この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

コカ&火津彌

HOPE

木場田/コカ > 「あー………」(間抜けた声と共に、ポカンと空いた唇の隙間から煙が漏れる。縺れたように煙った室内。客層を窺わせるどころか、客の一人もいない店内は、寂しく蒸気機関の漠然とした稼働音が続いているばかりであった。雲間から差し込むように、部屋に日射しの柱が、降り積もった灰のようなものが溜まる灰皿だけをてらし、そこに新たな灰が投下される。まるで、自分みたいじゃないか。灰に熱はない。触れば崩れる。こんなものだ。自分なんて。)「はん…………やってられるか」(灰色に染まった時間に吸う煙ほど、不味いものはない。吸う必要なんてないけれど、衝動的に、或いは作業的に、体に刻まれたリズム通りに燻らせて、また敵の煙を吸う。吐く。どうせ、客なんて来ない。埃の被った煙草屋に機械屋だ。カウンターに頬杖をついて、時折り欠伸を漏らしながら、時間が過ぎゆくのを待つ。枯れるのを待つコカの木。チェーンスモーキングの男は、そうやって一日中煙草を味わう。行き場も無い煙は、しかしこの部屋に留まる他の道を見つけられず、澱んでいっただろうか。だんだんと、蒸気機関の蒸気を漏らす音も、歯車が回る音も、小さくなって行く。)   (7/6 11:32:58)


マリア/火津彌 > 「あー………」(狐面の下から漏れる声は、苛ついた響きだった。ブーツの音をこつこつと王都の石畳に響かせながら、尊華帝国軍少将・火津彌は歩いていた。煙草が切れて唇を噛んでしまうのを頭で『ああ、やめたい』と意識しながらも、一度噛んでしまったせいで出来た口内炎が気になって、やはり何か銜えていないとどうしようもなさそうだ。)「さすがに煙草屋くらいあるやろ!?んあぁ!」(帝国であれば、銭湯の入り口や日用品店の入り口、果ては民家の軒先にまで畳一畳もない煙草屋の中に高齢者やら戦争未亡人のおばちゃんが居て、でかでかと屋号を掲げているのが当たり前の光景である。いくらでも見つかると思っていたのにさっそく文化の壁にぶち当たってしまった事にほんの少しだけ心が浮き立つのを自覚もしていない火津彌であった。)「……スチヰマア……?」   (7/6 11:58:37)
マリア/火津彌 > (煙草を探していたせいか無意識に煙突の煙に引き寄せられていた。低い建物の中から、ここですよ~と救難ののろしをあげているかのようにどこか目について、また、故郷の厘都の廃工場を思い出して。……たどり着いたのは工房のようなお店のような不思議な場所だった。煙草ありますの看板と、OPENとなっている看板を見て、おお、と声を漏らした後、火津彌は迷いなくそこへ入っていく。)「……やっているかね?」   (7/6 11:58:45)


木場田/コカ > 「あー?」(扉が開かれ、澱んでいた煙が動き出した。プシューーーっっ!!シュシュシュッッ………動きをやめ掛けていた蒸気機関が蒸気を激しく噴き出した。今日初めての変化だ。我ながら、こんな辺鄙にある得体の知れない店によく入れた物だと思えてしまう。さてさて、どんな偏物が来たものやら。)「あー、やっているとも。へっ、これでもなぁ〜……」(その顔を拝みに、煙を吐きながら灰皿に煙草を押し付けて、男は綿が一部飛び出してしまっているボロボロな椅子から大仰に立ち上がる。煙を纏い、靴底の乾いた音を鳴らしながら、コカはそちらに歩み寄ったか。)「あぁ?白のフォックス………?」(異国の面をした男。そして、染み付いた、硝煙の臭い。ああ、実際にはしなくとも、同業者として、その鼻は狂っちゃいない。あれは、人を殺める人間だ。目を細め、男は遠慮もなく観察してから。)「へえ、お前ェさん、匂うな。軍人さんだろ。」   (7/6 12:28:06)
木場田/コカ > (カウンターまで戻りながら『見透せば』振り向いて、そこにもたれかかり腕を組んだ。プシュ、プシュ、プシュ、壁側の蒸気機関が威圧的に煙を噴き出す。恐らくは、帝國の軍人だろう。休戦中となり、様々な人間がこの国に出入りするようになった。今ではイモータルの件もある。敵の敵は味方という言葉もあるように、今では三つの国は協力し合う風潮になりつつある。あなたのような客も、珍しくはない。)「とは言え、ここ-俺の店-では、お前ェさんのその仮面の中がどんな奴なのか関係ねぇ。あんたはここじゃ俺の客で、それだけだ。そら、煙草か、それとも機械か?」(灰皿に埋もれた、干からびたような吸殻を取り出し、それを徐に口に加えると、味なんて関係なしとばかりに火をつけて   (7/6 12:30:39)


マリア/火津彌 > (その不思議な店に足を踏み入れると、むわ、と湿度の高い熱風を肌で感じた。途端どこかからプシュプシュ聞こえる音に火津彌は驚いて、きょろきょろと店内を見渡した。壁や天井に張り巡らされた管の数々は、恐らくここ2,3年 光のような早さで普及し始めた蒸気機関だろう。視界のあちこちでピストンが動き、タービンが回る。その光景はどこか威圧的ですらあった。)「そ、そうか。邪魔をする。」(「やっているとも」と言われ返事をしながら、狐面をつけたままの顔を俯かせた。暑い……なんなんだここは。)「ん……あぁ、……そうや、尊華帝国軍少将をやっている。ちょっとイモータルのことで騎士団に用があってな。しばらく王国に世話になる。」   (7/6 12:57:14)
マリア/火津彌 > (あなたの『慧眼』に一瞬戸惑うも、こんな格好で居るからには隠す必要もないだろうと踏んで。もちろん、戦争はつい三年前に休戦がなったばかりで、未だに尊華人を憎むウェンディア人が居る事も理解していたけれど、何かあった時に一般市民を巻き込まない為には、素性は明かしておいた方がいいだろうと考えたのだった。ただひとつ、『そんなに警戒しないでくれ』とは願いながらも。)「……あぁ、」(だからこそ、『関係ない』と言われれば安堵したような息を洩らした。)「……キセルの刻み葉(ジャグ)はあるか?近頃は皆巻いてある煙草になってしまってな、便利やろうとは思うんやが……。」(煙越しに揺らめくあなたの姿を、狐面越しに見た。当然の事ながら共にまだ心丸裸というわけにはいかない、これがコカとの出会いである。)   (7/6 12:57:27)


木場田/コカ > 「なるほどな。イモータルのこととなると軍命か。ともならば、お前ェさん、貧乏くじを引いちまった訳だ。大方、肩身狭い思いをしているだろ?」(つい最近まで己を屠ろうとする敵国の魔術師が、戦争中ではないとは言え、自身の住処を歩いているのだ。この国の人間からすればたまったものではないだろう。警戒し、或いは牙突き立てないにしろ見せつけて威嚇する者はいよう。憐むわけではないが、気の毒な話だ。彼だって望まぬ敵意を向けられ続けるのだから。しかも軍の下命だ。そのくじを引かないなんて手札も無かった訳だ。)「煙管………パイプか。パイプの葉な………あるにはあるが、ちょっと探すから待っててくれ。」(と言ってカウンターの裏手の戸棚まで移動すれば、ガサゴソとそこを漁り始める。)「戦争は、まだ終わっちゃいねえさ………。人々の中から怨みが消えねェ限りはな、国が勝手に終わったなんて言っても、民衆の心の中じゃアまだ戦っている。燻った黒煙は、そう簡単に晴れねェし、その煙のせいで先-この世界の未来-も見えねえ。」   (7/6 13:24:14)
木場田/コカ > (奥の、恐らく葉が入っているだろう箱を一個一個開けて、状態を確認しながらそう語る。そう語れるだけの口を持つ男がただの一般人というには考えにくいだろう。老けた顔のコカだが、その体は屈強のままだ。そこからあなたは、どのような答えを出すか、あるいは出さないか。)「さて、お前ェさんの吸っていた物とは違うかも知れねェが、今在庫にあるのはコイツらだな。確か、尊華から取り入れたものがコッチにあるヤツと、この国のがコッチにあるヤツだ。状態はいいヤツを選んで置いた。」(そう言ってカウンターに幾つかの箱が置かれ、片方はあなたの祖国の文字が書いてある箱と、もう片方はウェンディアの文字が書かれている箱だっただろうか。)   (7/6 13:24:25)


マリア/火津彌 > (がさごそと戸棚を漁るあなたの、厭に鍛え抜かれた背中を見つめながら少々遅れてその質問に返事をした。)「……肩身の狭い思い、か。どうやろうな。改めて言われれば帝國に居ようが王国に居ようが、居心地がよくなかった事なんて……なんてな。あんたらも知っての通り尊華はなぁ……。一枚岩ではないからなァ。ああ、終わったとは思っとらんよ。ただ今はイモータルにヨズアに……警戒したほうが良い事があまりに多すぎるわ。…アンタも、そう思うやろ?」(表情の見えない仮面の下からでもくすりと含むような笑みを湛えている事が声色から解るだろう。最後の一言は、まるであなたを試しているかのようだった。刻み葉の箱をふたつ差し出され、一旦そちらへ向き直る。)   (7/6 14:14:19)
マリア/火津彌 > 「……『かがち』か。珍しいな、もう廃盤になったかと思っとったが、こんなところにまだ残っとったとは。」(箱に赤い目をした大蛇が描かれたその煙草は、尊華の中でも渋好みの者やずっと銘柄を変えない高齢者が好んで吸う銘柄であったが、最近はめっきり見かけなくなったものだった。)「こっちは王国の銘柄か?」(ウェンディアの文字が書かれている箱に目をやりながら、あなたの顔を見た。見慣れない煙草だが、味なんかはどうなのだろうか。)   (7/6 14:14:24)


木場田/コカ > 「ケッ………こンの狐め、憎いぐらいにおつむが回りやがる。 ———『俺はもう退役してるんだ』。明日に何処からどんな風が吹こうとな。煙は、吹き付ける風に従って飛んでいくだけだ。」(この食えない男は、確かに狐の面がお似合いらしい。含み深めた言い回しをして、遠回しにコカの過去を見透かした狐男に、コカは憎たらしそうにそう言って、煙草を燻らせた。全く、尊華の連中はこれだから嫌になる。)「ああ、昔はよく売れたんだが、今となっちゃこの国じゃ紙巻きに移って行ってな、パイプの葉はあんまり売れねぇのさ。売れ残って、取り残されて、倉庫の肥やしになっていたから幾つかのダメになっちまっていたが、ここに置いたモンは俺の目に誓って吸えるものだ。」(そう言って目を細めた。)「時代に取り残された、俺と同じさ。人間たちは、信仰を捨てつつある。俺は信仰に縋って生きてきたし、戦ってきたモンだから、捨てようにしても捨てきれねえ。ここに積み上がってある機械たちはな、おっちゃんの悪足掻きの表れだ。お前も、そうなんだろう。」   (7/6 14:49:15)
木場田/コカ > (虚しく回り続ける歯車と、煙を吹き上げて天井に澱んでいく蒸気を、濁った目に映して男はそういう。尊華の煙草の箱、ウェンディアの煙草の箱。この二箱は二人のようだった。時代に取り残された、信仰を捨てられない者たち-魔術師-。だってそうだろう。時に、自身の命を何度も守られてきた信仰をどうして捨てられようか。)「だが、そんな俺を『雲』と言ってくれた女の子がいたのさ。俺のことをどこにでも行ける、どんな形にでもなれる雲だと、『俺を買ってくれた』さ。『買い』かぶりすぎだろ、俺にはもったいねェ『言葉』だろ?」(遠い目をして、吸った煙を吐いた。この煙はいつか雲になれるだろうか。ヨズアの自由が、雲だと言ってくれた少女が、いまなら羨ましく感じる。)「———お前も、その堅苦しいトコを抜け出して、自由になれるといいな………。おっちゃんみてぇにそう言ってくれるヤツが、お前を買って-自由にして-くれるヤツが、いつかは現れるかもって話だぜ。」(そう言って、『かがち』と書かれた、『尊華』の煙草の葉の箱を、あなたに差し出して。)   (7/6 14:51:13)


マリア/火津彌 > 「……やはりな、騎士やろ、あんた。……はあ、どこかで『言葉』を交えていたかも解らんな、わからんもんや、めぐり合わせちゅうんは。」(かまをかけただけのつもりが、自分の思っているより数倍話しが早いのに驚いた。この男は火津彌が何を考えているかももう解って、取り繕わない事にしたのだろう。…よう回りおる。ふっと目を逸らし、歯車のしかけを見た。)「……ああ。」(意味深なあなたの言葉に、一度だけ深く頷いた。どこの国へ行っても魔術師って奴はおしゃべりや。こうして王国の魔術師と、深い会話ができる日が来るとは思わなかった――なんて感慨に浸りながら)「……信仰か……それは捨てようと思って捨てられるものとちゃう、あんたの言う通りや。与えられる事も奪われることも、僕はどこか――神の思し召しみたいに考えている。あんたとの巡り合わせも、な。」   (7/6 15:26:01)
マリア/火津彌 > (捉えようによっては青臭く、嗤ってしまう程"浪漫"のある言葉。だけど、あなたが魔術師ならば解るだろう、伝わるだろうと思った。身を持って知っているはずだ。神の導きや運命ってやつを。)「雲、雲か……ふ、惚気か。媚『売って』ただけとちゃうんか?なんてな。」(相槌変わりの軽い皮肉を交えながら会話を楽しんだ。惚気かだなんて口ではいるものの、もちろんそれは火津彌の顰蹙を買うには至らなかったが。)「自由か、ふ…ああ。」(短い言葉で返事をした後、あなたに差し出された尊華の煙草を受け取ると、「それも、貰おうか」と言いながらウェンディアの煙草も手にとった。)「いくらや?」(小銭入れを取り出して、ぱかりとがま口をあけた。)   (7/6 15:26:24)


木場田/コカ > 「神の思し召し………か。」(なら、今もその神は、煙の神は見ているのだろうか。この俺の、情けない吸殻みたいな様を。)「…………」(なら、願わくば、俺をもう一度焚き付けてくれ、俺が薪でもいい、煙草でもいい、炭になっても、今度こそ灰となってもいい。もう一度、俺にあの煙の揺らめきを、神秘の熱を、教えてくれないか。なんて…………)「だったら、良いなあ…………」(あなたの言葉の力がそうさせるのか、そうあって欲しい、その通りだったら嬉しいと、どうしても願ってしまって、遠い目で消える煙を見届けた。だって、悔しいじゃないか。今まで立派に言葉を紡ぎ、勇敢に戦ってきた己の信仰を否定されてしまうのは。俺が信じたものは、そう簡単に消えてきまうくらい、稚拙な信仰心だったのだろうかと、思ってしまうじゃないか。)「ケッ、好き勝手言ってくれる。焼き餅か?精々焼き餅は『狐』色にしておけ。ーーーくく、くははっ。なんてなぁっ。ったく、尊華の人間に皮肉勝負は流石に分が悪いッッ!参ったぜ。」   (7/6 15:54:47)
木場田/コカ > (と、両手を上げ、降参のポーズをするコカ。若ければ、きっと皮肉対決だって熱を上げただろうが、生憎大人になり過ぎた。コカには上げる熱も、残っちゃいなかった。だから、簡単に降参してしまって。)「へっ、元々このままだったら腐らせるだけだったモンだ。金はいらねエ。面白エ話もできたことだしな。狐につつまれたと思って、葉っぱの一つや二つ、あんたの国の言葉を借りて神隠しさせてやるさ。狐には『葉っぱ』が必要、だろ。譲ってやるよ。」(ガマ口を上げるあなたに、その口を閉じるよう促す。元来、ゴミ同然のモノを譲ったようなものなのだ。それに、そんな価値無しのモノに値段をつけたって、はした金にしかならん。そんな小銭を貰ったって、嬉しくも稼ぎにもならないのだから、しっしと追い払うように、面倒くさそうにいらんと口にするのだ。)   (7/6 15:54:59)


マリア/火津彌 > (あなたの見事な降参を耳にして、けらけらと笑った。尊華の人間とやり合うのとは違って、それはどこか、竹を割ったように快活だった。これがウェンディアか、ウェンディア人か。ふと、自分の因縁の相手であるウェンディア騎士団――いや、今は聖フィニクス騎士団だったか。その万騎長、オウガの姿を思い出す。思えばあいつもまた、まっすぐで表裏のない人物だった。)「……おいおい、そいつは困るな。尊華の男に一度出した財布を引っ込め言うんか?」(お代はいらないと言うあなたとしばらくの間、根比べのような時間が流れた。あなたが譲らなさそうであるのを悟ると、『一箱500価だとしたら、1000価くらいか。』と思いめぐらせ、その財布から1000価の紙幣を出してカウンターに置いた。刻み葉一箱だけを手にとって、さっさと踵を踵を返してしまおう。)「……それ、何にみえる?葉っぱやで!くくっ、騙されたな。タダでかっぱらってったろ。」   (7/6 16:43:52)
マリア/火津彌 > (刻み葉の箱を持った手をひらひらと挙げて扉に手をかけた。出会い頭あなたがしけもくを吸っていたのが引っかかっていた。何故、煙草屋なのに新しいのを吸わないのだろうと。さしずめ店のものに手を出すまいとしているのだろうな、と思い、火津彌ははじめからもう一箱はあなたにあげてしまうつもりだったのだ。だから買った。王国の煙を。――あんたにだけ粋な真似させてたまるかいな、尊華の男をなめたらあかんで。)「…おっと、」(ふと、扉を開ける手を止めて『……――小さき狐火よ。』小さく短い呪文を詠唱する。)「……いざ給え。」(火津彌が振り向くと、蒸気機関を動かす為のキャンドルにぼっと火が灯った。)「そいつはオマケや。火ィ、要るやろ。」(にっと笑った顔は最後まで見せないでおこう。狐はそうして、あなたの店(釜)を後にしたのだった。ピースだかホープだか、なんだかっていう名前の、王国の煙草をあなたに残して。)〆   (7/6 16:43:57)