この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

瑞希&透紙炉

出会いにより出ずる

愁空/瑞希 > よし。行こう。(背負った花籠一つ。お腰に付けた、同じく花籠これまた一つ。とんとん、とブーツの先で地面を鳴らし、休憩終了。彼女は花売り、店を構えぬ花屋。故に、誰かに花を届けるためには自分自身が街を練り歩くしかないのだが。この尊華は一人歩くには広く、そして花売りにはそれなりの需要があった。日により歩くルートを変え、何曜日にはこの通りを、と決めている彼女にとって、決めている道を決めている曜日に歩けなければ大損である。そのルート取りも街の人々に浸透してきた傍、「あら今日は来なかったわね」などの一言でも聞こえ、それが広まってしまえば――とまで考え、ふるふると頭を振った。そんなことを考えている暇があるなら、歩く。歩く。一人思考を切り返し直し、服の袖をふわりと夜の尊華に靡かせて。花の匂いをこれでもかと纏う花売りは、堂々として通りの真ん中を歩く。今日の花売り口上はこうだった。)さあ、夜も更けたこの頃に。色を潜めた尊華の街に。色合い一つ、香り一つ、素敵でまばゆい花々を。わたくし、花屋瑞希に御座います。貴方のために、貴女のために。夜と共に参りました。夜明けに一輪、花はいかがでしょうか――   (8/4 20:28:08)


ルーズ@透紙炉 > 「そこの花売り。少しいいか」可憐な花の香り纏う少女に、声をかける人影あり。人影、春秋に富む容姿なれど、辺りに侍らせるは百戦錬磨の風。使いの者2人ほどありけるに、指でもって暇を命じた。「尊華帝國軍中佐、透紙炉というものだ。この辺で不審者を見かけたとの報告を受けて来てみたのだが、心当たりはあるか?」多言を要しないその者の言い草は、尊大であったが、花売りの容貌に少しばかり声をやわらげて腰を屈め、しかし、空を使えば強引な手段も辞さないと目で語っていた。「協力してくれるのなら、その花、10輪ほど買おう」報酬を餌に情報を引き出す気は無いが、これは彼女なりの誠意の現れなのだろう。少し、不器用とは思うが。   (8/4 20:46:33)


愁空/瑞希 > はい、如何なさいましたか?(耳に入るは気高き声。人さえ音で裂く様な威厳。くるりと音の方を見た少女 は些とも動じず声を返す。百戦錬磨の風に相対し、此方は百輪乱舞の風。穏やかで嫋やかな少女、厳かでしかし冷美な女性。真逆の存在を示す二人が交差する。最近は軍の方に話しかけられる事が多いものだ、などと脳裏に向かって心の内で呟けば。)……不審な素振りの者は見かけてはおりません。容姿を伺いたく。軍の規定によりお話できないのであらば、私からはこれ以上ご協力できません。(と、相手の求める情報を一言目に。協力の姿勢を表すように二言以降。流石の花売り、言葉遣いさえ相手に合わせてみせた。そして相手の言葉の尾、協力の条件に関しては苦笑を浮かべる。肩を竦め、腰の花籠を袖で覆う。つまるところ、『その条件は提示されずとも、此方は協力する姿勢がある』。それらは二言目以降で示しが付いていた。やや交わりきらない会話の中、置かれた本質は二つ。不審者を求め、対し応える。花は情報提供の意味合いでなく、心の底より求めてお買い求めを。   (8/4 21:01:53)


ルーズ@透紙炉 > 「……あぁ、又聞きだが、細身で低身長、で顔まですっぽり覆うほどの濃紺のローブを纏って息遣いが荒かったそうだ。ある者の知らせでな。咎人の身分は明かせないが、少々緊急性の高い要件だ。改めて、見覚えはあるか?」凛とした花売りの少女に僅かに胸中で態度を改めた彼の佐官は、どことなく、慷慨の表情浮かべたる。それは、些かならず、私憤に見えてならなかった。「それと、有り得ない話ではあるが、仮に其の方がその者を庇い、私に嘘を吐いても、私はそれを見破ることが出来る。不躾ですまないが、民を守るためなのだ」彼の佐官は義憤に燃ゆるゆらめきのようであった。少女の意のある所を探ろうと、言葉を選んでいたが、舌戦で出し抜くのは容易ではないと先程の態度から察し、理を外れた力を用いると、暗喩するに至った。立場上、苟も下々の民を脅すような真似はしたくなかったのだが。   (8/4 21:22:47)


愁空/瑞希 > 細身。低身長。―――濃紺のローブ。(暗紅色。怒りに似た、此方を疑る色。言葉の節から滲む色は墨が和紙に染み込むように、少女の身体を染める。共感覚とは即ち、相手の感情を直に受け取る諸刃の剣。暗い感情が染み込めば、此方とて同じ感情を得る。)夕暮れ刻に、一人。該当する人物が私の横を通りました。恐らく今追っても追いつきません。随分と慌てた様子で駆けていきましたから。――しかしながら。言葉と花とは似たようなもの、幾重に重ねても、その中心は変わらないものです。軍人様。花をお買い上げになりますか?(提示された条件の中、記憶の海を辿る。花売りは人の顔を覚えて歩く。そして、少女は人を好む。自らの横を、掠めるように通った人間ともなれば客でなくとも覚えるもの。求む情報を差し出したのち、紡いだ言葉は暗喩も暗喩。――花と皮肉は尊華の宝。その全てを身と言葉に宿す花売りは、正に尊華の民。にこりと浮かべた笑みは商人のそれ。が、嘘など一片も抱えることなく。暗喩も暗喩の言葉の意味合い、正しく訳せばこうだった。   (8/4 21:40:25)
愁空/瑞希 > 『言葉を花びらの如く重ねても、私の前では本質のみがわかります。無意味な脅しはやめたほうが良いですし、花にでも癒されてお気持ちを落ち着けるなどしたら如何でしょうか』。)   (8/4 21:40:31)


ルーズ@透紙炉 > 「…………偽りは、ないな。よもや手遅れとは·······聞いていたであろう?早急に手がかりを探せ」少女の怖めず臆せずの答に、落胆と、苦渋と、冷淡を織り交ぜような声を漏らす。顔に手を添えて暫し慮ると、後ろに待機している2人の兵士に命じ、小走りで駆けていく背中を見送った。ある一定の地位に居り、頭立つ者として、それ相応の才は持ち合わせているはずだ。どう足掻こうと、彼女はこの場において、その責任が課せられる。「━━ふっ、あぁ、すまなかったな。少々取り乱していたようだ。約束は果たそう。なにか…………そうだな。秋空と夕陽に合う花はないか?」少女の気の利いた皮肉に、少しばかり相好を崩して問うた。罪人は裁かなければならない。だが、こちらも冷静を欠いていたと自覚し、少女のそれを素直に肯んずることにした。昔の話とはいえ、彼女も尊華の女。花を嗜まないなんて、無粋な獣に成り下がったわけではない。ただ、少し、郷愁を感じて目を細めただけだ。   (8/4 22:00:51)


愁空/瑞希 > ――お勤め、お疲れ様です。私、花屋瑞希と申します。先日も軍の方と言葉を交わしました。(彼女の纏う風が僅かに和らぎ、尊華の色が表に出る。と同時に、彼女も同じく態度を和らげ、一人の花売りとして口を開いた。目の前の客は尊華の女性。花を愛でる心がないはずもない。きっと、何かの事情があったのだろうと思い、自身に移った彼女の感情を振るい落とす。そうしてしまえば、温厚で、呑気ないつもの瑞希で。)ええ、ええ。ピッタリの花があります。秋桜はいかがでしょう。こちら、秋に咲くものが主ではありますが、人気の花。夏咲きに改良された種がこちらです。(相手の要望を聞き入れ、花籠を下ろす。夕陽の色に映える柑子色の花を付けた秋桜を相手に差し出し、「ピッタリかと」と付け加え。   (8/4 22:22:03)


ルーズ@透紙炉 > 「瑞希……か。覚えておこう」高原に咲く花が朱に染まるように、雪が解け、立春の訪れを感じさせる風のように、和らいだ少女を見て、逞しいな、なんて思いつつ首肯で返す。「イモータルの出現により、民の間に混乱の波が広まっている。軍部はそれを留めようと奔走しているのだ…………当然、私も。少しばかり物々しい連中が街に出没するだろうが、どうか受け入れてやって欲しい」苦笑を漏らして自分以上に不器用な連中の顔を浮かべ、代わりに断りを入れておく。民のため、とは言うが、素直に従わない者も、少なくはないだろうから。「ふふっ、ではそれを頂こう。……雅な花だが、私にはあまり似合わないのは少し残念だ」似合わない、と口では言うものの、彼女は似つかわしくない、鈴が鳴るような声で笑った。秋桜の花言葉は恋や乙女の純情に関するものが殆どだ。初心で可憐、白い秋桜なんかは、飾っているだけで、目を細めてしまうほど眩しいだろう。   (8/4 22:47:45)


愁空/瑞希 > イモータルが来てから……は、そうですね。変わった日常に、戸惑う方も見受けられます。けれど、変わった日常にいつも通りの日常を求める方もいらっしゃる。花売りは常、この足で、世を見ます。私は大丈夫ですが、貴女のほうが危うく見えますよ。(彼女の言葉は、民を心の底から想うもの。先程までの威圧感はそれほど感じず、薄れた分、民への思いやりを感じる。先日の軍人さんといい、どうして軍の人はこんなにも危うく見えるのか。眉根を下げ、『似合わない』との言葉を耳にし、これまた先日の軍人さんを思い出す。「軍の方は」と、言葉を続け直して。)……どうして、自身の女性の部分を否定されるのですか? 貴女とて尊華の女性。似合わぬ花など、どこにもないのに。(と。嘘が解る彼女だからこそ、目の前の花売りの言葉が真実であるということが解るだろうか。少し悲しげな表情を見せ、ずい、と彼女に花を押し付けた。似合わないなんてことはない、ということを押し付けるように。その花が彼女の言葉だというように。   (8/4 23:21:26)


ルーズ@透紙炉 > 「危うい……か。民に我が身の心配をされるとはな……平穏とは、平和とは、日常とは、きっと、誰かの不幸でできているんだろう。……願わくば、戦争など、もう二度と………………っと。すまない」危うい、と少女に告げられて、何処と無く、諦観したようなため息を漏らした。分かってはいる。だが、私たち軍人は、民の規範になり、民を守らなくては。それが私の為すべきことなのだ。それは、彼女が軍人である限り、変わることは無い。「……有難く受け取っておこう。瑞希は…………優しいのだな。私も、寛容にあるべきと常々思うのだ」花を受け取り、代金を支払った彼女は、向こうの方から使いに出した兵士たちが駆け帰ってくるのを見た。「すまん、世話になったな。良い夜を。今度は、ゆっくり話でもしたいものだな」それは彼女の本心であった。踵を返して、2人の兵士に何事かを話しながら、彼女は消えていった。手には、しっかりと、1輪の秋桜が握られていた。   (8/5 00:01:51)


愁空/瑞希 > いえ。(弱音とも、愚痴とも取れるような言葉。それらに返す術を花売りは持っていない。すまない、と言われると、たった一言だけ返す。魔術師の才に恵まれながらも、選んで花売りとして生きる自分。先日の邂逅といい、今回の邂逅といい、彼女の『花売り』としての選択を、僅かに疑問視させるような出会いが多い。自分たちは助けられる側で、助ける側の人間に助けてもらえる。――では、助ける側の人間は?ふと頭に生じた疑問は、瑞希の心に穴を穿つ。いつもの澄んだ二藍色に、濁った色が微かに宿る。花売りは、天職だ。でも、だけど。誰かを笑顔にしたいなら、花売りの傍ら――魔術師の手伝いをしたほうがいいのでは。)え、ええ……今度、ゆっくり。(珍しく、迷いが生じた。彼女の手に握られた秋桜と、少女の手の中に握られた不安。与えたもの、与えられたもの。それぞれがそれぞれに似合わない、と思っているものが、今回の邂逅により交わった。結果、瑞希がどうなるのか。というのはまた、これから先の。解らぬ話――)『出会いにより出ずる』〆   (8/5 00:34:36)