この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

アレックス&竜灯

お父さんは許しません!

骨牌/アレックス > (虫の音色が響く夜。月明りがいつもより美しく感じられるのは、今宵が満月の夜であるからだけではないだろう、軽やかに揺れる白いフリルドレスは月影を受けてキラキラと輝く。純白のヴェールの貴婦人はバスケットを胸元に大切そうに抱え込んで、いい子で眠る子供たちを起こさないよう静かに街中を歩く。壁に背中を預けて鼻歌を唄っていた赤鼻の酔っ払いが彼女に気が付き目を瞬かせたが、恐怖のあまり言葉は悲鳴にすらならず喉の奥でくぐもった呻き声に変わっただけだった。彼女は片手を裂けた顔面の中央に寄せて『しーっ』と息を吐いた。そうして彼女は踊るように進み始める、どこかに忘れてきた脚でとある工房の前に向かうと、慣れた仕草でまるでそうするのが当たり前のように扉についたノッカーを鳴らした)こんばんは、こんな夜更けにごめんなさい。お夜食を持ってきましたの。お腹が空いているでしょう?(鈴を転がすような声の合間合間にしゅうしゅうと息の漏れるような音がする。その間にも彼女の胸に抱かれたバスケットの端からは、赤黒い染みが徐々に広がっていた)   (7/7 00:08:15)


シロー/竜灯 > 「おい聞いちょくれよゼダスさん!!軍に帰ったはいいけんども、知り合いがみなみなしておらんくなりよったんぜ!この俺を置いてなぁ、伝説を作るこの俺をじゃ!」((夜の帳が降りた王都。小道の隅やら至る所から虫の鳴き声が聞こえる時間帯だが、王国が誇る機械技師が製造研究に明け暮れるこの工房からは、灯りが点いている間は大抵金属音が鳴り響いているのだった。今夜もこの工房に設置された窓からは灯りが漏れているが、不思議と機械音は聞こえてこない。代わりに聞こえてくるのは煩い男性のほんの少し間延びした声だった。椅子に深く凭れて片手を背もたれの後ろに投げ出し、片手に酒が注がれたジョッキを握りながら声を上げる男はかなり酔いが回っている様子。机には酒瓶が何本も屹立しており、それが無ければ今頃男は机に両足を投げ出していた事だろう。足を組みなおし、工房の主からの返事が無いことに気付くと竜灯は更に凭れて首を後ろに倒し、丁度顔を逆さまにするようにしてゼダスの姿を探した。)   (7/7 00:28:53)
シロー/竜灯 > 「おーいゼダスさーーん、おーい!!どこ行ったちや⋯⋯⋯⋯お?」((どうやらゼダスはとうの昔に煩い竜灯を鬱陶しがって工房離れてしまっているらしく、何度目かも分からない一人のやり取りを繰り返した所で聞こえたノッカーの音をはっきり耳にすると、焦点の合わない瞳で玄関の方に視線をやり。一度麦酒を喉に流し込んで、ぷはぁ!とやる気をチャージして、膝に手を置いて椅子から立ち上がった。少し覚束無い足取りで近づいていくにつれ、聞こえてくる声に、竜灯は綺麗な少女を幻視した。)   (7/7 00:28:56)
シロー/竜灯 > 「⋯⋯ほーん?夜食ちやか、へぇ、ゼダスさんも中々隅に置けんのう、ああ、この子が来るから恥ずしゅうておらんくなったちやな。⋯⋯はい、今開けるきにの。」((扉の前でにやにやと笑顔を浮かべて顎に親指と人差し指の付け根を当てて呟いた所で、待っているであろう貴女の為に声を掛けてゆっくりと扉を開いた。予想と反したあまりに綺麗な服装をしていたから、竜灯はつい大笑いしてジョッキを持つ手と反対の手で、肩と呼べる位置を叩いてしまった。)「ぷっ、はははは!なんじゃ、もう結婚でもしとったがか!?ウェンディアの結婚で着るドレスでお夜食とは、やるのお!!!」((酔っ払いにはそう見えているらしく、何度も肩を叩くのだった。   (7/7 00:29:08)


骨牌/アレックス > (扉の向こうから聞こえる誰かを呼ぶ男の声は彼女が求める少年の変声期前の高い声とは違う低い成人男性のそれだった。誰だろうとヴェールの下で彼女は小首を傾げて考える、蘇る以前の記憶はとても大切なもの。時間を見付けて物思いに耽っているが乳白色の深い靄が御伽噺にでてくる魔法のように邪魔をして、小匙一杯分の思いですら取り戻せないでいる。けれども、それを彼に知られる訳にはいかないの。きっと使用人か、家の人だろう、そうだ彼にはお父さんがいた気がする。貴婦人のように優しく微笑んで、私は貴方の全てを受け止めるの、幸せな幻想に浸る彼女は幸せそうに裂けた顔の襞をうぞうぞと蠢かせていたが、扉を開いた黒髪の男性が矢継ぎ早に放った言葉に足を踏み外したかのようによろめいた)   (7/7 00:50:35)
骨牌/アレックス > ……結婚なんて、そんな!!!あぁ、あぁ、そんな……っ、わたくしたち、そんな関係では。いえ、でも婚約はしたのだものね、大丈夫よ、大丈夫。ごめんあそばせ。わたくしとしたことが、ご挨拶を忘れておりましたわ!(大切に大切に胸に抱えていたバスケットが地面の上に落ちて、慌てて拾いあげようと地面にしゃがみ込むものの、貴方が放った衝撃の言葉に心臓は早鐘を打ち、顔は火照って熱くなる。立ち上がることも出来ずに思わず両手で頬を抑えて否定の言葉を述べるけれど、朧げな記憶の中に僅かに残る約束が彼女に間違った勇気を与えた。改めてバスケットを胸に抱えれば、ばさりと白いスカートを翻して立ち上がる。そうして真っ直ぐに貴方の酒に酔った赤ら顔を見詰めれば、優雅に膝を折ってみせるのだったが)   (7/7 00:50:51)
骨牌/アレックス > アレックスと申します。あの人のご友人でしょうか、わたくしたちその、まだ結婚というわけではなくて、そのあぁ、恥ずかしい。でも、ここだけの話でしてよ、もう婚約をしておりますの。(有頂天にある彼女は今すぐに背中に翼が生えて飛んでいってしまいそうな勢いで、酒臭い貴方の息にすら気付くことなく両手を胸の前に交差させながら幸せそうに世迷言を宣うのだ)   (7/7 00:51:00)


シロー/竜灯 > 「へへ、なんぜぇ奥ゆかしいのう!そがなんは尊華の人間だけで十分じゃ、ウェンディア人なら押して押して押しとうせ!ゼダスさんは押しに弱いからのう、婚約したならもうそのまま一気に、おまんらはもう⋯⋯っと、⋯⋯⋯⋯⋯⋯?」((『もうやったちやか?』とゼダスを弄りたくて仕方ないのだろう、ジョッキの持ち手から人差し指を抜くと親指と輪っかを作り、そこへもう片方の人差し指を差し込もうとした所でバスケットが地面に落ちる。拾ってやろうと自分も膝を折りかけたが⋯⋯ふと違和感に気づいた。ぼやけていた視界が少しずつ明瞭になって行く気がした。自分でもはっきりとは分からないものの、急に感じた違和感に背筋がぞくりと震えた気がする。今更ながら酒で火照った体に夜風が寒く感じて震えると、バスケットを拾った少女が立ち上がる。遅れて足元からゆっくり貴女の顔部分まで視線を上げた所で、赤くなった顔を引き攣らせ、ぱく、ぱくと口を動かした。)   (7/7 01:13:36)
シロー/竜灯 > 「な、な⋯⋯⋯おんしゃあ⋯⋯!?」((片足を扉の外に出していたのが原因で、後ずさった時に足が引っかかってどさり、と床に尻餅をついた。持っていたジョッキは明後日の方向に飛んでいき、甲高い音と共にゆかに衝突して砕け散った。がたがたと肩を震わせて、ごくり、と息を飲むと、恐る恐る声を上げた。⋯⋯あまりの恐怖故に冷静に、余裕の態度を取る事で恐怖から目を背けようとした。)「⋯⋯な、なんじゃおまん、あ、アレックスさんか⋯⋯⋯、そ、そうか、夜食はそこら辺に置いといて欲しいちや。⋯の、それで良いぜよ、のう。」   (7/7 01:13:38)


骨牌/アレックス > 押して、押して……、ゼダス?(何かのサインを刻もうとする指を魚介類めいた瞼のない黒々とした眼が見詰める、その意味を知らぬのは前世の記憶が薄らいでいるだけではないのだろう。もしかすると彼女はいい所の産まれだったのかも知れない。貰った助言を夢見心地で呟けば、貴方の唇から酒気と共に吐き出された言葉に心を惹かれた。焦燥。脊髄を駆けあがる衝動、脳裏に浮かぶ光景、『置いてかないで!』と叫ぶ少女、転がり落ちたバスケット、石畳を濡らす赤、あれは誰? わたしを置いていったのは、誰? 頭痛を伴う軽い眩暈に指を失った白いひらひらとした両手が戦慄く。その時、どさりと倒れる音と重なるように甲高い硝子の割れる音が響き渡り、彼女は意識を引き戻した。床に尻もちをついた貴方を見下ろす異形の顔、路面に落ちて歪んだバスケットの端からは、ポタリ、ポタリ、細い糸を引く粘着質の赤黒い塊が垂れ落ちて地面を揺らす。視線を足元へやれば、先ほどバスケットを落とした場所に黒い染みが出来ていた。わたしはなにを持ってきたんだっけ?)   (7/7 01:32:40)
骨牌/アレックス > ゼダス、ゼダス、ゼダス、くん……わたしは(思い出したかった、思い出したくてたまらなかった、神様はわたしに二度目のチャンスを与えてくれたのだ。きっとこれは愛の試練。試されているのはわたしの魂なのだ。もう一度、貴方へと視線を向ける。年端もゆかぬ少女を相手に大の男が肩を震わせてなにを恐れているのだろう、そうだ確かあの時、最期に見たあの光景でも、馬車から降りて来た男はわたしを見て身体を震わせ)――彼どこにいるの?(酷く冷めきった声で彼女は訊ね、大切に大切に抱えていたバスケットをどさりと扉の前に置かれた木箱の上に投げ落とした。半開きになったバスケットの蓋の隙間から、だれかの赤い瞳が貴方を見ていた)   (7/7 01:32:43)


シロー/竜灯 > 「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯っ。」((なんでゼダスさんは、こんな醜い⋯⋯いや、人間じゃない、これ、こいつはあれ、じゃないのか。だけどウェンディアのどっかにならこういう種族が居ても⋯⋯。⋯⋯あまりの恐怖故かぐるぐると思考を巡らせながら、肩で息をした。ゼダスの名を何度も反芻するのを見るに、どうやらやはりゼダスの事を指しているのだろう、婚約者というのは。ゼダスさんの趣味に口出しはしとうないが───今更ながらに躊躇する竜灯の迷いを、恐怖と恐怖を誤魔化す為の激昂で塗り潰したのは転がったバスケットから覗く真っ赤な瞳⋯⋯人の顔だった。)   (7/7 01:51:52)
シロー/竜灯 > 「っ!!な、なんぜぇおまんはっ!!あぁ!なんか知らんがおまんは絶対にゼダスさんと結婚させん!はぁっ、人を!はぁ⋯⋯人の首を持ってくるような奴、ゼダスさんが何と⋯⋯っ、言おうと⋯⋯!こっ⋯」((恐怖を無理矢理押しつぶす為に奮い立たせた感情だが、見れば見る程おぞましい容姿と持ち物に身震いして、どんどんと心の内が怯えに染まる。何とか叫びながら立ち上がったは良いものの、裏口などは無い。外に通じる道は化け物が塞ぐ玄関のみ。下がることは死を意味するだろう、唇を噛んで顬から汗を一筋垂らすと強く拳を握り。思い切って駆け出して、相手を吹き飛ばそうと右肩から突っ込んで行った。)「っはぁ⋯⋯!はっ!⋯⋯っおおおぉおおおおおっ!!!!!!!」   (7/7 01:51:53)


骨牌/アレックス > (はぁ、はぁと、息が漏れる音が聴こえる。彼女は貴方を見下ろす、生前であれば双眸を細め睥睨するようにしていただろうが今彼女の瞳に瞼はない。ざわりと襞が蠢く。ざわり、ざわり、恐怖に装飾された貴方の震える唇から勇気と共に放たれた言葉は彼女の動きを制止させた。生暖かい夜風が僅かな腐敗臭を載せて彼女の背中に吹き寄せるが、その白いドレスは、薄いヴェールすら動かない。その体を、拳を硬く握りしめた貴方の身体が突き飛ばした。肩から入ったその一撃は少女の華奢な体躯を容易に弾き飛ばし、彼女の身体は石畳へと叩きつけられる。地面に伸びる白い手足、恐怖を掻き消す雄叫びと衝撃による痺れを肌に感じながら、彼女は空を見上げた。今日は満月、美しい満月。カチカチカチカチ――何かが引き剥がされ弾けるような音が響き渡る)   (7/7 02:09:19)
骨牌/アレックス > あぁ、月が綺麗……、あなたにわたしとあの子のなにが分かるの? いいのよ、結ばれない恋だとは分かっているの、わたしとあの子は身分が違うの。それでもね……(石畳が剥がれ宙に浮かぶ、扉が外れ空に浮かぶ、植木鉢が、野良猫が、木箱が、バスケットが、浮かび、彼女が立ち上がるのに合わせて歪な球体を形成してゆく)結びつけ、結びつけ、結びつけ――結んで、ひらいて、また閉じて、閉じて、あの子がそこからでなければ、あの子は誰のものにもならないの。(空に浮かぶ歪な月は、瓦礫をかき集めながら貴方の背中を追って放たれる。彼女の身体は夜空に浮かび上がる、その白い身体は月光を受けて輝いた)   (7/7 02:10:02)


シロー/竜灯 > 「⋯⋯っらぁアッ!!⋯⋯っはぁ、はぁ⋯⋯!こん、べこのかあ⋯⋯!」((少女⋯⋯のような化け物を一思いに突き飛ばして、勢いのままに走り去ってからたたらを踏むように止まると、既に早鐘を打つ胸を抑えるように服に皺を作り。肩で息をしながら、倒れ伏す少女を少し離れた場所から見遣った。様相を眺めながら一歩、一歩、と静かに後退っていると、異常は訪れた。まず砂利や砂のような物が顎や髪に当たって異変を感じる。次の瞬間、石畳が鈍い音を立てて外れ浮かぶ、その頃には生物微生物などお構い無しにその場にあった全てのものが浮遊し、一点に押し潰されるかのように集中していた。思い込みかそれとも本当なのか、自分の体も引き寄せられているような気がして、焦りながらに足に力を込めて踵を返すと、一思いに駆け出した。)   (7/7 02:27:50)
シロー/竜灯 > 「っはぁ、なん、なんぜよ⋯⋯っ!は、⋯⋯!⋯⋯火、蜥蜴よ⋯⋯っ!は、俺は⋯⋯!!!」((走りながら振り返れば、更に大きさを増した歪な球体が此方へと向かって来ていて。走りながらに魔術を唱えようとするも、この状況で冷静に居られる筈も無く。方で息をしているのもあり、突っかえてしまう。その瞬間に魔術を使うのは諦めたのだろう、せめて⋯⋯と前に視線を戻して眉を顰めると、全力で走りながらに大声を張り上げた。)「────でんせつをつくるおとこじゃああああああああっっ!!!!」((『イモータルが使うのは魔術ではない。』軍に戻った時に何度も聞いた常識ではあったが、尊華の遊び唄のように聞こえた化け物の声が呪文のようにも聞こえ、軍で聞いたことを思い出す事も出来ず、せめてそれを打ち消せたらと叫び、狭い路地へと身を滑り込ませた。)「⋯⋯ほんっ、とうに、なんなんじゃあ⋯⋯っ、はぁ⋯⋯!」((何度も振り返りながら、羽織が狭い路地で擦れて汚れるのも気にする余裕すらなく、夜の王都を駆け抜ける竜灯だった。   (7/7 02:27:51)