この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

ディラン&エヴリカ

夏色Dreamer

シロー/ディラン > (正午を過ぎた頃合の王都ウェントにて。所々煤で黒ずんだ作業服に身を包んだ男が通りのパン屋から顔を出した。王国整備士である彼は今日も仕事をしていたようで、昼の休憩時間らしい。幾つかのパンが入った紙袋を片手にぶら下げて、日向に出る。燦燦と取り付ける太陽を見上げながら目を細め、額に浮かんだ汗を首に掛けた手ぬぐいで拭った。)「もう夏だな⋯⋯。」((太陽を見上げていると一瞬で顔が熱くなるのを感じてすぐに下げる。実家の潮風の匂いを思い出しながら、紙袋の中の簡素な塩パンをまさぐって。一口齧ると隣の新聞屋へ顔を覗かせると、数週間ぶりに新聞を手にして日陰に逃げた。壁に凭れて新聞に目を落とし、パンを咀嚼しながら視線を走らせた。)「うーん、またイモータルか。⋯⋯賞金⋯」((今日も今日とて王都近隣で現れたイモータルについての記事がでかでかと一面に載っているのを見て顔を顰めた。頭に賞金がついたイモータルの事が過ったけれど、肩を竦めて溜息を塞ぐかのように口内にパンを押し込んで埋めつくした。)   (8/5 23:31:20)


骨牌/エヴリカ > (夏も盛りに近付く昨今であれば正午を過ぎた今の時間帯でも太陽の光は燦燦と王国の町並みを照らし出し、雀斑の散った白い肌を焦がす陽光にシャツの袖をまくり上げ、この国の主神でもある太陽を睥睨するも、それで雲が出て太陽が御隠れになるなんてことはない。カラカラに乾いた咥内。ルージュの剥げた唇を軽く開いて、新聞社に帰る前に隣のパン屋に寄るかどうか悩んでいれば視線は無意識に冷所を求め、日陰へと吸い寄せられた。そこで、不機嫌に細められた双眸が大きく見開かれる。日陰で広げられた大きな紙は間違いなく彼女が働く新聞社が出しているものだった。)……ちょっと、あなた!(彼女は鞄を片手で抑えながら、貴方の側へと走り寄ると日陰にいることでより大きく見える貴方の体に気後れすることもなく食い気味に詰め寄った。解れた髪が汗が浮いた項で揺れている)そう、あなた、新聞を読んでいる。その、ちょっとした調査なんだけど、今日の一面どう思う?   (8/5 23:45:33)


シロー/ディラン > (口いっぱいに急ぎ気味に詰め込んだパンをさっさと飲み込んだ所で、突然響いた声に反応し反射的に顔を新聞から上げた。見ればそこに居たのはシャツ姿の女性で。手に持つ鞄やらを見れば働いている女性なんだなとは何となく分かったものの、それを脳内で噛み砕く時間など与えられず、詰め寄られれば眉を上げて驚いて半音高い声を上げる。)「えっ?あ、俺、いや、自分ですか?⋯⋯今日の一面⋯⋯。」((ぐいぐいと押されれば腰が引け気味になるものの、生憎背は壁に預けられており。慌てて新聞を上げて文字の海に視線を泳がせた。正直だらだらと流し読みをしていたから、感想なんて用意している筈も無く、ましてや「お金を稼げたら」なぁと自分語りな感想を口にすることは絶対に出来ないと、数秒掛けて頭の中で感想を組み立て。顔を上げると乾いた笑い声を混じらせながら言葉を紡いだ。)「最近イモータルの記事が多いなと思って⋯⋯危ないですよね、もし近くに居たらどうしようかと思って怖いです。ははは⋯⋯」   (8/6 00:03:27)
シロー/ディラン > ((再び新聞に視線を逃がしながら、貴女が記者だとは分かっていないようで、ぶつぶつと更に付け足した。)「あんまり毎日新聞を買う、とかでは無いので、本当にイモータルの記事ばかりなのかは自信ないですけど、はは。」   (8/6 00:03:28)


骨牌/エヴリカ > (新聞紙の裏から現れた貴方の顔は大柄な体に反し、温厚な草食動物を髣髴とさせるとても穏やかな顔立ちだった。口をもぐもぐと動かしていた様子からすると何か、そう例えば新聞社の隣にあるパン屋で購入したパン、なんかを食べていたのだろう。新聞を見て思わず話し掛けてしまった自分の浅慮を反省して片手でぺしりと額を叩きながらも、軽く腕を組みなおして貴方を見上げる。壁に背中を押し付けた現在の姿勢から、貴方を逃がさない。貴方が草食動物なら彼女は肉食獣。それも獰猛な)……ん、そうよね、貴方の言う通り、イモータルの記事は増えているわ。この間なんて帝國の兵士が襲われて本当に危険だわ。新聞を買ってくれてありがとう、ってそうじゃなくて、もう!   (8/6 00:21:50)
骨牌/エヴリカ > (時間を掛けて紡ぎ出された貴方の言葉は彼女を喜ばせるものだった。自然と口角を持ち上げて微笑みを浮かべてしまうものの、貴方が当たり障りのない言葉を口にしたことで彼女のボルテージは上がっていく。組んでいた腕を解き、働きづめの環境の中で括れた腰に右手をあてると左手の人差し指でぴしりと一面を指さした。)その記事、私が書いたの。最後に名前が書いてあるでしょ、エヴリカ・アゾット。それが私の名前よ。それで、そのことを踏まえてもう一度教えて欲しいんだけど、読んでいて何が書いてあるのか分かりづらかったとか、知りたかったことがかいてなかったとか、不満点はなかったかしら?どう?(立て板に水、聞いている貴方に息継ぎすら許さない勢いで言葉を並べた彼女は最後に声の音量を落し、照れくさそうに視線をずらした)……私の、初めての一面なのよ。   (8/6 00:22:02)


シロー/ディラン > (うん、うん、と言いたげに細めた目元を穏やかな形に変えて相槌と頷きを返していたが、もう!と声を上げるものだから、えっ、と言いたげに眉を再び上へと上げて。なにか悪い事言ってしまったかな、薄い感想過ぎただろうか、と思考を巡らせるにつれて段々と眉を困らせていき。すみませんと口にしかけた所で新聞の一面を指さされた為に、その部分に視線を落とした。)「あぁ、えっ、そうなんですか!えっと⋯アゾットさんが書いたんですね、これ。初めて記者の方と話しました。」((おぉ、と口を開けて驚気を顕にしたが、言葉を続ける隙間は与えられず言われるがままにもう一度一面に視線を落とし。熱心に細めた瞳を走らせて数十秒程。「んー⋯⋯」と僅かに唸る声が止まったかと思えば顔を上げて、穏やかな笑顔を浮かべた。)「凄く分かりやすいと思います、不満点なんて有りませんよ、読みやすいですし。初めての一面記事なんですかー⋯、へえー⋯。」   (8/6 00:45:37)
シロー/ディラン > ((凄いなぁ、というニュアンスを込めて語尾を伸ばすと、もう一度熱心に一面を読み込もうとしてか視線を落とした。)「へえ⋯⋯、凄いなあ。この記事を書く為に聞き込みをしたり、きっと世界を走り回って大変なんですよね、この一枚の為に。憧れるな⋯⋯。」   (8/6 00:45:55)


骨牌/エヴリカ > (感想を促したものの実際に目の前で貴方が紙面に目を落せば落ち着かない気持ちになりそわそわと視線を上に向けたり下に向けたり、擦り減った靴底でとんとんと石畳の路面を叩いたりしていたが唸り声が止まって、顔を上げた貴方の黒々とした瞳が輝くのを見て、彼女は目をぱちくりして背筋を伸ばした。嬉しいとか恥ずかしいとか様々な感情が駆け巡り、瞬間的に彼女の身体を硬く強張らせたのだろう。けれども穏やかな耳に優しい貴方の声が彼女の緊張を溶かしてくれた)……そう? それは、よかったわ。そういってくれた人は貴方が初めて。(なんて平素を装っていつもと変わらぬ調子で言ってみるけれど綻ぶ口元を隠し切れない。貴方の素直な言葉は彼女を大いに喜ばせ、彼女は照れ隠しに乱れた髪を梳くいあげると、僅かに紅潮した耳朶に掛けてみせた。そうして貴方の視線が再び紙面に落ちると、彼女の視線も流れるように紙面へと導かれたのだった。)   (8/6 01:03:58)
骨牌/エヴリカ > 大変かと言われれば……そうね、大変。だけどやりがいのある仕事だと思っているわ。だって、実家で土を弄っているよりずっと楽しいもの。生きてるって感じがするわ。貴方は、ええっとどこかの工房の技師さんかしら? 最近じゃ休戦協定とイモータルのせいで産業特需じゃない? どこも忙しいから、なかなか旅行にもいけないでしょうね。(裏面に書かれた記事は野菜の値段の高騰。雨が続いたせいで葉物の痛みが激しく出荷量が落ちているらしい、それを見て故郷を思い出した彼女は懐かしそうに目を細めつつ、貴方から僅かに香るオイルの匂いに小鼻をひくつかせた。)   (8/6 01:04:07)


シロー/ディラン > (〝みんなそう思ってますよ、きっと。〟心の内で呟いて、遠くを見ているかのように細められた瞳で新聞と貴女の顔を交互に見遣った。土弄りなんて言葉を出してきた事が何故か面白くて「ふふっ」と喉を鳴らすかのような笑い声の相槌を零し、頷いていたディランだったが、最後に付け足された質問にコンマ数秒固まって。あー⋯⋯⋯と場繋ぎの唸り声を上げて、視線を今度は宙にさ迷わせた。)「そうですね⋯⋯最近は忙しくて⋯その分給料は出るので助かりますけど、はは⋯。」((歯切れ悪く言葉を続けながら、どう言えばいいかを悩んでいた。記者がどこまで知っているかは分からないけれど、「整備士」と言ったら⋯「人間を機械兵として戦わせている職業」だと思われるのではないか。決して彼等の事を機械だとは思えないし、道具としては扱えないディランだからこそ、一部の整備士との温度差には気付いており。   (8/6 01:27:11)
シロー/ディラン > 一般的にはそう思われているんじゃあないか、と考えてしまう。んー⋯⋯という場繋ぎの繋ぎもそろそろ限界が来てしまう。すとん、と視線を下げると人当たりの良い控えめな笑顔のまま、観念してか答えた。)「⋯⋯あのー、聖フィニクス騎士団付きの整備士をしています。⋯⋯自分にはこれしか出来ること無くて⋯」((「魔術師になったら死んでしまいそうで」とは情けなくて言えずに、気まずさから貴女の肩越しに時計台を見るふりをした。   (8/6 01:27:20)


骨牌/エヴリカ > (穏やかな雰囲気を湛えた貴方だからこそ数秒の緊張は空気を震わせ、彼女の汗ばんだ肌は容易にそれを感じ取った。言葉を伸ばす貴方の癖に早々に気が付いた彼女は、なにも言わずに続きを待ったが、貴方の誤魔化すような台詞には思わず小首を傾げてしまった。『なぜ?』と思った。けれども、貴方が考えあぐねながらも紡ぎ出した結論に、片手の指を顎先に添え、貴方の懊悩に思いを馳せながら視線を横に流すと成程というようにひとつ瞬いた)……貴方、魔術師?どうかな、ちょっと自信ない。(思わず口をついて出た台詞、それは出逢う相手には必ず聞いている質問だが、彼女はふわりと笑って肩を竦めると首を横に振った。貴方からは魔術師が持つ自意識の高さや生気、自信が感じられなかったからだ。視線をあわせないように遠くを見詰める気弱な視線がそれを証明していた。けれども、今それを指摘できるほど貴方と彼女は親しい間柄ではなく、帰社する時間も迫っている。彼女は腕時計で時刻を確認すると色の薄い金髪を片手でがっと大きく搔き乱した)   (8/6 01:55:43)
骨牌/エヴリカ > あーもう、こんな時間。貴方ともっと話したかったんだけど、そろそろ戻らないと怒られちゃう。いい話が聞けて良かったわ、貴方の貴重なお昼休み貰っちゃってごめんなさい。もしよかったらなんだけど、これ(そう言って彼女は鞄から名刺を取り出し、トンと貴方の胸ポケットへ挿入する)今度時間があったら、貴方の話聞かせてくれない? 整備士って誤解も多い職業でしょ?多くの人に、貴方がどうしてその職業を選んだのか、なんで整備士を続けているのか、なにを目標としているのか、知って貰えたらなんて。あー、駄目ね話が長くなっちゃう。今度、特集組ませて!(それじゃあね、と言い残し、彼女は片手をひらりと振って炎天下の街路へと踊りだす。片手を目の上に翳して日光を遮り、新聞社を目指して颯爽と歩く彼女の姿は、夏の太陽の下で輝いていた。)   (8/6 01:56:01)