この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

真朱&ジュリイ

塩辛い水

マリア/真朱 > (祭りの喧騒から少しだけ離れた裏通り。ちらほら屋台はあるものの、山鉾が通らないというだけで人もまばらだ。道を歩くはウズラの雛。ひよひよひよひよひよひよと絶えず小さな声を出しながら小さな足をとてとてと進ませていた。黄色っぽいのと茶色っぽいのが混ざりあったちくちくふわふわとしたそれは羽なのだろうけれど、上から見ると毛玉のようだった。その雛を追うのは、一人の少女。鮮やかな赤い浴衣を着て裏通りを歩いてゆく。)「まってー。」(鶉は裏通りを爆走するが、不思議と彼女──真朱に警戒心を抱いてはいないようだった。妙に人馴れしている理由は、おそらくうずらすくいの屋台から抜け出した迷える一匹なのだろう。迷える小鳥は、あなた目掛けて一直線。)   (8/9 13:53:26)


盛岡冷麺/ジュリイ > 「(黒い外套に青いサンダル、フードを深く被った小さな影がまばらな人の海をゆらりふわり。やがて貴方が追いかけているうずらが私の足にちょん、ってぶつかったの。ちょっとちくちくするけれど柔らかいそれに驚いて、恐る恐る足元を見ると可愛い可愛いうずらちゃん。元気なかわいい鳥さん、潰しちゃわないようにそっと両手ですくい上げる。不思議と鶉は僕のことも警戒していないみたい。なんでだろ、普通の子供に見えたのかな?外套の中触手をうにゅうにゅと漂わせては貴方の方を見やる。これ、貴方のお友達?って。)あ、あの、この、このこ、ねぇ、赤い浴衣、さんの、おともだち?(うずらをあなたの方に向けて、こて、と首を傾げる。あなたから見えるのはゆらゆらと揺蕩う色素の薄い瞳と、不思議な色の髪がちらりと見えているだけ。あなたに警戒されないよう、にこっと笑いかける。同じくらいの歳なのかな、もしかしたら仲良くなれるかも!って。)」   (8/9 15:08:33)


マリア/真朱 > (鶉がこつん、とサンダルを履いた女の子にぶつかった。そっと掌で抱き抱えられた鶉に合わせて視線を追わせると、きらきらと水を湛えた瞳と、光を受けてオパールのように輝く髪を持った美しい少女の微笑みが目に入る。)「……ううん。友達……じゃない。多分屋台からはぐれた一匹だと思う。」(たっ、と駆けてあなたに近寄れば、赤い尾鰭がふわりと揺れた。)「赤い浴衣さんじゃないよ、わたし真朱、一人なの。あなたは?」(鶉を抱く掌をとって手を繋げない代わりに、下から自分の赤い手を添えた。あなたの手はどこかひんやりと冷たくて心地よくて、ぞっとするくらいすべすべとしていた。)「捕まえたけど……この子どうするのが正解かな?屋台を探して戻す?でも、逃げたくて逃げたんだよね。ねぇ、二人で食べる?それとも飼う?」(鶉は本当に人馴れしているようで、すり、とあなたの指に頬ずりをした。鳥は情の深い生き物と聞いた事がある。飼い主を……何と思うんだっけ?あぁわかんないや、忘れちゃった。)   (8/9 15:31:11)


盛岡冷麺/ジュリイ > 「(ひよひよと鳴く鶉が僕の指に頬ずりをする。ちっちゃくて、ふわふわしてて今すぐにでも壊れちゃいそう。怖いけれど、貴方のほんのりと赤い手が添えられているから少しだけ怖くなくなったの。名前はまそほちゃん。綺麗な名前、ウェンディアの人じゃないのね。赤い浴衣がとっても似合ってる!そうだ、僕も自己紹介しなきゃ。)えと、えとね、ぇ、ジュリイって、いうの。ぼくもねぇ、ひとりだよ。(もしかしてもしかして、これってお友達になれる?幸い__いや、人から奪ったものだけれど、お金はあるし、どこかで何か食べるのもいいじゃない!嗚呼、ちがうちがう。まずはこのちっちゃい鳥さんをどうするかだ。食べちゃう?でも逃げてきたって事は、死んじゃいたい訳じゃないんだよね、きっと。)   (8/9 15:50:01)
盛岡冷麺/ジュリイ > どう、どうしよ、っかぁ。でも、やたい、もどすと、し、たら….みつかる、かなぁ?飼う、飼うのも、死なせちゃった、ら、かわいそ。(かたこととボロボロな言葉を繋いで話す。水に侵された脳はびちゃびちゃでうまく言葉が出てこないの。それでも、結構一生懸命話せたと思うの。貴方と目を合わせて、眉をひそめる。ちっちゃい鳥さんがすりよってくるのはとってもかわいいから、なんだか僕が食べるのもかわいそう。)」   (8/9 15:50:11)


マリア/真朱 > 「ジュリイくん……可愛いね。そっか、一人なんだ。」(やけに丸い目を細めて、真朱はくすっと笑った。黒い外套に体型と顔の一部が隠されていて、真朱はあなたの性別が分からなかった。初めはあまりにきれいな顔だから、女の子だと思ったけれど。『僕』なんて言うから、男の子なのでしょう。なんて決めつければ、『ジュリイくん』と馴れ馴れしく呼んで。名前もかわいいけれど、たどたどしい喋り方も、美しい顔も、どの女の子よりも可愛いと思いながら微笑むのだ。)「……可哀想か……優しいのね。んー、それなら、じゃあ……やっぱり死なせないように頑張って、飼うしかないかな。……名前つけない?」(鶉を赤い指の腹で優しく撫でて、そう呟く。)「真朱がおかあさんで、ジュリイくんが、おとうさんね。名前つけていいよ。」(そう言えば、あなたは男の子じゃないよと言ってくるだろうか。)   (8/9 16:09:05)


盛岡冷麺/ジュリイ > 「(ジュリイくん、だって。あは、そっかそっか、ちゃんと僕の姿が見えないんだもんね。うーん。でも、もうこのままでもいっかぁ。どうせ姿を晒すつもりはないし、ちっちゃい鳥さんのお父さんだって!たのしそう。名前、名前かぁ。どうしようかなぁ。まそほちゃんの名前からとる?そうしよう!)うーん、とねぇ、じゃあねぇ、まそほちゃ、からとって…まほ、ちゃん?(ネーミングセンスなんてものは無い無い。子供のお遊び、これくらいが丁度いいのだろう。これくらいが普通の子供のはずだ。貴方に撫でられる鶉にちょんちょんと指先で触れて、ふふっと笑ってみせる。そうだ、この子のお家はどうしようか。ここら辺の近くにお家を作る?まそほちゃんならいいって言ってくれそう!)まそ、まそほちゃ、ん。おうち、おうちどうする?ここの、ちかく、つくる?(作るなんて言っても、齢16だった子供たちが作れるものなんてお粗末なものだろう。それでも、このお祭りの思い出として、なにかを残しておきたかった。そんな小さな我儘。)」   (8/9 16:22:53)


マリア/真朱 > 「いいよ、まほね!まほ、まーほ。」(まほと名付けられた鶉は、相変わらずあなたの手の中でひよひよひよひよひよひよと小さく鳴いている。)「お家作る?楽しそう。わたし、いいの知ってるよ。こっちに来て」(するりとあなたの腕に絡みつき、道を先導する。境内社をいくつか通り過ぎ、御仮屋、社務所と、どんどん、神官や実行委員しか行かないような場所へ。そしてたどり着いた場所には、まだ装飾がなされておらず車輪を外された山鉾と、豪華絢爛な装飾、そしてがしゃどくろのシンボルがあった。山鉾は切妻屋根を被せられていて、ちょっとした家のように見えるだろう。真朱はそれによじ登り、上からジュリイに声をかける。)「ここ、〝私たち〟の家にしよう、」(あぁ、なんという罰当たりな──。それに、柱だらけの山鉾では鶉を囲うことなど出来ないだろうに。真朱の瞳はもう、金魚のように、じっとジュリイだけを見ていた。)   (8/9 16:47:05)


盛岡冷麺/ジュリイ > 「(手のひらから"まほちゃん"がこぼれ落ちないように気をつけながら、貴方に腕を引かれる。おうちをつくるって言ったのはいいものの、ここら辺りの土地勘が鈍いからなんにもわからなかった。だからこそ貴方に従って、どんどん奥へ奥へ。)…まそ、まそほ、ちゃ、これ、来ていい、ところ?(するりゆらりふわり、貴方はどんどん奥へ進んで行く。一般人が入れないようなところにまで、行っているのではないか。__その嫌な予感は正解だった。山鉾があるところまで来てしまったのだ。ジュリイ自身は山鉾が何かわからないため、何か豪華なものがある、くらいだった。けれども、これはきっととても大切なものだ。それによじ登る貴方をみて、つう、と罪悪感の滲んだ汗が首筋をなぞる。)   (8/9 17:09:04)
盛岡冷麺/ジュリイ > まそほ、ちゃん、これ、きっと、だれかの、たいせつな、ものだよ…?これ、おうち、に、して、大丈夫…?(なにもわからずに、ただただ嫌な風が肌を撫でる。貴方のいるところを眺めながら、まほちゃんを手のひらに置いたまんま固まっている。どうしよう、こういう時って、どうしたら__金魚と、海の生き物ではない貴方と邂逅した小さな毒海月。珍しく戸惑っているようで、困った顔で貴方を見上げている。)」   (8/9 17:09:12)


マリア/真朱 > (躊躇いがちにこちらを見上げるジュリイを見下ろして、えっと声を漏らしてから残念そうにゆるゆると首を垂れた。なーんだ……真面目なのね。と、心底がっかりした顔で。こんなにわくわくどきどきする遊びに付き合ってくれないのは、所詮あなたが『友達』だからかしら。あれ?でも、じゃあ何なら……)「ジュリイくん……。」(あなたにもっと近づきたくて、ここを二人の世界にしたくて。真朱はぐるぐると考えながら、飢えたようにぱくりと口を開いた。あぁ、今思ってること。言っちゃ、ダメなのに。)「いいの、いいんだもん。……髑髏鉾なのよ、死神様のための、山鉾なのよ、」(言いながらあなたの目を見ることが出来なくて、がしゃどくろの空洞な目と見つめ合いながら、言葉は止まらなかった。)「わたしは、乗っていいんだもん。────死んでる、から……」(言ってしまった。ばさ、とおかっぱの髪を靡かせながら顔を上げた真朱の目から、飛沫がはねる。)「……!」(思わず山鉾から飛び降りて、真朱はあなたから逃げた。ジュリイくんには知られたくなかった、知られたくなかったのに。)   (8/9 17:48:08)
マリア/真朱 > 「……っう、ひっ……く。……いいもん、いいもん。何度だって、やり直すわ。」(夏を駆けた一人の少女は、どこへ向かおうとしているのだろうか。髑髏の空虚な瞳が、まだあなたを見つめていた。)〆【塩辛い水】   (8/9 17:48:22)