この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

由良&獅子唐

牡丹の唐獅子

マリア/由良 > (尊華帝国軍、榮郷本部基地。尊華人の見た目をしているとは言え、堂々とここに来られる日が来るとは思ってもみなかった。ひいてはこの三年間に発達したインフラと、イモータルの出現により有耶無耶になった休戦条約の期限、帝王両国による協力関係のお陰だと言える。ふと当たりを見回せば人目で王国人と分かる人間が、大手を振って歩いている。こうも一般人が入り込める事になったと思うと、もはや密偵の役目は要らないのではないかと思いそうにもなるが、否、それは違う。何かあってから潜入をしたのでは遅いのだ。何かがある前から太いパイプを繋いでおき、いつでも情報を引き出せるように長い時間をかけて懐柔する。それをした上でも、まだ祖国に天命を捧げる覚悟のある者だけがこの仕事を全う出来る。――由良は、決意を表すかのように白い日傘を持つ手を強めた。藍の搾りで雪華の柄を描いた涼し気な夏着物を纏って、懐中時計をちらちらと見ながらどこか人待ち顔で、基地の前に佇む。その姿は傍から見れば、軍人の夫を待つ健気な妻の姿だろう。)   (7/24 01:17:54)


山葵/獅子唐 > …おや?(其処に現れたのは…うなじくらいまでのもじゃもじゃ髪をした、瓶底のように厚い眼鏡を掛けた一人の青年で。基地の前に佇むは、藍染の着物の可憐な女性。日傘をさしたままじっ、と誰かを待つようなその姿は、痛く美しく、まるで牡丹のようだ。)えと…っ…こんにちは、ご婦人。何方か人をお待ちですか?(慣れない言葉遣いに若干舌を噛みつつ言葉を絞り出す。さてさてどうしたものだろうか。もし誰かを待っているならば基地に上がってもらった方が良い。こんな照り付ける陽の下、女性を放ってもおけない。じわ…と溢れる汗に不快感を覚えつつ、その牡丹を纏う美しい女性の返答をじ、と待った。)   (7/24 01:25:46)


マリア/由良 > (声を掛けられてそちらを振り向くと、豊かな髪をした眼鏡の男性がそこにいた。――釣れた!彼は、軍人だ。)「……あっ……軍人さん。お勤め、ご苦労様です。」(風に靡く後れ毛を軽く直して耳にかけながら、いかにも尊華の一般人らしく控えめな会釈をしてみせた。國の平和を守る軍人諸君を尊敬して止まないといった、どこか目上の者に対するような振る舞いで。)「ええ、ちょっと……。あの、軍人さん。〝佐官〟様は今、お仕事中でしょうか?」(まずは適当な役職を出してみる。佐官職が三つに分断された事くらいは耳にしているが、あえてこう呼ぶ事で不都合があっても言い逃れ出来る。佐官が誰だろうと、こんな出会い頭で手に入る情報等は塵に等しい。重要なのは自分は『仲間』だとアピールすること。さぁ、まずは一つ目の壁を怖そうか。)   (7/24 01:39:19)


山葵/獅子唐 > …えぇ!佐官様ですか。…あっ…すみません、今現在佐官の皆様は外出中でして…あの、宜しければ中でお涼み下さい。丁度昼飯時です故…暫くすれば帰還すると思いますので。(そう言うと、彼女を何の疑いも無く基地内へと通す。中は涼しく快適だ。)…えっと、今日は…どのようなご用事で?(何とか場を持たせようと、そんな他愛も無い会話を始める。そもそも彼女は何者なのだろうか?佐官の内の誰かの奥方だろうか、親友だろうか…ふーむ、と思わず声を漏らしながら思考を巡らせる。…いやしかし、隣を見れば華だ、並んで歩くと少々目立ってしまう。どうせならもっと、顔立ちの整った人が並べばもっと良いだろうに…。)…此方です。あ、喉は渇いてないですか?宜しければお持ちしますのでいつでもお申し付け下さいねっ…!(応接室へと彼女を通し、柔らかい椅子に腰掛けさせる。此処ならば涼しいし、人を待つ客人にはピッタリだ。)   (7/24 02:02:02)


マリア/由良 > 「そうなんですね……あっ、いえ…その……」(もしその佐官殿とやらに鉢合わせをしたらまずい。知り合いでないことがばれてしまうかもしれない。何か言われたらただ、勝手に待っていただけだと言うつもりであったので、由良は少し口篭った。しかし基地の内部に入れる機会などそう多くはないかもしれない。ここは、押し切られたていで入ってしまおうと、由良は日傘を畳み、小股であなたを追った。どこか煮え切らない『奥ゆかしさ』を重んじる尊華の美徳は、たびたびこういった場面で役に立つ。)「用事、ですか。ただちょっと、以前佐官様と名乗るお方に助けて頂いた事があって……。」(それ以上ははにかむように笑って濁そう。憲兵の役割を持つ軍人だもの、人を助ける場面なんて、いくらでもあるはずでしょう? そうこうしていると、応接間のような場所に通された。喉はかわいていないかとあれこれ気にかけてくれる彼は、随分と人が良いらしい。逃してなるものか、是非、お近づきに。)「……ありがとうございます。実は、炎天下の中で立ち尽くしていたので、とても喉が乾いてしまって……お水を一杯、頂けますか?」   (7/24 02:37:36)


山葵/獅子唐 > ……(立てば芍薬、座れば牡丹。歩く姿は百合の華。そんな言葉が相応しい…いや、そんな言葉でさえ表せない程に耽美な女性にぼーっ、と逆上せるような気分を味わう。涼しい筈の部屋の中。伝った汗はポタリと床に染み込んでいく。)…成る程…その御縁で…(受け答えも少なくなる。ただぼんやりと…目の前の女性を眺めるだけ。いかんせん、こうして外部からの女性と長くいる機会が無かった為か恥ずかしさやら何やらが込み上げてきて…頰は熟れた桃のように赤く染まる。まるで此方が生娘のようだ。)…は、はい!お水、ですね。氷はお入れしましょうか…?(お水を一杯、その言葉で現世へと引き戻されては、少々焦り気味にそう立ち上がる。部屋を出て、美しい模様が彫られた切子硝子の器の中にからん…と氷をひとつふたつ。とくとくと注がれる麦茶の音に己の心音が重なった。彼女の待つ応接室の前。ふぅ、と息を吐き己を落ち着かせ…ゆっくりと歩みを寄せ机の上にグラスをことん、と置いた。ある夏の、一瞬のフィルムが切り取られたような光景だった。)   (7/24 22:46:34)


マリア/由良 > 「こ、氷ですか、そ、そ、そこまでして頂かなくても、その。あ、ご厚意は、嬉しく……」(どこかあわあわと緊張しながらも対応してくれるあなたの姿に、由良もつられてまごついてしまった。他人は写し鏡だ。扱われ方ひとつとっても、王国にいる時と、帝国にいる時ではまるで違う。どちらも同じ自分のはずなのに。)「……いっちゃった……」「………えへ。」   (7/25 01:53:08)
マリア/由良 > (誰もいない応接室で、調度品の戸棚と硝子扉に映る自分の姿に向かって照れくさそうに微笑む。〝王国にいる時とは違う。〟その事実は、由良にとっては掛け替えの無い拠り所だった。何にでもなれる、帝国に居る時は、自分である事を捨てて、なりたいものになれる。ばたばたと出ていってしまったあの人は、自分のことを少しは好ましく思ってくれたのだろうか。あんなに頬を赤らめて、あんなに視線を注いでくれて。気づかない筈はない、どう思われているか、髪の毛一本まで神経を尖らせて仕事に当たっているのだから、その熱を感じないはずはない。きっと、あの人は女性慣れしていないのだろう。そして、自分の事を女性だと認識してくれていたからこそ、きっと、あんな風にたじろいでいたのだ。そんな『女の子扱い』が照れくさくて、恥ずかしくて、だけど、嬉しかった。)「   (7/25 01:53:25)
マリア/由良 > 「あ……ありがとうございます」(再び現れて、きれいな切子細工のグラスを目の前に置いてくれたあなたにかけたお礼の言葉は、そんな嬉しさも込められていた。嬉しさでほんのりと桃色に染まった顔を綻ばせて、目を細めて。愛しいものを見るような視線でグラスに手を伸ばし、こくり、と一口含む。鼻腔から広がる香ばしく爽やかな夏の香り。乾いた体に染み入る、甘美だった。)「……お忙しいでしょうに、ありがとうございます。……あ。」(改めてあなたに目をやり、何か引き止める要素がないかと瞳のレンズをぱちりと瞬かせる。目に入ってきたのは、大人しそうで朴訥としたこの軍人さんの雰囲気とは少し印象の違う、赤い色だった。)「……唐辛子?ふふ、かわいい。かわいい飾りをつけてますね。あ……ここにも。」   (7/25 01:53:51)
マリア/由良 > (びん底のような厚い眼鏡についた飾り、そして、腰に提げた刀についた飾りもまた唐辛子の意匠だと気づく。尊華では魔除けとして好んで使われるモチーフと聞くが、彼も何か願を掛けているのだろうか。避けたい魔があるのだろうか。まずは、軽く褒めてみせようか。わたしはあなたに敵意がありません、そう示し、二つ目の壁を壊すために。)「魔除け……ですか?あっ、その刀。よく見せて頂いても?」(とっさに刀について言及したのは、密偵の癖のようなもの。刀についての知識なんてこれっぽっちもなかったけれど、『用が済んだなら、これで』と言われてしまえばせっかくの接触も振り出しに戻ってしまうから。大事な獲物について口を出されれば、誰だって足を止めるだろう。さぁ、どんなはったりをかまそうか。)   (7/25 01:54:08)


山葵/獅子唐 > …え、あっ…(青く、よく晴れた空の下。彼女の白い肌に浮かぶ汗に室内が…そして大きな窓から見える青空が映る。不意に口にされた赤いチャーム。眼鏡に繋がる金色のチェーンに揺れた赤い唐辛子に、彼女は喜んでくれているのだろうか。)…お恥ずかしながら、自分の好物でして。辛味が好きなもので、つい…。(そう照れ臭そうにはにかむ若い姿は、何処と無く青臭さも抜けない。)…これ、ですか?良いですよ。(自身の刀に付いても「見せて頂いても?」と尋ねる彼女にこくりとだけ頷けば、かたん、と置かれた一本の刀。抜けば真刀ではあるが、刃は半分以上が折れて無くなっている。)…両親の形見で、願掛けみたいな物ですよ。…もう一本はキチンと刃は有るんですがね…一本は折ってしまって。(あはは、と笑う獅子唐の横顔には、微かな心残り。喉元のイガイガとした感触を呑み…話題を変えようと話をする。)…それにしても、遅いですね…佐官様。このような…可愛らしい御客を待たせていると言うのに…(ふー…と息を吐き、肩の力を抜く。まだまだ彼女と共に居るともどかしいやら恥ずかしいやら…でも、両親について話した事で少しだけリラックス出来た。)   (7/27 20:39:28)


マリア/由良 > 「辛いものが好きなんですか……うん。」(こくりと頷き、髪を耳にかけて微笑む。多くを語る必要はない、こちらがむやみに喋って媚びを売っても、焦りはきっと見透かされる。喋るよりも喋らせること。)「……良いですよね。」(そう、これだけで充分。そりゃあ、『じゃあ一緒に食べに行きましょう』なんて言えたら仕事は楽だろうけれど。今はただがつがつせずに余裕を見せて、あなたの情報をなるべく沢山拾おう。いつか役に立つ時が来るだろうから。)「ありがとうございます。立派な刀だと思いまして…ですが、あぁ……〝やっぱり〟。」(折れた刃を見て内心は驚いた。だけど、何を見てもまるでわかりきってきたかのようにこう言うつもりだったので、咄嗟にそう口をついて出たのだった。『やっぱり、少し刃こぼれしてますね』『やっぱり、よく研がれた刀ですね』どうなろうとも、読んでいたかのように口にし、信頼を勝ち取ろうと思っていた──のに。まさか折れているとは思わず、一瞬だけ狼狽えた。すぐに笑顔を繕って、言葉をつづける。)   (7/28 00:42:01)
マリア/由良 > 「……やっぱり、そうだと思いました。こっちの一本はすぐに抜刀出来るよう上に刺しているのに、上等な鞘に入れてもらって、可愛らしい飾りまでつけているこっちの刀は、邪魔にならないように帯刀している。何か使えない理由があるのだと思いました。まさか、折れているとは思いませんでしたが……。」(後から最もらしく付け足した言葉である。全力で頭を回転させ、辻褄を合わせていく。両親の話をするあなたの言葉には得心がいって、こくりとゆっかり頷くのだった。)「形見……そうですか……素敵なご両親だったんでしょうね。」(しばしの沈黙があった。彼の心の柔らかいところに、触れてしまっただろうか。話題を変えようか、それとももう少し、掘り下げた方がいいか──そう逡巡しているうちに、口を開いたのはあなたの方だった。)「あぁ……いいえ、そんな。約束をしていた訳ではありませんし、今日は一旦お暇します。」   (7/28 00:42:18)
マリア/由良 > (その佐官とやらに鉢合わせしてしまったら少し面倒だ。まぁ、どうなろうとも、先代の佐官だのなんだのと煙に巻くつもりではあるが。それより……)「あのっ、さっきのお話……私、うちが、鍛冶屋なんです。だから、なんとなく解って……。変に思わないでくださいね。それより、うーん、と……。治しませんか?その刀……。一度、父に見せたいので、お借りする事は出来ませんか……?あっ、大事なものってことは、わかってます!ううんっと、何か……」(何か担保になるようなものがないかと、小さな鞄の中を漁った。手持ちで最も高価なものなら、これしかない。貝の容器に塗り重ねた正真正銘の艶紅だ。巷で流通している、貝殻虫の色素からとった安価な紅ではなく、紅花の花弁のほんの先からしか取れない色素を集めたもの。金一匁、紅一匁の言葉通り、同じ重さの金に匹敵する価値のある紅。その赤の純度の高い証拠に、赤い光を吸収し反対色である緑色の輝きを放って、乾いたところが玉虫色に輝いていた。)   (7/28 00:42:46)
マリア/由良 > 「……これ、置いていきますから。申し遅れました。私の名は、花蓮。鐵(クロガネ) 花蓮と言います。」(偽名として名乗った苗字はいかにも鍛冶屋らしいものを選んで。目の前の軍人さんが艶紅の価値をわかるかどうかは解らないが、どうにかせめてもの誠意が伝わらないだろうか。腕利きの鍛冶屋なら帝都にあると耳にした事がある。それだけじゃない、『鍛冶の魔術師』も居る、と。由良は端から、そこを当たるつもりでいる。そうすれば、目の前の軍人さんとのパイプはより深く繋がるはずだ。)   (7/28 00:43:06)


山葵/獅子唐 > ……まさか、そこまで見透かされているとは。(どうやら、その最もらしく付け足した言葉は当てはまっていたようだ。何はともあれ、彼からの信頼と尊敬は少し得られたようで。)…そう、ですか。分かりました。佐官様にはお伝えしましょうか?それとも黙っていた方が宜しいでしょうか。(お暇する、との言葉にゆっくりと頷けば、そう彼女への確認を取る。ふと、声を掛けられる。刀を治さないか、その言葉に目を少し見開くと驚いたように「そんな事が出来るんですか…?」なんて尋ね。)……!…こ、この様な高価な物っ……。……いえ、そうですね。ありがとうございます。…託しても、良いでしょうか。(貝殻の中で玉虫色を放つ艶紅を受け取ると、己の折れた刀を鞘ごと手渡す。黒漆が塗られた鞘は木彫りで昇る龍が彫られていた。黄金色に塗られたその龍の目には、小さな硝子玉が埋め込まれ此方を見つめているようだ。)   (7/30 16:20:53)
山葵/獅子唐 > ……これは、此方で丁重に保管させて頂きます。…その、形見を。僕の両親が生きた証を…どうか、宜しくお願いします。(艶紅を手の中にそっと握り、そう頭を下げる。ばささ、とぼさぼさ髪を揺らしながら顔を上げる。その目は先ほどの柔らかい雰囲気とは打って変わって、明らかに何か信念を持ったような…そんな強い目だった。)   (7/30 16:20:55)


マリア/由良 > 「いいえ、また来ますから……。」(佐官に取り次ごうかと言われ、そう静かに首を振る。それから刀の話をすると、驚きながらもあなたは由良に預けることに快諾してくれたのだった。)「もちろん。大切な、お形見ですから……。」(下げていた頭を上げたあなたの顔を見ると、今までの朴訥とした雰囲気から一転、軍人らしい、何か張り詰めたような雰囲気を持つ面持ちに変わったのを見る。次に会う時は、両親の事を聴いてみようか……。密偵の仕事は、何かが起こる前が肝要。一番の親友か、想い人になるくらいでなくてはならない。今は戦争がなくたって、きっと役に立つはずだから……。)「あっ、そうだ」(あなたの懐に入り込む為、あれもこれもと考えているうちに、一番大切な事を聞くのを忘れていたことに気づき、はっと口を開く。ぱっと顔を向けると、髪が揺れた。上目遣いであなたを捉えながら、やや緊張気味に。)「あの、ところで……」'一瞬の沈黙、夏の強い陽光を浴びた柱が濃い影を作り出す応接室の中、蝉のじわじわという声が響き渡った。)「……あなたの、お名前は?」〆【牡丹に唐獅子】   (7/30 16:55:49)