この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

糸依&瑞希

玉響消える牡丹に、取り残されたハナミズキ



清瀬/糸依 > 「──やはり帝國は、澄み給ふて、愛し。朗らかにて、歩くにはかしこし日なり」(霜月のその名は逸名であるかのように、風も穏やかで優しい日の差す散歩日和であった。長らく離れていた愛する母国は──とはいえ、私自身は相変わらずの王国かぶれであるが──快く私を抱擁してくれるのだ。私の心模様はこうではないが、慰めるような寛大で雄大な、見えざる誰かが常に側に居るようだった。深い呼吸は、枯れた薫の中に緑を運んでくる。そしてそれは段々と、鼻につかぬ甘い匂いとなるのだ。ひっそりと謙虚に構えたそこは、人が寄ることを拒むようにも見えた。だからこそ、こんな変わり者は同族として惹かれるのだが。)   (11/19 19:07:59)
清瀬/糸依 > 「御免下さい、何方か居られ給ふか」(戸を開け、無意識に声は低く小さく漏れだしていた。無造作ではないが、それなら対に人工的だ、とも言い難かった。きっと物好きな店員か、それとも妖精が手入れをする店。適切に季節の花が店頭に置かれたこの場に、人が足を運んでいない筈はないだろうと踏んでいた。)   (11/19 19:08:01)


愁空/瑞希 > (尊華の夜は、いつの季節も美しい。しかれども、霜月の玄兎は尚の事。決して広いとは言えない室内の、小さな椅子に腰掛けてゆるりと首を持ち上げる。月見窓から差し込む青白い光を浴びながら、日光浴を愛する花達とは対照に、月光浴を愛する少女は、巡る春夏秋冬、一年の中で、この季節が一番に好んでいた。部屋の中を満たす花々の匂いで身体の中を満たしながら、華やぐ気持ちに月の光さえ纏わせて。風もない店内、花がもしも話すのならば、その囁きさえ聞こえてしまいそうな程静かな空間。響くのは、自分の息遣いと鼓動――――『御免下さい、何方か居られ給ふか』。それを切り裂く、低く小さな声。はっとしたように入り口の方を振り返り、不意を突かれた所為か上擦った声で返す。「は、い…! 此処に。」かたり、と音を立てて椅子から離れ、ぱたた、と足音を鳴らし店内の空気をかき乱す。ふわりと花の匂いが改めて立ち上がる。霜月の香が店の中を満たし、尊華の夜をまた一つ彩った。)   (11/19 19:36:22)
愁空/瑞希 > ……こんばんは。如何なさいましたか? こちらは花屋瑞希、本店――とでも言いましょうか。正確には、店としては構えていないのですけれど。(物好きな店員か、妖精が手入れする店か。答えは前者で、二藍色の髪を揺らして、尊華の女性が相手の前に現れた。こんな夜更けに花を買いにくる、ましてや歩き売りをしているなら兎角、店に来るとは相当に珍しい。内心、花を買いに来てくれた事を期待しながらも、ただ困っている方なのかもしれない。という可能性を考慮し、茶目ッ気を出した言葉遣いで問い掛けた。)   (11/19 19:36:27)


清瀬/糸依 > (店の奥から聞こえてくるのは、地に足を着いた生き物、人の爪弾く足音であった。とはいえ、尊華の人間にしては少し色味の浅いような、人目を忍ぶその場が作用したのか、何にせよその店員はとても不思議な印象を与えた。私が此処を訪れる前に、花を背負い街を練り歩く貴方を見ていればもう少し変わっただろうが、生憎と自分は店先で品揃えを眺めたい人間だから、もしその姿を遠目に認識したとして、財布の紐を緩めることはなかっただろう。)「夜分遅くに失礼、先日大きな予定を終えし故、時間ができまして。貴殿が宜しければ、花を買い申さばや」   (11/19 20:12:21)
清瀬/糸依 > (どうやらこの店舗は、ちゃんとした店として構えている訳ではないらしい。しかし趣味にしては手入れも行き届いており、受け答えも冗談の傍ら愛想を見せた中々のもの。現状どうであれ、この人は花に、もしくは花屋に、この仕事に何かの感情を働かせているのだろう、というのは想像に易い。壁に下げた蔦の先の網脈の葉や、ショーケースの中の色彩。時間は少し間違えてしまったけれど、私のセンスに狂いはなかったよう。一度店内をぐるりと見渡してから、僅かに笑みを返して注文を続けた。)「いと暖かき年故、まだ秋菊があれば幸い。それから──貴殿の薦める花を聞きたい。願わくは、一つ花束をこさえ給ふては頂けぬか?」(暖かな秋の平行を喜ぶ虫の聲が、リリリと一つ。)   (11/19 20:12:22)


愁空/瑞希 > ……それは。さぞや大変だった事でしょう。大きな予定が終わった後は、小さなお花でごゆるりと。さ、中へ。花屋瑞希、お客様のご要望にお応えしましょう。(一つ目に驚いたのは、その言葉遣い。尊華に咲いたこの少女は、年長者との会話の中でさえ彼女の言葉遣いを聴いた事が無かった。が、流石は商人と言ったところか。他人と差異があるとして、跳んで驚く事も訝しんで退ける事もなく。寧ろ、その言葉の一つ一つを丁寧に読み解き、愛でる。まるで古書を読み解くように。何処か懐かしく、明け方の秋旻――美しく、澄み渡った秋空を思わせるような言葉。それに、少しビターな千代古齢糖(ちょこれいと)の味。何にも、誰にも代えがたい、彼女だけの言葉の味。スッカリ彼女の言葉の一粒々々に魅了されながら、部屋の明かりを灯した。そこでやっと目にした相手の服装は、和洋折衷、新しさと古さを併せ持ったもの。瑞希自身も和服にジョッキーブーツと和洋折衷それなりに、と言った服装ではあったが、彼女の折衷の仕方は美しい。瑞希のように、"カブレ"ではなく、自分のスタイルとして織り込み、確立している。何よりその胸に牡丹の華が宿り咲いている事に、花屋は喜びを覚える。)   (11/19 20:41:07)
愁空/瑞希 > ええ、今年は暖秋で御座います。秋菊ならたあんと。花束も美しく、秋菊を中心に据えて纏めましょう。お好きな色は?(虫の聲に交じり、花屋の鈴の音のような可憐な声が店内に響く。ショウケースと、店内の壁際に巡らせた花瓶、鉢植え。奥まった所に、多種咲き乱れる秋菊達が居た。それに視線を一度振り、他、店内を埋め尽くす季節の花にも視線を一度。和洋折衷、そんな彼女を表すような花束を作るために、服の裾を持ち上げて。先ずは秋菊を選ぼうか。菊と一つに括れども、その花弁、色、其々に異なる。仏花のイメージもある菊。だからこそ、より華やかに、愛らしく。客の好みに合わせた一束を作るべく、花から視線を持ち上げて、彼女へ問うた。)   (11/19 20:41:19)


清瀬/糸依 > 「それは忝ない。──しかし、塵の積山が唄われるように、小さき花弁の幸い積もれば、違わぬ幸となり。何より、花はをかしものです」(ぽっと夏の蛍を灯らせた店は、暮明の中で薄らと見た時とはまた違う顔を見せる。彼女が私を吟味し頂く間、私も彼女を、さて言葉は悪いが品定めしていた。花屋の人間に比べればそれは劣るなんていうも烏滸がましい程の知識であるが、好きやその思いはそれなりに持ち合わせている。彼女がどんな風にその感性を束ね、私という客に提供してくれるのか。言わば技量なんてものは量れないから、価値観を見極めようという魂胆であった。それは批評というよりも、物好きが執行する“行きつけ”の見極めとも言える。)「──色。そう、ですね」(煉瓦調の微かに覗く温室の中を、先導のままに着いていけば、そこには艶やかに咲いた菊の大群があった。犇めきあい、誇張のなく己を表したうちの数本を、私よりも帝國色の彼女が手に取る。さて、此方に問うてくれたそれだが、おもむろに口に手を当て暫し黙り込んだ。)   (11/19 21:20:51)
清瀬/糸依 > 「ええ。赤、赤に。それをひとつ魁に、他は小さくても良し。……其のような所望をし申すは、難題であろうか?」(その色は特別目についたわけでもなく、寧ろ周りに灯るのは菊であるのだから、もっと淡い色が瞳を占めていた。だからこそか、物足りなくも感じた。それはここまで歩く時に背が見ていた夕日かもしれないし、胸に咲いた牡丹であるかもしれないし、はたまた他の某かであるかもしれない。結局のところ、予感というのがしっくりきたのだ。)「それから、菊は参──いや、伍ほど。白に赤、桃と山吹と……それから、ええ」(そこまでで止めて、淡白な笑顔を寄越す。お彼岸どころか秋分も過ぎ、冬至も見えた頃合いであるから不自然に感じるだろうか。けれど、注文の意味するところは、きっと痛いほどにわかるだろう。)   (11/19 21:20:54)


愁空/瑞希 > あらあら、ふふ。花と皮肉は尊華の宝ですから。この場は宝の山でしょうね。――畏まりました、お客様。どうぞ。お掛けになってお待ちくださいな。(彼女の言葉は古書のよう、しかし時に、小瓶に詰められた毒のよう。誰よりも言葉を重んじ、愛している彼女だからこそ、自身の感性に頼らずとも解る。試されている。しかしてこの花売りが尊華に"歩き売りの花屋瑞希"として馴染まれたのは、単に歩き売りが珍しい故にでも、花持ちが良いからでもなく。季節の垣根を越えて、どんな花でもその場で用意出来てしまうからこそ馴染まれた。季節を超え、どんな花でも手元で開花させる。花売りとして、季節を重んじる者としての禁忌。しかし、望む者は多い。『一年中春を感じていたい』。そんな願いさえハイ畏まりましたと叶えてしまうのだから、この花屋は特異なのだ。が、しかし。だからといって、安易に魔術で花を咲かせて良いものか。答えは否。願いを叶えるべく安易に季節の垣根を超えるべきではない。よって、花の代わりに皮肉を一つ添え、この場に宝をモウ一つ加えて、笑顔を浮かべる。一度店の奥へ消え、相手のために菓子と茶を机の上に、椅子を軽く引いてどうぞ、と目配せ。)   (11/19 22:11:37)
リプカ/リシリア > ((私に貴方をドゥクシさせて下さい!!!(告白)   (11/19 22:11:40)
愁空/瑞希 > ――ふふ、私のお店も、好く評価されたのね。(ここから先、見るべきは客ではなく花である。小さな喜びを浮かべて、秋菊に向き合いながら、菊にあの女性の姿を重ねる。伏せがちな青い瞳は冷たく見えるが、その奥に揺らぐ闘志。軍の人間の、気高く強い焔。それを表すには、紅い大輪が望ましい。"赤く燃え上がる焔のような花弁をした、自己の強い菊。それをまずは一輪。そして白に桃と山吹と。彼女の強さを引き立たせるには、紅い華を支えるような小さな花が望ましい。つまりはあとは小菊か。強い赤色に強い山吹を重ね合わせては、焔の赤に焼かれるか、山吹の風で薙いでしまうかの二つに一つ。彼女の青に遠い場所――胸元に牡丹の赤があるように、付かず離れずの位置に添えよう。では近くには桃色と手に取ったのは白色の小菊。花弁は純潔の白、中央部は緑から外側に掛けて黄色が混じり、落ち着いた模様で。焔を宥め、寄り添うように。白の小菊は葉を残し、紅白の塩梅を整える。次いで、桃色。白の小菊と同じサイズで、こちらは少し多めに、赤の大輪より一段下げて添える。   (11/19 22:12:18)
愁空/瑞希 > 女性らしい控えめな様子ではあるものの、桃色が赤に負けることはなく。それは先程添えた白色に葉を多めに残したから。そして最後は、山吹――白を挟み、その向こう。太陽のように煌めく、もう一つの焔。こちらは白と桃色の小菊より少し大き目の花で、しかし赤の大輪には及ばない。彼女がこの花束で一番引き立てたいのは、彼女の奥にある、焔であればこそ。赤の菊より大きなものは取り入れないと決めていた。こちらの横にも白の小菊を入れ、菊が伍――色とりどりの菊、これらは全て霜月に最も美しく咲く品種。それぞれの自己主張が強いからこそ、纏めることは難しい。これ以上色で飾っては壊れてしまいそうな花束を、花と花との間隔を空ける・葉を残すなどで成立させた、菊の一纏め。秋の夜長、そのひと時を借り受けて作り上げたそれは、あの軍の方にお見せしても満足して頂けるだろう。と、踵を返して彼女へ見せた。)   (11/19 22:12:41)




清瀬/糸依 > (暗に回したこの挑戦状はさぞ解読も、申し付けも面倒なものであっただろう。しかし彼女も尊華の人、百合のような後ろ姿を携えつつも、胸のどこかには薊を一輪隠している筈である。ほんの刹那、花屋瑞希の主が消えたその間に吐いた息も、早く花の中へ紛れてしまった。)「至れり尽くせり、と。ええ、貴殿の心行くまで、待ち申し候」(さて、ここの売りはサービスかい?いやそんな筈はあるまい。ここに敷かれた季節の柵はやけに低い、まるで全てが旬のうち。言葉を巧みに組むこの店には、魔術が仄かに渦巻いている──なんて、ただの憶測だが。魔術を使役した企業など最早ごまんと居るだろう、全てを神の手で完成させるを良しとするか、それは芸術においては愚問なのだ。彼女が知り得た人間であろうとそうでなかろうと、求めるものはその信仰の先には居ない。思い出したように器の中のものを一つ啜ると、どこか揚々と花屋は二つの尾を揺らし振り向いた。)   (11/19 23:10:30)
清瀬/糸依 > 「げに。貴殿はいと………。はは、失礼。どうか無礼を赦し給へ。久しくよろしき店を目に留めけるもので……、貴殿の見出す柄行は、誠物より抜け出でたるやうに美し」(数回の瞬きを経て、伏せがちであった瞳を大きく開く。乱雑に鏤めたように置かれた菊は、牽制と協調の狭間で何とかその形を保っていた。正直、五色だなんて無茶振りをこのように聞き入れて貰えるとは露程も思っていなかったのである。心なしか呆気にとられたように、貴方ではない誰かへの嘲笑を含める。心境までも素直に、多少台本の添削を終えてから述べてしまえば、座ったままで恭しく一礼。それから、指しかけた手を宙に浮かせて、もう一言。)「では、一つ。──其の子達を、友に。戦場の末期へ、連れても」(貴方が華々しく飾ろうとした前の姿に。希有なる出会いの裏舞台は、軍人には在り来たりな筋書きである。)   (11/19 23:10:37)




愁空/瑞希 > 人を試す、なんて、期待するからすることでしょう。私は喜んでいましたよ、最初から。(彼女の無理難題は、遥か昔、御伽噺や昔話に出来た頓智の様。ここで一つ魔術を使ってハイドウゾ、なんてすれば、花屋瑞希の看板はいとも容易く折れていたことだろう。信仰は、自身の心は、楽をするためのものではなく。救われるものであれど、自ら乞い願い、自身のために使うものではなく。魔術とは即ち、捧げもの。花売りであっても、魔術師の素質はある。だからこそ弁えていた。魔術への信奉と、その使い方の大切さを。自らの眼で見据え、自らの手で選び抜いた花々を見た相手の様子を見て、満足気に微笑む。彼女はやはり、美しい人だった。花を求める人に悪い人はいない、というのが少女の持論であるが、正にその通り。青の瞳には闘志。そして友へ贈る優しさ。黒檀の髪を揺らしながら此方に詫び、頭を下げる彼女。それに合わせるように、此方も跪く。二藍の髪から秋の香りが揺れる。慈愛と、相手への尊敬を込めた視線を送り、祈りを捧げるように両手のひらを重ね、その中に花束を包む。)   (11/19 23:38:30)
愁空/瑞希 > ――素敵な人、貴方のご友人にも、この色を。貴女の選んだこの彩りを、どうか。連れて行ってあげてください。(腰の花籠から一束、菊とは異なる花を取り出す。紫色の愛らしい花は『ペチュニア』。花屋の選ぶものを、と言われたがために、その花を彼女と、彼女の想う友人に捧ぐ。)――花言葉を、『心の安らぎ』、『貴方と共に在るならば、心が和らぐ』と言います。墓には似合わない花かもしれません。……ただ、私は、貴方たちの心からの安らぎを。…ほんとうに、願っています。   (11/19 23:38:36)


清瀬/糸依 > 「ははっ、期待と。ええ、正しく私は貴殿を試し、見定めてけり。客は売り手を、其の性の是非をぞ求むる。そしてまた売り人も同じくあり」(嫌な顔など一つも溢さず、是非と微笑む気高い様は、天性と努力を掛け合わせて為された技だろう。実にこの國で咲くに相応しい蕾が、私の見届けるうちに花開いたのだ。此処に漂うのは正しく秋の暮れの哀愁と泡沫の慈しみ。彼女の選んだ花の群れは、木枯らしに落ちた葉を踏み分けるような乾いた音に包まれ手渡された。)「……これは」(まるで南国ではなく洋風の庭の花壇で朝露を飾る昼顔のような、高貴な若紫に身を染めた花。名も知らぬ花を手渡され、その未知を過ごす時間は、まるで昔のようであった。突然に手渡され、この子の名前はなんでょうと。確か彼女は、かすみ草のように小さく、そして寄り合って開花する花が好きだった。墓に、戦地に眠る友人もまた、風に踊る麗しの一輪。──“ペチュニア”、贈るは憩い。紫を携えて、揃うは故人に送る五色。どこか憂いに暮れた貴方を見て、「ありがとう」と明後日に向かい微かに呟いた。)   (11/22 19:02:32)
清瀬/糸依 > 「──古来より人らは、花に衰退の美を求めけり。永遠に咲き乱る梅花に、月を制し見下ろす陽に、地を机上に現す、何ぞ愛敬を感ずや」(無自覚?そんなものができる程清らかな身ではあるまい。貴方に突きつけるように、己に張り付けるように、“梅”の朽ちるを、“日”の沈むを、そして海の果ての愚かさを詠うのだ。…そろそろ宵も深くなり冷える頃合い。一度机に花束を柔らかに置く。ほんの少し悴んだ手先で探り、懐からは財布。紐を解いて、からから、しゃらん。貴方に握らせた小銭は、代金には些か少ないように見える。)「嗚呼、失敬。持ち合わせが足りずして……。此ではえ払えず、仕方なし。──“次”の際に、また」(おどけた芝居を一方的に捲し立て、客はいそいそと入り口へ引き返そう。胸に、両手に花を抱え、最後に会釈を残して夜の薄闇に消えていく。──店の灯りの見えなくなった頃。布越しにちゃり、と高めの金属音を一つ鳴らして、ほくそ笑むのだった。)   (11/22 19:02:39)


愁空/瑞希 > 尊華には、花に通ずる方が多く。私はいつだって、試されていますよ。――いつだって、期待を受けているのです。(だからこそ、期待を重荷に感ずる事無く。故にこそ、期待に実力を以って還す。それがこの花売りの玄人意識。尊華で咲くために得た智慧。尊華の人間は何方も強かで、油断をすれば容易く手折られてしまう。彼女なぞ、正に尊華の女性そのものだ。容姿端麗にして、その言葉は刃。物言いこそ独特で、一見すれば美しい文字。教科書越しに物語をなぞる心地ではあるが、読み解けば詰まる毒と、感情と。尊華の純たる血統の花に、野花は気圧された。――その言葉が向けられたのは、偶然とは思えない。黙り込み、しかして商人は笑う。にこにこ、可愛く。その背に隠した窓と扉。その奥に在る永劫を包隠するように。バレてはいけない、いけないのだわ。――かの牡丹には、尚の事。改めて、言葉にされてこそわかる。解っている。解っている。すべて、彼女の言うことも、自分のしていることも。まるで己が罪を白日の下に晒されたような気分だった。)   (11/22 19:25:04)
愁空/瑞希 > ――っあ、え? 嘘、うそうそ、まって…っ?(彼女の言葉が頭を巡り、深い思考の底に蹴落とされていた。反応が秒針三つ程遅れた。『いっけなあいお金たりなーい、また次くるね!その時払うわ!』のようなニュアンスの言葉一つ残し、黒い牡丹はするりと霜月の玉兎の元へと帰って行った。中々長く花売りを続けてきたが、その場で代金を払ってもらえなかったことは初めてらしく。暫し茫然と入り口を見つめ、ただ、心の中に重く残った言葉を反芻する。あれは間違いなく、自身が触れられたくない永劫への否定。――あの花束、幾ら分だったっけ。そんなことを考える裏、衣服に染み付いたヨゴレのように刻まれた、あの言葉。振り返り、カーテンの奥、寒空の下に咲くハナミズキを見据えながら、ぽつり。)――解っているの。わたしだって、永劫が素晴らしいなどと。思ったことは、ほんの玉響とてない――……おまえは、美しいけれど。みにくい、怪物なのよ。__〆『玉響消える牡丹に、取り残されたハナミズキ』   (11/22 19:25:23)