この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

スフィカ&ディラン

マリア/スフィカ > (石畳に囲まれた丸い砦のはるか上には、曇りと言うには微温く、晴れと言うには幽かな空があった。ヴェールに覆われたような彩度の低い空気が、この場所、聖騎士団に属するメカニック達の工房のほど近くに配置された一室に揺蕩う。太陽神様は聖なる騎士にも兵器にも、平等に白い朝を運んで来たようだ。簡素な寝台に膝を抱えて座る彼女は、聖騎士団の機械騎士のひとりで字をスフィカと言った。少女と呼ぶにはとうの立った、けれども女性と呼ぶにはあまりにも纏う雰囲気が拙すぎるいきものだった。彼女は蒙昧な瞳を開き、窓の外を見たり俯いたり、伸びた足の爪をじっと見つめたりしながら、徒に時を浪費していく。仕草のひとつひとつが呆れるほどにゆっくりで、ようやく寝台から出たのは彼女が目を覚ましてから3時間は経過していた頃だった。)「……あ……そっか。」(もそもそと緩慢な動きで寝台を降り、また二時間ほどかけてゆっくりと身支度をした後、ようやく部屋を出る。……午後一時、目指すは技師達の工房。目的は、月に一度のメンテナンス。)   (11/19 18:34:26)




シロー/ディラン > 普段通りセグレードで昼食を終える、という決まったルーチン通りに過ごした昼下がりのこと。所々が煤で灰色に汚れた作業服に身を包んだ王国所属の整備士、ディランは、工房に向かう廊下を歩んでいた。未だ作業に戻るには幾らかの余裕がある。戦時下でない以上、兵器の製造修理の頻度も抑えられているし、なにより〝彼ら〟に関わる事も少ない。熱心な愛国者という訳でもなく、仕事だから務めているという考えに近いディランは、もう暫く時間を潰してから作業に戻ろうと思っていた。⋯⋯そんな時であった。)「⋯⋯あ。」   (11/19 19:04:10)
シロー/ディラン > (前方から姿を現した騎士団服の女性に気付いて声を漏らす。見たことが無い訳では無い、時偶見掛ける事のある機械騎士だとは知っていた。しかしながら関わる事の多い機械騎士の名は覚えているが、彼女の名は未だに知らない。不思議とメンテナンスに来る所を見たこともないし、謎の方が多い。一歩、二歩、互いに歩き近付いて、両者が手を伸ばせばもう少しで届きそうな距離になろうとしていたその瞬間、つい声をかけてしまった。)「──なあ」(綺麗だな、とは思ったことはあるものの話しかける機会がこれまで無かった、それ故か気づけば呼び止めるような声を上げていた。立ち止まってスフィカの背の翼を一瞥してから視線を合わせると、口角を上げて笑いかけた。)「いや、工房の方に行くからさ、整備士に用事でもあるのかなと思って。俺も整備士だから、何か用事だったら俺がやるよ」   (11/19 19:04:13)


マリア/スフィカ > (明るめのシナモンのような色をした髪を垂らし、俯きながら廊下を歩いていた彼女は、遠くのほうで足音がしたのを耳にした。誰かがこちらの方向に歩いてる。話しかけられるだろうか、通り過ぎるだろうか。何が起こっても驚く事のないように、外から見ては解らないかもしれないが、それはそれはゆっくりと、時間をかけて顔を上げ、ぱちぱちといくつかまばたきをしたのだった。視界に入ってきた作業服の男性は見覚えのある整備士だった。大柄だけれど朴訥とした雰囲気で、彼がおそらくは自分を驚かせてくるようなタイプではないと勝手に決めつけていたから、心の中で安堵する。彼女自身にも自覚のない、正しくこれが第一印象であった。)「……あ、はい。」(声をかけられて、元よりゆっくりだった歩みが失速しながらぴたりと止まる。少し見上げるようにして顔を観察しながら、彼の言葉を耳にしていた。)   (11/19 19:24:10)
マリア/スフィカ > 「…………。」(すぐに返答が成される事はなく、おかしな間が流れるだろうか。彼女は困ったように眉尻を下げて、)「………えっと……。」(ようやく口を開いた。)「メンテナンスなんです。半月に一度、みてもらわないと…だめで…。……えっと、ドクターに……いつも、やってもらってるから……だいじょうぶ。…です。」(訥々とした喋り方ではあったけれど、きちんと目を見て話せる程度には、彼女は決して内気だとか、引っ込み思案というタイプではない事が伝わるだろうか。)   (11/19 19:24:13)


シロー/ディラン > 「⋯⋯」(答えが成される前の少しばかりの、その一瞬の沈黙の間もディランはスフィカを黙って見つめていた。不思議な間の後に小さく口が動き出す。此方を見つめる瞳と視線を交えてから、ディランはあぁ⋯⋯。と僅かに眉を下げた。)「ごめん、今はあの人、兵器の整備に向かってるんだよ。ドクターは腕が良いから引っ張りだこで」(機械技師であるゼダスを除けば、彼女は整備士の中でも指折りの腕の持ち主だ。他の整備で忙しそうにしていたのを思い出して、そう口にしてしまった。⋯⋯正直なところ、〝いかにも〟な機械騎士だとそう思った。ぽつ、ぽつ、と途切れがちな声に少し自信無さげな声色と相まって、見た目よりも幾らか幼く見えた。表情が乏しげな所もそうだ。それら全てが強く、機械騎士を兵器として扱う一部の風潮を彷彿とさせる。会ったばかりの相手の何かを知っている訳では無いのにも関わらず、こんな綺麗な人がこんな扱いを受けているのは間違っている。だなんて今更なことを考えていた。)   (11/19 19:58:19)
シロー/ディラン > 「⋯⋯折角だから俺と一緒に外に行かないか?俺も暫く暇だし、外の空気を浴びたいと思ってたからさ。な、行こう。」(幾ら元々好まないとはいえ、勝手に都合の良いテンプレートを押し付けていることにディランは気づけていなかった。少し強引に、その手を取って玄関口へと歩み出す。⋯⋯答えは一つ、ディランが男であるからだろう。自分の手の届く範囲にいた女性が気になっていた、それだけのことであった。)「普段からあんまり外にも出てないんじゃない?お昼くらい外で食べたりして良いんだぞ」   (11/19 19:58:21)


マリア/スフィカ > 「……‥。」(ドクターは手が空いていない。…となると、やはり兵器扱いである身の上を鑑みれば、こんなわがままは諦めるべきなのだろうか。教えてくれたことに感謝しなければいけない気もするし、”ドクターに任せたい”という気持ちを諦めるなら、整備のお願いをしなければいけない気もする。返答を考えようと逡巡しているうちに、一緒にいかないかと声をかけられて、スフィカはぱちくりとまばたきをした。)「……あ、………はい…。」(取られた手を見つめながら、さして抵抗はせず。導かれるままに追随して歩いた。外の空気……家に居た頃は、そんなことを言ってくれる人もいなかったな、なんて郷愁にかられながら。)「……お昼…そういえば食べてない。あの……」(名前を呼ぼうとして、彼のそれを知らないのに気づいた。)「……えっと、…わたし、メリッサ……じゃなかった、スフィカっていいます。」(あまりにも無謀に告げられた真名は、彼女がまだ魔術師を志して間もない事の表れだった。『もう少しゆっくり歩いてほしい』と伝えたくて、引く為に軽く取られた手を無意識にきゅうっと握ったけれど、ついぞそれが言葉になることはなかった。。)   (11/19 20:18:34)


シロー/ディラン > (すたすたと普段通りの歩幅で歩く。さして早歩きをしている訳では無いが、心無しかテンポは早いかもしれない。無論、自分よりは小柄なスフィカからすれば、どちらにしても早いのかもしれないが。「お昼を食べていない。」その一言に視線をちらりと向けると、何かを返す前にスフィカが言葉を続けるのだった。何やら言い直した事に疑問符を浮かべたディランだったが、そのまま穏やかに口角を上げるに留めた。)   (11/19 20:41:06)
シロー/ディラン > 「メリッサ⋯⋯いや、スフィカね、覚えた。俺はディラン。⋯あ。あと、別に敬語は使わなくていいよ。スフィカみたいな綺麗な人に敬語で呼ばれると、何かむず痒いし」(ディランははなからスフィカの事を兵器として見ていない。はっきりと口にした訳では無いが女性としていて見ていなければ出てこないであろう言葉だった。きゅ、と繋いだ手が少し強めに握られた感覚に視線を今一度向け、笑いかけると共に同じくらいの力で握り返す。意思が伝わった訳では無いが、それを気に歩幅は抑えられて緩やかな歩みに変わる。汚れやすい工房周りと言うこともあり、廊下から玄関口、そして外部は土足で出入り出来る作りとなっている。そのまま玄関を潜れば穏やかな秋の陽射しが差し込んできたが、冬も近く少し肌寒い。貴女を気にして一瞬立ち止まったが、ここで引き返す選択は出来ればしたくなかった。ゆっくり敷地内を横切りながら、さっきの言葉を思い出して口を開いた。)「お腹空いてるって言ってたよな...セグレードのカツサンドも良いけど......スフィカ、甘い物好き?好きだったら、折角だしオウトスイートにでも行こうか。」   (11/19 20:41:23)


マリア/スフィカ > (綺麗な人だなんて言われ慣れない言葉に、どう反応していいかも分からず言葉を失った。無闇に感情を波立たせたくはないから、からかっているのならやめて欲しいなぁ、なんて、気持ちに蓋をして。機械騎士に相対した時の整備士は皆このようなものなのだろうか。むやみに優しいというか、なんというか……。それでもスフィカは、言いたいことを飲み込んで控えめに頷く。)「……うん。わかった。」(ディラン、この人は、ディラン……。頭の中で繰り返していると、ふいに握り返された手の感覚に、瞼をぴくりと動かした。……あぁ、きっとこの人は自分を子供として扱っているのだろう。整備士にとって、機械騎士が子供やペットに近い感覚だと言うのなら、納得が行く気もする。繋がれた手は、嫌で振りほどきたいのか、それとも気恥しいのか、自分でもよく分からなかった。)   (11/19 21:08:52)
マリア/スフィカ > 「………さむ……えっ?」(外へ出ると、冷たい風が髪を攫った。片手で靡く毛束抑えながら、彼の言葉を反芻する。)「甘い物…うん、好き。……えっと、でも、私お金ない、あんまり…。だから、だいじょうぶ。ドクターのところに言ってから……じぶんでつくる。」(“セグレート”も“オウトスイート”も正直ピンと来なかったけれど、たぶんお店の名前なのだろう。)   (11/19 21:09:03)


シロー/ディラン > 「あっ、すまん。やっぱり寒いよな...」(決して薄手とは言えない聖騎士団の制服。しかし冬空も近いこの季節には少し心許ないだろう。だが...寒さを凌げそうなものは、自分の上着のみ。煤で汚れたこの作業服を着せるには⋯⋯些か問題がある。少しは口調が砕けて嬉しい傍ら、暫くディランはその点において悩まされるのであった。そんな思考を回していると、スフィカは次いで口を開く。せめて風の少ない所を歩こう、と視界の端に映る前髪が靡く方向で風向きを読み取って、建造物が盾になるように手を引いて先導していく。)「いいよいいよ、俺がスフィカを誘ったんだから。奢らせてくれ。⋯⋯実は結構前からスフィカを何度か見ててさ、ずっと気になってたんだよ。話す機会がやっと出来たし、ちょっと付き合って欲しい」   (11/19 21:58:25)
シロー/ディラン > (すぐ着くから。と付け足して穏やかに笑顔を作ると、ゆっくり街並みを歩いていく。⋯⋯だが、作った笑顔の裏では、未だに悩みの種が根付いていた。気になるのは...背中から広がる機巧の翼であった。自分の作業服を着せてあげても良いけれど、都合の良い穴など空いている筈がない。といっても放っておけば寒いだろうし何より、周りを見渡せば、行き交う人々からは僅かな奇異の目が向けられている。無論、その視線はスフィカの背中に向いていることは一目瞭然であった。釈然としないまま、何を思っているのか読み取ろうとスフィカの顔を覗き込んだが、答えは得られそうになく。そのまま言葉を紡いだ。)「なあ⋯⋯スフィカって⋯自分のことどう思う?満足してるか?何か、色々気になってさ」(最初の呼び掛けとの間に僅かに作られた沈黙の内に、結局言葉を探した結果溢れ出たのは、酷く答えに困るであろう大まかな問い。どうやらまだまだ、魔術師として未熟なようだ。オウトスイートの看板が見えてきた。   (11/19 21:58:27)


マリア/スフィカ > (スフィカは、彼が自分を風下に誘導してくれている事や、歩幅を合わせてくれている事に気付けるほど聡くはない。けれども、徐々に歩きやすく、心地よくなってゆくのを肌で感じながら、次第に気持ちにも余裕が出てくるのであった。)「……えっ……いいの?‥…う、うん…」(スフィカなりに、この人はきっと、仲良くしてくれようとしてるんだと解釈して警戒心を解いてゆく。整備士と機械騎士、上司と部下にも似た関係だろうか。目をかけてくれているのなら、兵器としての役目を全うするのが自分がこの人に出来る唯一の事だと思った。歩きながら、行き交う人々の奇異の視線を受けて少し縮こまる。保護者であるところの整備士その人、ディランを頼るようにして寄り添いながら『わたしは機械騎士です』と無言のアピールを周囲に向ける。精神年齢が低いとはいえ、彼女も少女というような歳でもないから、子供のようにべたべたとくっつく事は出来ず、触れるか触れないかといった微妙な距離ではあったけれど。)   (11/19 22:23:29)
マリア/スフィカ > 「……え?……えーと……まんぞく……」(投げられた問いには言葉を詰まらせ、沈黙が流れる。そのまま続きは紡がれる事はなさそうと解釈出来るほどの時間があった。スフィカなりに考えてはいたけれど、どうしてこの人はそんなことを聞いてくるのか、と、むしろディランのほうが気になってしまい、あまり集中することは能わなかった。)   (11/19 22:23:36)


シロー/ディラン > 「そう、満足してるかなって。⋯⋯⋯いや、答えにくいよな」(並んで歩きながら言葉を重ねたが、長い沈黙を経て黙ってしまうスフィカを見兼ね、再び一度間を設けた。抽象的で急すぎた気がする、今のは自分の質問の仕方が悪いとディランは思った。テラス席が設けられたオウトスイートの店頭で、ショーケースに並ぶスイーツを流し見ながら言葉を紡いだ。)「何も難しく考える必要は無くてさ、んー。ただ俺が知りたいだけだな、整備士としてじゃなくて単純にスフィカのことが。時間もあるし、甘い物でも食べながらゆっくり話そうよ」(ただディランはスフィカの事が知りたいだけだった。確かにきっかけはスフィカが機械騎士だからという事に相違はないが、それとは別に話してみたい。そういった気持ちを口にすると、甘いもの甘いもの、と言いたげにショーケースを眺めて、目を止めた。折角なら少し温かいものが食べたいと考えていたディランにとってうってつけのものだった。)   (11/19 22:57:25)
シロー/ディラン > 「ここのスイーツは何でも美味しいって評判なんだよ。今日は少し寒いし、スフィカが蜂蜜好きだったらこのホットケーキとかどうだ?」(ディランがもう片方の手で指さしたそれは蜂蜜がたっぷりと掛かったホットケーキであった。   (11/19 22:57:27)