この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

リシリア&ビナ

雲壌月鼈

リプカ/リシリア > 「ふぅん……そう。 あのおかっぱの子は大将なのね? 道理で、美味しそうだと思ったわ。 ……あぁ、何でも無いわ。 これ、約束の情報量よ。」 大通りから抜けた先、路地裏に入りかけの所にある寂れた酒場に入ると、そこは営業中とは思えないほど薄っすらとした明かりのみが室内を照らしている空間だ。 大体集まるのは己のような身の上か、もしくは訳ありか。 とは言え、悪いことばかりでは無い。 男共と同じ空間に居るだけで虫唾が走るが、此方を全く認識しないのであれば我慢程度なら出来る。今にも嫌悪により嘔吐してしまいそうな程鳥肌が立って入るが、ひとまずは大丈夫だ。 話しかけているのは女性の情報屋。 物静かで単刀直入な相手だが、いざ情報収集となれば姿形や声音が変わり、全くの別人になるのだという凄腕らしい。故に情報量もそれなりに高く、なかなか雇うのも難しいらしいが。 己には関係ないだろう。この間潰して殺した男達の懐からちゃっかりと抜いていた貨袋にはそれなりの量が入っていた。   (7/25 17:38:12)
リプカ/リシリア > 自分は食事や衣服に金銭を一切使わない為、通貨など何の意味も無い。小気味良く小袋を相手の前へ放ると、相手はクールな表情を崩して少しだけ驚いた顔を見せる。 その様子に薄く笑いながら、その席を立ち店を離れた。 「花崗……ね。 さて、また会う事になるのかしら。あの手の人間って、どうしてか唐突に出くわすのよね。気をつけていても、どうしようもなく。 ふふ、それもまた良いかしら。 次は食べれるかなぁ、あの血肉を……。」思いを馳せているのは以前衝突しかけた帝国軍大将についてだ。あんなに美味しそうな人間は中々居ない。 女の身空であそこまでの立ち居振る舞い。威圧感。場数も相当に踏んでいるであろう雰囲気を感じた。 次に会うことを夢想しながら、考え事をしながら歩く足は自然と早まり、自身にしては珍しく前方に注意を払っていなかった。もし今人が飛び出してきたり、早足で歩いてきたりすれば、恐らくぶつかってしまうであろう程度に、己の意識はそちらへと割かれてしまっている。   (7/25 17:38:14)


木場田/ビナ > (闇のカーテンは開かれました。今宵二人だけのシークレットステージ。カーテンコールの挨拶なんて無いけれど、観客だって誰もいない。主役と主役の二人が出会う。これはそんな夜の事ですから。『言の葉を紡ぎましょう』。お話を、始めましょう。)「—————わわぁっ、あ、あぶっ」(ですが、その始まりは、間抜けだっただろうか。暗い、『影』に塗りたくられた、人の膿溜まり。裏路地の怪しい細道は、確かに夜に生きる者どもがひっそりと淀んでいるいるだろうが、スポットライトの月明かりが差し込む事もあるのだ。その二人は、月明かりの、朧気な白の光柱に倣って、同じく白い二人————いいや、一人と一匹だろうか。片や天蓋に広がるあの星空みたいなか輝く白の髪の、対して夜のように黒い装束の少女。片や綿菓子みたいなふかふかの巨大な羊。あなたは少女とぶつかることはなく、よりにもよって………ほむっ、ぼむっ、ふわん。『この巨大な羊』の、天上の毛心地を堪能することになっただろうか。   (7/25 18:07:27)
木場田/ビナ > 怪我なんて以ての外!ただ優しくあなたの体を半分も包み込むシルクの如きふかふか羊毛、そしてそんな羊の道連の少女は、ぱたぱた仰天したようにあなたの方へ駆け寄るだろうか。これは、そんな、ヘンテコな邂逅。これも悪くはないだろう。)「あ、あはは、ご、ごめんなさい………わた、わた、わたしのでっかいのがっ!ぶつかってしまい………!あわ、だいじょぶ?かな、かなっ!」(なんて『早口』で、箍が外れたみたいに、羊に埋もれるあなたに向かって流れる濁流の心配言葉は止まらないだろうか。月明かりの一筋は、雲から顔を覗かせて、こうしてあなたを呑気に照らしたか。)>リシリアさん   (7/25 18:07:58)


リプカ/リシリア > ───もふり。 そんな言葉しか出てこないほど柔らかい毛並みに包まれた為、一瞬呆けてしまう。 抱き心地が良いとか、気持ちがいいとか、そういう事よりもまず、何故、と。 状況的には此方が余所見をしていた為ぶつかってしまったのだろうが、己がぶつかったコレはなんだろう。ぶつかった瞬間に認識はしているのだが、理解が追いつかない。とりあえずは、この毛並みの持ち主に連れ立っている人物はこの動物を大事にしていそうなので、強くぶつかる寸前に勢いを弱めたおかげで羊は押される事は無かっただろうが。 「え、っと……まず、落ち着きなさい? 私も余所見をしていたから、特に問題は無いわ。 この羊……? は、貴女のペット……なのかしら。 こんな狭い路地に入るには少しおすすめしかねるのだけど…」 そして、その持ち主。酷く慌てている様子で、わたわたとしているのが見ていてすぐに分かる。 とてつもなく変な雰囲気だが、悪いとはとても言えない空気だ。 ほんわか、とでも言うのだろうか。少なくとも、この街に入ってからの彼女には無縁の言葉だったソレは、今確実に此処に在る。   (7/25 18:19:38)
リプカ/リシリア > 果たして、コレが良い出会いなのか悪い出会いなのかは分からないが、兎に角、この子は特段、警戒する必要も無さそうだ、と。 素直にそう思えてしまった。 数歩下がり、羊の全容を確認してからは更に首を傾げる事になる。目の前の少女は、一体何故こんな大きな羊を引き連れているのか。しかもどうしてこんな狭い路地に入ってきてしまったのか。こんなの、羊が止まる気がなければ前から歩いてくる存在にぶつかってしまうに決まっているのに。 恐らくは、そそっかしいタイプなのかな。と なんとなくそんな印象を相手に抱きながら、苦笑しつつアドバイスをしてみた。その言葉が今この場の雰囲気に似つかわしいかどうかは置いておいて、この路地には荒くれ者も複数居る。 こうやってぶつかって、何事もなく済む様な相手ばかりでは無いのだから。   (7/25 18:19:40)


木場田/ビナ > 「ご、ごめん、わ、わたし、焦ったらすぐ早口になっちゃて………」(どうやら、無事だったみたい。胸に詰まったものが腑に落ちたようにホッとした。指先を組んで、申し訳なさそうにそう切り出せば)「あ、えっと、ペットじゃない。家族だよ、このでっかいの『ガフ』っていうの。あは。ごめんね、人通り少なそうだし、近道できるかなーって油断しちゃってた………。」『メェー』(なんてもじつきながらことの顛末をぽつりぽつりと語るのであった。そも、確かにあなたの不注意もあったかもしれないが、こんな狭い路地をデカいの引き連れている方がおかしいのだ。大人しく表通りを通れば良かったものの。間延びした羊の鳴き声でオチがついて、でもやっぱり自分に非があると思い続けているビナはまだ申し訳なさそうに曇った顔をしていた。でも、心のどこかで安心していたのも事実だ。だって、あなたは許してくれたのだから。暴漢、血生臭い者ども、多少のリスクはあるものの、野生の勘で危険を察知してくれるガフに頼っていればこんな事態に。極端な巨軀が玉に瑕だ。   (7/25 18:35:52)
木場田/ビナ > —————でも、それでもㅤㅤㅤ『あなたは、大丈夫』ㅤㅤㅤ何も騒がないガフは、悠然にそれを証明して見せている。ガフの表情を横目に一瞥。すぅっと、路地を抜けていく湿った夜の空気がビナの白い髪とあなたの髪を平等に揺らすだろうか。風は、話の段落をつけた。)「お姉さん、優しいんだね。よくここを通る人かなって思ってたから、怒らないなんて思ってなかったもん。えへ、……ん、ほんと、ちょっと安心。でも、ごめんね、ぶっかっちゃって。」(落ち着きを取り戻したビナの言葉は、静謐な深緑の樹海のような落ち着きを持っていただろうか。さっきは、きっと、木枯らしが吹いただけだ。)>リシリア   (7/25 18:36:35)


リプカ/リシリア > 家族、という相手の言葉に目を細める。 己に湧いたこの感情は何だろうか。然し、この少女は悲劇とは遠い所に居るのだろう。 故に、自身が関わる訳には行かないだろう。こんな物と仲良くしていては、どうやっても平穏に過ごせる訳も無いのだから。「───家族。 そう、なら、とても、とても大切にし合ってるのね。 御免なさいね、ペットなんて言って。」 ───そう、心の底から想い謝罪した彼女はとても化け物には見えなくて。とても、人外にだなんて、見えなくて。 その言葉には万感の想いが込められている様で、細めた目からは深い愛情と悲しみが見え隠れし、それは雲で隠れる月のように、ほんの僅かな時だけの時間だった── (自分が何故こんな事を言うのか、自分でも分からない。だが、家族という言葉に強い感情を覚えた。すぐにソレは引っ込んでしまったが、どう考えても普通では無い。 「ふふ、そうかしら。優しそうに見えて、本当は羊を食べちゃう狼かも知れないわよ? ───なんてね。 まぁ、でも。心強い家族が居ても、あまりこういう道は通らない様にする事ね。 何かが起こってからでは、遅いのよ。」   (7/25 18:54:01)
リプカ/リシリア > そう告げたと同時に、ほんの少しだけ殺気が漏れてしまう。それは目の前に居る存在にでは無い。醜悪で気色の悪い男共の事がほんの少し脳裏に過ぎっただけでコレだ。 すぐに思考から消し去ったが、恐らく目の前の羊はそれも感じ取っているのだろう。 数歩離れると、脇へ逸れて通れる道幅を作った。 「この道を行けば良く見ないと分からない酒場の看板があって、そこを真っ直ぐ進めば大通りに出られるわ。 ……ガフ。ちゃんとこの子を守るのよ? ……そう、良い子ね。」 方向を指しながら道順を教えると、彼女は大きな羊へと話しかけ、何かに納得すればその毛並みを少しだけ撫でた。 ほんの一瞬、笑顔を浮かべてその手を離せば、名乗る事も無く足を前へと進め始めた。 この様な気分になった事は久方ぶりで、珍しく少しだけ口角が上がってしまう。純粋に笑みを浮かべるなんていつ振りだろうか。そんな事を考えながら、その足を止めることはなく、その姿は闇へと消えていく。   (7/25 18:54:03)


木場田/ビナ > 「うん、わたし、お母さんとか、お父さんとか『死んじゃったから』、この子が唯一の残ったわたしの家族なんだ。えへへ、ほんと、いい子なんだよ?」(不意に、そう言った。冷たい風が通り抜けて、そのままどこかへ行ってしまった。雲に隠れていた月明かりがまたぼんやりと顔を覗かせ、今度はビナとガフだけにスポットライトを浴びさせた。そして、ビナは彼女に宿った『言葉』の心情を読み解く。そこから導かれるのは、家族というワードに反応を示したそれ。ビナのペリドット色の瞳は、細められた目蓋に瞳孔が拡がる。藍色の雲はゆっくりと晴れていき、満月は漸くそこであなたとビナをまた照らした。)「うっ、うん……うん、もう、無くさないようにしなきゃ。」(漏れた。黒い瘴気のような、憎悪と絶望で塗り固められたドス黒い殺気が、一瞬だけ。ガフはその瞬間、ジリ、とその場から後退りしようとするが、それをビナは手のサインで静止させようか。こちらに向かれたものでないのを、本能的に察知したが、今のでどうしても、ああ、わかってしまったよ。 あなたが、天罰の体現であると。    (7/25 19:14:02)
木場田/ビナ > あれは、人には出せない。少なくとも、生きている内は出してはいけない気配だった。ビナーの理解は、そのことを理解させる。それに対して、ビナは切なそうに、今にも泣いてしまいそうに眉間に眉を寄らせて、唇を震わせるのみで、その唇は『言の葉』を紡ぐことができなかった。何を言っても、その言葉は語尾売りの嘘になってしまいそうだから。目を伏せ、大きく深呼吸をすれば、肺胞一つ一つに満たした冷気が冷静さを呼び覚ます。)「『わがみは かみがみにこう ————』」(いや、やめておこう。心の覗き見は、他人の心に土足で踏み入る行為。)「わかった。ありがとね。教えてくれて。」(あなたが促すのに従って、ビナはあなたとは反対の道を進んでいく。今度は、月明かりはあなたを照らして、ビナには、何も照らすものはなく。モヤついた雲は、月明かりを遮るのみだった。心のモヤは、晴れることはない。きっと、またあなたに会わなきゃ。)「いこっか、ガフ」〆   (7/25 19:14:17)