だっただろうか? これ一つに、だなんて絞れない。塵は積もれば山となり、皹が募れば壊れて使えなくなる。積み重なったこれらを、貴方に伝えるならば。)「…………信じる、ことが。どうでも良くなったり、怖くなったり。やり方を、忘れて…しまった、り。今まで、何を信じてきて、何を疑ってきたか……辿ってきた筈のものも、見えなくなって。……結局、逃げた。其れだけの、事です」   (8/25 17:09:56)


シロー/竜灯 > (以前から糸依さんに少し強がりの気があると竜灯は感じていたが、かといって弱いと思ったことはなかった。こと魔術師としての誇り、尊華帝國軍としての矜恃、そういったモノは誰よりも強かったと思っていた。何が貴女をそこまで駆り立てるのかまでは分からなかったが、ただ一つ言えるのは、糸依は強いということのみ。日常を抜け出した貴女は、ぴん、と張り詰めた糸のような女だった。───それがどうか。今目の前にいるの貴女は縒れて落ち、絡まったぐしゃぐしゃの糸のようだ。ここまで来れば様子がおかしいという事くらい嫌でも分かった。目と目が合った。)   (8/26 07:30:00)
シロー/竜灯 > 「⋯⋯嫌だな」((ぼそり、と呟かれた言葉は竜灯らしくないだろうか。素っ気ない声音で紡がれた言の葉が漂う中、貴女に向けていた瞳を外した。顔を覗き込むように前傾姿勢になっていた体勢を戻し、気だるげに髪を掻いた。)「そがな糸依さんは見たくない。何を諦めとるがか。俺がいつか言ったこと忘れたか?忘れたとは言わせん」((何度か言ったことがある筈だ、〝出来ると言っていれば出来る〟と。再び視線を合わせると、腕をめいっぱい伸ばして貴女の右肩に乗せて、掴んだ。俺の目を見ろ、と言わんばかりに見詰めると、真面目な顔付きから一点。ニヒルに口角を上げた。)「安心しとうせ。おまんは前より強くなる、何もかも上手くいく。何一つ不自由無く、毎日楽しく過ごせるぜ」((何を思ったか目を細めて笑いながら、根拠も無さそうな言葉を投げかけた。   (8/26 07:30:13)


清瀬/糸依 > (元から気持ちを言葉にするのは得意でない、こんな知られたくもない事情を問い詰められているのなら尚更だった。本当はもう少し、素直に言葉を言える筈だったと思う。しかし此所は皮肉こそが華の国、葉の裏と表が入り交じる都。己に対する羞恥と閉塞の芽は容易に生えてくる。己という基盤に深く根を生やした恐怖が、簡単に根絶できるとは思えない。やはり貴方の言う通りなのかもしれない、詞にしたことで実際、薄れていた負の感情達がぞわぞわと腸を蝕んでいるのだから。言霊は故意も無意識も、無作為に食んでいく。──ふと、ぐっと肩を掴まれる。浴衣越しに伝わる“他者”の存在、じわじわと染みるように感覚が帰還する。くい、少しそちらへ引き寄せられれば足元の砂利が削れて音を立てる。勢いそのままにもう一度視線を合わせる…のではなく、もっと向こうを、見えない筈の景色を見るように焦点をぼかす。輪郭のない世界の中、灯された火に透けた貴方の髪は柔らかな緑を帯びていた。)   (8/26 16:41:04)
清瀬/糸依 > 「……そう、だと良いのですが」(何を裏付けもなく無責任なことを、とか。全く貴殿らしいですね、とか。ありがとうの代わりの言葉、だとかを告げる余裕も、権利もなかった。剥奪や破損ではなく、破り捨てて破棄したそれを、今すぐ取り戻したいとは思わない。今の私にできるのは、人という証拠資料のない存在に、信用の要素を探すこと。──じんじん、じわーっ。瞳の裏がぎりぎりと痛い。瞼を下ろしても収まらない痛み、貴方の視線も気にせずに両手で目頭を抑えてゆっくりと鎮圧する。これは情緒の揺らぎが原因、そうに違いない、だって悔しいじゃないか。)「…………軍に、戻った?」(此所で話をしていたって、私の信仰がのこのこと姿を現す訳ではない。現実的な面では何も進まなかったのか、と沈黙に居つつ、ふと会話を振り返れば。確かにうつけは風の伝え通りに舞い戻った、しかし今、コイツ何をしてる? 法被に屋台に捻り鉢巻。副業、基禁止事項を施行している事への危機感や罪悪感がまるで足りてない。一度座り直し目を細め、表情による訴えを。……ほんと、駄目なところまで変わってないらしい。)   (8/26 16:41:06)


シロー/竜灯 > 「そうだよ」(歯切れの悪い貴女とは対照的に、短く簡潔な返答が返される。貴女の悩みなど、苦しみなど理解していないのでは無いかと思わせる程に竜灯の返事には迷いがなかった。まるで「至極当たり前の事を言っている」かのように、竜灯は澱みない動作で貴女を見つめた。肩に置いた腕を退かす事無く立ち上がると、貴女の肩を掴んだまま、貴女の横へと歩いた。)「ああ、戻った。おまんが恋しくなって戻ってきたらこの有様だ。糸依さんには俺のこの悲しみは分かるまいよ、どれだけ俺がおまんのことを探し回ったか。の?」(肩を掴む力を少し強くする。⋯⋯いや、少し掴み方を変えた、が近いだろうか。そっと肩に体重を掛けて、横から貴女の横顔を覗き見る。嘘は一つも言っていない。貴女を含め多くの仲間と過ごした思い出は消えることなく、軍に戻る事を決意した竜灯の背中を強く押した。〝楽しみにしていたのに。〟────だからこそ、こんな結末はお呼びでない。貴女の肩を押し込んで僅かに仰け反らせると、背中を曲げて顔を近づけると見下ろした。)   (8/28 07:09:47)
シロー/竜灯 > 「こうして帰ってきた暁には、また俺の伝説が始まるぜよ。昔のようにおまんを振り回してやるちや。もう決めた。暴れても何しても離してやらん」((俯くおまんは見たくない、こうして顔をあげたまま居ってくれ。くい、と更にもう少し貴女を押して見上げさせると、口元をほんの僅かに上げた。   (8/28 07:09:58)


清瀬/糸依 > 「…………」(わからなかった、わかる筈がなかった。まるで世界の全てを見透しているかのように迷いの色を見せないその様も、あれだけ後味の悪い別れをした相手を恋しく思うのも、貴方の悲しみも。衰退した理解では追い付くことのできないその感情に、口の端を結んで黙っているしかできなかった。貴方の手からかかる重さ、自身の軌道も行き先も迷わぬ矢のような視線が私を貫く。押し込まれた肩が作用して私に右を向かせる。扇子や林の風に乱れた髪がはらりと頬を擽り、留め具の赤紐が左右不均等に揺れる。)「……ふ、あはははははっ! はは、いや、ごめん……っくく、ふ…はぁぁ…………」(神妙な面付きの貴方の手前、堪えていた筈だったが今回は沈黙が此方へ仕事を働きかけたようだ。決して貴方を馬鹿にした訳ではないのだが、綻んだ口は声を遮ってはくれなかった。気泡と共に溢れる錠菓のように、私の心という容器から処理しきれなかった感情や情報がコロコロ、と喉奥で鳴らすように音をたてる。座ったまま踞るように屈んで下駄で小石達を叩いて、なんというかアホらしいを通り過ぎて最早清々しかった。   (8/29 00:41:33)
清瀬/糸依 > 信仰を欠いた人間に対する慰め、これが彼の方法か。距離という概念を覆すようなその振る舞いに、今ばかりは救われたのかもしれない。肩で呼吸を整え目尻の涙を浴衣で拭う。こんなに声を上げて笑ったのなんていつ振りだろう、ふぅ、と最後に短く息を吐き出すと貴方を見上げ、左に流れた前髪に手を通した。)「申し訳ない、私も病み上がりのような身故、いや…失礼した。あれ程忌々しく思うていた貴殿の言葉が、こうして笑いにすり変わっているとは。──今や、何者にもなりきれぬ身。“竜灯”たる読本を記すも、一つの択……なのやも知れませぬね」(正直、まだ彼の手を振りほどかずに大人しくしていられる自信はない。世の果てまでも繋がっていそうな穴のように、己という存在が深淵の中にあるように感じているのも事実。それと同時に、他人という中から現れた貴方の存在が、他よりも信用の材料を揃えているのも確かだった。闇と灯火がくっきりと分かれる、酉と戌の刻の間。笑いはしゃぐ子供から、大人の綱渡りの最中へ。膝の上で両手の指を交差させながら、いつもより幾らか柔らかに笑んでみせた。)   (8/29 00:41:53)


シロー/竜灯 > 「ふふっ⋯⋯はははっ!!」(「何を笑っちょるがか。」なんて無粋な一言を口に出来る訳もなかった。昔のような糸依さんが見たい、必ず戻してやる、昔よりも楽しい毎日にしてやるとは大口を叩いたものの。まさかこんな風に笑ってくれるなんて。疑問に思う前に嬉しくて笑ってしまうに決まっている。貴女の笑い声に呼応するように僅かに遅れ、元気な笑みを重ねると、そっと肩を押しこむ手はそのままに、にぃ、と笑みを深めた。初めて見る、文句無しの笑顔であった。)「いやあ、初めてそんな風に心から笑う糸依さんを見たぜよ。昔よりずっと素敵じゃ、そっちの方がもっと美人ぜ?糸依さん。」   (8/29 06:04:50)
シロー/竜灯 > (全く。ここまで言わせておいて、「なのやもしれませぬ」とは言ってくれる。言っただろう、暴れても離さないと。吐いた唾は飲めないし、一度口にしたことを諦めるのは、竜灯が最も嫌いとする所であった。肩を押し込んでいた腕の力が弱まったかと思えば、腕はそのまま貴女の左肩をつるつると降りてゆき。膝の上で組まれた貴女の掌へとたどり着くと一切の躊躇泣く、腕相撲に近い握りでぎゅっと手を掴んだ。)「必ず俺がおまんを何とかしてやるき、俺に任せとうせ。神も仏もなんもかんも信じられんなら────」((にやり。彼らしいニヒルな笑みに戻ると、座る貴女を引っ張り上げようと力を込めた。)「まずは俺から信じてみるというのはどうかな、糸依さん。」   (8/29 06:05:01)


清瀬/糸依 > 「嗚呼、それはどうも。……しかし貴殿は昔ゝと囂しく頻りて。人は常より変はるのが筋というもの、今を生きるのは今の己のみにあるのですよ?」(騒がしく煌めく夜の催しの中、時は刹那遡り、そして再度流れ始めた。彼は私が見せた笑顔に随分とご満悦の様子。それもそうか、彼には愛想笑いすら殆ど見せていない気がする。本気であれ勢いで零れた妄言であれ、きっと楽しい毎日を取り戻すと宣言したその人には嬉しいことであったのだろう。それが稀有なものであるというのなら尚更。見られてしまったことが癪だとかそんなことは些細なことだった。どのような方法であれ、確かに心の底から笑うことができた。それだけで何だか以前の自分に戻れたような気がして。“糸依”の根元である強さが少量でも手元に帰って来たのならば、その理由であるこの人は。幾らか晴れやかな心、あまりお小言を言うのも止めておこうか。「昔より」、「昔のように」。無意識なのかも知れないが、こうも連呼されるとどうもむず痒い。過去を語るのは、題名の綴られた表紙の中の文字だけで良いのだ。この世を直接動かし、変わりゆくのは生きてこその特権。   (8/31 19:12:20)
清瀬/糸依 > 言葉こそ辛辣になれど、そこに深い憎悪や負の感情は感じられないだろう。どちらかというと、吐き捨てるよりは語りかけるように、怒鳴るよりは諭すように。この物腰もまた変化と呼ぶならば──きっと、貴方の期待通りの影響が及んでいるのではないだろうか。)「──是非、と言うて差し上げたいのは山々なれど、生憎嘘はつけぬ性分で。未だ起きておらぬ取り付け事に頷ける程私が寛容で…いえ、素直であらぬのは、貴殿もいと承知しておりますでしょう?」(肩を離れた貴方の手がつつ、と下る。向かい合ったまま、両と片とで繋いだ筈の手は一回り以上に大きくて、性別というものを意識させた。まぁ、だからと言ってどうでもないのだが。私は可愛いヒロインではないのだ。それよりも今は返歌を練らねばなるまい。彼の気持ちを無下にもできない、しかし気遣いであっても騙すというのは、後始末の苦手な私には難しい。気も重くなるしできればやりたくない、とあればどうやって紡ごうか。良い意味でも悪い意味でも空虚な貴方の笑みを見つめ、立ち上がりも拒みもせずまずは建前を並べる。   (8/31 19:12:48)
清瀬/糸依 > 積み重なった知識と瞬発力とは別物だ、そう他の尊華人のように毎度上手くは返せない。藤色から肌色を覗かせながら、腕が少し持ち上がる。途中汗で木綿の生地が引っ掛かり皺を寄せ、隙間から風を差し込ませる。布と身体との間に溜まった鬱陶しい熱気を一巡させる、そんな隙間の時間。それを終えればにっ、と意地悪く口で弧を描き、錠菓の瓶を片手に弾くように立ち上がった。)「だから──期待しておりますよ。その意気込みも伝説もまやかしではないこと、精々行動で示してご覧なさいな」   (8/31 19:13:04)


シロー/竜灯 > 「ふ、らしいの。」((短く呟くと、貴女の瞳をじっと見据えて返歌を待った。握った手に力を込めて引っ張りながら。さあ、立ち上がってくれ。俺の知る中で誰より頑固でお堅い糸依さんに認められたら、俺としても嬉しいところ。そんな祈りが通じたのか、それともまた違う要因か、応じた貴女に表情を緩めると幾分か高くなった貴女の瞳を見つめた。)「俺に任せるちや、俺ができると言ったらできる。そう言うたからには糸依さんには暫く俺に付き合うて貰おうかの。そうだな⋯⋯」((そっと手を離すと腕を組み、片腕を立てて顎に手をやると、視線を上に向けて悩む素振りを見せた。唇に当てた人差し指をとん、とん、と数回叩いた後だろうか、「うん。」と喉を鳴らすと瞳を細めて笑った。)「王国への出兵が多くての。糸依さんには俺と一緒に来てもらうちや、ちょっとした旅行と思えば悪くないき、安心しとうせ。退屈はさせん。」   (9/3 05:56:54)
シロー/竜灯 > ((一人で王国に滞在するのも楽しめるが、一人見知った友人が一緒にいればもっと楽しいだろう。軍人仲間で来てくれそうなのは貴女だけだろうし、渡りに船だ。それに、何があったのか聞かないことにはどうしようも無い。───まだ言い辛いのなら、時間と楽しい思い出でほとぼりが冷めるまで待つだけだ。我ながら完璧な計画に内心何度も頷くと、最早断られる心配もしていないようで、勝気な笑みを崩さずにいた。   (9/3 05:56:56)


清瀬丸/糸依 > 「はは、それは貴殿とて同じ事よ」(高慢の覗く言葉に私らしい、と放った貴方。するりと抜けた手で浴衣の衿をくいと持ち上げては、何かを考え込む様子をそのまま見つめる。言葉の選択こそ私らしかったのだろう、しかしどうだ? 三年という時間の経過では表せない“何か”が、私と彼とに発生しているのではないだろうか。そうでなければまず問いかけに口を開くこともなかっただろうし、あんな風に笑うことも、先程立ち上がることもなかった筈だ。信用というよりは、懸念することが無いから。貴方に対して素を晒してしまった時点で…そしてその存在を認識した後でもこうしている時点で、自分という像の崩壊というものを心配することがなくなった。あの時は禁忌肢だと思っていたが、今こうできているのなら最悪の選択ではない。ほんの少し、意地を張らなくても良い部分がある。そんな心の余裕がある故にできる対応だ。)   (9/3 20:24:48)
清瀬丸/糸依 > 「王国に……! え、いや…は? 貴殿と!? 二人で!? 紛いなりにも男女である者同士が!?!?」(手にした硝子の瓶を回して中のビー玉を遊ばせていると、小さな声が聞こえた。貴方の持ち出した提案は、最初こそ魅力的だった。兵として勤務できぬ私には派遣の件での相談など来ず、折角の機会を自ら台無しにしたことは少なからず残念に思っているのだ。形は違えどそれが叶うというのは、私にとっては美味しい話。しかし一度冷静になって考えてみよう、とんでもない提案だなおい。任務でもない王国への訪問、彼が私に別行動をさせてくれるとも考えにくい。ちょっとした旅行だと思えば? 益々状況が悪いではないか阿呆が。胸ぐらを掴みこそしないものの、興奮か羞恥か憤怒か。幾らか頬に熱を持たせて貴方に向けて一方、ずい、と近寄る。)「お前そういうとこだぞホント!! その気が有ろうが無かろうがデリカシーってもんをお前は知らな過ぎるんだよ!!!長月になっても収まらぬ暑さで頭までやられたか!?」   (9/3 20:24:50)


シロー/竜灯 > 「ああ。そうぜ。なんだ、別に今更何を言うとるがか。減るもんじゃないし俺も同じことだよ、いいじゃやいか」((ぱちくり、と二度ほど瞬きをして、数瞬の間を挟んで当たり前のように頷いた。言いたい事は分かるが別に同じ屋根の下で暮らした仲だろう、俺達軍人は。その中でも自分と貴女は仲が良い方だと自負しているが故に小首を傾げる事すらなく、一切の迷いすら無しに腕を組んだまま言い切った。らしくない、そんな事で取り乱すなんて実に糸依さんらしくない。やっぱり何かあったに違いない。少しズレた点から貴女の違和感に気づいたようで瞳を細めると、一歩近寄られてほんの僅かに上体を仰け反らせるように動かした。誤差程度に顎を引くと眼下のきつく結ばれた蒼瞳を見下ろし、漸く組んでいた腕を解き、肩を竦めた。)「まあまあ、俺はそっちの口調の方が好きやけんど、落ち着くぜよ。意外とウブなのか?糸依さんは。暦を間違えるとはらしくないぜ」((らしくない、それとも知らなかっただけで本当は初心だったりするのか。もしそうならこの反応もわからなくもない。にぃ、と一瞬だけ口角を上げたと思えば次の瞬間には揶揄うように瞳を細めた。)「今は葉月ぜよ」   (9/5 19:39:47)


清瀬丸/糸依 > 「世の全てを質量で量ろうとするな!!」(いつもは多少なりとも存在する、言葉を紡ぐ時の“溜め”。古語というまどろっこしい言葉に置き換えているからもあるのだが、失言がないかというのを口を開いてから一呼吸置いて確認する癖がある。発露というのは撤回のできぬ存在や責任が生じるものだ、迂闊になり過ぎても良いことはない。…そんな溜めが生じぬ時というのは、混乱か何か、冷静さというのが乱された時でもある。情緒の水面で暴れる魚が波をたてるような感覚。自分が過剰になりすぎているのも理解しているが、時が悪かった。指を差し向けるというのには礼儀の面で抵抗があったのか、帯から扇子を抜き出し貴方の喉元辺りに向けてぐ、と突き出す。そこそこに体格の良い貴方に向かって見上げて睨む形となり、結んだ瞳を弛めることなく。反対にどこかひょうきんな様子をじっ、と捉えていた。)   (9/5 20:41:14)
清瀬丸/糸依 > 「人を馬鹿にするのも大概に──!!」(ウブだなんて全く、熟舐められている。止まる所を知らない言葉は益々溢れだし──急に、通行制限をかけられたように喉奥でつっかえた。扇子を持った右手はす…と下がり、腰の横へと戻っていく。前屈気味だった身体を起こし、貴方から離れる形でその場に直った。…一瞬、耳を疑った。「今は葉月」、単なる戯言にしては、貴方はいつもとまるで同じ。からかうような笑みさえ浮かべていれど、何も変わらぬ“竜灯”という人間であるように、少なくとも私は思えた。その不調和な二つが、憤りも興もを冷ましていく。瞳を丸く開いて、一度…二度。ゆっくりとした瞬きの中、やはりたちの悪い冗談だろう、と違和感を茶化した。こんな奴に遊ばれるだなんて、嫌になる。乾いた笑い声で無理矢理思考を飛ばして、頬を掻く横髪を耳に掛ける。)「冗談ならもうちとマシなものを持ちてきなさいな。確かに今は長月の頭、そうでしょう?」   (9/5 20:41:16)


シロー/竜灯 > 「う」((喉仏に扇子をぱっと突き付けられ、思わず顎を上げてしまった。喉奥を鳴らすようなくぐもった声を零して、眉を顰め。下ろしていた腕を固めて、指先をぴんと張り詰めさせた。「何も、そうかっかせんでもええじゃやいか」と咄嗟に出しかけた言葉を飲み込んで、静かに扇子に片手を添えると、抵抗が無いのを確認して握りこみ。そっと胸元辺りまで下ろしながら同じように上に向けていた顎を下げていった。)   (9/5 20:56:46)
シロー/竜灯 > 「俺が気にせんで大丈夫と言うとるき、大丈夫だ。⋯⋯の、分かるだろう糸依さん。」((何を急に怒ったかまで竜灯には分からなかったが、「頭を冷やせ」なんて言葉は飲み込んだ。まず間違いなく、それこそ信仰を失う程だ、色々あったに違いないから、変に刺激しないように。貴女と同じくして、らしくないが諭すような落ち着きを孕んだ声音で呟くと、一呼吸。ふう、と息を吐いて、なるべく、なるべく刺激しないように気を付けて、気を付けて。貴方を見つめながらに静かに口を開いた。)「⋯⋯何を言いよるか、今日は葉月、宵宮ぜ。一年に一度の宵宮、やき、こうして気合いを入れちょる。長月に宵宮はやっちょらんぜ。」((いくら何でも、ひと月も間違える筈がない。それに宵宮の時期くらい知っている筈だ、流石の貴女でも。やっぱり様子が変だ、もしかすると、一筋縄ではいかないような事に巻き込まれているのではないか、と表情に影を落としながら口元をきつく結んだ。   (9/5 20:56:4)

清瀬丸/糸依 > 「……宵、宮」(力無く反芻して漸く、今まで何も思ってこなかった重大な相違に焦点が合う。そうだ、私が居るのは宵宮だ。葉月に催される、尊華の一大行事。何故気がつかなかったのだろう。此所は置き去りにされた、提灯の落とす虚像の祭。忘れていた、というよりは、勘違いか。休暇による体内時計の遅れ? それにしては、何だか合点がいかない。……けれど、今考えるべきは原因よりもこの先。私達が居るのは捻れた世界、何かしら……いや、十中八九“異能”が造り出した舞台だ。効力が如何程かというのは殆ど未知数。この会話だけでは、“宵宮”へ遡っている、若しくは繰り返していることしか分からない。冷めた身体を伝う汗は、いやに冷たい道を引いた。)   (9/6 23:56:56)
清瀬丸/糸依 > 「駄目、だ……。どうする、どう…すれば……」(嫌な可能性が頭を過る、というのではなく。私にしては珍しく、言うならば“勘”というものが働いた、のだろうか。此所に居ては危険だ、合唱を終えた蝉時雨に変わってけたましく脳内の警報が鳴る。此所から出られるのか? 犯人は? 最善択は?祭という水槽に閉じ込められた紫の金魚は、思考を巡らす──暇など、なかった。気がつけば、全てが起こった後で。貴方が纏う法被の裾を自分の扇子ごと掴み、屋台の脇から無理矢理連れ出そうとするのも。多少の抵抗など構わず、人の波を掻き分け下駄を段々と速く鳴らすのも。貼り付いた前髪も、僅かに緩んだ帯も、気にしてなどいられない。宵から始まるこの舞台は、間違いなく“異様”だ。)   (9/6 23:57:07)


シロー/竜灯 > 「ああ。───糸依さん?」(常々伏せがちな青い瞳に、長睫毛の簾が降りる。『目は口ほどに物を言う』その通りに先から様々な感情を見せた青が、俯くと同時に初めて竜灯の視界から消え去った。顔を伏せられれば、貴女より背の高い竜灯には瞳の色を読み取る事も出来ず、尖らせた上唇をぼそぼそと動かす貴女の表情を覗き見ようと、首を前に倒しながら僅かに曲げ、かしげるような姿勢で。⋯⋯例年と比べてざわめきが減ったような祭りの喧騒が今更になって感じられた。貴女との再会や、その身に起きた話を聞いたから、今日はおかしな事だらけだったからか。この刹那の沈黙が、気づけなかった些細な違和感を竜灯に感じさせる。⋯何となく、すう、と瞳を細めた瞬間のことであった。既に首元から降ろさせ手放していた扇子が閃いて、柔らかく後ろで纏められていた黒髪がふわりと揺れたかと思えば、赤い紐で結ばれた後ろ姿が目の前にあった。そのまま服の裾を引っ張られて、一瞬だけつんのめるとすぐに立て直す。   (9/8 06:57:48)
シロー/竜灯 > 性格の違いか、下駄の貴女とは違い走りやすい草鞋を履く竜灯は貴女のペースに乱されることはなく、でも何処か引っ張られるように背中を曲げ、ぎこち無く歩を進めながら貴女のうなじに問いかけた。)「お、おい、糸依さん?⋯⋯どうした?そりゃあ付き合うてくれとは言ったが────」(『俺にはまだ店番が⋯⋯』喉奥まで出てきかけた言葉を飲み込んで、首だけ振り返ると既に人混みに隠れた自分の屋台を見返した。折角、この日の為に用意した屋台、在庫もまだまだ余っているし大赤字である。⋯⋯⋯⋯けんど。)「⋯⋯」(視線を戻して、何とかうなじではなく表情を見ようと首を伸ばし、斜め後ろから横顔を覗き見る。⋯凄く真面目な顔だ。何を考えちょるか分からないが、致し方ない、のう。⋯⋯内心呟くと、すん、と鼻を鳴らし。せめて遅れないようにしようと歩を早めて貴女のなるべく横へと並び立つと、歩幅をきっかり合わせて連れ歩く。ふと、こうして自然と視線を向ける機会に恵まれたことで、今更だが貴女の髪がばっさりと短くなっていた事に気付いた。汗で少し張り付いた艶のある黒髪に意識を向けながら、仕方が無いので貴女の足が止まるまで黙っていることにした。   (9/8 06:58:14)
シロー/竜灯 > 元々綺麗な顔立ちではあるが、竜灯にとって3年前は部屋で本の海に溺れている印象が強かった貴女。赤紐で緩く纏められた髪、歩きにくい下駄、上品な藤の花の浴衣⋯⋯失礼だが貴女らしくなく、とても綺麗に着飾られた後ろ姿を、提灯に照らされながら眺めていると、不思議とこの時間もそこまで退屈はしなかった。)「⋯⋯なあ糸依さん?もう境内の外ぜよ、宵宮よりももっと大事な事でもあったがか?」(そんな時間も終わりを告げる。辺りの喧騒と熱気が薄れ、提灯と篝火から離れて世界が青白っぽく移り行き漸く、お祭りから離れている事に気付いてはっ、と顔を上げると、暫く黙っていた口を開けた。少しは遅くなりつつもまだ進む貴女に引っ張られ、遅れること無くついて行きながら横顔を覗き込み、僅かに不思議そうに眉を下げた。   (9/8 06:58:30)


清瀬丸/糸依 > (きっと貴方が労力と暇と軍人の尊厳を払い用意しただろう、見た目の騒がしい店。ねえねえ、いいでしょ?と鼻声でねだり勝ち取った、夏の風を受けて回る風車を掲げてはしゃぐあか抜けぬ子供。その姿を見つめ微笑む親、更にそれを眺め指を交差させる恋仲の男女。甘ったるくて肌に張り付くわたあめの匂い、通行人に幾度と踏みにじられたA4用紙のプログラム。夏の風物詩を次々に追い越して、咎める声にも耳を貸さず歩く。法被から伝う逆方向への抵抗も、暫くすると大人しく此方へ、同じ速度で並んでいる。昔貴方がしたように、趣のある洒落た店へと連れてはいけないけれど。無力な自分一人で此の場を去るのは怖かったし、ほんの少しだけ、貴方を置いて行きたくなかった。こんな自分に構って、信じろだなんて大口を叩いて、此方の設置した弊害すらぶち壊して無条件に何かを提供してくれる馬鹿。そんな奴、世界中探したってそうそう見つからないだろう。   (9/10 17:43:32)
清瀬丸/糸依 > ……どうせ自分という存在は一人しか居ない。いくら心を許した友は勿論、昔の己でさえ他人となれる。例えば根本から、思想、理想、取捨、エゴに至るまで。何をとっても唯一の人間一個体が、環境という基盤に乗って歯車のようにかちりと噛み合えば、そこにイベントが発生する。今私の起こす行動は、何を巻き込んで、何を生み出すのだろうか。)「──!!そ、と…境内の……外。……あ、店」(祭りから離れる、その理由すら忘れひたすらに鼻緒で足を痛め付けていた。逸る気持ちを何とか圧し殺して遮断していた脳に滑り込んだ、貴方に呼ばれた字が自分の物だと気がついて初めて、過ぎる景色と歩みを静止させる。ずっと道の三歩先を睨んでいた瞳を上げれば、右にはどこか不思議そうに此方を見る貴方が居る。境内の外れ、粗い密度の雑木林と僅かな照明。聞いたものを鸚鵡のように繰り返し、朧に灯る元居た場へ振り返る。幾らかしてようやっと、自分が彼を連れ出したことを完全に理解できて。   (9/10 17:43:48)
清瀬丸/糸依 > 私らしくない、それでも私が招いたこの状況。何事もなく──いや、既に怪異は怒っているのだが──逃れられたことに、一先ず胸を撫で下ろす。握った手の力をゆるりと和らげ貴方から手を放し、まるで軍人らしからぬ、加えて客でもないその様に気付かされた。屋台の主その人を連れてきたということに、素直に謝る……よりも、不安がぽっ、と一つ。折角抜け出したのに、またあの煌めく鉢の中へ行ってしまったら? この複雑な心境、衝動のない今の私では伝えようにも……。放した手に皺と影を作り、苦虫を食んだような顔で貴方を見上げた。)   (9/10 17:44:02)


シロー/竜灯 > 「ん?」(見上げるその目には、普段の落ち着き払った貴女らしさは一欠片も残っておらず。祭りの喧騒から離れてようやっと聞こえる程の声で何かを呟いた貴女に、竜灯は短い疑問符と共に小首を傾げた。宵宮はこれからで、自分にはこの日の為に用意した屋台の事もある。それでも、久しぶりに再会した旧友とどちらを取るか、と言えば答えは決まっていた。法被の裾を掴んでいた貴女の手が滑り落ちるのを見送って、すん、と鼻を鳴らしながら腰に手を当てると呆れ笑いで見下ろし。何時ぞやと同じように今度は貴女の手首を掴んで軽く引っ張った。)「ほら、何しちょるがか。行こうぜよ。」((くい、と一度引っ張って離すと、一歩前に出て振り返るように貴女を肩越しに見遣る。流れるままに眉を潜めながら瞳を細め、片側の口角を上げた。)「よう分からんが、どこか行きたい所があると見た。付き合うき、時間が勿体ないぜ、早う早う。」   (9/17 22:45:54)


清瀬丸/糸依 > 「あ、っ……」(迷いも躊躇いも打ち払った、世界の縁にあるはぐれの塊を閉じ込めたような虚ろさを閉じ込めた瞳。貴方が見つめるのは、一閃切り開いた一筋の道そのまま。肩のラインからくい、と引っ張られた体。名残惜しさか微かに声を漏らしはしたが、最初の一歩は思ったよりも簡単に出てきた。変わらぬ笑顔に触発されてか弛んだ口角。笑みとは程遠い、けれど張り詰めた糸がほんの少し解れたように目を細める。離れるべき場所はわかっても、行くべき場所は私にはまだ見えない。ここから逃げて、一体何処へ行くかなんて頭の隅にすら置いていなかった。瞳を閉ざし、耳を塞ぎ。閉塞の中でも、この人とならもしかしたら、踏み出すべき道ぐらいは見えるのだろうか。)   (9/17 23:34:47)
清瀬丸/糸依 > 「……一先ず、本部にでも帰りましょうぞ。事が事故、報告書に追われるやも知れませぬし。それにこの貌では、店に行けども笑い者よ」(気持ち遅めな歩幅に合わせ、半歩後ろで浴衣の生地を摘まんではくつ、と喉で鳴らすように笑う。季節外れの熱の盛り、逃避行だなんて洒落たものでもないが、重荷なんて捨ててしまおう。背負うものも気負うものも軽く……できればきっと、私もいつか以前のように。その為に、まずは導き手を、貴方を信頼しないと。すっかりと露になった月に見送られ、尚灯る祭に別れを告げて。──拝啓。もしかしたら、友達できたのかもしれません。)〆『清けき莞爾』   (9/17 23:34:48)


清瀬丸/糸依 > 「あ、っ……」(迷いも躊躇いも打ち払った、世界の縁にあるはぐれの塊を閉じ込めたような虚ろさを閉じ込めた瞳。貴方が見つめるのは、一閃切り開いた一筋の道そのまま。肩のラインからくい、と引っ張られた体。名残惜しさか微かに声を漏らしはしたが、最初の一歩は思ったよりも簡単に出てきた。変わらぬ笑顔に触発されてか弛んだ口角。笑みとは程遠い、けれど張り詰めた糸がほんの少し解れたように目を細める。離れるべき場所はわかっても、行くべき場所は私にはまだ見えない。ここから逃げて、一体何処へ行くかなんて頭の隅にすら置いていなかった。瞳を閉ざし、耳を塞ぎ。閉塞の中でも、この人とならもしかしたら、踏み出すべき道ぐらいは見えるのだろうか。)   (9/17 23:34:47)
清瀬丸/糸依 > 「……一先ず、本部にでも帰りましょうぞ。事が事故、報告書に追われるやも知れませぬし。それにこの貌では、店に行けども笑い者よ」(気持ち遅めな歩幅に合わせ、半歩後ろで浴衣の生地を摘まんではくつ、と喉で鳴らすように笑う。季節外れの熱の盛り、逃避行だなんて洒落たものでもないが、重荷なんて捨ててしまおう。背負うものも気負うものも軽く……できればきっと、私もいつか以前のように。その為に、まずは導き手を、貴方を信頼しないと。すっかりと露になった月に見送られ、尚灯る祭に別れを告げて。──拝啓。もしかしたら、友達できたのかもしれません。)〆『清けき莞爾』   (9/17 23:34:48)