この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

リシリア&瑞希

夢路に芽吹き

リプカ/リシリア > ───夕闇に照らされ始めたその廷内。明るい雰囲気が支配するその場は老若男女様々な和装の人間で入り乱れていた。勿論和装以外の者も多数居るが、それを埋め尽くす程に多いのは帝國故の象徴だろうか。見目眩いその和服に身を包むのは主に女性が多く、男はあまり派手な物は着用していない様だ。 暗くなりはじめ提灯が付き始めたその時間、一人の少女が其処へと辿り着いた── 「チッ、こんな所まで逃げてくるなんて……、予想外だったわ。さっさとゴミクズの様に捻り潰されれば良かったのに。」 辺りを見回すも目的の人物は見つからず、成程。あの男が逃げたのも頷ける。木を隠すのなら森の中。人を隠すのなら……という考えに至ると舌打ちが溢れた。   (8/14 15:53:58)
リプカ/リシリア > 思わずぼやいた言葉と共に漏れる殺気は周囲の一般人達でも剣呑な空気が分かる程だろう。人が多い中自分の周囲だけはぽかりと空間が空いてしまうのだから。とは言えそれは好都合。周囲の刀が届く範囲に男が入ってしまえば自動的に切り捨ててしまうだろうから。 無差別に男を斬り殺す事に躊躇は欠片も無いが、然し今はまずい。少女を主に扱う奴隷商を襲撃し、あと一歩という所まで追い詰めて逃したばかりで、まだ目的の男を見つけられて居ない。この状況で刃傷沙汰を起こせば間違いなく警邏の者達が現れ、斬り殺してる間に男は逃げ、自分も逃げなければ行けなくなるだろう。あの男を殺さなければ奴隷商はまた再開され、攫われる少女が出てきてしまう。    (8/14 15:54:01)
リプカ/リシリア > 「それは、絶対に許せない。許しちゃ行けないのよ……。  ッ居た、あの男! 」 足を止めずに人の波をモーゼの如く開きながら思考に意識が落ちかけた瞬間、見つけた。 少し禿げかけた頭に、厭らしい笑みを浮かべるその顔。気色悪い事に汗ばんでおり、明らかに周囲を警戒しながら急いでいる風で。周囲には護衛らしき者が二人、警戒しながら奴隷商を急かしていた。  懐から小さなナイフを取り出すと、右手にありったけの力と殺意を込め、握り込んだ。 周囲の人間など一切気にせず、目にも入らない。 強く握った、そのナイフを、全力で投擲した。 結果は言うまでもなく、その現場は騒然となり警備の者が呼ばれた様だ。 その場から消えるように足早に歩き去ると、人通りが規制されているのか、人が少なくなっている通りへと出て、息をついた。 逃した時のリスクもそうだが、周囲に男が居る空間に耐えるのも、限界だった。 真っ赤に充血した目から流れる血を拭いながら、息を整える。男を殺し尽くすという衝動を必死に抑えながら、周囲の警戒など全く出来ていない。荒い息遣いだけがその場に流れていた。   (8/14 15:54:05)


愁空/瑞希 > (祭り。それは人々の喜楽集まる場所。そして財布の紐が浮かれた熱に溶かされる場所。太陽の熱気、人々の熱狂、それらをかいくぐって花を売り歩き、その成果といえば、今現在瑞希が薄ら笑いを浮かべて視線を落とす巾着の中身である。まるまると太った巾着は重みが宿り、底に添えた左手にちょこんとのしかかる。普段の数倍には膨らんだそれは、瑞希の花がよく売れた証であった。――が、この花売りというのは人が好き。そして花を売る事それが好き。ともなれば、花売り第二部に出る選択をすること、その準備の為、祭りの主たる通りに近く、しかし準備を邪魔されない一本逸れた道でよいせよいせと作業をしていることも道理だった。巾着を腰に下げ、さてと花売り準備を始める。花に言葉を掛け、魔術を施しては一息。巾着に一瞥。笑顔。視線を花籠に戻しては花の状態を見、ちらと巾着を見ては笑顔。決して彼女自体が金にがめついという訳ではないが、流石の瑞希でもこの売上は自分史上初らしく、何度も見てはうふふ、と一人ご満悦で。   (8/14 16:25:35)
愁空/瑞希 > ――ああ。祭り。なんてすばらしい日。花も良く売れる、人の笑顔もよく見られる。人々の言葉は花火色で、なんとも和やかで。そして売り上げも過去最高。こんな気分のまま、午後も花売りをできるなんて。ああ。本当に。なんて素晴らしい日。)………はえ?(と。素っ頓狂な声が出たのは唐突に。遠くから近付く足音が、自身の側で止まる。と言っても、曲がり角を一つ隔てた向こう側。しかしその呼吸は酷く荒く、ただ祭りの喧騒から逃れてきた、とは言い難い。もし助けが必要なのであれば手を差し伸べるべきだと考え、曲がり角の向こう側へとひょこり、顔を出す。そこに在ったのは紅い少女の姿。今まで帝國で目にした人物たちの髪色はどれも美しく、鮮やかだった。しかし少女の緋色は一際鮮やかで。まるで真白の雪に鮮血を滴らせたかのような――いや。鮮血を、滴らせている。)   (8/14 16:25:45)
愁空/瑞希 > あ、の……! 大丈夫ですか。(瞳から流れる血液を見て、少しばかり慌てた様子でぱたぱたと駆け寄った。そっと手拭いを差し出し、「使いますか」と加えて声を掛ける。尋常ではない。恐らく、というよりは、確実に。なにか日常と異なる事が彼女の身に降りかかったのだろう。自身の花売りとしての午後は休業。彼女を助けるという新たな午後を手に、その一歩として差し出した手拭いを受け取って貰えることを期待していた。)   (8/14 16:25:51)


リプカ/リシリア > (油断しすぎて居た。 今の状況を表すなら、その一言に尽きる。相手に殺気が無かったからなのも在るだろうが、目前に迫るまで人に気づけ無いなどどうかしていた。このまま誰にも見られず誰とも会わず王国に帰るつもりだったのに、これではパーだ。これが男なら……、と思わない事も無いが、そもそも男であれば近づいてきた瞬間に分かるし、というか男ならそんな事を考える前に声を掛けて来た時点で斬り捨ててしまうだろう。だからこの思考が意味のないことだ。分かっていても考えてしまう。溜息をつきながら、袖で大雑把に目を拭い正面を見据える。此方を心配そうに見ながらハンカチを差し出しているのはまだあどけない少女だった。 見た目は随分若く見える。その和装を自然に着ている様から、外様ではなく帝國の住民なのだろうと見るだけでなんとなく分かった。 だが、此処にこの子が居ては間違いなく巻き込まれる。先程男を殺した騒ぎはまだ収まっておらず、明らかにこの周囲を警戒している人間が見回りに来るのは必然だからだ。 然し、どう見ても一言で別れる様なタイプには見えないし、かといって何も言わず置き去りにするのも   (8/14 16:42:32)
リプカ/リシリア > この心優しい少女に対してするべき事では無いのだろう。 故に。この全てをひっくるめた溜息である。 少し話してから別れよう。何か来たら殺せば良い。 それだけの事。 そう考え、口を開く。 「大丈夫。と言っても信じないでしょう? 普通は避ける物よ。こういう厄介事の種は……、ね。」 苦笑しながら相手のハンカチを押し返し、断る。流石に涙なら兎も角血で汚してしまえばその手ぬぐいは簡単な洗濯で汚れが落ちる事は無いだろう。まぁ、魔法とかでならなんとかなるのかもしれないが。案外水属性で分離する事など出来るのかもしれない。呪文次第では。 とは言え、そんな例は稀だろう。少女の気遣いは嬉しいが、こんな物は袖で充分。 衣服に対する頓着など無いし、そもそも、もう、その様な存在でも無いのだから。 「どうして声を掛けてきたのかしら。 貴女は何?」 そう問いかけた理由は、特に無かった。明らかに敵であろうとは思えないし、この少女には邪気が無さすぎる。 もしこれで追手なのであれば、自分の節穴を呪いながら死ぬしか無いのだろう。 こんな状況で声を掛けてくる変わった少女。今の彼女への印象はそんな物だった。   (8/14 16:42:34)


愁空/瑞希 > 信じません。でも――大丈夫、なのでしょう。貴方の声には怯えがありませんから。(溜息の後、聞こえた声の色に驚く。軍の方。同業人。それから一般の市民の方々。様々な人間の声を聴いてきたが、血を纏っていながらも此処まで落ち着いた声色を出した人物は未だかつて出会ったことはなく、そして、声の”匂い”そのものにも僅かな違和感を感じる。今まで話してきた人間とは違う。刃のように鋭い言の葉の一粒、しかしながらそれを形の合わぬ鞘に無理くり押し込めて、私を傷つけないようにしているような――。何か一つ、些細なきっかけでもあれば、鞘はすぐに抜け落ちてその刃を振るうことなのだろう。思考の中、彼女の言葉の色を思い浮かべるに、彼女の色――深紅が、よく似合っていた。ウェンディアの人間か、女性にしては身長が高く、脚もすらりと伸びている。その容姿の美しさを瞳に収めながらも、押し返されてしまった手拭いを大人しく胸元に仕舞いなおす。押し付ける善意はただ厚かましく、迷惑なだけ。それを学んでいたからこそ素直に引き下がり、そして彼女の言葉から感じる自信にも似た感情を受け取る。   (8/14 17:09:47)
愁空/瑞希 > 心配ではあるが、たぶん。彼女の傍に居すぎると足を引っ張るばかりになってしまうのだろう。きっと彼女は魔術なんか頼りにしなくても、独りきりのその身でも、解決できてしまうのかもしれない。うん。少し話してから別れよう。纏めた考えを脳裏に秘め、彼女の言葉に解りやすい返答を返す為に、「失礼」と一つ言葉を残し、曲がり角に置き去りにした商売道具を取って彼女の目の前に戻る。)名前は瑞希。商売は花売り。『花屋瑞希』に御座います。……というのが商売口上で、お昼までの売り上げを数えたり……夜の祭りに備えて、準備をしていたんです。そしたら足音と、荒い息が聞こえたから。きっと怖い目にあったんだとおもって。……花は癒しを届けるもの、花売りも同じく。それなら、目の前に血を流している女性を見たら、助けたいと思ったんです。きっと、必要ないのでしょうけど。   (8/14 17:10:00)
愁空/瑞希 > (言葉の紡ぎ方は柔らかく、言葉の音色は穏やかで。必要ないでしょうけど、の言葉と同時、胸元に仕舞った手拭いに視線を落とす。断られた手拭いは、きっと私そのもの。助けはいらない。剣山のような彼女と裏に、野原の隅、風間に揺蕩う花のような少女。――あの人は、張り詰めた糸みたい。強いのに危うすぎる。だからこそ、惹かれるものがあったのか。声を掛けたのは本当になんとなく。助けなきゃと思ったのは、もしかしたら惹かれたから。こんな状況なのに、見惚れてしまう程不思議な魔力を秘めた少女。今の彼女に対しては、そう思った。   (8/14 17:10:06)



リプカ/リシリア > 怯え、ね。そんな感情はとっくに麻痺していたわ……昔色々あってね。 今は怯えていた己を恥じ、全てに報復をしている所なの。 貴女、最初から分かっていたでしょう? 私が、どういう存在なのか。 人の機微に、色に敏感そうだもの。 (少々呆れを滲ませた声色でそう云うと、苦笑を浮かばせた。 己の言葉に棘がある事は重々承知しているし、ソレ故に少女を良く怯えさせる事も理解している。 然し、目の前の少女はどういう事かそういう子達とは少し違う様に見えた。 此方に対して困惑と戸惑い、そして僅かな憧れをも見せる少女には戸惑いを覚えてしまう。少女は明らかに此方が只人では無い事を分かっている。その上でこうして関わってくる等、ニンゲンとしてはあり得ない行為だ。世間知らずという線も考えられるが、少女は花売りだと言う。仮にも商売を任されている身の上でそれほど世間知らずというのも可笑しな話だろう。 ひとまず、押し返したキレイな布が汚れずに済んだことにほっとした。押し付けがましい偽善を振りまく存在では無い様だ。好ましい。実に好ましい。 目の前の少女は今までに会ったニンゲンの中でも一際変わっていて、不思議な子だった。   (11/20 23:10:15)
リプカ/リシリア > 「良い名前ね。 その年で花屋……それなりに苦労しているのかしら。」 どういう、心境の変化だろうか。相手も不思議だろう。 先程までの冷たい態度、すぐに切り離そうとする話し方から、少し親しげのある話し方へと変わっている事が、自分の出している言葉ですら自覚出来た。 おかしい。少し変だ。これはおかしい。 たかが道端で、少し心に来ていたところに、優しくされただけで、なんだこれは。これではまるで目の前の少女よりも幼い精神では無いか。 認められない。断じて信じられない。然し、それを自覚すればする程、真っ白すぎる自身の肌が少し紅潮してしまうのが分かってしまう。それを理解すればする程、更に赤く、紅く。 目の前の少女からすれば訳が分からないだろう。突然顔を赤くして悔しそうな顔で少女を見つめているのだから、引かれてしまっても可笑しくは無い。   (11/20 23:10:19)
リプカ/リシリア > 「………必要、無い、のかしら。」 嗚呼、駄目だ。思考が上手く出来ない。まとまらない。自分が何を口走っているかも定かにはならず、焦点も合わない。こんな事は初めてだ。化け物になる前ですらこんな風に取り乱したことなんて無い気がする。しっかりモノで誰からも頼られて、 なんて考えながら、やたらと長い横髪を耳に乗せて流してしまう。照れ隠しにしたその行為は、自身の真っ赤になった耳を晒すだけなのに。>瑞希様   (11/20 23:10:38)


愁空/瑞希 > あら。そんな事まで解ってしまうんですか? ……不思議なヒトなんですね。お綺麗な方。(確かに言い当てられ、肩を僅かに持ち上げる。ぴくり、と揺れる肩に合わせて、跳ねる二藍。同時、花の香りが舞う。錆びた鉄のような匂いと花の香り。寂れた路地で、交差する二つの香りは正しく異種交流を表していた。自分と彼女は、違う。根本的に、ナニカが。その何かに検討が付き、その何かを言葉に出来る今であれど、瑞希は彼女を"ヒト"と称した。バケモノ、だなんて言いたくはなかった。その言葉は、憐れむから言った訳でも、畏れるから口にしたわけでもない。ただ純粋に、そう思ったから。瑞希は"差別"を持たない。区別出来ないとも言うのかもしれない。それは愚かなことで、けれど、最も真っすぐ誰かに届く刃。彼女の武器。『全てに報復している』という言葉を聞いて尚、助けたいと願う心は変わらず瞳に宿る。――ふと、声の温度が変わる。雪解けと、春の野花の芽生えを感じるような温かさ。彼女の雪のような肌に、春の花の紅が宿る。開花と、春告げ。そんな事を予感させるような変化に暫し戸惑い、目を一度逸らし――   (11/20 23:45:22)
愁空/瑞希 > もう一度合わせる頃には、喜びにあふれた瞳を向けていた。誰よりも人の機微に、色に敏感だからこそ、小さな花の綻びを見逃す訳がなかったのだ。)良い名前でしょう。これは私の誇りなんです。……ええ、そうですね。苦労は、それなりに。けれど、喜びは相応に。今だってそう。他者との交わりは何にも代えがたいものですから。苦労なんて、すぱいす、すぱいす。(花は癒しを届けるもの、花売りも同じく。それなら、目の前に血を流している女性を見たら、どうしたって助けたかった。助けなんか必要なく、ないのかもしれない。そんな些細な期待に言葉が弾み、珍しくお茶目に返す。少し話して、別れる。その『少し』が僅かにでも伸びれば良いと、心の隅で願う。何処か悔しそうに自身を見据え、紅く染まった耳に髪を掛ける様子にくすりと笑う。ああ、でも、それを示してしまっては、この方は恥ずかしくなって、私の前から隠れてしまうかもしれない。笑顔を零し、小さな肩を揺らす度、ふわりと薫る花。その匂いが貴女に届いて、積雪が一層溶ければいいのに。)ああ、可愛らしい人。必要ない、のですか?   (11/20 23:45:28)
愁空/瑞希 > ――必要としてください。怯えが麻痺していても、痛いものは痛くて、疲れるときは、疲れると思うのです。花屋のお小言ですけれど……(受け取って頂けますか?というように、笑んだまま瞳を上に持ち上げる。ウェンディアの、すらりとした体躯。自然と視線は上に向き、上目遣いの様な風を見せる。少しばかりあざとく、わざとらしく、しかし年相応に可憐で、少女らしく。貴女を求めるような視線は、頼られることをおねだりしていた。)   (11/20 23:45:34)


リプカ/リシリア > 「それでも尚私をヒトと呼ぶのね。不思議だなんて、ふふ。貴女のほうが、よっぽど変わってるわよ、変な子ね。」 (頑なに己の事をヒトとして扱おうとする彼女に苦笑する。確かに自身は見た目だけなら充分ニンゲンを名乗れるし、騙し通す事も可能なレベルだろう。然し、それは外見だけの話であり、内面に目を向ければ其処には果ての見えない闇が広がっている。到底ヒトとして扱える訳もなく、決してその底をさらう事など出来はしない筈なのに、目の前の少女はそれを、たやすく、簡単に手を伸ばそうとしてくる。純粋、ともまた違う。この少女は何なのだろう。こんな風に思った事は今までに無かった。こんな風に、食料である筈のヒトに興味を持つなんて、考えもつかなかった事に困惑が収まらない。 )「ええ、ヒトを象る名前に相応しい、貴女に良く合った名前だわ。」 真っ直ぐに誇りを持って告げて来る相手に毒気が抜かれたのか、先程まで肩に入っていた力は抜け、自然にそう溢した。   (11/21 22:32:58)
リプカ/リシリア > 自然にそう溢れる事ことが自身にとっての異常である事に気付かずに、まっすぐにそう思っている自身に違和感を多少感じる程度だ。 此方を観察していた少女の顔は面白いほど分かりやすくて、嬉しそうにしている表情に少しだけ反骨心が湧く。 そうなれば負けず嫌いな己は少しだけ平静を取り戻し、相手の言葉に肩を竦め、その小言に少しだけ微笑んだ。)「優しい子なのね、本当に。 ……でも、ただ優しいだけじゃなくて少しだけ打算もあるのかしら。こんな純粋そうな顔の裏では何を考えているのかしら。……少しだけ、見たくなってしまうじゃない。」(その優しさには真実の感謝を向けた。そして、妖艶にくすりと笑みを落とせば、相手の顎に指先を這わせ、軽く持ち上げて問い掛けるように、囁いた。 溶けるような言の葉は相手の耳へじんわりと広がり、その脳髄を痺れさせる。試すような視線を向けながら、此方におねだりするような視線を向ける彼女を真っ直ぐに見つめ返した。   (11/21 22:33:00)
リプカ/リシリア > 餌としてではなく、違う見方で‘人間’を見る日が来るなんて、そんな事は考えもしなかった。 闇しか広がっていないこの世界に、少しだけ、微かに光が灯ったのを感じてしまう程に、目の前の少女は己にとって眩しい存在なのだと理解出来てしまう。 そんな事を考えているだなんて事は一切表情にも出さないが、それでも、自分がどういう感情を目の前の少女に覚えているかは、なんとなく、自覚してしまっていた。 だから、こんな事をしてしまうのだろう。己の感情に整理が付かないまま、目の前の少女はぐいぐい距離を詰めてくる。戦いや殺し合いでは焦ったりする事など皆無なのに、目の前のこんな只の花屋に翻弄される。自分自身が可笑しくて、でも、それはとても、とても、嫌とは思えなかった。)   (11/21 22:33:04)


愁空/瑞希 > 不思議……でしょう、か……。変、なのでしょうか……? まあ、確かに花売り――特に、自分の脚で歩き売るなんて、珍しいかもしれませんが。(ふむ、と考えて、ちらり、横の花籠に視線を振る。まるで相手を恐れる様子は、変わらず一切ない。名前を褒められては喜びを見せ、相手の言葉さえ素直に受け取って僅かに困惑し。何処までもヒトらしく、人間臭い。万華鏡のようにころころと表情を変え、感情の色を変える。可愛らしいおねだりは素直に受け取られることなく、相手の反骨心を煽ったらしい。視線のみが持ち上がっていたが、顎から上へ持ち上げられる。元々上目になっていた瞳の位置をするりと下ろし、何処までも紅い瞳を見据える。髪も、瞳も、肌も、何もかも紅い彼女。そんな彼女の言葉がふととろけて、脳髄に至る。脳の裏側まで染み、自身を絡めとるような言の葉。――なあに? これは。クリームのような、いや、もっと甘い。お砂糖――琥珀糖のような、いいえ、いいえ。それも違う――。脳みそで味わう言葉のひとひらに、惑わされる。)   (11/22 18:39:36)
愁空/瑞希 > (今まで感じた、食べてきた言葉とは違う。明らかに町の人達とは違う。これが、イモータルの――? くるり、くるりと。思考が回る。今までのどの言葉よりも甘美で、それでいて、中毒的で。あぶない。食べ過ぎてはあぶない。そう思っても視線を切ることは出来ず、絡み合う。は、は、と短く息が荒くなる。彼女の紅が、瑞希に伝う。気付けばその身体は熱を纏い、潤む瞳はまるで虜にでもなってしまったかのよう。はくはくと金魚のように口を開閉させ、注がれた毒に酔う。もっと、彼女の言葉が聞きたい。聴いていたい。痺れた脳は本能で口を開く。当然、思考の余裕など花弁一つ程だって残っていない。だからこそ、これより先に紡がれる言葉に嘘のひとひら、打算の鏡片もない。)……わたし、ただ、……貴女が知りたいだけ。たすけたかったの。でも、この一時、じゃないわ。……貴女の言葉、その奥底に眠る毒さえ、取り払ってしまいたい。……私は花、だから。……薬草にも、なれるかしら。   (11/22 18:39:42)
愁空/瑞希 > (今までのような敬語ではなく、ただ、言葉と言葉を乱雑に縫い合わせただけの文章。魔術師の素質を持つ人間として、あるまじき程に乱れた文章。自らを花とし、彼女の支えにこそなりたいと紡ぐ。傲慢。瑞希の奥底に眠る傲慢が頭をもたげる。人間としてのエゴ。薄汚さ。それを彼女の視線に吸い込まれたまま表に吐き出す。――「だから、此処でお別れ、さようなら、なんて、嫌だわ」。どうしてそう思うのかなんてわからない。けれど、想ってしまった。人間はどうしようもない。感情を持ち、それを武器としているのに、時に制御が付かないなんて。自らの言った事に気付き、ハッとする。)……や、私ったら、……何てこと……(それに気付き、慌てて取り繕うとする。しかしそれも無駄と先に悟り、恥ずかしそうに視線を逸らした。ただ、貴女が自分に失望していない事を願いながら。)   (11/22 18:39:49)


リプカ/リシリア > 「ええ。不思議で、変よ。 ……でも、嫌いじゃ無いわ。貴女みたいな人間は。」(此方の言葉に戸惑いと困惑を見せる少女に、思っている事を素直に伝えてしまうのはどうしてだろう。 こんな風に素直に、真っ直ぐに、何も裏の無い言葉を口にするなんていつ以来だろう。 もう、殆ど微かにしか覚えていない頃にしか、そんな事は無かった気がする──。 赤い紅い瞳に見つめられ、だんだんと蕩けた顔になっていく少女に嗜虐的な考えと興奮が過る。 この少女を自分の物にしたい。無垢で純粋で少しだけ大人びているこの女の子を、自身の手で弄び、優しく手入れし、靡かせ、甘やかして、骨抜きにして、大切にして、───。 そこまで考えた所で、苦笑と共に息が漏れる。何を考えているのだろう。この化け物の身の上で、人間にそのような恋慕を抱くなど、どうかしている。この少女と己の目的とを天秤にかけた時、必ず己は目的を取る。それはこの私の存在意義にして活動している意味なのだから。それとコレが交わる事は無く、己のしている事にこの少女を巻き込むなんて事は断じて認められない。 ポーカーフェイスは得意なのに、目尻が下がるのを止められない。   (11/24 21:25:09)
リプカ/リシリア > 自分は今どんな表情をしているだろう。きっと目の前の優しい少女は、この顔を見て心配するのだろう。 ああ、それはそれで、少し───嬉しいかも知れない。己の薬草にもなってみせると、健気に気丈に振る舞いそう告げる少女が愛おしくて堪らない。 甘すぎる己の言の葉の妖香にも惑わされず、真っ直ぐに此方を見つめてくるこの少女の心の強さはどれ程なのだろう。 話せば話すほど、傍に居れば居るほど、この少女が欲しくなる。 きっと己は、彼女の傍にこのまま居続ければ変わるのだろう。おそらく、良い方向へ。 生まれ変わる予感さえする。 今の己ではないなにかへと変えてくれるという強い確信がある。然し、それを確信してしまえば、今の己にその道を取る事なんて、出来る筈もない。そして、己が今至ろうとしている修羅の道には、この少女は決して連れては行けない。だから、)   (11/24 21:25:15)
リプカ/リシリア > ─────お花屋さん。 花を一輪、貰うわね?──── (恥ずかしそうに視線を逸らす少女に囁く様に告げ、持ち上げたままの顎を更に持ち上げた。少し足を折り、少し差のある高さを合わせると少女の顔へ自身の顔を寄せた。 その動き自体はとてもゆっくりなのに、まるで流れている水の様に自然な動きで。拒否しようと思えば拒否出来るだろうが、目の前の少女は恐らく拒否しないのだろう。 そのまま、その可憐で艷やかな唇へ己のソレを合わせると、ほんの少しだけ、口の中に生えた牙を突き立て、その美しい唇へと傷を付けた。傷口からとくん、と溢れる血液を音も立てずに密着させた舌から舐め取り、味わう様に吸い上げた。 吸血には性交など比較にならない快楽が伴う。首筋からの吸血が一番その度合が高く、唇はそうでもない。然し、それでもソレは少女に未踏の感覚を植え付けるだろう。恐らく一生忘れる事は無い、その記憶を持って、この悲哀と寂しさを埋めよう。そう思いながら、少女の芳醇でとても滑らかで、とんでもなく甘い血液を舐め取った。)   (11/24 21:25:18)
リプカ/リシリア > 「──リシリア。それが私の今の銘よ。 覚えておいてね、お花屋さん。 ……さようなら。」( 呆けて蕩けてどうしようもなくなっているであろう少女を残して、その唇を離せば少女の髪を愛おしそうに撫で、ぽんぽん、と頭を優しく叩いた後、少女の横を通り過ぎる様に歩いていく。呆けた少女が正気に戻って振り返った時には、もう自身は居ないだろう。   (11/24 21:25:22)


愁空/瑞希 > ――私も。イモータルを、ただ悪と。そうだと、断じる事はできません。こうして言の葉を重ねたら、貴女と私だって、同じだって、きっと――――……っ(嫌いじゃない。そう、発せられた言葉は澄んだ泉の水のよう。嘘偽りのなく、裏も表もなく。ただ、思ったからそういった。たったそれだけの言葉が、どうしてこんなにも嬉しいのか。なんて、考えずとも解る。今までイモータルが出た、と噂を聞けば現場に向かい、話し合いを試みた。しかしながら、その全ては撥ね退けられた。会話どころではない。こちらが語り掛けても、帰ってくるのは己の信条、心情、口上と。自身の胸に燃ゆる感情全てを言葉に乗せて、高らかに宣言するように、朗らかに、謳うように。過去への執着、求めるモノへの渇望。それに満ち満ちた、声の数々を幾度となく受け取り、会話ともならない、一方通行同士の言葉の投げ合いをして。今までの、ただの一度たりとも想いを寄せる事の叶わなかった存在と――重ねていえば、たった一人、助けたいと願った貴女と。少しでも通じ合えた。そう、思った。だから、)   (11/28 22:22:11)
愁空/瑞希 > (――だから、『きっと、もっと話せば、わかるはず。』そう言いたかったのに。強くて凛々しい貴女の、弱々しくて、儚い表情を、塗り替えてしまいたかったから、言いたかったのに。言葉の途中、遮られてしまった。彼女と私は決して交わらないと否定されるように。彼女の言葉に、唇に。一瞬の痛み。膨れ上がる熱。くるりと世界が反転してしまったような感覚を覚えたのは、彼女に脳みそをくるくると掻き混ぜられたから?いいえ。これは違う。これは私自身が感じている甘美。酩酊。陶酔。痛みさえ心地良いような刹那を、永遠に感じる程の昏迷の中で、反芻する。痛い。甘い。熱い。痛い。甘い。熱い。痛い、――苦しい。嗚呼。これは彼女にとっての食事。蝶が花の蜜を吸うように、蝶のように美しい彼女も、ミズキの花の蜜を吸った。ただそれだけのこと。なのに、言の葉ひとひらに乗せられた悲哀が、あんまりにも重々しくて。昏迷から目覚めさせたのは、悲哀と寂しさ。彼女の言葉から伝った感情が、自分の胸に宿ってしまう。気付けば一刻前の彼女と同じ表情を浮かべ、彼女の過ぎ去った路をぼう、っと眺める。脈打つ度にずきずきと痛む唇と、髪を撫でた貴女の手の感触が離れない。)   (11/28 22:22:18)
愁空/瑞希 > ……いいえ。いいえ。違うの。……さようなら、じゃないわ。貴女が私に印を付けたのだから。(遠く、彼女が過ぎ去った方角とは真反対から風が吹く。彼女の存在を遠ざけるように、己の存在を追わせるように。リシリア。リシリア。確かに受け取ったその名を頼りに、必ず見つけてあげると心に誓って。唇から新たに漏れた僅かな血液を舌先で掬う。「てつくさい」。小さく呟き、花籠を背負う。待ってましたとばかりに揺れる花々は夢路からざぷんと引き上げる。交差することはなかった此度、しかして次がないとは言わせはせぬと。息を吸い込み、目の前の正しく在る世界を見据えて。一歩、風の吹く方へ踏み出す。それは、彼女の優しい拒絶を撥ね退けるようでもあって。彼女が至ろうとしている修羅へ、向かうようでもあって。――……なあんて。そんな筈もなく、実のところ、ただ花売りが商いを再開させただけなのだが。ただ、一つ確かなのは。あの一時を抱いて、貴女の悲哀を宿して、この花売りは生きていく。)   (11/28 22:22:27)
愁空/瑞希 > ――リシリア。……またね。(もう誰もいない、聞いてはいない。それでもこの声は届くと、確証のない確信を抱いて。再び、人の熱波に飲まれていく。これより先は人の生きる世界。自分の領分を弁え、現へ帰る。また夢路へ誘われたその時があれば、きっと、次は伝えてみせる。残された印を、今度は貴女へ返してみせよう。)__『夢路に芽吹き』   (11/28 22:22:32)