この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

真朱

宵宮金魚姫-参

マリア/真朱 > 【8/8 23:15】「……明日も、会えるかな。」(千景神社の参道の頂上、神木に凭れ眼下の暗闇を見下ろしながら呟いた。可愛い旅人さんに貰った焼き鳥の串を弄んでいたら、爪先の鱗が剥がれてしまった。)「……痛……っ」(血の一滴も滲まなかった。ああそうか、もうこれは爪ではないんだ。わたしはとっくに、人ではないんだ。階段のそばへ歩み寄り、焼き鳥の串を下へ放り投げた。何度もかたん、かたん、かたん、かたん、かたんと跳ねる音を立てながら串は宵闇に吸い込まれてゆく。)「終わらせないよ。……あなたのために。」(たっぷりとした袂を揺らし、金魚神楽を踊る真朱。)「……きんぎょーやー、きんーぎょー……」(時を吸い、泡を吐きたる、金魚かな。浴衣の下でぞぞ、ぞぞ、と鱗の生える感触がする。鱗は肘の先まで侵食して、浴衣でぎりぎり隠せるかどうか。目は釦でもつけたかのように、不気味な程にまんまるく、銀の光を放っていた。)「……あ。」(ふと指先を見れば、剥がれた鱗が治っている。──いや、『戻って』いた。)「……死んでも戻るのかな?」(……明日、試してみようか。)【宵宮金魚姫-参】   (8/11 02:57:48)