この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

ディラン&由良

二人の温度差

シロー/ディラン > (騎士修道会・礼拝堂。太陽が最も高い位置に登るであろう時間帯の事、つまり正午前の事である。騎士団内で月一で行われる礼拝に参加する運びとなっていたディランは、少し汚れた作業服のまま遠くの修道長の言葉を聞いていた。騎士団を差し置いて座るのも何だか、という遠慮から最後列の席に座ったは良いものの自分と同じく騎士団制服ではない女性が一つ席を挟んで隣に座っており、見覚えは無いし整備士でも無いことから一体誰なのか気になっていた。天窓から見える太陽の陽射しが眩しくて瞳を背けると、ちらりと横目で視線をやった。)   (8/17 21:16:38)


マリア/由良 > (これは、由良が尊華帝国へ発つ数日前の話である。月一回からあるという騎士団強制参加の礼拝には、こんな身分であれば出席を見送っても咎められない気もする。それでも珍しく出席をしたのには、帝国に行けば当分は礼拝に出る機会など無いと思った…ようは風の吹き回しみたいなものである。魔術師として太陽信仰を有さないものの、王国に住んでいればその文化の根強さから太陽の恩恵を知らず知らずのうちに受ける事になる。例えば、この天窓から降り注ぐ暖かい陽射しなど。)「──くしゅんっ。」(外は炎天下だが、礼拝堂の中は石造りの柱などのおかげかいくらか涼しく感じられる。そこに陽射しを浴びて、温度差からくしゃみをしてしまった。不幸にも修道長が息継ぎをした一瞬の静寂の間の事であった。軽く握った手で鼻の頭を隠し、『私じゃありません』なんて顔つきで由良は背筋を伸ばした。キョロキョロと泳ぐ目が、同じ列に居る男性と合ってしまったけれど。)「……」(すん、と鼻を鳴らして前へと向き直る。首の動きに合わせて黒い髪がさら、と揺れた。)   (8/17 21:40:15)


シロー/ディラン > ──小さなくしゃみが響いたのはその瞬間であった。丁度横目で視線を向けていたから一瞬だけ目が合った気がした。⋯不躾だと思われただろうか。逃げるように視線を前に向けると、何事も無かったかのように修道長の言葉は続く。⋯髪質は違えど自分と同じ黒髪、そして騎士団服ではない、顔も名も知らない女性だったが幾つかの共通点の為に興味は深まる。しかし、これが「臆病」と呼ばれる原因なのかもしれないが礼拝の途中で声を掛けるのも、という気持ちも勿論あり、暫くの間行動を起こせずに黙ってから、腰を僅かに浮かせて貴女側に少し近寄ると、上体を斜めに曲げて、小声で話しかけてみた。もうすぐ礼拝も終わるし、良いだろう。)『⋯⋯大丈夫ですか?⋯もし調子とか悪かったら出た方が⋯⋯。』(騎士団制服は着ていないし、きっとその位では何も言われないだろう、と思っての事だった。)   (8/17 22:04:03)


マリア/由良 > (隣にいた大柄な男性が話しかけて来た事で、一瞬ぎょっと目を見張った。第一印象としては……空気の読めないやつ。心配してくれているのだから、どーも、とか何とか、返せばよいものを、『何のこと?』と言った調子であなたを一瞥するに留め、礼拝が終わるのを確認すれば長椅子からさっさと腰を上げ、その場を離れようとした。しかし、あなたと反対側の列は礼拝堂を出ようとする人達で軽い列になっており、由良はふぅと鼻息を漏らして列が終わるのを待たずにあなたのいる方へ振り返る。)「どいてよ。」(軽く握った拳で顔を隠しながら、鼻声でそう呟いた。早く礼拝堂を出たい理由。水っぱなを啜るわけにもいかないし、かと言って、ポケットに入れていた白いレースの女性らしいハンカチを堂々と出すのが、なんだか嫌だったのだ。洟が垂れてしまわないように軽く上を向くと、陽射しが目に入り、うっと目を瞑った。)   (8/17 22:19:19)


シロー/ディラン > 「⋯⋯⋯⋯、⋯。」((聞こえていないはずが無い。一瞬瞳が合ったものの、無視された事に正直かなり傷付いた様子で黙りこみ、それ以上言葉を発することなく静かに傾けていた体を元の位置に戻した。──ああ⋯⋯。心の中で酷く落胆したような、滅入った声を上げると肩を落とす。そりゃあ、大事な礼拝の途中に話し掛けられたら嫌な筈だ。邪魔をしてしまったに違いない、少し背筋を曲げると落ち込んだ雰囲気を漂わせていた。礼拝が終わると貴女に一言謝ろうと視線を向けたものの、既に貴女は此方に目もくれず立ち上がっており、遅れて自分も立ち上がろうとしたのが運の尽き。あちら側が込み合っていたらしくこちらに向き直った貴女の目が合って、反射的に口を開きかけた。⋯⋯が、そのまま。)「っあすいません、⋯⋯」((萎縮してしまって、急ぎ早歩きで椅子の列から外側へと出た。⋯⋯ものの、何だかそのまま立ち去るのは嫌で、列の外側で一旦立ち止まると、此方に来た貴女に思い切って声を掛けた。)「っあの、⋯⋯さっきはすいませんでした。邪魔しちゃって。」((頭を下げたりする事は無かったが、申し訳なさそうな表情と共に。   (8/17 22:37:57)


マリア/由良 > (あなたがあっさり引き下がったので、急いで礼拝堂の外に出ようとする。洟が垂れそうで、もはや自分のぶっきらぼうな言葉遣いがあなたを傷つけているかもしれない事など構う余裕もなかった。だが、声をかけられてまた、引き止められる。ああもう、なんなの!)「…………」(耐えきれず、ずっ、と音を立てて洟を啜った。馬鹿馬鹿しい羞恥心からハンカチを出さなかったけれど、音を立てて洟を啜ることの方がよっぽど恥ずかしいものに決まってる。いくら由良がガサツでも、否、だからこそ。)「……もう!」(恥ずかしくて、顔から火が出そうだった。そのまま走り出してしまいたかった。だけど、〝由良〟は、そんなおしとやかな人間じゃないんだ。がさつで、何にも気にしない。みんなそう思ってる、……今更。)(ポケットからハンカチを取り出し、あなたの目の前でビーッと思い切り洟を擤んでやった。気にするもんか、男になんと思われようが、関係のないことなんだから。)   (9/18 00:32:38)
マリア/由良 > 「……っはー……。はなみずが止まんなかったんだよ。ハンカチ持ってんの忘れてたし、喋れなかったし。そーゆこと、もういい?」(赤くなった鼻先を、わざと雄々しく手の甲で擦ってみせた。自分の中にある弱い羞恥心や、コンプレックスを無理やり封じ込めて、目の前でぐちゃぐちゃにしてやるみたいに。)「礼拝は終わってたし別に邪魔とかされてない。あー、心配してくれてたんだっけ。どーも。見ての通りなんともないよ、頑丈なんでね。ちょっと気温差にやられただけ。」(腰に手を当てて一息にそう言い切ると、ハンカチをぐちゃぐちゃと無造作にポケットにしまいこんで、あなたを追い越した。)「季節の変わり目だし、君も気をつけて。太陽の名の下に。」(長い後ろ髪を最後に残して、礼拝堂を去ってゆく。なんだかその揺らぎだけが、聖フィニクス騎士団の由良という人物像の中で妙に、アンバランスだった。)〆   (9/18 00:32:52)