この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

竜灯&瑞希

夏詰びん

シロー/竜灯 > 「⋯うーん、おかしいなあ。」(暮れ頃の帝都榮郷。千景祭・宵宮。年にたった一度、待ちに待った今日こそが千景祭。と気合いに気合いを入れた竜灯だったが、腑に落ちない、としか表せられない妙な違和感を感じていた。王国との戦争も終わり、宵宮に来る王国人の姿も多く見られるようになった筈だというのに、今年の宵宮は何処か変な気がする。一旦この、およそ縁日で売られているもの全てを詰め込んだかのような屋台から外に出て、すぐ横の木箱に座って休憩。膝に頬杖をつくようにして闊歩する群衆をぼうっと瞳に映し。足音とどよめきに意識を傾けていた。)「うーん⋯⋯。」((ねじり鉢巻に暗緑の法被姿の男、竜灯は何度目かも分からない悩ましい声を上げた。この感情を口にすればたった一言で済む、のだが、それは違和感でも何でもなく、ただ漠然とした「不満」でしかない。───〝なんだか詰まらない。〟宵宮の熱気はこんなものだっただろうか。⋯⋯考えても仕方がない。溜息を再度吐くと、椅子に座ったままうん、と伸びをして。ぱち、ぱちと瞬きしてから、普段よりも幾分か元気の無い声で呼び込んだ。)「さあさ、寄っとうせ!うちにこれば何でも揃うぜよ!」   (8/15 13:38:04)


愁空/瑞希 > (花売りの休日は至ってシンプルで、自室にこもって勉強をするか、ウェンディアにいる両親に手紙を書くか、花の取引先を増やすために奮闘するか。以上三つのうちどれかを毎度選択するのだが、本日は例外。祭りに参加しに来たのだ。宵宮は1日限りの祭りではなく、有難いことに数日に渡って開催されるらしい。ならば、1日の半分くらいは遊んでもいいだろう──と、やってきたのが少し前。右手に林檎飴。左手に綿菓子。頭には通りすがりのおじ様から頂いた──押しつけられたともいうが──恐らく何かの景品だった造花の髪飾り。例えば、彼女が物語の登場人物で、たった今、彼女にスポットライトが当たりいざ登場、というシーンだとしたら、恐らく効果音はこうである。“ててーん”。私服をそのままに、花籠は腰のもののみ。ほか、携帯しているお祭りグッズの入手方法はこうである。「ヨォ花屋の姉ちゃん!これ、この前のお礼だよ!」「あら、お花屋さん。今日はお休み?いいわねえ、あ、飴ちゃん食べる?」。尊華の人情を感じつつも、困惑を表情に浮かべたまま祭り通りを歩く。   (8/15 13:50:29)
愁空/瑞希 > 傍目から見ればはしゃいだ少女、その実両手が塞って困っている少女。取り敢えずはと林檎飴を齧りながら、不意に声を耳にする。「なんでも揃う」。そのワードに釣られ、てとてとと不自由そうに歩いて向かい。相対しては発した言葉とは、それはそれは分かり易さの極みの一言。)──すみません。お祭りの売り物に囲まれて困っています。なにか…入れ物とか、ありますか。   (8/15 13:50:42)


シロー/竜灯 > (呼び込みの声に釣られてやってきたのは和服の女性。流石に木箱に座って接客するのもと、重い腰を上げて立ち上がる。が⋯⋯⋯⋯⋯⋯これ以上買うのか?そんな疑問が浮かぶのも無理はないであろう。覚束無い足取りで近づいてくる女性の両手はりんご飴と綿あめで塞がっており、これでもかと宵宮を楽しんでいるように見えたから。お陰で声を掛けられずにおり貴女から言葉を発してくれて助かった。──これまた予想外過ぎる言葉にぽかん、としてから吹き出すのに、数秒の時間を要した。)   (8/15 14:10:05)
シロー/竜灯 > 「⋯⋯っふ、ははっ!おまん、自分で買うたとばかり思っちょったがなるほど、断れんタイプか。納得したぜよ。」((なんだ、両手に飴菓子とは中々本気で楽しんでいる、と思っていたけれど。口ぶりからするに自分の意思で買ったのではないと予想した。さしずめ、呼び込みの声と売り文句を断れずにあれよあれよと掴まされたのだろう。可哀想とは思わない、それもまた醍醐味だと思うから。一頻り肩を揺らすと、「ちょいと待っちょれ。」と屋台の中へ消えていく。暫くして戻って来た時には竜灯の手に手提げの紙袋が握られていた。)「ほい、取り敢えず疲れちょるやろ、座っとうせ。」((入れれるものは入れていいよ、と言わんばかりに紙袋を広げて見せると、先程まで座っていた木箱を顎で指し示した。   (8/15 14:10:07)


愁空/瑞希 > や、…その。断れ……なかった、ですね。ええ。(困っていたから、単刀直入に声を掛けただけなのに。あまりに彼がきゃらりきゃらりと笑うものだから、ほんの一瞬目を見開いて、くるりと丸い瞳で貴方を見据えて。断れないたち、と此処で言って仕舞えば、更に何やらを手に持たされるかわからない。と、考えたのは砂時計がほんの少し下る間。思考を切り替え、くるり、と頭の中の砂時計を上下ひっくり返す。途中まで出ていた言葉を素直に言い終え、彼に広げて貰った手提げの中に綿飴をずぼ、っと突っ込む。真顔で。“ええいこのふわふわめ。口の中に入れてしまえばすぐ消える癖、何故棒に纏わり付いた状態だとこんなに膨れているのだい”。内心の恨み言を一つ、紙袋の中へ綿菓子と共に詰め込んでは、顎で示された木箱に視線を追わせる。)   (8/15 14:23:05)
愁空/瑞希 > 親切な方、ありがとうございます。…では、お言葉に甘えて。(と、綿菓子を詰め入れた紙袋を腕に下げ、空いた片腕で服の裾を正しながらちょこんと座って。ふう、と一息吐き、自身の口の中に広がる飴の甘い吐息を祭りの熱気に馴染ませて。)助かりました。傍目に見れば、“あああの花屋、すごくはしゃいでいるのだな”と思われる状態でしたから。   (8/15 14:23:18)


シロー/竜灯 > 「ええぜよええぜよ。」((どちらにしろ、少しばかり退屈していたのは事実。折角の宵宮、詰まらない訳が無いし、誰より楽しみにしていたと自負している筈なのに。⋯⋯だめだ、これ以上考えるのはやめよう。前も言った気はするが、楽しい気持ち以外はここ、宵宮では不純物でしかないのだから。感情をおくびにも出さず、ちょこんと木箱に座る貴女を横目に屋台の支柱に背中を預け凭れると、右足を左足に交差させて体重を左足に集中させ。だらりと斜めに楽な姿勢を取って、腕を組んだ。)「おまん、花屋がか。なるほど、素敵な職業をしとるの。皆が皆おまんと同じような人ならきっと、戦争どころか喧嘩も起きんのじゃろうなあ。」((なるほど。と納得してしまった。花屋か。言われてみれば「それらしい」。漸くそこで腰の花籠に気付いたようで視線を貴女の顔から腰あたりに下げ。数回頷き、へっ、と肺の中の空気を吐き出しながら笑うと組んだ腕を解き。腰に手を当てて困ったように首を振った。)「⋯⋯ま!もしそうだったら俺らは暮らしに困ってしまうからの、良いとも言えんなあ。」   (8/15 14:36:34)


愁空/瑞希 > ? あ、…ええ、花屋です。『花屋瑞希』と。尊華の方は花を愛してくださいますから、成り立つ商売です。(言葉にたった1滴滲む、澱んだ感情。僅かにそれを感じ取るも、違和感にさえ満たない小さな何かですらなく。そういえば。道行く人々とすれ違う度、人々の言葉には同じく一滴、澱んだ感情が垂れていた。一つ一つは取ろうにも取れぬ何か。しかし積もれば違和感ともなる。──何が、そんなに? 人々の心の内、1滴ずつ垂らされる“何か”に心がそよぐ。が、今は人と話している。今この時の感情、この言葉の往来を楽しまずとして瑞希とはいえない。もう一度、頭の中の砂時計をひっくり返す。)…平和になったら、よりよく花も売れます。けれど、今の世だからこそ花を求める方もいる。私はあなた達の守ってくださる今だって、充分に。……楽しんでいますよ。あ、そういえばお代。幾らですか?   (8/15 14:55:46)
愁空/瑞希 > (彼の言葉の節、そしてその無駄のない体躯。そこから“軍の方”と推察し、穏やかに、密やかに感謝を伝える。独特の彼の口調はなぜか人を安心させる色をしていて、初対面、しかも花屋休業中であるに関わらず、親しげに、楽しげに会話を弾ませる。と、不意にそこで代金のことを思い出した。あまりに彼の言葉が軽やかで、明るくて、忘れかけた。しまったというように口を開け、慌てて腰の花籠の隣、巾着を膝の上に寄せ。遅くなってごめんなさい、とばかりに眉根を下げ、林檎飴を口に咥えながら両手を使って巾着の紐をするすると解いて。)   (8/15 14:55:57)


シロー/竜灯 > (花屋、瑞希。素敵な名だ。たおやかな貴女にはぴったりと思えた。)「⋯⋯こりゃまっこと、参ったぜ。えいよ、お代は要らんき。」((上手な人ぜ、りんご飴を器用に口に咥える貴女を見て、軽く手を振る事で大丈夫と伝え。そうだ、と言わんばかりに屋台の中へと体を翻し。次に出て来た時には手に何かを持っていた。そのまま貴女の前へとやってくるとしゃがみこみ、ちょうど貴女の足元辺りにそれを置いた。)「優しゅうて美人なおまんにサービスぜ。俺は竜灯、いつか必ず名を馳せる男ぜよ。そん時はおまんにこじゃんと⋯⋯そう、花束でも貰おうかの。瑞希さんに。」((いつかこの俺が伝説になった時、何かを贈られるのなら。その時は瑞希さんに花束を貰おう。なんて想像しつつ、ぱちんとウィンクを飛ばして貴女を下から見上げた。───結局答えにはたどり着けぬままであった、なぜこの女性が〝両手に飴〟なんて事になっていた理由。何一つ気付かぬままに立ち上がると、ひらり、手を振って竜灯は屋台の中へと戻って行った。)   (8/15 15:28:23)
シロー/竜灯 > 「とことん楽しんどうせ、楽しめる時に楽しんどかんと、後の祭りぜよ。」((丁度、ぽつ、ぽつと灯り始めた提灯と篝火が、貴女の足下の瓶ラムネに差し掛かり。宵宮の熱気と風情を閉じ込めて乱反射した。   (8/15 15:28:28)