この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

透紙炉&火津彌

ルーズ/透紙炉 > 【或る夏の回想】祭り。祭りか。そういえば、随分と昔のこと、姉に手を引かれて訪れたような記憶がある。私は甘蕉に貯古齢糖を掛けたものを好んで食べていた。よもや、立場を変えて再び訪れるとは、微塵も思っていなかったが。 ━━━━━━━━━━「…………」千景祭。彼女は南の区画の警備を一任されていた。きっと、強引に抜け出すこともできたのだろう。だけど、祭りの光に包まれた大通りは、今の自分にはとても座に堪えず、それを遮るように軍帽を深く被り直す。平穏だ。道行く人々は皆、幸福そうな表情を湛えている。さんざめく囃子も、一様に、ただ緩かな時間が流れていた。中佐になり、現場を指揮する立場になって初めて気がついた。案外祭りとは、浮き足立つ人多けれど、悪意を持つ人間は少ないということだ。なんの魔術か分からないが、祭りの神がいるなら是非とも教えていただきたいものだ。と、1人物思いに耽っていると部下が巡回から帰還した。異常がないことを告げて休憩に入る部下の背中を眺め、彼女はそっと持ち場を後にした。祭りなんて、見飽きたものと思っていたのに。中々どうして心躍るのは、きっと、己が未熟だからだろう。爾云   (8/18 01:10:14)


マリア/火津彌 > (ちんころ、ちんころとどこからか聞こえてくるのは摺鉦の音が特徴的な千景囃子。献燈と篝火があたりを朱く照らし、玉蜀黍や焼き鳥の醤油が焦げる香ばしい匂い、飴菓子の甘い匂いがなんとも胃袋を揺すってくる。それはただ食欲を唆るだけの性質のものではなく、ゆらめくように記憶をこじ開ける匂いの宝箱だった。あるものは童心に返り、あるものは郷愁に胸を締め付ける。祭りの夜は、そんな魔の力があった。)「榮郷も、悪ないもんやなぁ。毎年思うわ。」(白地のくしゅくしゅとした楊柳の浴衣を纏ってぷらぷらと散策しているのは、尊華帝國軍少将、火津彌。何か買っていこうかと恣意のままに下駄を鳴らすと、思わぬ影が目に入り一瞬視線が奪われる。)「”白鬼”――あ。」   (8/18 01:30:57)
マリア/火津彌 > (宵闇の中でも暈けることのないぱっきりとした漆黒の軍服は、威圧感を放っており、美間違えようもない、白い髪がよりいっそう目を引いて、歩みだしていた火津彌の足は前を見なかった事で縺れて、刹那、その場に躓いたのだった。)「……わ、っと……と。あ、あぁっ!?」(思わず片手を前に出し、べちゃりと地面に滑り込む事だけは免れたものの、その瞬間に右足に履いていた下駄の鼻緒がぶちりと切れた。ゆるゆると立ち上がり、恐る恐るあなたのほうを見る。――やっぱり、見られた……よな。)   (8/18 01:31:00)


ルーズ/透紙炉 > 「ん……あれは…………っ!?」白鬼、なんて、大層な名を聴いて反応してしまうのはなんとも気恥しいが、声の主が上官であるなら話は別だ。祭りの喧騒のせいで反応が遅れてしまい、彼が惨事を起こす前に止めることは叶わなかったが。「お怪我はございませんか?火津彌少将閣下」彼の下に駆け寄って片膝を着くと、辞を低くし、神妙な面持ちで尋ねる。面識は殆どないが、咲夜中将の部下という立場もあり、こちらは向こうのことを知っているような状態だ。というか、本来ここら辺にふらふらしているのは不自然な人なのだが、彼女に意見を言う権利はあまりない。   (8/18 11:37:29)
ルーズ/透紙炉 > 「あら、鼻緒が切れてしまわれたのですね」と、彼の足元の状況に気がつき、新しい履き物を探すように辺りの店を見回した。祭りなんだから、下駄を売っている屋台も、1つくらいあるだろう。しかし、改めて見ると、自分の記憶の朧気さに苦笑を漏らす。幼い頃の思い出など、机に齧り付いて、両親のご機嫌取りと、他の子供を蹴落とすための努力しかしていなかった。姉と兄は優秀で、生まれついての天才ではなかった私は、必死になってその差を埋めようとしていた。あの祭りも、どうして抜け出せたのか覚えていない。きっと、私はその程度の人間なのだろう。   (8/18 11:37:32)


マリア/火津彌 > (自分を見るなりこちらに駆け寄り傅く彼女のその姿は、まさしく軍人以外の何者でもなかった。自分は王国から帰ったばかりで病み上がりでもあるため本宮から仕事をする予定なのだが、成る程宵宮では彼女も取り仕切りに一役買っていてくれたのか、と、こんな風に遊んでいる自分からすれば労いの気持ちが湧いてくる。)「……あ、あぁ。透紙炉中佐。……えらいかっこ悪い所を見られてもうたな。ははは…。」(徐に立ち上がり、両手を叩いて砂を落とすとなんとも罰が悪そうに、不器用に火津彌はあなたに笑いかけた。)「少将閣下やなんて、今日はそないに堅苦しい呼び方をせんでもええ。お前、いつから仕事に入っとるんや?今夜の挨拶は中将がしているようやし、祝詞奏上も終わったのなら哨戒は程々に切り上げて祭りを見て回ったらええ。」(ずれた狐面を片手で直しながら、ぶっきらぼうな口調ではあったがそう口にした。)「とりあえず私は下駄をどうにかせんとあかんな…。透紙炉、途中で貸衣装屋か何か無かったか?」   (9/2 23:09:38)