この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

フュメオム

煙魔羅闍

山葵/フュメオム > ……はぁ。(ぐしゃ、と濡れた前髪を掻き上げ白濁の目をぎろり、と向けるコートの男。前髪や肌はびっしょりと濡れていると言うのに、コートや帽子だけは全く濡れていないと言う奇怪な状況の中で男は、口を開く。) 初めまして、世界。アタシは神罰の代行者。アナタ達を罰する者。神の言葉を届ける使者。せいぜい震えて、今は眠りなさい。赤子のように、ね。(その声はざわざわと森を揺らし、地を轟かせ、森にいた動物達は怯えて逃げ出してしまう。チリ…チリ…と雨に濡れた草が音を立てて燃え始め、地を。木を。空を。果ては動物すらも呑み込んで、灼熱へと変わっていく。その揺らめく赤の中でただ一人、男は目を閉じた。天へと、神の元へと昇る黒煙に覆われていき…やがて男は、煙に紛れて姿を消してしまったのだ。……次の日、王国や帝国にはこんな号外が撒かれた。…「鳳頼の森林、10分の1が焼失。原因は放火が疑われる。」…と。   (7/5 23:56:45)