この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

真朱

宵宮金魚姫-七

マリア/真朱 > 【8/8 23:15】(ここに来るのも七回目になるだろうか。鱗だらけの手を見つめ、階段の下の暗闇に目を落とした。提灯の灯りが消えるとき、いつも泣きそうな気持ちになるのはどうしてだろう。ぐしゃぐしゃにして、台無しにしてしまいたくなる。灯りが消えたらお祭りが終わっちゃうじゃない。そこにいる人達が何をしているのか一寸たりとも想像が出来なくて、置いていかれたような、取り残されたような心持ちになる。──あぁ、わたしは。あの夏に取り残されて何年経ったか。)「……う、あぁ……」(丸い目からぽろぽろと涙が零れた。腕の鱗を逆さに撫でて、それらを掻き毟ろうとした。けれど、ぞぞぞと松かさのように気味悪く広がって痛いだけで、真朱は人には戻れやしなかった。)「…きんぎょ…や…きんぎょ……」(明日も宵宮に行けるかな?そろそろ、無理かもしれないなぁ……。違和感に気づいてる人達がいっぱいいる。実行委員達も、家族や知り合いに言われているはずだ。「今日は8月️■日だ」って。そう思いながら、そんなことは解っていながらも、それでも金魚は、この鉢から出られない。この濁った水から、出ることは出来ない。)〆【宵宮金魚姫-七】   (8/15 00:33:24)