この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

真朱&ビナ

また

マリア/真朱 > (牛の皮をぴんと貼った鼓に近い小太鼓に、漆を塗った竹の能菅。とん、たたん、ピーヒョロロと小気味いいリズムを奏でる中、ひときわ特徴的なのは、赤い房のついた盥のような摺鉦の音。こんこん、ちきちき、と高い音を鳴らして千景囃子を盛り上げている。神輿の後をつけるようにして、女人禁制の囃子衆を載せた車がからからと道をゆく。真朱はその真後ろを歩きながら、一層大きく聞こえる千景囃子に耳を済ませた。前の方を練り歩いている担ぎ手達は、角を曲がる度に威勢のいい声をあげながら宮神輿を上下に振っている。先頭が『エェーイサァーヨォー』と木遣りを口にすれば担ぎ手達もそれにのり、『ソーレ、モヒトーツ、ヨイ、ヨイ』と通行人から合いの手がかかった。)   (8/10 15:19:21)
マリア/真朱 > 「さァ〜」(まだまだ宮入には早いけれど、ボルテージの上がりきった担ぎ手に向けて両手を口元に当ててよく声が通るように開きながら、神輿甚句の出だしを口にする。どこかから聞こえてきた少女の合図を受けて、神輿の先頭が歌い出す。『好いた〜お方と〜添えたい為にィ〜!』あぁ、楽しいなぁ。今日は宵宮…明日も、明後日も、明明後日も!にこにこと笑いながらくるくる回り、神輿を追いかける少女は、金魚のような赤い浴衣のせいもありとても目立っている事だろう。)   (8/10 15:19:33)


木場田/ビナ > (篠笛、チャンパ、乾いた太鼓の跳ね音。おやっとまだまだ出るさ拍子木に当り鉦。甚句を謳う人々の声。笑い声。声声声。越えた先に、あなたはいた。神輿にお乗りになさった神様への祝詞に紛れて、一際目立つ、あの赤が、あんなに目について。ビナは、ガフを横目にみた。ガフは、後退りをして、細かく震えていた。こんなに立派な巨軀なのに。あなたを見ればなんて小さく見えることか。ビナは、唾を飲み込む。)「やっほ。お祭り、楽しんでる?」(あなたに声をかけたのは、なぜだろう。手を振って、まるでお友達みたいに。歌声は、水面の下みたく、くぐもって聞こえ、そこからもう二人だけの世界を演出しよう。提灯の赤々しい光は、二人を染め上げる。手には焼き鳥とりんご飴。)「凄いねえ〜。勉強したんだ。御神輿には、神様がいらっしゃるって。」 「あぁ、そうだ。えっとさ。」 「はじめまして。」>マソホちゃん   (8/10 15:37:29)


マリア/真朱 > 「ん?」(親しげに声をかけ、隣へ並ぶ少女を目にしてぱあっと顔が輝いたかと思えば、その後ろに見える巨大な羊に目を見開いた。)「うわぁ!?」(もふもふで、綿菓子みたいなふしぎないきもの。あなたが歩くのに健気についてきているらしい。釦がついているみたいにやけにまん丸い目を羊に向けてニコッと笑い)「おっきいねぇ!綿菓子みたい!」(と口にする。その後ようやくあなたへ視線を戻して、提灯に照らされた赤い顔……いや、提灯赤い光をそのまま染み込ませたような、やけに、やけに朱い顔で笑った。)「ええ、もちろん!あなたは?──って、その姿見たら言わなくてもいいよ、あはっ、両手に食べ物持ってさぁ!……千景祭へようこそ!」(腹に手を当てて、親しげに笑う。褐色の肌と緑の瞳、異国情緒を感じる旅装束……恐らくヨズア人だろう。ならばと尊華の女らしく、こちらは肩を竦めて努めて上品に微笑んでみせた。)   (8/10 16:07:12)
マリア/真朱 > 「そうよ、千景さま!荒神様なの。でも、数々の神話があって……英雄でもある。……そういう話好きなんだ?」(あなたと真朱はだいたいの背が同じくらいだっただろうか。共に神輿を追いながら自然と横並びになって歩いていた。)「うん、初めまして。わたし真朱、一人なの!あなたは?」   (8/10 16:07:24)


木場田/ビナ > 『めぇえ……』「大丈夫だよガフ………。大丈夫。…………えへ、おっきいでしょー?この子、わたしが子供の時からずっとこんな大きさなんだよー!ふわっふわだし、ほんと綿飴そっくりなんだ!」(興味あり、あなたの猫をも殺す、好奇心の含んだ、丸い目が、ガフにあんなに釘付けだった。少し、怯える臆病なガフを、ビナは優しく撫でて、あなたににっこり笑い返す。彼女は、尊華女子らしい気品溢れる様子で、歓迎してくれた。どうやら敵意は無く、でもどうしてここまで、ガフがへこたれているのかがわからない。ビナはペリドットの瞳を糸みたいに細めて、一瞬だけ、思惑を疑い、すぐ考えを辞めることに、したのである。)「ありがとう。楽しませて貰うね。」 「へぇえ〜神様もきっと楽しいだろうね………。」(あんなに何度もよいしょされてさ。)(隣になって、二人で歩く。彼女は端麗とした、可愛らしい少女だ。その赤い着物がよく、とてもよく似合っていた。   (8/10 16:29:22)
木場田/ビナ > ビナはさっきから彼女の事を見透そうとしていたが、これがどうしてだろう。彼女は何にも見えないのだ。『きゃーっ。破れちゃった!』『あちゃー、これでおしまいだな!』『えぇー?一匹も掬えなかったよー?』あそこの屋台で、きゃっきゃと騒ぐ人間たち。遠巻きに見て、クスリとビナは笑う。あんなに楽しそうにしちゃって。)「わたしは………ビナ。このおっきい綿菓子羊がガフ!本当はいい子なんだけど、きっと人にいっぱい触れ合って疲れちゃったんだろうね………ちょっと元気ないみたい。」(ほら、こんなに大きいからさっきから注目の的でさ。そうして付け足して、簡単な自己紹介をして、また少し歩いた。)「なんか、」(次に切り出したのはビナの方だ。)「不思議なんだ。」「凄い楽しいから、ずっと続いてほしいなって。こんなこと、思う事、あんまりないんだけど………」(一つ舐めた飴が甘い。甘さはすぐには消えず、ずっと口の中を甘ったるくさせた。)「ねえ、このお祭りって、いつ終わっちゃうの?」>マソホちゃん   (8/10 16:29:40)


マリア/真朱 > (あなたが金魚すくいの屋台に目をやるところを、真朱は見ていた。こっちを見てと言わんばかりにその手に手のをばし、すぐにそれを引っ込めて。)「ビナちゃんね。……ねぇ、手を繋いでもいい?」(初めて会ったはずなのに、やけに距離を詰めて真朱は尋ねた。あなたの手を開けるために焼き鳥をやや強引に奪い取って、ガフにははもう一瞥もくれずに、丸い瞳はあなただけを見て、指を絡める。)「うん。」「不思議って?」「……え…それってすっごくわかる!」(あなたの手を包み、ぎゅっと握って胸の前に上げると、から、と下駄を鳴らしてまた一歩、距離を詰める。立ち止まった二人を置いて、神輿が遠ざかってゆく。)「……夏が終わるのって、毎年すごく寂しいの。風が冷たくなって、あれほどに声を上げた蝉も、ひぐらしも、どこにもいなくなって……   (8/10 17:24:19)
マリア/真朱 > 」(黒髪のおかっぱをさらさらと流しながら少し俯いた。初めてなのにこんなに話が分かる人に出会えるなんて……。胸の痛みを共有できたものだと思い込んで、切なそうに笑う。)「さぁ、どうかな。いつまで続けて欲しい?……ふふ。」(湿気の多い尊華の夏は、もやもやと焦れるような熱気で乙女達を駆り立てる。命短し、──せよ、乙女と。いつのまにか千景囃子はほとんど聞こえなくなっていて、ただちん、ちん、と甲高い摺鉦の音だけが耳に残っていた。)「……夏が終われば、終わるよ。」   (8/10 17:24:32)


木場田/ビナ > (もう、熱気は、冷めてきた。あんなに蹈鞴場のようなこもった活気と熱気は、斜陽にぬるくなり、ただ、静けさだけが闇の気配と、蒼い空気を引き連れてやって来る。そこの池の金魚藻は、淀んだ水と同じように、揺れることも無く、流れることも無く、ただずっとずうっとずうーっとそのままだった。静けさ、遠くに聞こえる祭囃子。和楽器のやんちゃな音色は、もうずっと遠くに。強く握るあなたの掌は、離してしまってはそのまま何処かに消えてしまいそうで。きっと、あなたは、うれしそうにしているから、ビナのことを離したくないのだろう。夏の終わりは、近い。)「……………」(まだ、日暮は鳴いている。鈴虫も、あんなに鳴いている。風もこんなに、暖かい。)「………………………」(ビナは、何も言わずに、あなたの掌を握り返した。強く、強く握った。ちぃーーん。チャンギリの音が、聞こえます。いつまでも、いつまでも耳に残って。残り続けたところで、何にもわかんなくなった。金魚藻も、何にも動かず、変わらなかったところで、濁りと判別つかなくなった。風は、止むことなく、いつまでも、風は風であると、わかった。   (8/10 17:51:16)
木場田/ビナ > そういうもんなのだろうか。)「焼き鳥」(不意に、ビナは切り出す。)「食べていいよ。ちょっと、りんご飴でお腹いっぱいになりそうだから。」(『焼き鳥』を、ビナははじめて手放すことにした。ビナは、そうすると、あなたの手を引き、神輿に向かって歩みを再開した。『わあー!掬えた!一匹、掬えたよ!!』『がっはは、そりゃお嬢ちゃんのもんだな!』『ありがと!おじちゃん、大切に育てる!』遠くで、声が聞こえる。あんなに、うれしそうに。)「ねえ」 「もし、お祭りが終わっても、さ。」(すこし、恥ずかしそうに。)「また、会いたい。お友達として。わたし、たくさん色んな話してるんだ!旅してるから………!それで、それでね。」 「いつか、全部話せると、いいな。えへ。約束、したいんだ。また、会おうって。」(だから、また強く、手を握って、にっこりと微笑もうか。)>マソホちゃん   (8/10 17:51:54)


マリア/真朱 > 「……え?焼き鳥?」(止まった時を動かすみたいに、突拍子もなくあなたは言った。)「あ、……ほんと?ありがとう 。うん、分かった、貰うね。」(握った手は離されることことなく、いっそう強く握られて、今度はあなたが手を引く。ちん……と、消え入りそうに響く摺鉦の音を目指して、二人は再び歩みだした。『わあー!掬えた!一匹、掬えたよ!!』『がっはは、そりゃお嬢ちゃんのもんだな!』『ありがと!おじちゃん、大切に育てる!』酷くデジャヴを覚える声が、胸がきゅうっと締め付ける。)「ビナちゃん……。」(貰った焼き鳥に口をつけられないまま、きゅっと口を結んで、開いた。)「あのね。……今夜、四ツ半(23時)になる前に、境内を出て欲しいの。そして、そしたらね、……明日もきて。……まってるから。」   (8/10 18:28:48)
マリア/真朱 > (やけに古めかしい言い回しで、真朱は呟いた。それは、きっと叶わない。ヨズア人のあなたがどうやってここに来たかは分からないけれど、きっといつまでも尊華にいる訳にはいかないのだろう。一つの領土の端から端へは馬を使っても何日もかかる。王国なんかと違って、列車がある訳でもない。叶わないと知っていても、口に出さずにはいられなかった。このままあなたを宵宮に閉じ込めてしまいたい気持ちと、自分のことを忘れては欲しくない気持ちの板挟みに押しつぶされそうで……『できない』と言われたら……やっぱり閉じ込めてしまおうかな。先程は前に見えていた金魚すくいの屋台を追い越して、今は背中から声がきこえてくる。 『わぁ、一匹逃げた、捕まえてくれ!』『桶に、桶に!』『……あぁダメだ、もうだめだ』『そいつはもう死んじまう。』)   (8/10 18:29:02)


木場田/ビナ > (それを聞いたビナは、固まった。文字通り、氷みたく体が固まって、冷たくなった、そんな気がした。ああ、そうだ。それだけの覚悟を、『言葉』をビナは聞いてしまったのだから。震えた唇は言葉を落とす。拾おうにも、体は動かない。りんご飴が甘くさせた口の中は、もう甘くはなかった。)「…………」(結んだ唇は、開かない。うるさいくらいの血液の音が、良く聞こえた。張り詰めた空気は、肺胞全部に空気が行き届かないようだった。何を考えているのかは、わからない。ただ、ビナは、なにか、とてつもない言葉を、彼女に言わせてしまった事がわかっていた。)「『わがみ、は』」(言おうかな。)「『かみがみに こう』」(言ってしまおうか。唱えてしまおうかな。見通して、しまおうか。)「………………」「…………………」「………………ッッッ」(泣きたい。情けなく、泣いてしまえれば、どれだけ気持ちが軽くなるのだろう。)   (8/10 18:53:45)
木場田/ビナ > 「わか、った…………」(その手は、するりと、指先だけの感触を残して、離れていく。一歩、また一歩。進める足は、地面にひっつくようだった。空気が粘性を持ち、邪魔するみたいだった。後ろ髪が、引かれるみたいだった。腸が切れてしまいそうだった。あなたの温もりが、もう忘れてしまう。御神輿賑やかな、光の方ではなく、反対の、闇夜の暗い方へ。進んでいく。羊は、その後に続く。花は蕾み、鳥は飛ばずに眠り、風は止み冷たく、月は出ずに翳る。永遠の、誰かの金魚鉢から、ビナは抜け出すのだ。冷たい方へ。暗い方へ。祭りでは、ない方へ。『わぁ、一匹逃げた、捕まえてくれ!』『桶に、桶に!』『……あぁダメだ、もうだめだ』『そいつはもう死んじまう。』)「…………ッ」(なんで、こんなに悲しいんだろう。なんで、こんなに胸がざわつくのだろう。宵、宵々、宵々々、宵々々々々々々々。   (8/10 18:54:02)
木場田/ビナ > 前にも、こんなこと、あったような…………)「あれ、わたし、なんで、泣いて…………」「あっ…………」(燃えるような、夕陽を、思い出した。空を焼く、あの夕陽を。ある、二人と別れた、あの日と、おんなじだった。)「わたし、は…………」(結局、また、『繰り返し』)〆『また』>マソホちゃん   (8/10 18:54:18)