この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

咲夜&董

夜の花は、痛みに咲き

骨牌/咲夜 > (日が落ちて提灯の灯に照らされた植木市。大通りの左右に茣蓙を広げた商人たちは庭木・盆栽・草花など様々な草花をいっぱいに並べて道行く人々に声を掛ける。もうすぐ始まる宵宮、その前哨戦だと言わんばかりに神社の前に集まった百花繚乱と咲き誇る草花。華の字を戴く国だけに草木を愛する風流な帝國人たちは目を細めながら時に盆栽を購入したり、時に植木の傍らに立った露店で売っている林檎飴やカステラなどを買い求めたりと、それぞれが思い思いの時間を楽しんでいた。仕事が終わり、軍服を脱いで着物を纏った咲夜は、長い髪を結い上げて植木市へと足をむけた。杖を突いて歩きながら、目当ての店を探すべく伏し目がちな視線を彷徨わせ、小さな鉢に収まった草木を売る店の前で足を止めた)さて、どうしようか。(そうして、片手を顎先に寄せれば鉢を見下ろして考え込む。縁もよく植木市があるからとそこでとある人への贈物を買えばいいと思ったのだが、いざ店先に立ってみると生来の優柔不断が顔を出しなかなかこれと決めることが難しい)   (7/30 23:21:34)


ゑゐりあん/董 > ふーん…。中々賑わっているでござるな。何か祭りでもあるのでござるか?(久々に帰ってきた帝都。しかし、実家には寄り付くわけにもいかない為、離れた場所で宿でも取ろうと思いふらりとしていると、植木市に迷い込んだ。生来の信仰から草木は大好きだ。久々に感じる草木の香りを感じつつ、狐に化かされたのかのような雰囲気を楽しんでいた矢先、とある店先で悩んでいる一人の少女がいた。贈り物でも考えているのだろうか?何はともあれ、困っている人間を放っておくわけにもいかないし、それにこういうのは自分の領分である。話しかけないに越したことはないだろう)失敬。そこのお嬢さん。何かお探しでござるかな?(見るからに幼い少女、おおよそ14歳ほどだろうか。きっと家族などに贈り物をするに違いない。親不孝な自分とはずいぶんと違うな、なんて内心で思いつつ笑顔で話しかける)   (7/30 23:35:53)


骨牌/咲夜 > (不意に頭上から降り注いだ声音に面をあげた。古風な言い回しを好むその口調と女性にしては低めなその声音から一瞬、男性かと錯覚をしたが、元より半陰陽のこ身であればけぶるが如き長い睫毛の下から見上げた灰銀色の瞳に映る貴女の姿はまさしく女性のそれで。草木を写し取ったかのような貴女の深い色の髪を見て成程と瞬きをひとつすれば、口元に僅かな微笑みを添えて人好きのする笑顔を浮かべる貴女にこくりと頷いた)えぇ、部下の誕生日に植木でも贈ってやろうと考えておりまして。わたしもあれも草木の名前を持つものですから縁もよろしいかと。お嬢さんはなにを買いに?(親切な貴女の言葉にそう返しつつ、思わず笑みが深まったのは贈答品を贈る相手の姿が脳裏に浮かんでのことだった。そうして当たり障りのない世間話を持ち掛けつつ、ふと貴女の得意な髪色に既視感を覚えて双眸を細め、顎先に片手を添えたままそっと小首を傾げた)……はて、そのお顔、髪色どこかでみたような。   (7/30 23:49:19)


ゑゐりあん/董 > ほぅ…部下の贈り物にござるか。…え?部下?(最初こそうんうんと納得していたが、部下という単語に思わず聞き返してしまう董。こんな幼い少女に部下がいるのか?…あぁ、そうか。きっと、彼女は良家のお嬢様で、執事かなにかを部下と呼んでいるのだろう。最近の子供(と言っても推定五歳ほどしか離れていないが)は進んでいるなぁ、と思いつつ)拙者でござるか?拙者は特段用はなく、ただふらりふらりと歩いていただけにござるよ。それにしても贈り物でござるか。贈り物に草木を選ぶとは貴殿もわかっているでござるな。草木とは自然そのもの。自然が生み出した大いなる奇跡にござる。故に…(と草木について熱弁をする董。意外に思うかもしれないが、信仰の範疇にとどまらずに植物が好きなのだ。特に、家にいたころは様々な種類の花を育てたりもしていたほどである。そんなことであふれ出る草木への思いを語っていると、相手が自分の顔と髪を見たことがあると言い出して首をかしげる)はて…。拙者は貴殿に出会った記憶はござらんが…。…ん?否、どこかで見た気が…   (7/30 23:59:32)
ゑゐりあん/董 > (と、こちらも元は軍にあこがれた身であり、家は軍に忠を尽くしてきたのだ。少なからず、高い地位の者たちの話は聞いたことがあった。…が、董は正直話半分にしか聞いておらず、軍に幼い少女がいると聞いたことがあるくらいで、咲夜の容姿に関しては記憶していなかったため、ついぞ彼女が中将だと知ることはなかった)…まぁ、それはよいでござるよ。それよりも、何か目星はついているのでござるか?もしよければ、拙者が探すのを手伝うでござるが…如何かな?(と話を戻し、そんな提案をする)   (7/30 23:59:34)


骨牌/咲夜 > えぇ、おや。わたしも尊華では知らぬ人ぞいない者と思っておりましたが、まぁそのお話はいいことに致しましょう。(より良い利き手だった貴女が不意に返した疑問符に咲夜は驚き瞬いて細い睫毛の先を震わせるが、市勢の者の認識などその程度と早急に話を切り上げる。戦を求めた貴女が軍を諦める切っ掛けになった休戦条約、その協定の立案者であり主導者でもある咲夜と貴女とは浅からぬ縁があるのだが、今はそれを論ずる程に互いのことを知ってはいない。貴女が自分を知らぬことをこれ幸いと咲夜は貴女の疑問符を懐に収め、口紅を知らぬ唇が溌溂と語る言葉に微笑を浮かべつつ耳を傾けるのだった)貴女は草木を愛しているのですね。もしかすると草木の神が、悩めるわたしの元へ貴女を遣わしてくれたのかも知れません。それではお言葉に甘えて、ものは相談なのですが、花を贈るのならばなにを贈るべきでしょう。あれの誕生日は八月一日でしてね、それにあうのはどんなものか。……あぁ、べつに華など咲かずともよいのです、長く続いてくれるなら。   (7/31 00:22:01)
骨牌/咲夜 > (植物の神への信仰を持つ一族、となると幾つかの名前が浮かび、更にその中から常盤色の髪を持つものを特定するのは容易かったが、貴女が生家について口にするのを避ける様子から此方も敢えて口にはださず茣蓙の上に並んだ小さな鉢植えへと目を向ける。両手に収まるほどの小さな鉢植え。嫁を探してこいと彼には言ったがそう簡単に相手が見つからないことは長く生きて来たこの身が一番とよく知っている。もしもあれにいい人が見つからなかったら、後に残すものが欲しいと望んだ切なさを満たすものがいるだろう、ならば長く生きる木を渡してやろうと考えてここへ足を運んだのだった。そんな思いを胸に秘めたるがゆえ、瑞々しい緑の葉を見詰める咲夜の眼差しはいつにもまして優しかった)   (7/31 00:22:09)


ゑゐりあん/董 > ふぅむ。人の顔を覚えるのが得意ではない故…。もしかしたらばどこかで会ったやも知れぬが…。申し訳ござらん(と頭を下げて謝罪しつつ、相手が自分の草木に対する愛を褒めたため、嬉しそうにはにかんだ)左様。きっとこれも、我が神の思し召しにござろう。しかし、誕生日は意外と近いのでござるな。であれば、あまり日持ちも気にせずともよかろう(と何を選ぶかを考えつつ、相手の言葉を聞いて否定する)…花は、咲くことでその生に命を見出すのでござる。咲かぬ花は、それは花とは言えぬ。生まれし者にはそれぞれ生きる意味があるのでござるよ。…例えそれが長かろうと、短かろうと。その“生”が輝かしきものであるのならば、拙者らはただそれを見守るだけにござる(と、自分の見解を述べた。誰も、他人の生き様を否定してはならない。花は咲き誇り、その命を次につなぐのが役目である。その役目を果たせぬ花に、意味はない。…果たして自分は、花を咲かせることができるのだろうか。尊ばれる華を、咲かせることが)   (7/31 00:31:43)
ゑゐりあん/董 > …それで、なにか心当たりはござるのか?例えば…その相手の好きな花や、好きな色…。なんであれば、その者に似合う花言葉の花を選ぶこともできるでござるが…(鉢植えを笑顔で眺める彼女の隣に立ち、同じように鉢植えを見ながらそんな提案をする)   (7/31 00:31:46)


骨牌/咲夜 > あぁ、どうぞお顔をあげてくださいな。せっかく豊穣の神が結んでくれた縁ですから、なにはなくとも新たに結びなおせばいいのです。(大きな体を縮めて律儀に頭を下げる貴女に首を横へ振れば、咲夜自分の思い上がりに苦笑した。名声などそんなものかと思ってしまえば心も軽くなるというもので、此方の要望を受け取り真剣に考える貴女の言葉に耳を傾けつつ緩やかに首肯して一緒に植木を眺めるけれど、貴女が何気なく発した言葉にちいさな心臓が、どくんと跳ねた。耳がかっと熱くなりそれと同時に胃がきゅっと縮こまって指先が冷たくなる。なにか言葉を発しようと開いた唇が音を紡げず、唾を飲み込もうとして、自分の口の中がカラカラに乾いていることを知った。何も知らぬ通りすがりの貴女に申し訳ないと、なにか言わなければと思うのだが、顔が、耳朶が熱くて仕方がない。女性である貴女の『否定』の言葉だからこそ、その一言一言が咲夜の心に深く突き刺さり、草花で切なさを満たそうとした自分の卑小さが、それを誰かと分かち合おうとした愚かさがただただ恥ずかしくて、俯いたまま顔をあげることができなかった。)   (7/31 01:10:57)
骨牌/咲夜 > ……そう、ですね。(やっと口に出来た言葉はそれだけで、それ以上を紡げなかった。咲かぬ花は、花とは言えぬ。その言葉が何度も何度も耳の奥で反響する、無駄に長く生きるばかりで、花を咲かすことのできない自分はなんなのだろう。この千年で他国の領土を奪うことに成功した人間はたったの三人。そのうちの一人が自分なのだがそのことも、この自分が両国の戦を終わらせたことも貴女は知らぬのだ。次代に命を繋げられずとも、生き様でみせればいいのだと思って生きてきた咲夜にとって、ただの通り縋りが発した言葉は自分のすべてを否定するようなものだった。役目を果たせぬ花に、意味はないのなら)咲……木を、おくるのはやめておきます、申しわけ、ない。(俯いたまま顔を貴女に頭を下げると冷たい指先で杖を握り、貴女に背を向けて歩き出す。戦場にて無敗を貫いた咲夜という人物が、通りすがりの女の前で逃亡を選んだという事実が余計に心を締め付けたが、今の咲夜には逃げる以外の方法が見つからなかった)   (7/31 01:11:21)


ゑゐりあん/董 > そうでござるな。ここであったのも何かの縁にござる。それに、貴殿とは善き友に成れそうでござるよ(と快活に笑う董。…が、突然彼女の様子が変わった。先程まで明るかった彼女の雰囲気が、ガラリと一転したのだ。まるで、何かを踏み抜いたかのような)…?(うつむいたまま動かない彼女を心配し、声を掛けようとする董)だ…大丈夫(しかし、董の言葉を遮る様に少女は声を発した。不味い。失敗した。何を失敗したかはわからないが、とにかく不味い。自分は、犯してはならぬ領域に踏み込んでしまったのだ)ご…ごめんなさい…何か気を悪くした…かな…?   (7/31 01:23:26)
ゑゐりあん/董 > (不安げに尋ねる董。しかし彼女は素早い動きでそのまま帰って行ってしまった。董は引き留めることはできなかった。その時董の脳裏に浮かんだのは、あの仲の良かった幼馴染と別れることになったときのことである。己の軽率な一言で彼と積み上げてきたものを一瞬で壊したのだ)…なにしてんのさ…ッ(握りこぶしを作り、歯を噛み締める董。また自分は誰かを傷つけたのだ。誰にも勝てぬ自分が、最低な形で人を傷つけたのだ。その事実が董をひどく責め立てた)…ごめんなさい…ッ(ただ董はその場に立ち止まり謝ることしかできなかった。見知らぬ人を傷つけたその後悔を胸に抱いたまま、董は重い足取りで来た道を戻ったのだった。咲かぬ花は花ではない。花は咲かねば意味はない。では自分は、咲く花だと胸を張って言えるのか?答えは、誰も知らない)【夜の花は、痛みに咲き】   (7/31 01:23:28)