この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

火津彌&八雲

月に叢雲

シバ/八雲 > 「あら?臨時休業なの、仕方ないわ……」日頃の楽しみであるお酒を飲みに来たのはいいが、唯一であり行きつけの店はシャッターで閉じられ「店主の腰痛のため臨時休業を致します」と書かれた紙が揺れている。腰を痛めてしまったのね、お大事になさってるといいけれど…と残念そうに店の前で項垂れる。「今日は純米の吟醸原酒の気分なのよねえ、他のお店を当たるしかないわね……、……他のお店、他の……」どうしましょうと首を傾げ、困り果てた姿は側から見れば道に迷っただけに見えるが、実際は目当ての酒が置かれた店を探しているという理由のため道ゆく人に聞くというのはやや気恥ずかしく、それでいて帰る気もないので右往左往としている。   (7/6 20:40:20)


マリア/火津彌 > (王国に発つほんの数日前の事である。私服の楊柳生地の黒い浴衣に袖を通し、下駄をからころと鳴らしながら火津彌は飲み屋街をふらふらしていた。近くには観光地ともなっている鬼灯神社があり、こんな格好をしていれば火傷を隠す為の狐面もすこしは馴染むだろう。『ああ、神社の縁日に行ってきたのか』と。これから異国に発つ事への開放感から、どこか浮足立った様子の足音を刹那止めたのは、視界に入ってきたいかにも困っていますという様子のご婦人の姿だった。)「……おや……。」(きょろきょろと見回し知り合いが居ないか確認した後、意を決して歩み寄る。どうせそろそろ発つのだから、ちょっとくらい思い出を作っていってもバチは当たらんだろう。なにしろ仮面越しでは自分の顔も見られないし、仮面をしている事だって、鬼灯神社の近くであればただの観光客だと思われるだけで済むに違いない。あらゆる要素に、彼は酔ってもいないのに気を大きくしていた。)   (7/6 20:58:11)
マリア/火津彌 > 「……やあ別嬪さん。お困りですかな?」(いかにも気障ったらしくシャッターに片手をついて話しかけた後、あなたの顔をようやく見てはっと息を呑んだ。かつては佐官として部下の統率に気を配っていただけに、軍に所属するものの顔は一通り覚えている。このご婦人は八雲のところのご令嬢…巫女ではないか。)「……あっ、……こ、こんばんは。な、なんか困って…るんじゃん?……ぼく、いや、おれでよければ、えー、助けに、なるぜ?」(持ち前のハスキーボイスをすこし低めに取り繕う不自然で気持ちの悪い榮郷の"似非標準語"をまくし立てながら、とりあえず手をついている片手を離した。)   (7/6 20:58:15)


シバ/八雲 > 「別嬪さんだなんて……お上手なのね、和服の方。……あら、不思議なお面ね!近くで縁日でもしてるのかしら」よく来てはいるけど住んではいないからここ辺りのことよく知らないのと可笑しそうに笑う。「あら、どうしたの?……はっ!な、なにか気に触ることしちゃったかしら!会ったばかりの殿方に失礼しちゃったのね、ごめんなさい、わざとじゃないのよ?」こちら側は名前以前に顔すら知らないらしく突然口籠もり始めた彼に対し不思議に思い、自分に何か変なところがあるのではないかと早とちりをし、片手で髪を耳にかけ少しばかし慌てたように謝罪の言葉を述べる。「あの、私、その……お酒がちょっと、好きでして」恥ずかしそうに話だし行きつけの店がお休みなこと、他に目当てのお酒が置いてあるお店がないかと探していることを話す。   (7/6 21:20:52)


マリア/火津彌 > 「……ま、まあ、ね。おれは、ああ、帝都生まれ帝都育ちや…だから、頼ってくれてかまへ…構わないぜ。この面は、まあ、そんなところ…なんだぜ。いや、気にせん…気にしなくていいんだぜ。」(少将である自分のことを知らないのか、とすこし引っかかりつつも今日ばかりはそれがありがたい。『火津彌少将って、むっつりすけべなんだって~~!!』なんて、巫女の間で噂になっている様子を思い浮かべながら、はあと小さくため息をついた。…厭だ厭だ、せっかくこの位にまで上り詰めたというのに。そうして、あいも変わらずに下手くそすぎる『榮郷弁もどき』を口にするのだった。)「……」(髪耳にかける仕草に0コンマ数秒見惚れて上から下へ視線をねめつけた。濡れ羽色のスカートから見える白い足首。王国の文化がまじり出した近頃はまるで下着のような姿でそのあたりを彷徨くご婦人も多いが、やはりこのようにちらりと見えている足首の奥ゆかしさにこそ色気があるというものだ。八雲のご令嬢、確か名字をそのまま字にしているのだったか?軍付きの巫女でさえなければこのままなんとかして一献のひとつでも交わしたかったのに。)   (7/6 21:40:53)
マリア/火津彌 > 「……あー…酒…か。うーん、それなら……」(焦ったあまりに身体が暑くなって、冷や汗が出てきた。狐面で蒸れるし、無意識に帯に挟んでいた扇子を手にとり、その扇子で大通りを指した。)「この先へちょっと行ったところの『桔梗』という店がそれなりに品揃えがあ……るぜ。白い提灯が目印やでな…‥なんだからな。」(『頼ってくれ』と言った手前、通りを指さして一応情報はあげるとしよう。ふう、これで役目は終わりだと安堵したのがいけなかった。蒸れる顔に風を送ろうと開いた扇子には帝国軍の紋章がでかでかと入っていたのだった。)「……じゃ、おれはこれで……。」   (7/6 21:40:58)


シバ/八雲 > 「どうしたんですか?もしかして喉を痛めてらっしゃるの?殿方には甘過ぎるかもしれないけれど飴要りますか?」放っておくともっと痛くなるかもですしと小さな鞄から喉飴取り出す。「白い提灯が目印の『桔梗』ですか。教えていただきありがとうございます。………あら、その紋章。帝国軍のものではありませんか、私たちどこかでお会いしたことがあるかもしれませんね!」ここでふと、この人も飲む人なのではと思いつき今にも去ろうとする彼に再び声をかける。「その、これもなにかの縁ですし、お忙しくなければご一緒にどうですか?お仕事ちゃんと頑張ってますしお父様からも多少は貰っているので…」ああでも喉を痛めているのならやめておいた方がいいのではと頭をよぎるが、勝手ながらも飲み仲間が欲しい余りに1人より誰かと飲んだ方が楽しいんです!と目を輝かせ緩くガッツポーズをし話す。   (7/6 22:03:42)


マリア/火津彌 > (見た目が嫋やかで足首の美しいだけではなく、さっと喉飴を差し出してくれるあなた。『くうう、良いなああ』なんて思いながらも正体を明かせない事に心中で悶絶した。いや、もう明かしてしまおうか。いやいや、それはあかん。ちょっと今日は調子に乗りすぎた…。ありがとう、と受け取った瞬間扇子の紋章に気づいたあなたに激しい動揺を見せた。)「……えっ!?……あっ、扇子、か……!いやっこれはその。貰い物やねん!」(動揺しすぎて、もはや地が出てしまっていた。さらに、飲みに誘ってまでくれたあなたに応えられない事が火津彌には悔しすぎて――ああままよ、ええいもうどうにでもなれ!)「……済まない八雲さん、お、俺は……今夜あなたに付き合う事は、出来ないんだ。」(扇子を帯にしまい込み、あなたの両手を自分の両手で包み込むようにして顔を近づけた。こんな機会二度とないだろう、ご婦人にここまで言わせておきながら、口説き文句の一つも言わんのは尊華男児の名折れだ。)   (7/6 22:44:05)
マリア/火津彌 > 「……また必ず逢おう。あんたの酌を受けたい。――俺の名は、ええと――。そう、イナリだ。月に叢雲花に風、好事には邪魔が入りやすいというもの…。また会おう、麗しき花。」(自分が『火津彌ではない』と思えばこそ、いっそ歯の浮くような台詞がするすると出てきたのは伊達に魔術師をやっていないということだろう。『決まった……!』と心の中で拳を握りしめると、今度こそ逃げるように踵を返していった。――そしてあなたは気づくのだろう。『自己紹介なんてしたかしら?』と。)【タイトル:月に叢雲】〆   (7/6 22:44:10)