この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

咲夜&雅螺

骨牌/咲夜 > (尊華帝國の夏といえば、誰もが口を揃えてその名を唱える千景神社の例大祭。祭りを明日に控えた千景神社の本殿へと続く千本鳥居の前には、期待を堪え切れない観光客や地元住民らが明日から始まる宵宮の下調べをしようと手に手に提灯の灯を持って薄暗い山道に集っている。こそこそと声の音量を落して話す人々を横目に、薄手の着物を身に着けた咲夜は長い髪を高く一本に結い上げて鳥居の一番したから千景神社を見上げていた。今はまだ縁日の準備すら終わっていない本殿は夜の帳に包まれてどこにあるのかさえ定かではない。それでも明日になれば、千を超える提灯に照らされて、空には花火さえも打ちあがるのだ。そうして消灯……、恋人が生れやすいという夜。咲夜は伏し目がちな瞳を羨ましげに僅かに細めると、小さく息を吐き出して視線を逸らした。その灰銀色の瞳が、行き交う人々の影法師に紛れて歩く、ある男の姿を拾う)……もし、先代殿ではございませんか?(驚きに目を丸めた咲夜は足早に黒髪の男を追うと、その高い位置にある背中に向かって遠慮がちに声を掛けたのだった)   (8/7 22:15:26)


極夜@雅螺 > 「うん?……へぇ?奇遇だね、まさかこんな所で再会する羽目になるとは。するなら宵宮の祭花火の下で再会でもしたかったものだ。さて、──元気にしていたかい?咲夜中将閣下」(すり、下駄が擦れる音に耳を澄ませる。小さな人の騒めきも練り上げられれば耳に心地良くはない、塵も積もれば何とやら。珍しく帯刀したまま人混みを水面の魚のように擦り抜け、何処とも知れない場所を目指す。とうとう明日に迫る大祭を控え、何処も彼処も人を抱え込んで重い音ばかり。愉しみ探しに視線を回し、滑り込む声から拾い上げた言葉を繋いで甘ったるく笑みを作った。嗚呼、浮かれ気分の金魚達の会話。実に面白い事で。悪趣味な遊戯に興じる途中、幾分下の辺りから声を感じた。鈴を転がすようで、何方とも付かない美しい声。──ふむ?大祭を控えた人の熱気が運命の神でも浮かして見せたか。僕があれ以外に用があって軍部に赴く事もないから会わなかった訳だが。流石に此処まで久しいと引っ繰り返って愉悦だね──しばしば、噂は聞いていた。一つに括られた長髪、灰銀の憂いにも見える瞳。ぱち、瞬いてから、ゆっくりと頭を下げ、語尾の掠れた甘いアルトで恭しく呟き)   (8/7 22:25:58)


骨牌/咲夜 > (振り返った男の顔は記憶の中に残る面影よりも幾分か年を重ねていたが、それでも一級の彫師が仕上げたような端整な面差しは変わることがなく皮肉気に歪められた唇からも嘗ての姿を偲ぶことが出来た。人違いではなかったことに安堵して肩の力を抜いた咲夜は、此方もと頭を下げる。こうして出会うのは貴方が軍を離れた時以来、さて何を口にしようかと開いた薄い色した唇は、本人の考えとは裏腹にあの時抱いた感想を素直に紡ぎだしていた)あぁ、よかった。お元気そうで。てっきりね、どこかで死んでいるんじゃないかと思っていたんだ。(笑い声を含んだ自分の言葉に咲夜ははっとして周囲へと視線を馳せる。けれども楽しげに歩く影法師の列は立ち止まった二人のことなぞまるで見えていないかのようで、立ち話を聴かれる心配がないと分かると、貴方へと視線を戻し、長い睫毛の下から懐かしそうに白面を見上げて途切れさせた言葉をゆっくりと繋げた。)   (8/7 22:47:41)
骨牌/咲夜 > あの時、お前様は随分と思い詰めていらしたようだからね。軍や蘭家の柵がなくなったら、そのままどこかへ飛んでいってしまうんじゃないかと。あぁ、悪かったと思っているんだよ、年上のわたしがもっと気遣ってやるべきだった。(思い出すのは元帥服を纏い杖を戴いたまだ若い20そこそこの青年の姿。耳に優しい甘い声を吐く唇はあの頃と変らず悪戯に微笑んではいるけれど、二代続けて元帥を出す名家の生まれが生み出した魑魅魍魎の如き重圧がその双肩にに圧し掛かりなんとも生きづらそうに見えたものだ。軍どころか家すらも飛び出したとは風の噂で聞いていたが、こうして改めて再会し、まじまじと眺めてみるとその面差しは昔よりも健康的に見えて長年、胸の奥につっかえていた物が取れたようだった。咲夜はゆっくりと首を横に振るとすまなそうに片手で自分の身体を抱いた)こんな話はいいか、もうお前様は自由の身なのだから、昔の話なぞ聞きたくもないだろうね。   (8/7 22:47:50)


極夜@雅螺 > 「っはは、貴女には敵わない。そうだな、其れを望んでいたかも知れない。そんなのはあの時の僕しか知らないさ」(上等な衣に袖を通して肩肘張って、嗚呼、窮屈で堪らなかった。嫌になった。我が名に冠された麗しの鳥のように飛んで行けたら。だから、辞めた。全部捨てて。隠し通したつもりの硝子玉。濁り切ったこころとやら、貴女には通用していなかったのかも知れない。菓子を溶かすような語尾が小さく揺れて、不安定に騒めきへと消えた。淡雪だけを掬い取る豊かな白い髪、神が気に入り其の手を加えたような人形めいた花のかんばせ。何も、変わらない。否、変わった気もする。貴女に釣られたのか、ちらりと視線を巡らせて頭を回す。立体的に浮かぶ周辺地図。はてさて、積もる話もあろうが、此処では些か気を遣い過ぎるか。僅かに外していた視線を貴女に戻し、ゆるりゆるり紡がれる鮮やかな言葉に目が眩む、ぱち、と何回か瞬いて両手を上げた。降参、降参)「やめてくれ。貴女の言う通りだ、全く何もかも見抜かれるとは、甘かったな。──いや、貴女が思う必要はない。事実、僕は自分の事を全部隠していた。貴女と同期の軍人から見たって、俺はただの酷い奴だよ」   (8/7 23:15:31)
極夜@雅螺 > (──年上か。確かにそうだな、うん。相変わらず不思議な人だ。食えやしない。否、否、食うつもりなんてありはしないが。此の人の前で嘘を吐くのは何時辞めたんだったか。……さて、折角の巡り合わせというなら、もう少し話がしたい。生憎暇なものだ、良い時間になる──如何にも貴女の前で皮を被ろうとしても上手く行かない。上手に踊って見せようとしても勝手に糸が切れて、隠したかった物が留める暇もなく落ちて行ってしまう。総て惑わし、狂わせ、愉悦に変える気儘な笑顔に柔和な色が滲み出た。緩く眉を下げて微笑み、ちら、と指で通りの向こうを指し)「時間があるなら話でも。良い茶屋を知ってる」(口角だけを釣り上げて。淡く通り過ぎる祭を前にした熱気に浮かれたのは自分かも知れない。手袋を軽く嵌め直し、普段は返事も聞かない癖に珍しく貴女の返答を待ち)   (8/7 23:15:42)


骨牌/咲夜 > そうでしょうな。あの時の貴方しか知らぬこと。ですが、酷いといえばその通りで、貴方が抜けると先に一言仰ってくれていたならね、わたしだって一緒に辞めてやったのに。あぁ、冗談、……でも本心でもあるんです、貴方が教えてくれたなら、手を回すこともやぶさかではなかった。(僅かに揺らめく甘い声、千本鳥居を抜けて本殿へと吹きあがる夜風に滲んだ貴方の声は人を喰った普段の貴方のそれとは違い、年齢相応、それよりもずっと若く聴こえたような気がした。やめよう、やめてくれと言葉を交わした筈なのに懐かしさに浸されたせいで胸を込み上げる思いを堪えきれず、視線を彷徨わせる貴方の姿を見詰めてくすりと寂しげに微笑んだ。手を回すと言ったのは、勿論貴方の妹君のこと。掴み所のない雲のような振りして存外融通の利かない貴方よりもずっと軍人に相応しいと認めている彼女ではあるが、貴方が思うのであれば最後の罪滅ぼしに蘭家と事を構えることすら辞さなかった。それも今となっては咲夜しか知らぬこと。貴方の花の顔に貼り付けられた仮面が剥がれ落ち、柔らかな笑みが姿をみせれば心の底が少しだけ暖かくなった。   (8/7 23:41:20)
骨牌/咲夜 > (嘗て「人の心がない」と誹られた貴方はやはり本当の貴方ではなかったのだろう。)ではお言葉に甘えて、参りましょう。どこへなりと、連れて行ってくださいな。ご存知の通り、明日は宵宮。軍人は顔を出さねばなりませんが、それも昼過ぎですからね。どうか貴方の話を聞かせてください。(指を指された方を見る。勿論其方を向いただけで、茶屋が見えるわけではないが、提灯を揺らして歩く人々の姿が映れば首肯して、どこへ連れて行ってくれるのかと期待を込めて伏し目がちな眼差しで貴方をそっと仰いだ。視線があったわけではないが、貴方の笑みを見てこちらも笑うと先導する貴方に従って歩き出そうか)   (8/7 23:41:40)


極夜@雅螺 > (人の心を喰らってばかり、我が身には決して触れさせない。吹き荒ぶ風もひらりひらりと躱して生きて来た己が身に、確かに貴女の言葉が──牙を立てた。足を縫い止める、牙。思わず先導していた足を止め、貴女を振り返り)「……、はは、タチの悪い御冗談だ。我が麗しの蘭の家も、そんな事になったら大層慌てただろうな。……、そうだな、言えれば良かったかも知れない。結局あの頃の僕は自分を隠す事に必死過ぎた。貴女の心を何年か振りに知る事になる程度には」(──手を回す、か。やれやれ、全く食えないというか、言動の規模が大きい方だ。おまけに其の大規模な言動が事実になる。おお、怖い怖い。……ま、あれの事で手を回すというなら、あの家は大層慌てただろうね。家柄の事は、互いに不干渉が為か。態々薮蛇を突く趣味はないさ──)「ま、元は土産物に特化していた店だけれどね。茶屋も兼業するようになったのは最近さ。其れもあって、形が良い練り切りを出す。ゆっくり歩いても直ぐだ」(かしゅり、かしゅ、下駄が細やかに地面を擦る音。騒めきは遠く、ただ、逢瀬に耳を澄まし)   (8/8 22:25:38)
極夜@雅螺 > 「嗚呼、あの祭か。イモータルの件もあるのに忙しいな。忙殺とは言い得て妙か、全く、尊華の伝統とやらは昔から僕達軍人に優しくない」(そういえばそうだった。そんな風情で態とらしく手を打つ。柔らかに釣り上がった口元が忽ち三日月の笑みに変わり、言葉の節々にけたけた笑いが滲んで消えた。人混みをゆったりと縫って歩きながら「見えた。丁度空いている、良い時間に来たね」なんてゆるりと指で向こうを指そうか。古き良き佇まい、ひそやかに息衝く小さな茶屋。然程有名な店ではないが、老舗というやつだ。味は自分の舌で証明済み。軒先に吊り下げられた灯には橙の色和紙が被せられ、仄かに辺りを照らす光は夕暮を閉じ込めた橙色。ぴた、と立ち止まり、相変わらず食えない笑みへと戻った表情とは裏腹、柔和な動作で貴女を手招きし)   (8/8 22:25:48)


骨牌/咲夜 > (振り返った眼差しは鋭く凍てついた刃のよう。喉元に切っ先を突き付けられているかのようで咲夜はゆるりと瞬いた。貴方の妹に向ける思いがどんなものか咲夜の理解は追い付かない。けれども、言葉と言葉の間に満ちる深淵に似た静寂。貴方が何かを考える間だったに違いないその数に思いの丈が偲ばれた。喧噪が遠く離れたことで夜風に乗って風下へと流れる煙が夜霧と共に袖に絡まる。提灯の中で溶ける蝋の匂いが鼻腔を擽り、その煙たさに咲夜はけほけほと咳をして片手の袖で口を抑えた。自分も軍を辞めたのに、先ほど口にしたそんな冗談が煙を巻き、苦みを増して余計に胸を悪くさせたようだった。)   (8/9 21:10:32)
骨牌/咲夜 > あぁ、それもこれも今となっては詮無きこと。知らぬが仏と申します。あぁ……っ、これだけ数があると堪えますね。良い練り物を出す店なら、いいお茶も出してくれそうだ。(はぁ、と大きく息を吐き出し肩の力を抜いたのも束の間。夜空に響く柏手、澄んだ音色に視線は自然と貴方の肩をこえてその手を見詰めた。はて。ふいに疑問符が浮かんだ。俄かに飛来した違和感の正体を探るべく、眼差しを伏せて揺れる貴方の着物の裾を見ながら口を噤んだ。白鶴が目を惹く黒い着物、何処かへと飛んでいきそうだと思ったのは潜在意識に刻まれた白鶴のせいだったのだろうか。   (8/9 21:10:49)
骨牌/咲夜 > いつもの調子を取り戻した貴方、立ち止まり手招きする向こう側に穏やかな橙色の灯が見えた。なるほど貴方に似合いの洒落た店だと破顔一笑したその時、違和感の正体に気が付いた。わたしのように杖を突いて歩いているわけでもあるまいし、洒落た貴方にその手袋はどうも似合わない。そう思えば長い軍属時代、貴方が手袋を外した姿をただの一度も見たことがなかった。ゆぅるりと上下に揺れる手を見詰め咲夜は小首を傾げると、その疑問を舌に乗せたのだ。あぁ、焔のはぜるにおいが満ちる。)……答えにくい質問でしたら悪いのですが、ひとつ序でにお聞きしします。貴方のそれは潔癖症かなにかでしたでしょうか?記憶違いでしたら申し訳ない。   (8/9 21:11:30)


極夜@雅螺 > (ふわ、と鼻腔を苦く溶ける煙が擽った。何時しか嗅ぎ慣れてしまったようにも思う、ひどく燻んだ香り。小さな咳込みの音に目を眇め「清流には辛い臭いだ。あそこは仕切がしっかりしている、さっさと入った方が得だね」なんて口遊んで見せようか。冴えた瞳は月写しにけたけたと嗤い、捻じ曲がった口元は無邪気に幼児が編んだような真意の無い笑みを作り出す。傾いた月光が夕暮色の行灯を透かし、ぱっと散った穏やかな色を赤い瞳に写して、先を行くように茶屋の入口を潜り)「此処の玉露は美味い。ま、人が少ない道にあるのは幸いだね。折角の雰囲気を壊されては堪らないさ」(はて、此の男は雰囲気なんて気にする男だっただろうか。其れ程には此の店を気に入っているのだ、こじんまりと夜の片隅に陣取り、ひっそりと嫋やかな隠れ家として息をする。行灯の火に目を細め、ちらりと視線を横に動かして店から出て来た。貴女が来ない事を不審に思ったのだろう、嗚呼……まぁ其れが最善の判断だったかは、別として。貴女の声が、朗々と耳に届く。ぱち、と瞬いて視線を手元に向けた。水の濁る、音がする)   (8/10 00:18:21)
極夜@雅螺 > 「     」(──"其れ?"どれの事だ、潔癖症?確かに僕は汚れた場所は嫌いさ、出来れば片付いた方が良い。鶴が泥水で羽を清めるなんて真似は出来やしない。嗚呼、嗚呼………………ああ、これか──泳いでいた思考が着地点へと舞い降りた刹那、意味のない声が落ちる。声にすらならない、悍しい嘗ての幻影に囚われた低い声。ぱっと視界の横に弾けた温かな行灯の光が、毒々しい程に染まった赤熱の炎に塗り変わる。ばちり、視界の端で炎が弾ける音がした。如何した、如何した、何時もみたいに隠さなければ。昔の事だ。嗚呼、ほら、何時もみたいに。隠して踊って肩でも竦めて見せろよ道化)「違うよ。醜いから隠しているだけだ。やけてしまったから、──いやまぁ、焼け落ちなかっただけマシだよ」(甘く掠れた語尾は幼児が紡ぐように余裕の色を無くして行く。一度見せられた幻影は中々消えはしない。けたけた、けたけた、壊れたように笑って手袋を僅かに下げた。────ねぇほら、気味が悪い。醜くて惨い、大火傷)   (8/10 00:18:33)