この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

火津彌&咲夜

誰が為に花は咲く

マリア/火津彌 > ('白地に細かい縞の入った、くしゅくしゅとした楊柳生地の涼し気な浴衣を纏って、顔にはいつもの狐面。からころと細鼻緒の真角下駄を鳴らして歩いているのは、尊華帝國軍少将、火津彌であった。連れ合いもおらず一人にも関わらず案外上機嫌で、ふらふらと扇子片手にあっちこっちへ。通りを挟んで何やら囃し立てるような歓声が上がったかと思えば、それはどんどん大きくなって。耳を澄まさずとも、ひとつ、ふたつと人の声が『あーよいしょ!』と、増してゆくのを耳にした。)「ほう……なんやなんや、もう神輿甚句か?宮入りには早いんちゃうか。……そんなんでは宮に着く頃には燃え尽きまっせ。」   (8/9 21:38:36)
マリア/火津彌 > (そうは言いながらも足取りはどこかゆっくりになり、二胡のように伸びやかな美しい歌声に目を細めた。あれは担ぎ手やないな、昂った観光客が待ちきれずに騒ぎ始めたのだろうか。 提灯の朱さに照らされ、千景囃子や木遣りや甚句の旋律に体踊らされ、篝火の匂いに包まれて町全体がひとつのトランス状態になってゆく。この日だけは、夜が祭りを呼ぶのではなく、祭りがきっと、夜を呼ぶのだ。静まり帰ったかと思えば、わあっと上がる歓声。辺りはもう幽玄の世界であった。こんな日はアレが欲しいな、と大好物を求めて辺りを見回すと、目の前にぽつんと奥ゆかしく佇む屋台に目が止まる。)「……ひとつもらおか」(すっと小さな屋根の下に入り込み、懐からがま口を出した。300価と引き換えに串付きのべっこう飴を手にすれば、『おーきに』なんて、らしくもないのんびりとした口調で呟き、屋台に背を向けるのだった。)「ひとっつ光るは一鏡〜か。厘都では『いちに斎(いつ)けよいち鏡〜』やったなぁ。」(狐面を少しだけずらして、口ずさんだ唇にべっこう飴が放り込まれた。)   (8/9 21:38:48)


骨牌/咲夜 > (表舞台で祝辞を述べた帰り道。恋焦がれた待ち人とすれ違うことがなければ規定時刻通りに仕事は済んで、堅苦しい軍服姿で遊興に水を差すことが憚られれば、上着だけを脱いで小脇に抱え、長い髪を揺らして石段の端を一人静かに下ってゆく。こういう時、人目を惹く長い髪というのは面倒ごとしか起こさないから出来るだけ人混みを避けて影を歩くのだ。その耳に遠くから聞こえてきた歓声、華やかな女性の声で歌われる甚句にふと足を止めた。千景囃子は女人禁制。町の子供たちをいれたお囃子に参加したいと思いながらも叶わなかったのは遠い思い出。ふいに立ち止まったものだから、すれ違う人の肩が躰にあたり体重の軽さから前につんのめるが、手を取ってくれる人はいなくて、どんと鳥居に手をついた。あぁ、まさかあの歌声が聴こえた場所にあの人がいるとは夢にも思いますまい。手についた木の棘を払い落した咲夜の瞳に、ぽつんと佇む屋台が目に入った。なにか買って帰ろうか、そう思い店に近付いた最中、懐かしさのある声が耳朶に触れた)   (8/9 21:59:03)
骨牌/咲夜 > おや、火津彌じゃないか。いつのまに帝都に戻っていたんだ。挨拶のひとつもしないで、入隊届をひとつ寄越したきりとは随分と愛想がないね。(足を止めて振り返れば、瞳に映る狐面。この祭りの場ではそれも珍しくはないものではあるが、少し気ずついたそれは今夜購入したものにしては年季が入っていて咲夜に間違いないと確信させるには十分だった。)   (8/9 21:59:14)


マリア/火津彌 > (屋台に背を向ける火津彌と、屋台へするりと近寄った咲夜がすれ違う。人垣に隠れた小さな背丈のあなたにそのまま気づかずに行ってしまってもおかしくなかったけれど、なんの皮肉か、二人を引き合わせたのは火津彌の口遊む下世話な神輿甚句であった。)「……!」(声を掛けられ、足を止めて振り返る。火照り熱る真夏の夜には見るだけで儼しく思えるような黒、宵闇の中でも溶けずに存在感を放つ漆黒の軍服は、いかにも我が尊華帝國軍。それに似つかわしくない小さく華奢な身体と、白く長き御髪は見間違えようもなく、咲夜中将その人であった。返事をしようにも口に突っ込んだべっこう飴が邪魔をして、むぐ、と間抜けに息が漏れ。慌てて串を持ち直しては、少々バツが悪そうに腰を折った。)「……これは、咲夜中将。お勤めご苦労様でございます。」   (8/9 22:31:08)
マリア/火津彌 > (いつもの癖で軍帽を脱ごうと頭に手を乗せるが、さらりとした髪の感触に自分はちゃっかりと休暇中であった事を思い出す。『随分と愛想がないね』だなどと言われてしまえば、頭に乗せた手のひらがそのまま後頭部へ滑り落ち、どこか気まずそうに項をかいた。)「……いやぁ、それについては申し訳ございません。ご存知かどうかは解りませんけれども、つい最近まで療養中でして。また王国に異形討伐に出たのはよいものの、手酷く被害を受けましてなァ…。そんなわけで、仕事も本宮を過ぎてから入る予定だったんですわ。もちろんご挨拶は真っ先に伺うつもりでしたけれども、何しろ中将もお忙しそうでしたし。入隊届け…というと、あぁ。董の事ですかな。あれは──。」(咲夜の軽い尊華節を真に受けて言い訳を重ねるようにまくし立てるが、ふと口をつぐみ、腰を少し屈めてぎりぎり触れぬ所であなたの肩を守るかのように手を添えた。)「堪忍です。長くなりそうですから、場所を変えましょか。」   (8/9 22:31:27)
マリア/火津彌 > (すく、と姿勢を正してもう一度屋台の方へ振り返ると、直ぐにべっこう飴をもう一本手にしてあなたの元へ。部下をつけていない所を見れば、恐らく暫くはまた出番もないのだろう。生粋の貴族であるあなたがこんな子供騙しな菓子に興味があるかどうかといった的はずれな心配もしつつ、屋台に近寄ったからには土産でもと思ったに違いないと決めてそれを差し出す。)「積もる話もありますし、ご一緒させて下さい。いえ、ほんまに、言い訳する訳と違いますけれどもね。あれから何度か帝都には帰っとったんですよ。列車も便利やし…。ですがその度にご挨拶に伺うというのも、鬱陶しいでしょう。」(なんて、道中でぺらぺらと喋りつつ。)   (8/9 22:31:42)


骨牌/咲夜 > (口の中で溶けた飴はまだ甘さを残しているのだろうか。突然闇夜から現れた上司に貴方は随分と肝を冷やしたに違いない。貴方の丁寧な挨拶にあわせて軽く首を前に倒すと、焦って手を彼方此方に彷徨わせる様子に口角を緩め、ゆっくりと首を横に振って冗談だと知らした。)随分とやられたらしいね、此方の方は平和なものだよ。神罰なんて言って騒いではいるが、一夜で城が落とされることもない。戦で土地を失うことに比べれば小さなものだ。あぁ、そう。では場所を変えようかね、だがお前、仕事の話ならば今は休暇中だろう? 後で構わないよ。(ぺらぺらとよく回る舌は余程罰が悪いのかいつもより饒舌に言葉を綴る。皮肉を華とする尊華帝國の魔術師なんだからそんなに焦って言葉を並べなくたって構わないのにという思いは愛想笑いとして現れて、咲夜は困ったように眉尻をさげる。さて今は元気そうな貴方ではあるが、大怪我を負ったという報告は受けている。慣れぬ王都で帝國人の尖兵として働いてくれていることは理解している手前、貴方の折角の休暇に仕事の話を持ち込むことは憚られ、守るように肩に触れた貴方の手を見て眼差しを伏せた。)   (8/9 23:07:05)
骨牌/咲夜 > おやおや、火津彌少将ともあろうお方がどうしたんだか。王国へ行って彼方の行儀作法でも身に着けてきたのかい。(寂しさが皮肉となって口を突いて出た。そんな自分の迷いを断ち切ろうと足を一歩引いた矢先に差し出された琥珀色の飴。軍人となってからは警備任務で祭りに顔を出すことこそはあったものの、他の神を信奉する祭事に顔を出すことは本家の人間としてはあまり推奨される行為ではなく、どうしたって祭事とは縁が遠かった。夏祭りに行くのだと言って早々に帰る学友らをひとり見送ったあの頃を思い出し、懐かしさに双眸を細めれば、壊れ物を扱うかのようにそっと両手で受け取った。)甘いもので口を塞げば、耳に痛いお小言は飛んでこないとはよく考えました。ふふっ、折角だから戴きましょう。まぁ、わたしも暇ですからね、よければ一緒に歩きましょうか。   (8/9 23:07:39)
骨牌/咲夜 > (そうして、貴方に合わせて歩き出す。飴屋の周囲に人がいないため寄ってはみたが、この人混み、誰かもわからない夜では魔が差すのだろう。目の前で揺れる長い髪にちょいと悪戯してみようと飴をつけたりする者が多いのだ。だから、家のことを抜いても縁日とは縁がなかったこともある。口に含んだ飴は何時も店で購入するものよりはずっと苦くて混ざり物も多いけれど、それが屋台の味なのかと思えば美味しくもある。思わず難しい顔をして鼈甲飴を舌先で舐めながら貴方が導く場所へ向かって歩を進めた)   (8/9 23:07:49)


マリア/火津彌 > (─『彼方の礼儀作法でも身につけてきたのかい。』─『甘いもので口を塞げば、耳に痛いお小言は飛んでこないとはよく考えました。』─茶目っ気を感じる皮肉を受けて、冷や水を浴びせられたかのように凝り固まっていた緊張がほっと解れてゆく。『いやぁ』なんて口にしながら、火津彌の方も調子を取り戻してきたようで。)「まあ、そうですな。例えばその上着を持ちましょうと気を利かせる程度には。」「ええ、口を『酸っぱく』するのは『梅』だけで充分ですからね。」(にやりと笑いながらあなたに合わせた狭い歩幅であゆみを進めてゆく。『桜ん坊は甘い方が宜しい』『さァて、久方ぶりに会う部下にどんな甘言蜜語が頂けるのやら』とはさすがに言い過ぎか、と口を噤んだが。その髪も、顔立ちも、服も否応に目立ってしまうあなたを少しでも気楽にさせて差し上げられたらと思えば、当てどの無い行先は無意識に人気のない暗がりへと吸い込まれて行った。)「……まぁ、実を言いますとね。ちょっとばかり顔を合わせづらかったんは、事実ですわ。」(あなたがべっこう飴を口にするのを見届けてからもう一度それを口元へ運んだ。いつしか、人も提灯も疎らになってゆく。)   (8/10 00:02:43)
マリア/火津彌 > 「……………〝嫁探し〟、難航しておりましてなァ……ははは。まぁ、この顔ですから期待はしておりませんでしたが、私にも見栄っちゅうもんはありますしなァ。」(嫁が見つからないから会いたくないだなどというのはもちろん、半分冗談である。残りの半分は、嘗てあなたに対して三献の契りまで口にしてしまった事の気まずさだ。さて、嫁探し。軍人と言うだけで言い寄られるような時代も終わってしまい、この三年、良いなぁと思う女性は何人も居たけれど、結局火津彌はよく分からなくなっていた。自分がどういう相手を求めているのかを。)「もしご姉妹でもいらっしゃったら紹介して下さいよ。おっと失礼。」(香々夜咲夜の姉は、かの至尊が妃、つまりは国母であるというのは周知であるのに。わざとすっとぼけて、不敬罪にでも当たりそうな冗談は、ある意味ここが尊華だからこそ許されるのかもしれない。)   (8/10 00:05:27)


骨牌/咲夜 > お前という奴は。あの子が来た時は、また蘭が元帥をおし込んで来たかと思ったがね、存外骨のあるお人だよ。まったく、本当に火津彌の減らず口ときたら、ひっぱたいてやりたくなる。(立て板に水と滑らかに動く貴方の口に安堵してしまうのは此処が成れぬ場所であるがため、乱暴な言葉とは裏腹に咲夜の声音は優しいもので笑いながらそう言うと、片手で前をゆく貴方の背中をちょんと小突いた。けれども蝋の溶ける提灯特有のにおいが遠くなり、祭囃子が微かになれば交わされる冗談は確信へと近付いてゆく。貴方の口から出た『嫁探し』という言葉に、咲夜の足は遅くなる。去年の落ち葉をかしゃりかしゃりと踏みながら、貴方の背中を今度は慰めるようにぽんぽんと軽く叩いた)……悪かったね、もっとしっかり治してやれたらよかったんだけど、わたしにもまだ欲というものがあったのだろうね。それでね、わたしもお前に伝えなくちゃならないことがあったんだ。   (8/10 00:36:38)
骨牌/咲夜 > (笑ったような言葉だがその底に隠された海の深さを想像することは難しい。戦も終わって食い扶持が減り、いつ魔術を失うか分からない者を当家の婿にとはなかなかならないのだろう。それに鬼灯家は厘都の名家、貴族家に娘を出してやることへの躊躇もあれば、王国の風が入り女も積極的に家を出て働きなさいという潮流もある。難儀しているのも仕方がなかった。せめて傷さえなければと、顔をあげて貴方の横顔を盗み見た。狐面の下に傷を隠して、これが戦で負った傷ならば隠す必要もなかったのではあるまいか、そう思うと余計にあの蛍の夜のことが思い出された。あの人のことも。あれからもう三年。随分な月日が経ってしまった、戦場で見た一夜の夢に過ぎない出来事ならば自分の浅はかな思いよりも、将来のある貴方を救ってやるべきではなかったのか。様々な思いが幾重もの波のように打ち寄せて、貴方の背を叩いた手が貴方の背中に寄り添ったままとまる。薄い浴衣から伝わる体温の熱さにあなたの命を感じた。)   (8/10 00:36:56)
骨牌/咲夜 > それは、退役して朝廷に昇りたいってことかい? 雲客になりたいっていうなら紹介してやるけれどね、あの人は……あの人の苛烈さはわたしの比ではないよ。なにせ自分の字の頭に華とつけるくらいだから。あぁ、話が逸れた。(姉のことを口にされると例え冗談であろうと胸が苦しくなる。太陽のような人。あの人とは違う、近付くものすべてを焦がして焼き尽くすそんな女性だから。咲夜は背中にあてた手を丸めて爪をたてる。貴方が余計な言葉を重ねるように、きっと咲夜もこれを口にするのが怖くて姉の話なぞしたのかも知れなかった。眼差しを伏せて、そっと貴方の背中に額を押し付けた。)ねぇ、月光――ほんとうに子供は必要なのかな?   (8/10 00:37:33)


マリア/火津彌 > (軍部の者が耳にしたらなんと思うか。恐れ多くも元帥を話の種にして、くつくつと笑いの花を咲かせながら、二人は歩く。)「……いえ、何を仰いますか。あれは私が頼んだ事です。……、……。」(ちんころ、ちんころと遠くで鳴る千景囃子音が遠く、水に沈んだようにぼやけてゆく。『悪かったね』なんて軽く言われればこちらも『いえ』と軽く返すのが精一杯で、それ以上は触れようとしなかった。泡沫のような軽口のやりとりは徐々に、宵宮金魚の大口に吸い込まれて行く。)「伝えなくてはならんこと、ですか?」(あなたがそれを話し始めるのを待つけれど、沈黙が漂う。堪らず改めて聞き返してみると、背中を軽く叩いていたあなたの手が遠慮がちにぴとりとくっついた。)「……中将、」(首を回してあなたの顔を見ようとするけれど、身長の差が邪魔をして叶わない。背に置かれた手を振りほどくような真似をしたくはなく、火津彌はそこから動けなくなったまま俯いた。)「……何を………。考えたこともありませんよ。」   (8/10 01:31:19)
マリア/火津彌 > (『紹介してやるだなどと、可笑しな事を仰る。』『至尊と渡り合えるならば今頃私は50人の妾を持っていることでしょう。』『尊華一の月卿雲客になる方が些か楽そうだ。』尊華節を混ぜ込んだ返答で場を和ませようと考えるが、それらが言葉になることはなかった。火津彌が口を挟めぬような雰囲気で語られた姉上への思いの氷山の一角に触れ、わけもわからぬまま覚える罪悪感へ罰を与えるかのように、あなたの爪が背中に軽く立てられた。痛くもなんともなかったけれど、されるがままに、俯いて。)「────……」(あなたの声が直接背中に響き、からっぽな身体の中で反響する。)「……と………」(十種様、と喉まで出かかって、ごくりと唾を飲み込んだ。香々夜に脈々と受け継がれるこの真名は、果たして今のあなたを表すのに適切な名だろうか?)「……咲夜様。どうなさったんですか。……何やあったんですか。」   (8/10 01:31:56)
マリア/火津彌 > (あなたも僕も、貴族の身。一族の血を絶やさぬ事への責任は、今更あなたに語ろうが釈迦に説法だろう。かと言って、必要ないと簡単に切り捨てる事が出来るならば、火津彌だってこの歳まで出自や存在意義に悩む事はない。たぶんあなたは今、火津彌ではなく、自分自身に問いかけているのだろう。)「……伝えなくてはならん事とは、なんですか?」   (8/10 01:32:08)


骨牌/咲夜 > (その声は夜に響くだろうか。夜空を煌々と照らし出す千景神社の明かりから距離を置き、人から逃げるようにして迷い込んだ木蔭闇は深くまるで地獄が口を開いているよう。地獄の窯の底であぶられるような貴方の子供時代を知っている。人の口に戸が立てられないから、軍とういう狭い檻の中ではどうしたって小さな秘め事も反響して大きくなる。今のように声がよく通る真夜中よりもずっと大きく、響いていくのだ。咲夜の問いを聞き返す貴方、此方をみようと捩る背中に咲夜は更に顔を下げた。長く伸ばした髪が肩を伝って零れ落ち、無防備な白い項が夜風に晒される。)知っているよ、冗談だ。   (8/10 02:13:11)
骨牌/咲夜 > (考えたこともないという貴方に応えた声は真鉄に口を利かせたようで貴方が告げようとした冗談を掻き消した。代わりに紡がれた言の葉は此方を心配するもので、急にこんな風になってしまえばそうもなるかと唇を歪めて嗤った。あぁ、貴方の心配の種を取り除いてやろうと思っただけなのに。どうして上手くゆかないのだろう。貴方に教えた真名を、貴方が口にしなかったのは、自分を思い遣ってのことだろう。最近はつとにその名に背負う重責を感じるようになったから、『忘れたの?』なんて冗談は言えず、問うた言葉に同じ言葉を返す貴方に首を横に振って寄せた額を離した)あの時はね、深く考えもせずにお前に子供を産んでやれないよといったけど、それが重責になっているんじゃないかと思ってね。――ねぇ、月光、お前が父親と同じことを仕出かさないか不安でね、わたしたちの言葉はひとよりも強い魔力を持つから、嫁を作ってこいといったわたしの言葉が、呪詛になってお前を焦られていやしないか心配だったんだ。   (8/10 02:13:28)
骨牌/咲夜 > (だから貴方に問うたのだ。嫁を探すということは子孫を残すということ。貴方は人よりもずっと苦労を重ねてきた人だから、自分の言葉が呪詛になって貴方と貴方の子供を苦しめるのが怖かった。本当ならもっと早くに伝えてあげるべき言葉だったのだろうけれど、気が付けばあれから三年が経ち貴方は仮面の下に悲哀を覗かせる。咲夜は目を閉じてそっと貴方の背中に爪を立てた手を離し、一歩後ろへ退いた。)伝えたいことは、それだけ。……でもね、これだけは忘れないでおくれよ。お前の父親が仕出かしたことは決して褒められたことではないけれど、わたしはお前に逢えて嬉しかったんだ。お前には随分と人生を引っ掻きまわされたけどそれでも構わない。産まれてきてくれてありがとう。(その言葉は夜に響くだろうか。ひゅぅという短い風切り音と共に夜空へと打ち上げられた種が轟音奏でて、ぱっと大きく花開く。鮮やかに、美しく、花火は尊華の夜空を彩った。)   (8/10 02:13:38)


マリア/火津彌 > (あなたが話している間、火津彌はどこかぼうっと、何も考えられぬ頭でそれを聞いていた。何度も何度も頭の中であなたの言葉をなぞって反芻するけれど、おかしなほどに否定も肯定も浮かんでこないのだった。ただあなたの切なげな、申し訳なさそうな声色がどうしようもなく辛くて、自分のことなどは、どうでも良いとさえ感じていた。)「………中将…」(背中から手の感触が離れ、さく、と落ち葉を踏みしめる音がした。振り向きあなたの顔を見下ろして、ごくりと唾を飲む。何を言えばいいか考えていると、あなたが口を開いた。)「………中将……っ」(その言葉は今まで耳にしたどんな言葉よりも無垢で、美しく、無償の愛を感じさせる魔術だった。気づけば火津彌はゆるゆるとその場に片膝をついて、あなたに目線を合わせていた。) (『産まれてきてくれてありがとう。』) 「……中将っ、僕はっ……!」) (ひゅる……) (打ち上げの合図である風切音が鳴り、祭り全体がこの一瞬時を止めているかのように音を失くした。一秒、二秒、そして)   (8/10 03:49:52)
マリア/火津彌 > (どん)   (8/10 03:50:13)
マリア/火津彌 > (大きな音を立てて打ち上がった一輪に続いて、どん、どん、どどん、と後続が上がってゆく。ぱらぱらという音が耳に残り、体の奥を揺さぶる。思わず上司を抱きしめてしまった自分に、火津彌自身が一番驚いて目を見開いた。)「……すみません!ご無礼を……」「あの」「ありがとう、ございます。」(腕を解き、肩に両手を置いて目を逸らしながらあなたから1歩離れる。)「あっ、あ、あなたが、殊勝なことを仰るから。……あぁもう、あなたなんなんですか、あなた、僕のなんなんですか。」(恥ずかしそうに片手の平を目に当てて、肘を引くように擦りながらはぁと俯いた。悪態を垂れているような口ぶりではあるが、その顔は照れて真っ赤になっていた。)   (8/10 03:50:33)
マリア/火津彌 > 「……中将、あのですね、ずっと考えていたんですが。」(手を前で組み直し、地面を目に落としたまま言葉を続ける。)「ちょっと鬼灯の花を思い浮かべてみてください。」(どん、どん、ぱらぱらぱら…上がり続ける花火をちらりと仰いで、もう一度あなたに視線を戻して。)「何色でしたか?……橙色ではありませんでした?鬼灯の〝花〟と確かに言ったのに、橙色の提灯を想像する人が多いんですわ。今、言われてあぁとなりませんでした?」「ちなみに鬼灯の花は白です。瓜と大体同じですわ。……あまり見向きされないんですよね、鬼灯の花というのは。」(ふ、と目を細めて横を見、また視線を逸らして、どう説明したものか、と腰に手を当てた。)   (8/10 03:50:48)


骨牌/咲夜 > (大きく咲いた華が散る。散っては咲いて、散っては咲いて。花火が消えた後の静寂はいつもより闇が深く感じられる。貴方の唇が呼んだその名は、自ら名付けた字でもなく、親がかくあれかしと祈り名付けた真名とも違う、軍で得た階級職だった。生まれた時に与えられた『天命』と、天命に逆らう『人智』、そのいずれでもない名前。その名前は自分だけではない、父をはじめとした多くの人が連綿と受け継いで来た名前だった。例え私と貴方が死んで、家すら途絶えてしまったとしても、この帝國が消えた後でさえ誰かが冠し、続いていくものだった。それでも、貴方が呼ぶ名前は、この時ばかりは、わたしだけのものだった。振り返った貴方は跪いて視線をあわせる、忠誠ならいらないよ。唇に滲む僅かな微笑は、貴方の嘗ての誓いを髣髴とさせてのものだった。惜しいと思ったことがないというわけではない。わたしがもっと強ければ、貴方の荷物さえ抱えて歩けたろうに、けれど――バサリと預けていた上着が枯葉の上に落ちた。)   (8/10 23:00:28)
骨牌/咲夜 > ……っ!(貴方の腕がわたしを抱いた。ぎゅっと強く掻き抱いて離れていく熱はまるで貴方の魂から続く一縷の糸のようだった。伏せていた視線をあげて驚き見開いた瞳で貴方を見詰める。僅かに開いた唇は戦慄いて貴方の真名を呼ぶことさえもできなかった。『ありがとう』と貴方は言った。『あなたは僕のなんなのですか』と貴方は続けた。熟した鬼灯のように顔を真っ赤にした貴方を瞬きすることなく真っ直ぐに見詰めて、その言葉の意味を考えた。貴方はわたしにとってなんなのだろう。お前は火津彌を愛しているのか。そう問われれば『はい』と答えるだろう。けれど貴方はわたしを抱かないし、わたしは貴方と重なることはない。この気持ちは、世に言う『情』とは違うから、その感情に名前を付けてやることはできない。   (8/10 23:00:50)
骨牌/咲夜 > 大きな音を引き連れて天上に華が咲く。眠った草木を目覚めさせ、華が咲いては散ってゆく。咲夜の葛藤とは裏腹に、貴方は恥ずかしそうに目を伏せてしどろもどろに言葉を紡ぐ。禅問答のような言葉、きっと貴方が孤独な夜は、貴方なりの答えを示してくれようと、わたしのために必死に考えてくれていたのだろう。鬼灯と言われ想像したのは、貴方がいうように真っ赤ながくに包まれた艶やかな実の姿。答案用紙を差し出して、評価を待つ子供のように、貴方は此方を見上げては目を逸らす。だから、わたしは……。)   (8/10 23:01:06)
骨牌/咲夜 > 人に見向きもされずとも、咲いて身を付けたならそれは花。咲かない花に意味はない。どんなに美しかろうと花が咲かねば、がくも、実もない。(この言葉は誰かの借り物だった、けれども、真実その通り。貴方という立派な鬼灯を見ていれば人に記憶されない花だとてただただ枯れゆく草木よりよっぽど尊いものだと思う。それが貴方が選ぶ答えなら、わたしと貴方がすすむ道は、もう二度とは交わることはないのだろう。ゆっくりと首を横に振れば、夜風が長い髪をなびかせた。空に咲く華を掻き消したその風は天景神社の風神が起こした気まぐれか。神も仏もありゃしない。咲夜はまた一歩退いて、もう二度と交わらないならばと意地悪な問いを口にした。)――ねぇ、火津彌。ちょっと思い浮かべてみなさい。あなたは『母』と聞いて、いったい誰を思い浮かべた。   (8/10 23:01:18)


マリア/火津彌 > (『ねぇ、月光――ほんとうに子供は必要なのかな?』あなたらしくない幼子のような口調で問われた言葉の答えを、ずっと探していた。僕の為の言葉にしてはあまりにも苦しげで、痛々しいほど赤裸々な響きだった。僕がするべきはあなたへの慰めだったのかもしれない。『いいえ、そんなことはありません。』と、一笑に付せるのは、こんな出自の僕だからこそできたことかもしれない。だけど口にしてしまったが最後、その言葉が単なる『慰め』になったが最後、あなたが感じるのはやっぱり絶望なのではないかと思えてならなかったのだ。それを言語化出来るだけの冷静さはなかった。なかったからこそ、口を噤む他なかった。 鬼灯の花の例えはあなたへの慰めではなく、自分自身に重ねて、まろびでた葛藤の糸端。鬼灯の花は、実を成さねば意味がないのでしょうか?──続く言葉を探しながら、助け舟を求めるようにあなたの顔をちらりと見遣れば。) 「……」   (8/11 00:33:12)
マリア/火津彌 > 「……」 (あなたの返答を聞いて溢れ出た笑みはいつもの不器用で堅くぎこちないものではなく、にへ、と眉尻を下げた〝小僧〟の笑みだった。二人で結論を出した三年前のあの夜、泣き腫らした顔で生意気を言った時の。『活きて、そして死んでください』と楯突いた時とおんなじの。) 「鬼灯は………鬼灯はただ咲きたいだけなのではないかと、思ったのです。実をつけたいから咲くのではなく、咲きたいから、咲いているのやと。」 (こくり、と唾を飲みこみ、息を整えた。) 「『お前はお前らしく生きていいんだ』と言われた時、鬼灯は……いえ、僕は。見向きもされんかった花を、認めて頂いたような心持ちでした。……嫁探しなんて最もらしい言葉を使いながら、ただ…………。」   (8/11 00:33:35)
マリア/火津彌 > (あぁ、こんなに青くさい言葉を言わねばならぬとは。僕も焼きが回ったか、それとも今日が祭りだからだろうか。誤魔化すように落ちた上着を空いた方の手で拾いながら、なんてことないような力の入らぬ声色でぽつり、と呟いた。) 「恋を、してみたいと……。思っとりました。ただ、それだけなのです。」 (上着の落ちていた地面から目を離せぬまま、火津彌の顔は真っ赤に染まっていた。「笑わんでくださいよ」と付け加えて、目を伏せながら。) 「えー、だから先ずもって中将が責任を感じるようなことは何もありませんし……どう咲くかはどう生きるかなのではないか、なんて……あれ、月並みな回答になってしまいましたなァ……。」 (なんとも格好がつかずに、膝に上着を乗せて空いている手で項をかいた。まだ空には、どんどんと花火が登り続けている。一瞬で散るのも厭わずに、ただ咲きたいがために命を燃やしている。これが尊くないと言う尊華人が居ようか。いや、いまい。……あなたの目には、入っているだろうか?風が、火薬の匂いを運んだ。)   (8/11 00:33:59)
マリア/火津彌 > 「……中将?」 (一歩引いたあなたの口が紡ぐ言葉に、どきりと心臓を跳ねさせた。『母』と聞いて、何を思うか?──) 「え……ええと…、」 (随分な、いけずである。明らかに視線を泳がせて、火津彌は自分の心に問うた。遠い記憶の中で赤子の僕を抱く女性の顔は、靄がかかっていてわからない。そりゃぁ僕を産んでくれたんは、瑞穂姐さんや。あの日を母にしてやると決めたのは僕や。だけど、あれは椿姐さんだったんやろうか?瑞穂姐さんやったんやろうか?それとも、また別の……。色々ありながらもこれまで取り落とすことなく、しっかりと右手に握られたべっこう飴を見つめてぐるぐると逡巡した。──この記憶は、そもそも本物か?そないに幼い頃の事を覚えているというのは、おかしなことやろうか。──これが想像の産物や、都合よく作り上げられた理想なのだとしたら、それが、それこそが、この質問の答えなのか?僕はあまりに母というものを知らなくて、あなたの質問に答えるのにずいぶんと難儀した。)   (8/11 00:34:23)
マリア/火津彌 > 「………鼈甲飴………ですかね……。」 (あなたは苦しげに絞り出された火津彌の答えを、わけのわからない頓智、逃げだと思うだろうか。だけどその言葉を口にした当の本人は、今の今まで自分がどうして好んで鼈甲飴を食べていたのか思い知らされる衝撃に、頭を殴られるような心持ちで、ほとんど放心状態だった。……乳を吸えない代わりに指を加えて自らを慰める赤子のように、僕は鼈甲飴を見る度に思い出していたのだ。飴を買ってくれた椿姐さん、それを届けてくれた瑞穂姐さんの両方、そして、すんすんと鼻を鳴らしながらも飴をくわえて機嫌を直していた幼き頃の自分を。──あぁ、中将がこんなことを知るはずもないのに。) 「……あ、その、すみません。……正直、解りません。」   (8/11 00:34:41)
マリア/火津彌 > (椿姐さんは僕が勝手に母だと思っていた人であり、育ての親と言う訳ではないし。説明しようとすると長くなってしまうな、あぁいっそ、全てを話してしまおうかと飴を見つめる。いや、きっと迷惑だ。〝子育て飴〟の伝説でも持ち出して、僕の母は幽霊なのですと辻褄合わせでもしてしまおうか。また困ったように、あなたの返答を待つのだった。)   (8/11 00:34:51)


骨牌/咲夜 > (貴方は子供のように無邪気に笑う、花は咲きたいから咲くのだと言って。それが貴方の出した答えならわたしに言えることは何もない。『恋』をしたいと言った貴方の紅潮した頬を花火が照らす。まるで初めて恋を語る少年のように照れくさそう地面を見詰めて、上着を拾ったまま顔をあげようとしない貴方。これから大輪の花が咲くことを疑わない貴方を見て溢れるほどの若さを感じた。あぁ、と吐息が唇から零れた。水底に沈んだ金魚が最期に吐き出す泡沫にも似た小さな吐息。あなたにとって咲くことが恋ならば、わたしにとって咲くということとは誰にも真似できぬ偉業を、姉すらも超える功績を残すことだった。だから、わたしは努力をしたし、軍でひとり孤立しようとも前に進み続けることができた、島を焼き払い、多くのヨズア人の命を奪いながらも、非業の死を遂げた尊華人の無念を晴らし、神島を取り戻すことができたのだ。そのために生きて来た。それが自分の生き様だった。だから、それを褒められた時は、涙が流れるほどに嬉しかった。報われたと思った。初めて顔をあげて自分らしく歩いていけると思った。でも……、花は散る。その後に深い闇を残して。   (8/13 20:12:51)
骨牌/咲夜 > 否!咲いてすらいなかったのだと思い知ったのはあの日だろう。一般人にとって自分がなしたことなど何もかも関係のない出来事なのだと思い知らされた。貴方と貴方の家族、大切な人達、貴方の帰るべき土地を救ったのはわたしだというのに。畢竟、人間とはそんなものなのだ。)そうかそれならよかった。あぁ、確かにそうだね、でも誰にも褒められたことのない花が日の目を見たのは、火津彌、お前がいたからさ。お前の親も、きっとお前のことを誇らしく思っているよ。(花火に照らされる貴方の横顔を見詰めるわたしは、貴方が望むように笑えているのだろうか。花火が尊いのはそれを見上げて記憶してくれる者がいるからだろう。また来年、今度は大切な人と見たいと思う人がいるから花は咲く、来年も、再来年も、咲き続ける。では、わたしは。貴方の親が貴方を誇らしく思うのならば、わたしは一体なんなのだろう。目頭が熱くなり、無理やり笑顔を浮かべていたのだろう頬が僅かな痛みを齎した。   (8/13 20:13:12)
骨牌/咲夜 > わたしが貴方に与えた意地悪に貴方はまた随分と時間を掛けた。随分と子供っぽい悪戯をしたものだ、迷う貴方をみて『悪かったね』と思案を打ち切る台詞を掛けてやろうと口を開くが、言葉が結ばれ前に貴方はひとつの答えを出した) 鼈甲飴……、これかい?(咲夜は片手の中に残っていた細い棒っきれへと視線を落とし、訝しげに矯めつ眇めつしてみるが、答えは出ずに顔をあげた。鬼灯の例のように答えのない迷宮に貴方が再び迷いこんでしまったのかと思ったから、貴方がしたように棒きれを見詰めてみたが、顔をあげてみれば貴方はぼうっとした顔で柳の下に佇む幽霊のように遠くを見る。物言いたげな唇、縋るような視線、貴方は困ったように謝罪を口にするから)   (8/13 20:13:24)
骨牌/咲夜 > そうかい……、悪いことを聞いたね。ほら、これをやろう。お駄賃だ。お前の好きな飴を買って帰るといいよ。(そう言って、財布を取り出すと硬貨をじゃらりと掬い上げ、貴方が抱えた上着と引き換えに、その手の平に握らせようとする。記憶の海に沈んでいた思い出の欠片たち、貴方はわたしにそんな記憶を掬う手伝いを望んだのだろう。こんなわたしでいいのなら、幾らでも話を聞いてやる。そんなつもりで先に戯言を口にした。手にした硬貨の冷たさで、貴方が少しでも気を取り戻したなら、その問いを口にしてみようかと思った矢先。わぁっと歓声があがり――提灯の火が消えた。指の間から六枚の硬貨が零れ落ちる。)   (8/13 20:13:34)


マリア/真朱 > (火傷を隠す為にいつもつけている狐面。いつそれを懐にしまったのかも忘れ、ぼうっとした顔を晒しながら散りゆく花火を見つめた。自分はどんな顔をしているのだろうという不安も頭をよぎるけれど、隠そうという発想にまで至っていない事を、黒い軍服の上着を拾ったまま硬直した指先がまざまざと示していた。)「……。」(子を、いや、孫を諭すような口調で火津彌に声をかけるあなたの顔を、花火からゆっくりと目をそらして見やった。『好きな飴を買って帰るといい』だなんて、少将である自分にかける言葉にしてはひどくわざとらしい、なにか予定調和めいた茶番だ。意図があるのだろうとそれを受け取ろうとする。皮肉を華とする尊華帝國の軍人として何と答えるのが正しいのだろうと、返答を考えながら。――その時だった。)「…あっ。」(あたりが暗くなってゆく。ろうそくが尽きた提灯はばらばらに消えて、また残っていた提灯は実行委員会の手によって消され、あっという間にあたりは宵闇に包まれる。)   (8/14 19:05:26)
マリア/真朱 > 「……もうそんな時間になりますか。どうやら僕は引き止めすぎてしまったようです、申し訳ありません、中将……」(あたりは突然静まり返って、まるで世界に自分達しか居ないかのようであった。――いや、)「……中将?そこに居ますか?中将。」(暗闇に成れない目。あんなに夜に映えていたあなたの白い髪がちらちらと光を受けるのすらも見えず、思わず手を伸ばす。するとどこか遠くで、いや、案外近くで。悲鳴が聞こえた。)「……咲夜様…!」(―――すり。下駄の音。衣擦れの音。なにかが倒れる音。何かが溢れる音。何かが落ちる音。何かが跳ねる音。からん、からん、からん……ひゅるり、どん。花火の音。)   (8/14 19:05:30)
マリア/真朱 > (……『神も~ 仏も~ ありゃしない~』じゃらら、と手のひらに硬貨の落ちる感触があり、ちゃりんと一枚、足元で高い音を鳴らした。 そしてまた、祭りは夜を呼ぶ。)「……ん?えっ……?……おい、誰か居るか?……全く。人をこき使いよって、あいつら僕を誰や思とん。宵宮くらいは楽しませてもらうからな……帰るか。」(ふと、手に握られた硬貨の感触を不思議そうに親指で数えた。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ。)「はて。」(深く気にせずに、財布にそれをしまおうと懐に手を入れた。懐には財布がひとつ、それ以外には何もないから、特に困ることはなく見つけられた。片手で狐面を軽く直して、歩みだす。)「べっ甲飴でも買おかぁ。」〆【誰が為に花は咲く】   (8/14 19:05:34)