この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

珠代

あとの祭り

雛/珠代 > 「どうしたの。……まそほちゃん?ねえ!そこにいるの?まそほちゃん!」((迂闊だった。掬ったと思った金魚がポイを破って水に戻っていくように、いなくなるのは一瞬のことだった。消灯後の暗闇にようやく目が慣れた頃には尾びれの影すら見当たらない。目の前にいたイモータルを取り逃がした罪は大きい。私の甘さがこの状況を招いてしまった。こうなってしまっては闇雲に探すより、一度本部に帰還して情報を共有すべきだ。そう思うのに、人波をかき分けて走る足は止まらなかった。だってあの子、本当は何か、言いかけていたのに。息を切らして立ち止まる。ねえ、明日本宮よ。まそほちゃんも来てね。きっとよ。最早届いているのかも分からないけれど、声を張り上げてみた。どうしても言わずにはいられなかった。当然返事はなかった。ただ私の声が夜空に吸い込まれて、不発に終わった花火のように消えただけだった。))   (8/16 22:16:20)
雛/珠代 > ((重い足を引きずって本部に着いてみれば、祭りの夜だったというのに妙に兵が多く慌ただしかった。どうやら千景祭に行ったまま戻らず行方不明になる者が数名出ているとの情報があったらしい。そこに私の報告が加わったため、事態は極めて深刻であるとの判断が下り緊急対策本部が立ち上げられた。珠希と過ごすあの子のはしゃいだ声が、水中で聞く音のようにぼやけて遠ざかるような気がした。件のイモータルが行方不明に関わっている確証はまだないがその可能性が極めて高いだろうという見識を聞かされて、反論はできなかった。宵宮の闇に紛れて何か良くないものが跋扈しているのは確かだった。)) 〆【あとの祭り】   (8/16 22:16:36)