この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

火津彌&ローザン

蝕まれる陽

マリア/火津彌 > (王国での任を終え、火津彌は趨里の北側に位置する駅で下車し、人並みを避けて山沿いを歩いていた。)「……ふう。寒くなってきたな……。」(色づいた秋の葉が見られるかと思って気分転換に降りてみたものの、ここが北側であるせいか、もう葉は落ち、木々は冬支度をしていた。王国で買った巻き煙草に火をつけて一服しながら雲でも見てみると、地平線に不思議な波型の雲が見られた。)「……あれは。なんだ?」(天変地異の前触れでもなければいいが。そう思いながら、目を細めた。)   (11/27 11:30:57)


木場田/ローザン > (或いは天変地異の前触れ。)(違和感、異物感の現れは不吉の現れ。)(動物の骸のような、妙な形の雲は、きっと───────)(招かれざる客を招き入れる招待状だった。)「─────────やあ」 「はじめまして、かな。」 (影が延びていく。)(闇が、広がっていく。)「ああ、人と会うのは、久しぶりだ…………………」「お前のような人間と会えるのを、待っていたよ。」(暗く、昏く、淀んだ森の常闇から、ぬうっとソレは現れた。長い黒髪。両腕は悪鬼のような異形に変わり果て、成り果てた姿。)(見間違えようがない。あなたは、この存在は天罰覿面のイモータルと、自明するだろうか。)   (11/27 11:44:35)


マリア/火津彌 > (ふっと自らに落ちた影。異変を感じて頭を上げる。陰から現れた異形が近づいてきていた事すらも解らなかった。咄嗟に立ち上がり距離を取る。がらりと空気が変わるのを肌で感じた。こんなところで会うなんて、イモータル……!)「……あなたは」(モノクロームの世界に引きずり込まれたかのような感覚に、既に異能に引き込まれているのではないかとあたりを見回した。灰色の幹、色のない枯れ落ちた葉。山にふちどられた空だけが青い光を反射していて、火津彌はほっとしたように現実に還る。――話が通じる相手だろうか?)「……人間ではないな?」(背中に装備した火縄銃に手をかけ、乾燥した唇をきゅっと結んで湿らせた。)   (11/27 11:52:18)


木場田/ローザン > 「人間に見える程節穴じゃあるまいに……………。」「なあ─────」「お前は…………そこまで馬鹿じゃないだろう。」(濁っているのに、底無し沼のような目が、ぎょろりと、あなたの姿を飲み込まんばかりに射捉えただろうか。粘着質で、湿気が混じった言葉の節々は、絡みつくような言葉を産んでいた。とぐろを巻く蛇のような、あなたを逃さないとでも、雄弁に語るかのような。)「火砲か……………」「時代が変わったな──────」「嘆かわしい事だ…………………」(向けられた鉄の筒に恐ろしいとも思わず、寧ろがっかりしたような、否定的に目を細めるばかりで。)「それを向けて何になる。」「人智の武器は人にしか通じんのが道理だ。私にはわかる。お前のそれは、私を殺めるに足りん…………」   (11/27 12:02:10)


マリア/火津彌 > (この異形は、もしや、自分と対話することを望んでいる……?緊張感を緩ませる事はできない、銃は構えたままだが、異形の目をしっかりと見据え、思考を読もうと試みた。――思い返されるのは白刃の笑顔というイモータルにこてんぱんにされたこと、そしてあの宵宮での中尉の活躍。彼女はイモータルと密に対話をしていたらしい。自分はそうではなかった。いい加減学ばなければな、少将。)「……”人智”…‥な。ふぅん。……では、お前を殺すには魔術で、か?……お前、僕のような人間と会えるのを待っていたと言ったな。この軍服を見てそう思ったのか?……尊華帝国軍大将たるこの私を知っているのか?」(ついでにハッタリもかましておこう。)   (11/27 12:47:23)


木場田/ローザン > 「そう、魔術…………………イモータルを殺せるのはどこまでも“言葉”だよ。“大将”殿。」(それは、コードの事を指しているのだろう。そして、その可愛らしい欺瞞も、やんわりと受け入れた。“伝えるという力の宿らぬ嘘の言葉は、簡単にわかるとも”)(イモータルは面白がるように表情を変えながら、横に歩みを進めだす。)「魔術師には、魔術師。武器を使うなど天罰が下る。」「誰でも知っているオハナシだろう─────」 「だから、言葉を紡ぎ、人々はぶつかり合ってきた。」「イモータルだって、同じでない理由が、無いだろう。」(その語りはマザーグースでも聞かせるかのように。細められていた双眸は、あなたをじっと見据えるだろう。二人を区切るように、風が横薙ぎに吹き付けた。)   (11/27 13:09:11)


木場田/ローザン > 「この世の不思議は、神の御業。即ち天命だ。」「歯には歯を…………天命-イモータル-には天命-言葉の魔力-を。おっと、今更語るまでも無いのだろう。」(歩みをやめ、横に向けていた体を、今一度、そちらに向き直せば)「───────単刀直入に言おう。」「私はね………………………私を殺める存在、言葉の使い手、お前のような、魔術師を探していた。お前が大将だろうが中将だろうが一兵卒、雑兵だろうが関係ない。」「言の葉の紡ぎ手を、私は求めていたのさ。」   (11/27 13:11:34)


マリア/火津彌 > (風が唸る。冬の乾いた風が火津彌の髪を弄ぶ。しかし異形の、油の垂れたようなどろりとした髪は、どうしてかびたりと張り付いて少しも揺れていないように見えた気がした。この世界の理から外れている、”生きて”いないもの――そして、死なないもの。)「あんたを殺すかどうかは私が決める。そして、あんたに殺されるかどうかもな。この鉄砲はそういう意味や……あまり人の為をなめなさんな」(致命傷を与えられなくとも、どうにか切り抜ける手段にはなるだろう。殺す事よりも前に、殺されない事。生きるか死ぬかの世界に生きていれば、当然行き着く思考だ。)「……あんたが魔術師だったのなら、なおさらな。」(ねめつけるような視線、首を掴まれているかと錯覚しそうになる厭なプレッシャー。首筋を伝う冷や汗を悟られぬよう、火傷を追った顔で歪に笑った。)「……ええやろう、質疑応答とゆこう。あんたは何者や?」   (11/27 13:25:00)


木場田/ローザン > 「吠えたな。私好みの強い言葉だ。」「さっきの見栄っ張った言葉よりはよっぽど上出来だ。」(決定的、二人を分け隔てた生と死の壁は決して崩れない。どこまでも超越的な異形、イモータルの女は、いきがった貴方の勇姿を見てにんまりと啜るように笑った。しかし、魔術師ならば、言葉一つ頼りに修羅場を抜けてみろとは思うのだが、最早天罰を畏れぬというのか。嘆かわしいことだと思いつつも、反骨を未だに折らぬあなたに期待の念がたかまる。)「何者、かーーーー。」「死者だ。」「死んだと言うことだけを、はっきり認識している。」「それ以外は、全てが曖昧だ。」「かつての記憶も、なにも、かも。」(指折り数えども、取り零したものの方が多い。自分の定義が曖昧になって、その代わりに注がれているのは)「はっきりしていることは、私の字は『ローザン』であったこと。かつて、『言の葉の魔術師』と呼ばれていたこと。自身の信仰。そして………人類に仇なす存在たれと、自分が塗り変わろうとしていること。」   (11/27 13:44:42)


マリア/火津彌 > 「ローザン……」(本格的に質疑応答の始まった事を悟り、火津彌はゆっくりと銃を下ろした。まだ手放す訳にはいかないが、今は邪魔になる。一歩後ずさりをし、依然距離を保ちながらも異形の姿を目に焼き付ける。山颪が、ひゅるりと二人の間を吹き渡った。)「……言の葉の魔術師……?大層な通り名やな……。」(それほど高名な魔術師だったのだろうか。自分がその名を知らないのは、その字が王国風の響きである事と関係しているのだろうか。)「それが神の意志ならばあんたは従うのか。ただ、天命の歯車に翻弄され、イモータルとして生きていく事を甘受するのか。生前のあんたを愛した人間、待っている人間、かつての夢……知りたいとは思わないのか。」(いや、恐らくは……知りたいからこそ、こうして自分と接触してきているのだ。イモータルという外殻の中にあるコアを、ローザンという人間を引きずり出してやらねば、恐らくイモータルという一生物の本能のまま、このまま自分は喰われるだろう。)   (11/27 14:08:15)


木場田/ローザン > 「知らないか。期待はしていたのだがな。どうやら、生前の私は高名な魔術師では無かったようだ。そう思えば、『言の葉の魔術師』なんて、大仰しいにも程があるな。」(などと、自嘲気味に、女はニタニタわらった。喉を鳴らした笑い方は、どこか空虚な、空っぽのようにも感じた。)「さあ…………ああ、思い出した。そうだ、私には、まだ大切な存在がいた」「私の、娘だ。そう、私は、ずっと娘に会いたかった。」「字を、ビナ────────」「私の、唯一思い出せる、大切な家族……………。私が忘れてしまう前に、お前に言うことにしよう。ビナだ。もはや顔さえも思い出せないが、確かに、私の娘だった…………………。」   (11/27 14:22:57)


マリア/火津彌 > 「ビナ……。」(このイモータルには、娘がいたのか。その名はウェンディア風のようにも、ヨズア風のようにも感じられる響きだった。そして『名を』ではなく、『字を』と言ったのを、火津彌は聞き逃さなかった。)「……私はその”字”を…知っているかもしれない。」(その情報はあなたの気を引く事が出来るだろうか。表情が変わるのを見逃すまいと、目を見張る。)「……その娘とあんたの関係は、どうやった?愛されていたか?憎まれていたか?……恐れられていたか?尊敬されていたか?……『言の葉の魔術師』やと言うくらいやから、崇拝されていたか?」   (11/27 14:32:27)


木場田/ローザン > 「さあ──────」「なんにも。」(彼女は、空っぽだった。人の中身とも言える記憶は失われ、代わりに人類に仇なす悪意の怪物としての要素を注ぎ込まれた。それがイモータル。それが、天罰。そして。悲劇であるからに。)「─────最早、言の葉は枯れ落ちた。」(小さく、嘯く)「言葉に信仰は宿らず、言葉に魔力は含まず………………」「裸となった枝技は、神秘を忘れ、訪れる北風に震えるのみ。」「すまない。これ以上は、私の意識が、持って行かれそうだ。」「私は、もう行く。いつか、ビナ。その娘と会うことがあれば……………伝えてほしい。私の字を。」(それだけ言い残して、一陣の黒い風が吹く。それが終えれば……………もうそこには誰もいなくなっていた)〆   (11/27 15:00:56)