この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

由良&花崗

伝家の宝刀

マリア/由良 > 「……参ったなぁ。」(尊華帝國榮郷にて。獅子唐と名乗った軍人さんの刀を預かり持ったまま、由良は途方にくれていた。今まさに由良が出てきた場所の暖簾には、鍛冶屋の家紋が染めてあった。――端的に言うと、断られてしまったのだ。欠けた刀や折れた刀身が残っている刀は打ち直せる、だけど、獅子唐の刀は真ん中から折れてしまっており、しかもこんな良質な玉鋼は今日日めったに見つからないから、同じものは二つと打てない、と言うのだ。……玉鋼を見つけてくれば、仕上げは打てる。鍛冶屋は、そんなような事を言って由良を追い出した。)「……どうしよう。ダメでしたって言って、返しに行こうかな……。」(小柄な体で、抱きしめるようにして刀を抱えたまま、漆喰の壁に凭れて俯き、ため息をついた。)   (8/6 15:27:51)


黒助/花崗 > あら…貴方、どうしたの?(カンカン、カンッ。と、リズムよく響く高い音。何度も何度も繰り返され、途中でピタリと消えるものの、暫くすると再び再開される。それは、職人たちが鎚を振るって、高温に熱した鉱石の塊を望む形へと変化させていく音だ。その音の発生源は鉄火場という、外部の環境による変化がされにくい分厚い部屋のなかで行われているはずなのだが、その音の高さと大きさによって壁を通り抜け、こうして通りの方にまで聞こえてきているのである――空は快晴、夏場らしく日差しの強い日である。日差しは乙女の大敵のため、普段の制服に加えて帽子を目深に被ることで顔への直射日光を避けていた。しかし、見廻りに出ていれば否が応でも暑い場所を廻るため、その頬を一筋の汗が滴り落ちていった…そんな時、とある鍛冶屋の前を通りすぎようとした際。その漆喰の壁に寄りかかり、力なく地面に座り込む姿を見つけた。ぱっちりとした目、ふっくらとした頬。そして、手が掛けられていることが良く分かる、黒く艶やかな黒髪の女性がいた。だが、何故こんな炎天下に刀を胸に抱えているのかと疑問を感じ、ゆっくりとした足取りで近づくと、どうかしたのか、と訪ねていた)   (8/6 15:57:01)


マリア/由良 > (不意に声をかけられ、俯いた目に飛び込んできたのは石畳に映る影、軍靴、そして尊華帝國軍のものと思しき軍服のスカートだった。軍人さん、と思いはっと顔を上げるとあなたの不思議そうな顔と目が合い、夏の日差しに髪留めがきらりと光った。)「……こ、こんにちは。……ええ、ちょっとそこの鍛冶屋で、今しがた門前払いを受けたばかりなのです。この刀を、治してもらおうと思ったのですが……。」(思い切って、本当の事を言ってみる。何らかの手助けを期待している訳ではない。そんな事よりも、この軍人さんとお近づきになる事のほうが今の由良には重要だった。にっこりと敵意のない微笑みを向け、『軍人さんですか、いつも、おつとめごくろうさまです。』と感謝を込めたねぎらいも付け加えて。)   (8/6 16:05:50)


黒助/花崗 > そうだったのね…あぁ、これは確かに門前払いされるわね。大方、「これと同じくらいの玉鋼を持ってこなけりゃ直せない」って言われた所かしら(俯いていた視線が上がれば、膝の隙間からしか見えなかった顔をしっかりと見ることが出来た。健康的な顔色と肉付きは、同じ女性としても羨ましく思えるほどだ。艶やかな黒髪も近くで見ると一本一本丁寧に手入れされており、相手の一挙一等足に合わせてさらさらと揺れていた――そんな、美人という言葉を具現化したような女性がどうしてここにいたのか。その理由を説明され、半ばから折れているその刀を見れば理解することが出来た。見るからに業物の刀であり、半ばから折れてしまっている。これが普通の、いわば一般に流用されているものであれば直すことも出来ただろう。だが、これは業物だ。鍛冶師の中でも『匠』と呼ばれる部類の、技術・経験共に最高峰の人物らが作ったものは使われるものも一級品。生半可な鍛冶屋には置いていない素材を使うのも当たり前なのだ…それを知っているからこそ、この女性が鍛冶屋に断られたのにも納得がいく。   (8/6 16:24:09)
黒助/花崗 > 鍛冶師達はプライドが高いから、受けた仕事は完璧に仕上げるし、仕事の方法やそれに関係することを馬鹿にされれば直ぐに喧嘩をやらかす。だが、出来ない仕事は受けない。出来るかもしれないならやるが、絶対に出来ないものを受けることはないのである)…その、良ければなのだけれど。この刀を直すの、手伝おうか?(故に、このまま放置しておくのも可哀想だと思い。そう提案してみた。幸いにも自分の魔術はこういうときに一番活躍できる。もし良ければ、というのが前提だが、相手が良いのであれば協力するのもやぶさかではないのである)   (8/6 16:24:11)


マリア/由良 > (『この刀』と言いながら少しだけ鞘から刀身を見せると、すぐに得心したように状況を言い当てたあなたに目を見開いた。)「…わかるんですか?……そうなんです。すごい、ですね…!」(話しながらもじっとこちらを見据える瑠璃のような深い碧眼に気づいて、あまりにも臆しないものだから由良は少し気恥ずかしくなり、頬を朱に染めて俯いた。歳は同じぐらいだろうけれど、自分とは比べ物にならないほどに凛としていて、どこか優雅な雰囲気さえ感じるのはやはり軍人だからなのだろうか。女性にこんな言葉を使うのはもしかしたら、間違っているかもしれないけれど――『精悍』な人だと、心中で呟いた。)「え、手伝うって……」(突然の予想だにしない申し出に、きょとんとした目を向けて真意を探る。)「どういう事ですか?」   (8/6 16:42:40)


黒助/花崗 > そうね…説明するより、見せた方が早いかしら(手伝う、という此方の言葉に、その美人といえる顔立ちに『きょとん』と言う擬音が付きそうな呆けた表情を浮かべる姿は可愛いと思えた。こんな美人でも、少女のような表情を浮かべるのだと。だが、それで見入っていては相手への失礼に当たるだろう。故に、腰の後ろに差した愛刀を片方だけ引き抜けば、その刃の腹を空いている手でなぞりながら、呪文を唱えた) 『日に照らされて輝く石よ』(一言を奏で、刃の根本から尖端に向けて掌を動かせば。その手の動きに合わせて逆手刀の刃が淡く輝いていく)『人の眼を引き寄せる鉱石よ(そして、その手が尖端に辿り着き。更にその先へ、空中へと飛び出ていけば)『例え姿形が変われども、何も変わらぬ事実を見せよ』(その動きを追い掛けるように、刃の尖端が伸びていく。伸びて、延びて、延び続け――そして、ある程度進んだところで、延びる動きが止まる。そうして、最初に見せたときと同じように逆手刀の刃を相手へと掲げれば、刃の長さが先程の二倍ほどになっていることが分かることだろう)   (8/6 17:02:45)


マリア/由良 > (詠唱を耳にして、はっとした。鉱石の魔術――それを使う帝国軍人で、最も有名な人物であれば流石に由良の耳にも入っている。以前であれば解らなかったであろうが、ここ数年の協力体制により騎士団と帝国軍との結びつきも強くなり、騎士団の上層部が知っている情報ならば密偵も、知っていて当然。……乙木 花崗、尊華帝国軍、大将。将官の中で最も権力を持つ魔術師の御業を、目の当たりにしている事実にごくりと息を呑んだ。玲瓏に響き始める声は藍玉のように澄み渡り、ゆらりと動かされる指先の、淡い桃色の爪は蛋白石のようにきらりと反射する。淡い光を帯びはじめたあなたの逆刃刀は、由良の目を釘付けにした。この世にこれほどまで、美しい武器が、あっただろうかと。)「……あっ……」(そして、すらりと伸びた刀が目の前に掲げられ、由良は驚いてしばらく言葉を失った。)「…………す、ごい……です。……もしかして、この刀も……」(ようやく、あなたの言っている事が理解できた。おそらくは、この刀も同じようにしてくれると言うのだろう。)「……もう一度……見せて、くれますか?」   (8/6 17:37:05)


黒助/花崗 > えぇ、この刀と同じように伸ばすことが出来るはずよ。私の魔術、今のところは全ての鉱石に対して発動してくれるから(逆手刃の刀を伸ばし、魔術の効果を見せると。その様子をまるで美しいものに見惚れるような視線で眺め、驚いた様子を見せる相手。その様子は今までこの魔術を見てきた人達の中でも、純粋で清らかなものだった。この魔術を利用すればお金持ちになれる。この女を手に入れればどんな相手でも利用できる…そういった、下衆のような考えしか張り巡らさない奴等とは違う。魔術に見惚れ、慈しみ、素晴らしいと思ってくれている。そんな視線を、この女性は向けてくれていた)?えぇ、別に構わないけれど(もう一度見せてほしいと言われれば、そんなにこの魔術に引き込まれたのかと疑問に思い。しかし、隠すことでもないなと判断すると、先程とは反対に尖端から根本へと手を動かし、魔術を唱えることで元の長さへと戻していた)   (8/6 17:58:04)


マリア/由良 > (折れた刀がすらりと伸び、二倍ほどになったのを見てこくりと唾を飲む。元はこんな長さだったのか……。獅子唐さんの朴訥とした顔を思い返し、なんだか似合わない…と一瞬でも思ってしまった自分をすぐに恥じた。……いいえ、あの人もただ、今は『折れている』だけなのかも、なんて。)「……ありがとう、ございます……!これで鍛冶に持っていけます……。お礼、させてくださいっ!」(ぱっと顔を上げて、目の前の魔術師に深深とお辞儀をした。奥ゆかしい尊華人のことだから、お礼はいいとか何とか、言うに決まっているけれど。目的はそれだけではない、あなたと仲良くなるのも、私の『仕事』なんです──ごめんね。だから、なんとしても。)「お金が嫌なら…せめてご馳走させてください。みたらし団子やお煎餅なんか、いかがですか?私、大好きなんです。……ふふ。」(そう言って微笑む顔は心底、楽しそうだった。)【伝家の宝刀】   (8/7 17:39:28)