この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

リシリア&花崗

赤髪娘と大将首と、待たされ損の赤桧

リプカ/リシリア > ───陽気な声と活気が彩る大通りから、少し逸れた路地の先。一般的には路地裏と呼ばれるその道は、大通りとは違い静寂と不気味な空気で満ちている。本来なら夕刻前の今、少し眩しさの落ちた太陽が照らす筈の路地は薄暗く、先行きも良く見えずに居る。さて、大通りではなくこういう道を通る者というのは昔からどういう者かなんて言うのは大体決まっていて、一つは急いで近道をしようとする者。一つは世間知らずの田舎者が何も知らず使い、そしてもう一つは……。  奥まった路地を早足で往くのは男が三人。その風体は如何にもならず者といった風情で、後ろを振り返る事なく狭い路地を慣れた足取りで軽やかに進んでいた。 人相の悪いその顔には悪い笑みを貼り付け、ニヤニヤしているという形容がしっくりと来る表情を浮かべながら一番後ろの男が言う。『いやぁ、今回は上物だったな。奴隷にすりゃ数十、数百万ってか? 笑いがとまらねえなぁ……』 そう話しかける男に、何かが入った随分と大きい袋を二人がかりで持っている男たちがへへっ、と笑いながら相槌を打っていた。 良く見ればその男たちが担いでいる袋は、もぞもぞと動いている様にも見えるが……。   (7/24 17:15:03)
リプカ/リシリア > 兎に角、男達は急いでいた。まるで追手にでも追われているかの如く、実家のようにスルスルと進んでいる最中、異常が起きる。 『……え?』 たった二秒だ。二秒程話すのをやめたそのタイミングで、なんとなく後ろを振り返ると、そこに先程話しかけてきた仲間の姿は無かった。 まるで神隠しにでもあったかのような事実に首を傾げ、然しその直後に悟る。ちょうど建物の角、細道に差し掛かる場所に後ろから付いてきた男が着ていた衣服の切れ端が引っかかっている。 すぐに事態を悟った男達は迅速にその袋を地面に起き、その細道を確認する。 そこには、首を根本からねじ切られた男が、直立して血を噴き上げた所だった。 悲鳴にもならない声を上げながら、男達は足を引っ掛けそうになりながらも踵を返して袋の元へと走る。何が起こったのかはわからないが、男達も理解はしていた。何かが起こった事だけを。 そして、細道を曲がろうとした所で、彼らは自分たちの胴体を見る事になる。 とても低い視点から、真っ赤に染まり、動かせない視界を最後に、その意識はブッツリと途切れた。───   (7/24 17:15:06)
リプカ/リシリア > 「あァ、キモチワルイ。 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。 肥溜めの様な臭い。 吐瀉物の様な食感。 男は本当にまずくて、まずくて、不味くて。 いつの時代も、どの国も。男なんて、クズかゴミかカスかゲスしか居ない物ね。」 (女が居た。 薄暗い路地裏に、最初から存在していたかのように、憎悪と侮蔑と憤怒を撒き散らし、男達の死体を踏み潰し、蹴り、蹴り、蹴る。 まるで親の仇かの様に、執拗にそれを行っていた少女と言っても通用しそうな程若い女は、プツリとその行動を止め、深く息をした。 やがて、恨み言を吐き捨てるようにした後、男達の持っていた袋へと近づき、その縛を解いて中身を確認する。   (7/24 17:15:10)
リプカ/リシリア > 当然、そこに入っていたのは見目麗しい少女で。その少女はまるで鬼でも見るかのように恐ろしげな表情をしながら此方を見ていた。 当然だろう。急に攫われ、襲われ、縛られて。こんな所へ連れて来られたのだから。最初に目にした人物の頬に血がついていれば、それは当然恐怖する。 その恐怖は悲鳴を上げるには充分で、然し少女は口を布で塞がれており、声は漏れずに路地裏にくぐもった音が鳴るのみだった。 あァ、美味しそう。 少女を見て最初に感じた感情は、ソレだった。 然し、その欲望のままに行動する事は無い。最早飽きる程に我慢したその衝動を抑えながら、この少女を大通りに戻す算段を考えつつ、男達の死体を振り返った。   (7/24 17:15:14)


黒助/花崗 > ん、っ……ふぅ(がた、がた、というリズムの良い音と振動で目が覚める。ガラスの嵌め込まれたドアに寄り掛かっていた体を起こし、強張っていた筋肉を解すように両足を前に伸ばし、両腕を上に伸ばしながら全身を伸ばした。そして、その動きに会わせて眠りに落ちていた頭が回り始めたのであれば、窓の外を流れていく景色から大まかな場所を把握した――朝昼番、時間なんて関係なく多くの人や物が行き交う大通り。そこを緩やかな速度で通るのは赤檜で作られた一台の馬車だ。派手ではなく、しかし見る人が見れば目を引くように作り込まれたその馬車は、たった一人の…帝國軍の大将専用に作られたものなのだ。それも、大将が変わる度に作り直されるというほどの。対象と言うのは本来目立つべき存在ではあるが、『見る人が見れば派手だが、分からない人にとっては普通の馬車であるように見える馬車』をお願いしたのは、こうやって大通りを、街道を、もしくは王国の通りを進むときに無用な視線を集めないようにするため。彼女自身、目立つのはそこまで好きではないのもあるが、馬車を見ている間に金目のものを擂られたりする可能性もある。それを考慮し、彼女がそう提案したのである   (7/24 18:14:42)
黒助/花崗 > ごめんなさい、今は何時くらいかしら?(扉に寄りかかるように、深く座っていた柔らかな椅子から軽く立ち上がると、業者の座る前方に通じる小窓を開けて御者へと問いかける。その質問に御者は爽やかな笑顔を浮かべ、現在時刻を答えてくれた――その時刻から、予定通りに本部に戻れそうだと内心安堵すると。ありがとう、と声を掛けてから小窓を閉めた。そうしてから、再び長椅子に座り窓の外を眺める。そこには様々な人がいる。店の軒先で店主と雑談する女性が、褌姿で方に荷物を担ぐ運び手が、真新しい下駄を鳴らしながら走る子供達が。皆それぞれの今を楽しんでいる。その姿を見ていると、思わず小さな笑顔が溢れた。この日常を守るために、私達は戦い続けているのだと。そう、誇りに思えるから。   (7/24 18:14:44)
黒助/花崗 > (そんな街並みを眺め、数瞬ごとに移り変わる人々の営みを眺めていると。ふと、違和感を覚えた。それは、白い書類の束の中に薄い灰色が混じってるような、そんな小さな違和感。本来ならば気が付かないほどのことでもこうして気がついてしまえば気になってしまう。故に、再び小窓を開けて馬車を止めるように指示を出せば、完全に止まるよりも早く扉を開けて外の景色を確認する。新鮮な野菜が並ぶ店の軒先、馬車から降りてきたこちらに視線を向ける老人、止まった馬車の側を通り抜けていく自転車、先ほど通りすぎた子供達、その背後にある路地裏――ここだ。そう思った瞬間には『直ぐ戻る、暫し待機しておけ』とやや鋭い声音で御者へと指示を出し、その路地裏へと入っていった   (7/24 18:14:47)
黒助/花崗 > (違和感を感じたら、その瞬間を知りとらぬように意識しておけ。かつて教えてもらった教官の言葉に内心で感謝を送りつつ、路地裏を早歩きで進んでいく。そして同時に、奥へ奥へと進んでいく度に強くなる鉄の臭いに会わせて気配を殺していく。かつりと響く足音を殺し、衣擦れ音を殺し、一歩を進むごとに自分自身が霞に変わっていくような感覚を感じながら、角を曲がった)――動かないで。もし一歩でも動いたら拘束するわ(曲がり角の先にはパンを加えた美少年…ではなく、三つの大男の死体と頬に血が這っている女性。その後ろで両手両足を縛られた上、猿ぐつわを噛まされている女性がいた。その姿を見た瞬間に鋭い声を血の這った女性へと飛ばし、周囲を軽い殺気で満たした)   (7/24 18:14:49)


リプカ/リシリア > (死体を振り返りながらとりあえずその拘束具を外そうかと考えた所でふと、その瞬間。音も無く現れたかと思えば命令口調で、偉そうに指図をしてくる女が現れる。 此方に向けているのは“それ”に慣れた者であろう事を証明するかのような鋭い殺気。先程殺した有象無象とは明らかに違う者が現れ、恐らくはこの状況を見て此方を警戒しているのだろう。だが、薄く笑いながら赤髪の女は堂々と目を合わせ言葉を交わす。 「あぁ、違う、違う違う違う。 違うでしょう?お前。 さて、面倒ね。 見た所警らか何かよね? 服装を見るに……帝國軍かしら。 私、厄介事は少し避けたい身の上なの。 この女の子を渡すから、何も見ていない、何も知らない。 で通すって事は……出来ないわよねえ?」 ( 面倒くさそうに眉を上げながら、相手を見てため息を吐く。動くなと、動いた瞬間拘束すると言われている立場の者とは思えない程その態度は大雑把で。まるで相手を警戒している風ではない。   (7/24 18:35:23)
リプカ/リシリア > それもその筈。この距離、この位置関係。相手の立場がどういう物かは分からないし、性格も分からないが、恐らくこの少女を見殺しにするつもりは無いのだろう。でなければ即座に襲いかかってきてもおかしくない状況だ。男三人を殺したのは間違いなく己だとわかるだろうし、その上殺し方はひと目見ただけで人外のソレとわかる。あぁ、こんな事なら腰の刀を使っておけば少しは言い逃れ出来たかな。なんて後の祭りを思いつつ、出来る限りの交渉を促した。 恐らくは聞き届けられないであろう交渉。然して、この女に少女を引き渡すまでは良いが、その後取り調べを受ける為に詰め所まで。などということに関わる事は到底出来ない。当然だろう。己は既に人ならざるものであり、人と生きる事が出来る存在では無いのだから。詰め所に男が居れば躊躇無く殺すし、それが問題になる事も分かりきっている。故に、この女に付いていき先程殺した男達の悪行を証明する事は不可能である。 この女がどれ程やれるのかは薄々感じているが、それでも短い呪文や工程でこの距離や空間を無かったことにして私を止めてこの少女を守る事など出来はしない。   (7/24 18:35:30)
リプカ/リシリア > 動くな。と言っているがその実、動けないのは相手の方だろう。 「私はこの女の子をどうにかしようとは思っていないの。今は、ね? 貴女の行動次第で、この細い首筋に消えない傷が付いてしまうかもしれない……。私もそんな酷い事はしたく無いのよ。分かるかしら、兵隊さん。」 貼り付けた様な笑みを浮かべながら、相手へ問う。 この答え如何によって、直後の行動が大きく変わるだろう。この少女を傷つけるつもりは無い。自分に敵意を持って接する者以外、殺気を持って接する者以外の女性を傷つける事は、絶対に無い。 故に、口先だけだ。然し、その殺気は。その重みは。とても口だけの物とは思えない。 純然たる殺気を相手にぶつけながら囁いたその言葉は、とてもでは無いが嘘だと疑う余地の無い物だと判断されるだろう。   (7/24 18:35:32)


黒助/花崗 > ……(赤い髪、赤い瞳、少しだけ尖った耳、微笑の隙間から見える犬歯、身長、声音。そのどれを取って見ても、現状で指名手配されている誰とも該当しない。加えて、その背後で拘束されている女性の何処にも怪我は見え無かった。故に、目の前の女性が彼女へと危害を加えたわけではなく、彼女の頬の血と死体に怯えているだけだというのが分かった。その事実にたどり着けば少しの安堵を漏らし、同時に、相手への警戒度合いを高めた)それなら、一つだけ確認させて?――それは、誰が殺したの?(死体の傷口から見て死因は外部からのもの。それも、獣が獲物を捉えるように首を捻り取り、肉を抉ったと いう悲惨なものだった。惨たらしい、ではなく悲惨、と表したのはまだその死体が真新しいから。傷口からは紅く光を反射する鮮度の良い血が溢れ、未だに神経が生きようとその死体を震わせる。その様は、まさに今先ほど殺されたばかりですよと言い表しているのだ。   (7/24 19:01:14)
黒助/花崗 > 殺し方、そしてその死体の扱い方から殺したとすれば獣のようなものか。あるいは獣そのものか。街の中へとそういった存在を入れてしまったのならば、自分達の管理不行き届きであろう。しかし、大将である自分にそういった情報は入っていない。ならば潜入された、というのが正しいだろう。その上で、後者であれば死体を食い漁ろうとした矢先に自分が来る気配を察し、逃げ出すだろうことは予測できる――だが、逃げ出した痕跡が、どこにもないのだ。この路地は自分が曲がった所以外に曲がり角はなく、左右は二階建てや三階建ての建物が連なっている壁。そこを飛び越えるにしても、路地の奥へと消えていくにしても、死体の損傷具合から見て『血を踏んでいるのは明らか』なのだ。血足がある筈なのに、それが一切ない。空を飛ぶような獣ならば自分がすでに見つけ、追い掛けている。それらを纏め、周囲を軽く見回せば   (7/24 19:01:15)
黒助/花崗 > 微笑を浮かべ、背後にいる女性には手出しをするつもりがないと、周囲に満ちる殺気と共に言う相手へ視線を向け。その殺気に一切気圧されることなくそう訪ねた――ここまで来れば、相手にも自分がただならぬ存在であることは伝わるだろう。もし仮に、今ここで襲いかかってくるのならば迎え撃つつもりだと。自然体に立ちながら、何時でも腰の後ろに下げた小刀を引き抜けるように警戒していた)   (7/24 19:01:18)


リプカ/リシリア > 「殺した……? ねえ、貴女。貴女は普段、何を食べるのかしら。 豚肉、鶏肉、牛肉。それとも猪?熊、何ていうのも良いわね。 ところで、それら豚や鶏や牛を食す為に生き物を絞める時に、殺す、殺した、殺された。なんて言葉を使うのかしら? 使わないわよね。 なら、ソレに対してその言葉は似つかわしくないわ。ええ、全然。そもそも、ソレは食料としても不良品も良い所。 言ってしまえばそこらに落ちている残飯にも似た物よ。それらを廃棄した所で、ソレはなんて事の無い行為。違うかしら? さて。 質問に質問を返すばかりでは申し訳が立たないし、そもそも質問の意図を理解出来てない愚図だと思われるのもシャクよね。 貴女、とても美味しそうだし。 答えは、ワ・タ・シ。 じゃあね、お嬢さん。 また会いましょう? その時もまた、殺気を持って相対してくれるのなら、美味しく美味しく、食べてあげるわ。」   (7/24 19:26:45)
リプカ/リシリア > 相手が男を一瞥して紡いだその言葉は到底理解でき得る物では無かった。 こんなモノを生き物として扱うことすら烏滸がましい。 只の男はまだ良い。食料。家畜に対して愛着の湧く人間だって居るのだから、食料に対してどうして殺したの。あなたが殺したの。と問われるのは理解出来る。然し、自分より遥かに弱いと分かりきっている、こんな。こんな少女を自分の為だけに奪い、弄び、売り払う。そんなモノに、正の感情など湧く筈も無い。故に激情し、饒舌になる。いつもこうだ。頭に血が上り、自分が抑えられなくなるとすぐに舌が回り始め、言葉を多く紡いでしまう。 無駄なことを、意味のないことを。相手に理解出来る筈も無い事を言ってしまう。この歳、この見た目でコレほどの気配を持つ相手だ。苦労もしたのだろう。努力もしたのだろう。然し、それでも。甘く、優しい環境で生きてきたのだろう。そう考えてしまえば、嫉妬してしまう。    (7/24 19:26:49)
リプカ/リシリア > どうしようも無く、焦がれてしまう。故に、食べるのだ。この子を、いつか。 熟した時に。 先程の貼り付けたような笑みとは違う、見るものをゾクッとさせるような妖艶でおぞましい笑みを浮かべ、相手の質問に答えた瞬間に、背後の少女を少しだけ力を込めて相手へと投げる。 投げられたその強さは、相手が気を遣って受け止めてあげないと必ず怪我をするであろう強さだ。衝撃を殺し、勢いを無くし、しっかりと受け止めなければ確実に骨折する。そんな力加減で投げられた者を、相手は放ってはおけないだろう。故に、投げた瞬間に言葉を置き、足に力を入れ地を蹴る。凡そ人間とは思えぬその脚力は、その少女を受け止めている間に追いつく事など出来ない速度で、路地の建物を登り、消え去るだろう。   (7/24 19:26:53)


黒助/花崗 > 一体何を…っ!待ちなさい!貴女は…ッ!!(牛や豚、いわば家畜を殺したときに、殺した人物へと同じように問いかけるのかと聞かれれば。自分の問いかけとは全く違う質問に、一体どういう意味だと眉をしかめた。だが、それに続く言葉を…足元の男達を殺したのは自分だと、そう相手が言った瞬間に、体は一歩を踏み出していた――しかし、その動きを読んでいたと言わんばかりに、背後にいた拘束された女性を投げ付けられれば、その速度から無下に扱えば怪我をするということを察した。故に、踏み込みんだ勢いを殺し、文字通り『飛んでくる』女性を全身を使って受け止め。その勢いを殺すために後方へと跳躍する。そのお陰で受け止めた女性は怪我をせず、同時に、赤い髪の女性には逃げられてしまった   (7/24 19:54:43)
黒助/花崗 > (相手が告げた言葉を、受け止めた女性の拘束を外しながら考える。人ならざる虜力をもって左右の壁を飛び越え消えていった女性、その正体は既に理解している。だが、その正体に気がついた『程度』では出来ることは限りなく少ない。彼女に対抗するには正体だけではなく、その真意と『弱点』を理解しなければならないのだ…だが、どれだけ考えても、その『弱点』にはたどり着けない。故にそこで一旦思考を切り上げると、一瞬だけ死体へと視線を向け、投げ飛ばされた衝撃と恐怖で気絶している女性を抱き抱えながらその場を後にした。それは一重に、御者への状況説明。及び、気絶している女性を安全なところまで運び、近くの詰め所にいる兵をこの場所へと案内するために――)   (7/24 19:54:46)