この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

糸依&獅子唐

畏日の虚像は燦々と

清瀬/糸依 > 「……あーあ、来てしまった」(幾つもの乗り物に揺られ阿岸からはるばる訪れたは、青空の下に聳える尊華帝國軍榮郷本部基地。見えぬ足枷を引きずるような重い足取り、それもその筈。何せこの一ヶ月引きこもり生活を謳歌していたのだから、読書万歳。見慣れた風景の筈なのに、見下ろす基地の顔がいつもよりも厳格に、そして憤怒に濡れて見える。今すぐにでも引き返してしまいたいがそういう訳にもいかない。再度軍帽を被り直し、第一ボタンと一緒に襟をぐっと持ち上げる。ストレスのせいか、乗り物酔いのせいか。気分は頗る優れないけれどそんなものは文句と一緒に飲み込んでしまえ。ムカムカするのは後から一人で吐けばいい。)   (7/19 23:08:39)
清瀬/糸依 > 「……あ、れは………。もし、獅子唐少尉殿。少しばかり時間を貰えませぬか?」(かち割りたくなる眼鏡、少し前から見るようになった…気がする義手、私よりも癖の強いうねり毛。無事昇格を達成した彼とは、命の水の時に絡んだっきり。私の胸には灯らぬ輝きを纏う彼を見ていると、嗚呼、私は最低だ。茹だるように粘りつく空気の中、劣等感に溺れ飲まれそうになる。魔術師としての人生を録することのできぬ自分が、醜く、憎い。高みを目指したくはないが、好奇と哀れみの視線を向けられているようでしょうがなくなる。それもこれも、こうなったのも全て――。夏の訪れをこんな形で感じるものとは思ってもみなかった。それでも見つけてしまった以上挨拶も無しにはできないし、火津彌少将に見つかるより数倍も良い。たっ、と駆け出し貴方へ声をかけては、視線を合わせぬように恭しく一礼。羽織やブラウスの下を伝う汗も、見えぬ瞳も、今は不快でしかない。)   (7/19 23:08:42)


山葵/獅子唐 > ……(蒸し暑く怠い夏空の下。雌を求め声を上げる蝉の中ぼんやりとしながら歩くのは、もじゃもじゃ髪の男ただ一人。額から頬へ流れる汗をぐ、と手拭いで拭き取り髪を掻き上げる。この髪の毛はいかんせん熱が篭ってダメだ。いっそ切ってしまおうか…何て思いながら髪の毛を結び直す為に髪の毛に手を掛ければ…)……糸依さん!(思い掛けない同胞との再会。気分が昂り思わず声を上げそうになる。彼女の陰鬱とした心の中とは反対に、此方はただただ彼女と再会出来たことが嬉しかった。実に数年ぶりの再会に胸を弾ませれば、少し良いかと尋ねられこくこくと頷き)お久しぶりです、体調などは大丈夫ですか?(糸依の体調について尋ねながら、当たり障りの無さそうな会話を行う。本当はもっと攻めた質問もしたいのだが…今は取り敢えず、穏便に行こうか。)   (7/19 23:33:13)


清瀬/糸依 > 「……御久しゅう御座います。……さりかし、いまはもう安穏なりて…一介兵の私情でご迷惑を御掛けし、誠申し訳御座いませぬ」(晴れやかな貴方の声色も、隣国の如き日差しも、今の私の心を晴らすのは北風にも太陽にも出来まいて。いつ本題を切り出そうか、なんて迷いに再開の感動は揉み消されてゆく。塩の紛れた水が滴る髪は肩をちくりと差して実に不快。結ぶには短いどっち付かずな長さの黒カーテンだが、半端者の私にはさぞお似合いなのだろう。後悔なんてものは私にはまだ早い。)「……此のような事を少尉に告げるのも、わろし事かとは思えど…。百聞は一見に如かず、とはこの事。さて御視聴なされ」   (7/20 00:12:43)
清瀬/糸依 > (この一ヶ月、皮肉にも随分と表情を偽ることが上手くなった気がする。……いや、正確には。私という存在の一部が生きることを放棄した、の方が正しいか。ふとした時に、世の全てが馬鹿馬鹿しくなる時間がある。信用の二文字を忘れ、踏み込むことを忘れてしまう自分が居る。文字を紡ぐことすら、神々への信仰すら廃れてしまった頭。どうしても事実を述べることが悔しくて、挫折を口に出すことが怖くて。魔術師でもない今、言霊なんて気にしてる私は結局、何がしたいのだろう。マントの下で震えていた腕を払い、貴方を下がらせる。暑さを過ぎ悪寒を抱える体をぎゅっと抱き締めるように屈んで、右手を地に、左手を胸に。もう幾度となく詠唱した言葉を、一つ二つと。身の耽溺に慈悲は亡し。全くその通り、己の身が招いたことの尻拭いど、どこのお節介な人がやってくれるのだろうか。)   (7/20 00:12:47)
清瀬/糸依 > 「―――、偏くものに審判を。…………ははっ、御覧あれや獅子唐殿、私は既に魔術師に在らず。……暇を貰う他、あらぬようで?」(縦断を敷いた床は一片の狂いも変化も見せない。確かに紡いだ筈の魔術は、誰にも届くことなく朽ちてゆく。脳内では、床の表面がパラパラと剥げてゆき、最後には貴方の足元に落とし穴を作ってやる予定だったのに。俄に立ち上がっては柄にもなくケラケラと笑ってみせる。貴方の間抜けな顔に?それとも自分の不甲斐なさに?それとも……いや、滑稽に演じれば赦されると、心のどこかで思っているのかもしれない。左手はそのままに貴方の周りを歩く様は、中身の虚ろな役者のように写るだろうか。辞職だなんて馬鹿げたことが、今ばかりは冗談に聞こえないだろうか。彼女らしくない言動の正体も、信仰の行方も。全ては、最前線で見て、体感してきた“糸依”自身のみぞ知ること。)   (7/20 00:12:56)


山葵/獅子唐 > …魔術が、使えない……?(彼女の詠唱。確かに聞き届けた。けども、一向に彼女の魔術は発動しない。間違いない…信仰を失ったのだ。じゃあ…噂に聞いていた、長期の休暇もこれのせい?己の周りをくるくると歩く彼女を目で追う。ケラケラ笑う声がまるで彼女自身を嘲笑うような…自嘲気味な声にも聞こえて、耳を塞ぎたくなる。)……ボクは…(何も出来ない自分が忌々しい。兵より多少の発言力は得たが、所詮役職持ちの下っ端止まり。彼女の行く末を決めるのも、彼女と上層部次第なんだろう。)………ボクも、信仰を失いました。この三年間の間に、幾度も己を呪いました。……でも、今こうして此処に居られるのは…支えがあったからです。…ボクは身寄りも無い人間では有りますが…それでも軍は…。……ボクは、貴方の行動力とその知識量が尊華に必要な物だと感じています。…信仰を失ったから、魔術が使え無くなったからと言って…貴重な有識者をそう簡単に尊華が手放すとは…尊華がそこまで落ちぶれているようには思えませんね。…勿論、糸依さんの考えや意思が一番ですが。(少しだけ垣間見える彼の表情は何処となく寂しげで、そして尊華や彼女への問いかけも含まれていた。)   (7/20 00:30:51)


清瀬/糸依 > (見えなくてもわかる、きっとその眼鏡の下にある瞳は驚きに満ちているのだろう。悪戯を成功させたような達成感を感じるのは、きっと開き直ってしまったから。國も使命も、何かを背負う為の力を失うとこんなにも楽になれるとは知らなかった。ブーツの底をコツ、と磨り減らしながら無音に踊っていたのを、貴方が静止する。無口な方である貴方が言うことだ、そこに偽りが隠されているとも考えにくい。……のだが、堕落しきってしまった人間というのは本当に面白い。)   (7/20 01:21:44)
清瀬/糸依 > 「……嗚呼、貴殿は誠御優しく、加え強かなお方だ」(褒め言葉と共に私が浮かべたのは悲壮。慰め、問い掛け、少しの同情と悲哀。普段無のベールを纏う者が見せる感情の露出というのは人を揺らがせるものだ。辞表、だなんて本当は半分冗談。他人にとっての己の価値を見定める為の材料でしかなかったのに。…これだけ聞いたらとんだ性悪だな、なんてのも他人事。本心が含まれていなかったかと言われれば勿論ながら嘘だ。こうやって人から正の感情を受けとるのも嬉しいのだが、信用には至らない。そうやって仮面の下で嘲り笑う人の様を沢山見てきた、まさに葉のように薄く、歯の浮く台詞ばかり張り合わせる輩に沢山苦しんできた。それを“一人で”乗り越えられる程、私は強くない。)「……安心なされ、ほんの冗談ぞ。重ね重ね失礼を申し訳ない……。しかして、今私が放浪すれば異形に手も足も出まいて。それに職にもこうず故、信仰を見つくるまでは辞むるよしにはいかず。……貴重な時間を有り難う御座いました、一日もとく戻りおめもじ叶う日を楽しみにしております」   (7/20 01:21:48)
清瀬/糸依 > (言ってしまえば只の冷やかし。この事実を、上層部より先に知らせておきたかった我が儘と保険。いきなり上層部に報告なんて、正気を保てたら上等ってもんだ。早巻きにお礼を述べてしまえば、何事もなかったかのように布を翻して貴方から逃げるとしようか。……単に心の荷を下ろしてしまいたかっただけなのに。哀しげで儚げなあの顔がこびりついて消えない。なんであんな顔するんだよ……あれじゃあ、綺麗に忘れられないじゃないか。早く、早くと急かす心とは裏腹に後ろ髪を引かれている気がしてむしゃくしゃする。感情にながされるがままに編み込んだ前髪を乱し、痛みを痛みでかき消さんが如く皮膚を削っていく。…夏は嫌いだ。そう溢しては蒸すような暑さに喉を酸で焼いた。)〆【畏日の虚像は燦々と】   (7/20 01:22:11)