この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

アーサー&フギンムニン

Tanatophilia

マリア/アーサー > (『愛し合おうよ』──そんな台詞で幕を上げたグロテスクな御伽噺は、クライマックスを迎えようとしている。大理石の上に寝そべっているあなたの首に、上半身をテーブルに乗り出しながら手をかけた。馬の前足だけがテーブルにかけられ、後ろ足は地面についたまま。)「……っはぁっ…はぁっ……!!もっとっ、もっとっ!足りないっ、こんなんじゃっ、もっとっ……!」(首を締めようと力を込めるも、馬の身体が邪魔でうまく体重をかけられない……アーサーの目は、必死そのものだった。アフマルゴラーブはテーブルから転がり落ち、かたんと音を立てて床に投げ出される。)「……鴉さんっ、鴉さんっ!ふふはははは……はははっ、ひひっ、い、いかせて、あげる、よ、ふ、ふふ、ぼくのこと、愛して、愛して、愛して!」(蹄が硝子質の大理石テーブルを引っ掻き、ギィィと不快な音を立てた。アーサーは何かを思い出そうとしているのか、その記憶に耐えかねているのか……目からぼたぼたと涙を流しながら笑った。さわやかで、シンメトリーで、王子様みたいな。すてきな微笑み。………本当に、そう見えている?)   (8/7 12:03:15)


山葵/フギンムニン > ぅ”……ぐ…(落ちかける瞼、睡眠と死。表裏一体のそれを同時に味わい、既に意識を手放しかけていた。だが、今までの記憶がぶわ…とフラッシュバックしてきて、甘い誘いをその手で払い除ける。そのまま気高き戦士の如く鋭い眼差しを目の前の白馬に向けると、こんな言葉を吐くのだ。)誰が…誰がテメェを愛してなんかやるか!!俺は…俺は、”死んでも嫌だ”ねぇ!!(まだ麻痺して上手く動かない二本の脚でしっかりと立ち、地面に転がったアフマルゴラーブを手にして目の前のイモータルに立ち向かわんとする。強大な力の前、小さく弱い人間は武器を手にし、抗うのだ。)   (8/7 21:30:19)


マリア/ライラ > (死────耳慣れない言葉……いや、最も耳馴染みのある言葉のような気も、する。意味も分からぬはずなのに、愛しい者の名前のように、その響きはアーサーの耳奥へ入り込んで、聞き逃すことすら、できなかった。)「……な、に?……なん、です、か?」(払いのけられた手が震え、アーサーの表情はがらりと変わった。恐怖、怯え、何かに縋るような、捨てられた子犬のように、どこか、甘えた瞳。)「………う、あっ……あっ、いや、思い出したく、ない…………どうして。愛してっ、愛してよっ、愛して……アーサー!」(頭を抱え、白馬の前足が折られ、床に座り込む。思い出される記憶、貴公子のように微笑む金髪の男の姿は、彼の──いや、彼女の愛した──)「……あ、……だいじょうぶ、わ、わたしがっ、私がっ、愛してあげるっ、鴉さん……!わ、わたしだけが、あなたの、欲望を満たせます!眠らせて──違う、こ、殺して、あげる?……そうっ、ころしてあげるっ、ころしてあげます、ね……!」(武器を持たぬ手で、よろよろとあなたに近寄る。首を見つめて、もう一度手をかけようとし。)   (8/7 21:46:47)


山葵/フギンムニン > …あ?なんだ…?(突然様子が可笑しくなる目の前の男…いや、女か?雨に濡れた子犬のように、迷子になった子供のように。恐怖に震え、だが甘えたな瞳。床に座り込み、そして再度…先程よりもおぼつかない足取りのまま此方へと寄ってくる目の前のイモータルを、アフマルゴラーブで一突き。距離を取り、叫ぶ。)俺はアーサー何て名前じゃねぇ。…フギンムニンだ。…俺は放浪の鴉だ、誰の言葉にも縛られねぇよ。(突き飛ばした白馬の王子に近付き、よいせ、と片膝立ちを取り。)……なぁ、最期に教えてくれよ。アンタは何者なんだ。(そう呟くと、直ぐに発動できるよう魔術詠唱の準備を行い、耳を傾けた。)   (8/7 22:53:14)


マリア/アーサー > (アフマルゴラーブで突かれた上体は、いとも簡単に仰け反り、突き飛ばされた。バランスを崩し、白馬の足は絡まりながらよろめく。どぉん、と巨体が床に叩きつけられ、ぎしぎしと鳴っていた廃墟の床が微かに沈む。)「………う゛……っ、ぁ……」(フギンムニンと名乗った鴉が、鴉に似た魔術師がこちらへ近寄る。片膝を立てた姿は、それこそ御伽噺の王子様のようで。潤んだ瞳で見上げたアーサーの顔は、男性らしい顔立ちにそぐわない歪な雰囲気を放っていた。)「わた、わたし、ぼくは、アーサー。……アーサー?」(小さな声でそう取り繕うが、もはや彼女自身、混乱しきっていた。)「……わたし、わたしは──おもいだし、ました。……あぁ、神よ、どうかご慈悲を。太陽の名の下に……。」(彼女は横に倒れたまま、修道女のように両手を胸の前で組んだ。涙が鼻を通って、横に流れてゆく。)「懺悔します……。」(そう開かれた口が、懺悔の言葉を語ることはなく。『わたし、アリス・ヴァレンタインは……』の言葉を最後に、こてりと気を失った。アフマルゴラーブの衝撃よりも、突然溢れかえった記憶に耐えられなかったのだ。   (8/7 23:55:15)
マリア/アーサー > 彼女は夢の中で、走馬灯に似たフラッシュバックを見る。──『穢らわしい、私たち修道女は、あのような人達と一緒になる必要はありませんわ。』──そう、わたしは、折り目正しき修道女でした。奔放に異性に甘える女たちを蔑みながら、どこかで劣等感を拗らせた、処女でありました。『きっと王子様のような人が迎えに来てくれますから。』 夢見がちで、世間知らずでした。だから、優しくされただけで恋に落ちてしまった。あんな人とは知らずに。『……アーサー、こんな私を愛してくれる、王子様みたいなひと。』 彼が他にも沢山の女性と関係を持っていたことくらい、途中から気づいていました。それでも、アーサーは言ったのです。〝従順な君が好きだ、こんな事をさせてくれるのは、多分君くらいだから。〟と。 他の女を貶めるそのやり口は、酷く優越感を擽りました。他の女を蔑むことで保っていたプライドが、卑しく満たされてゆきました。 ……『わたしは、アーサーとあんなこともしたのよ。あなたたちに真似できる?』現状に甘んじたまま、膨張してゆく不安と自己への陶酔、歪曲した承認欲求に倒錯し、溺れるまでのプロセスはあっという間で。   (8/7 23:56:12)
マリア/アーサー > ……どんなにアブノーマルな行為でも望むところだと思っていたのが、もっと、もっとと求めるようになりました。『……アーサー、愛してよ……どうして?わたし、あなたのためなら、死ぬ事だって出来るわ。』純情で、何も知らないお嬢様だったわたしは、いつしかアーサーの歪さを超えてしまっていました。飽きられまいと必死になるあまり、いつのまにかわたしは恐怖の対象になってしまっていたのでしょう。『……首を締めるの、好きでしょ……わたしを殺す想像をして、ぞくぞくするって言ったでしょう。』それから、どうなったのでしたっけ。あぁ、確か、確かそう。結局わたしは、そうして命を絶ったのでした。……今までで一番の、快感でした。……色欲に溺れたとは、思いませんでした。わたしは愛を全うしたのだから、懺悔することなどなにもないと。ただ、最期に怯えきって軽蔑するようなアーサーの顔を見た時、たったひとつ、悔い改めました。……あぁ、わたしはずっと、与えられるままに欲しがるばかりだった。次に生まれ変わる時があれば、与える側になろうと。)「ころ、し、て、あげ……」(ようやく……ようやく眠れます。)   (8/7 23:56:34)