この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

火津彌

結び文

マリア/火津彌 > 『董殿 木々や草花が冬支度を初めている今日このごろであります。緑を愛する尊き華の都に住まう我々にとっては、些か寂しく感じられるかも知れません。庭にて狂い咲きの花を見かけ、この文に添えようかと思いましたが、白露を湛えたつぼみの姿があまりにいじらしく、折ればはらはらと零れてゆくだろうと思うと私は手を伸ばす事が出来ませんでした。せめてもの代わりに、白露に見立てたこの玉簪を贈らせていただきます。来週末、都合が合えば兵舎までお迎えに上がります。蕾が咲くか確かめにお付き合い下さいませ。 』(女性を誘うにしてはあまりにも短く、時節と要件だけの簡潔な文であるが。……これだけ含ませたのだから、充分だろう。火津彌はつやつやとした真珠の玉簪を取り出し、これとは別の細い短冊状の文を結びくくる。)『吾が終ぞ手折らざりけるかへり花 紐解くる迄君を待ちなむ』(花に歌を結ぶのは、常套手段だ。さて……。)「乗るか、反るか。」〆【結び文】   (11/28 23:24:58)