この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

竜灯&糸依

燃ゆ

シロー/竜灯 > 「ちっくと遅うなってしまったのう。」((夜遅く、日付けが変わろうかという頃合の王国王都。竜灯らはこじんまりとした宿に泊まることとした。夜中だというのを大して気にせずに玄関口を開け放つと、扉の上部に付けられたベルが大きめにちりん、ちりん、と鳴り響く。そのまま靴を脱いで下駄箱に押し込むと、玄関窓口から顔を覗かせていた店番らしき人物に一瞥を飛ばし、階段を登っていく。)「んーと、何処やったかの」(一つの扉の前で立ち止まった竜灯は、紙袋を引っ提げた手の反対側の手で軍服のポケットをいくつか探っていく。指先が捉えた冷たい金属の感触に「あったあった」と取り出したソレは勿論部屋の鍵。ノックもすることなく雑に鍵穴をガチャガチャと回すと、扉を引いて足を踏み入れた。)   (11/17 20:21:00)
シロー/竜灯 > 「今帰ったぜよ。なんぜ、糸依さんまだ起きちょったがか。」(薄暗いものの、小机に設置された黄色ランプが淡く照らし出す部屋の中では、確かに見慣れた横顔が映し出されており。軽く酒を飲んだようだが見て明らかに分かるほど酔いが回っている訳では無いらしく、暗い足元を注意しながら貴女の近くまで歩いていくと、紙袋からなんと尊華酒の瓶を取り出して机へと置いた。どうやら酒場で買ってきたらしい。そのまま貴女へと視線を向けると、眉を潜めながらニヒルに笑い。鼻を鳴らして見下ろした。)「寝れんがか?」   (11/17 20:21:01)


糸依/清瀬 > (小動物が引っ掻いたような小さな傷や、いつまで拭いても落ちない蜘蛛の巣のような模様が付いた小窓からは、群青やネイビーの中に主張の強い灯火がチカチカと目に飛び込む。気持ち帝國目にする光よりも眩しくて最初こそ不快に思ったこともあったが、炎の色よりも目の奥を刺すこの刺激にも随分と慣れたものだ。風が枠組みの中のガラスを揺らし、少し体を伸ばせば椅子が微かに軋む。黄色、というよりも南瓜のような色をした、丁度目の前の照明を少し暗くする。視覚以外にも精神の澄むような心地よい暗がりに囲まれ、体中で凝り固まった疲れを追い出すように息を吐いた。万年筆を脇に置くのに被せて、鍵を回す音が後ろから飛んでくる。)   (11/17 21:16:44)
糸依/清瀬 > 「ああ、竜灯殿。少し遅き御帰りだったようですが」(背凭れに肘を掛けて振り向けば、ほんのりと頬を薄桃にした貴方は酒肆の香りを連れて帰って来た。日中は仕事に出掛けているのだ、夜ぐらいこうして娯楽に更けて帰るのはなんら不思議ではない事。尤も、真面目とは程遠い彼が日の見張る間に責務をこなしているかはわからないのだが。香りはそのまま自分の横で止まり、作業最中のその真上に紙袋が被せられる。木の皮の色をした袋の下では、【イモータル哨戒】の欄だけが真っ白の報告書が、四日後の〆切日付を記していた。これでは今日のうちには終わらないだろう、と予感する。)「貴殿が素面で帰らば、その下の物を終わらせることに叶いましたけれども」(これでは空欄は埋まりそうにありませんね、とでも言いたげに袋を指差し、クスクスと笑い見上げる。酒瓶を取り出すのを見て、まさか宅飲みでもするのだろうかと目を丸くした。まぁけれども、これも彼の通常運転であることはこの数週間でよく学んだ。同伴の身では強く物も言えず、後はただ手際よく中のものが取り出されるのをじいっと見つめていた。)   (11/17 21:16:46)

シロー/竜灯 > (帰宅早々、遅いお帰りだと呟く糸依であったが毒の感じられる語勢ではなかった。これは竜灯にとって一つの成果であった。任務だけで日付けが変わる程自分がワーカホリックでは無いこと位、糸依は知っている筈。それなのに毒の無い言葉で出迎えてくれるなんていうのは、以前の糸依では考えられなかったことである。糸依を連れてきてよかった。竜灯が何気無い成果に少し楽しげなのは、軽口を返すことも無く「おう」と、短い返事が返ったことに映り込んでいた。残念ながら買ってきたのは尊華酒と燻製加工が施されたチーズだけであったらしく、それらを机の上に放ると紙袋を避け。今度は少し皮肉が混じっているような糸依の物言いに片目を顰めると、載せた酒瓶を退け机上の書類を覗き込んだ。)「ええ、ええ。おまんは目いっぱい楽しめばええぜよ。王国に来てまで俺の手伝いなんぞ、こがな夜中まで疲れるじゃろ」   (11/17 21:45:12)
シロー/竜灯 > (全く。と心の中で呟いて、相も変わらず夜中まで熱心な糸依を横目に書類を指先で壁際へと寄せた。机に体を向けて座る糸依とは対照的に、後ろ手を机の隅に載せて体重を掛けると、口角をくいっと持ち上げて見下ろした。)「けど、おまんがそうまでして俺に尽くしたいと思うんちょるんだったら、そうだな、俺も対応を変えるがどうだ?」((笑う竜灯の表情はいつも通りの素敵なものだが、机に置いていた手はするりと動き、糸依の肩に手を乗せた。)「俺は糸依さんのこと、まこと美人と思うちょるし。」((瞳を細めてじっ、と見つめると、そのまま手は頬へと動いて行く。どう転んでも竜灯は構わないと思っていた。   (11/17 21:45:14)


糸依/清瀬 > (酔いのついでか何となく上機嫌な彼を横目に、この頃呆れの気持ちというのは沸かなくなっていた。いつも通りである竜灯という人間を、いつもよりも近い距離で見れば見るほどに、私がいるこの場所というのが何なのかわからなくなってくる。何故彼は私をここに置こうとしたのだろう、なんの巡り合わせで私は此処に居るのだろう。そんな鼬ごっこの思考回路は自分では収集のつかないものになっていった。よもや色心ではないが、何も感じぬ程女を捨てたわけでもない。しかしそう認識した上でこのからっとした笑みを見てみると、今度はどこか釈然としないのだった。──落ち着いた頭であったが、自分が万物への信用を欠いていることにこの時気づけば、もっと違うようになったのだろうか。)   (11/17 22:33:54)
糸依/清瀬 > 「しかしこうも徒然なるままの日々では娯楽も楽しめず、本ももう粗方読み終えけり(視線だけを寝具の方に向けて、脇に寄せてある自分の手提げ鞄を顎で指す。自室から持ち出したものは言わずもがな、この近辺で読める手頃な小説は大方目に通してしまった。それもこれも、「せっかく王国に来たんだから楽しめば良い」という貴方の意見一つの結果であった。私は軍人である、というその気持ちはやはり捨てきれないのか、どうも怠慢と遊び事に浸る生活は新鮮でありどこかむず痒かった。貴方には理解を得難い感情だろうけれど、そこもお互いの理解、という奴である。続けてそのまま、今度は貴方に向き直り机に肘を付き、にやりと意地の悪い稚拙な笑みを張り付けた。)「それに貴殿の書き記す字は蛇が……いや蛞蝓が地を這うような────」   (11/17 22:34:07)
糸依/清瀬 > (いつだか上司と愉快に交わした言葉を思い出す。土産がどうとか、そんな記憶の端々を千切りながら思い出して、笑い話にすり替える。そんな予定を立てていたのだ。……『現実は小説より奇なり。』言い得て妙である。目の前の彼はどうであろう、見かけは何も変わらなかった。変わりに手は肩を、首もとを滑っている。そこでふと、また記憶の断片が掘り起こされるのだ。)「ああ、もう」(ほんとに、お節介ばかり。何も言えやしないし何も動けやしない、狐は置き土産に最悪なものを残していったのだ。布地に触れた肌が熱く茹だる一方、心の奥は嫌なぐらいに冷たかった。彼は今までの人達と何が違うのだろうか、寧ろ節操に関しては酷いのではないだろうか。こんなに口も弛い奴に、仮にそうでなくてもだ。羽交い締めにするには情が移りすぎたし、絆されるにはまだ彼は遠い。焼ける程に熱い身体に反して、輪郭を伝う手は悴んだように冷えていた。)   (11/17 22:34:36)
糸依/清瀬 > 「あ、ま。待て、待って。竜灯、ちょっと…待って……!」(このまま何もせずでは不味い、と頭が鳴らした警鐘。対応に追われる中、咄嗟に両の手が貴方の手を掴んだ。手首が、膝が震えている。涙すら滲みそうであった。何故かなんて理由はわからない、何せ情報量が多すぎる。今までが普遍であったのが魔法のようで、この閉鎖空間も背中の方の家具も薄明かりも、誰かが仕組んだのではないかと錯覚するのだ。)   (11/17 22:34:45)


シロー/竜灯 > 「───」(自分の意識とは別に勝手に手が動く。いや、正しくは思う前に体が動いていく。薄明かりの部屋の中で二人きり。これ以上はない。冷静かと言われれば冷静ではなかった。糸依に〝こうしよう〟と思う前に、体が動いていく。ニヤリとした笑みは自然と少しずつ抑えられていき、首元を滑り頬に達しようとした片腕が阻まれた。考える間もなく口が動く。)「まことかわいいの」(〝待たん〟と普段なら言っていた筈の喉が発したのはいつも通りの軽口と同義の言葉。不思議な程にするりと飛び出て糸依の言葉に被さった。ランプの淡い光を背に椅子に座る糸依に近づくと、椅子がみし、と軋む。逆光を背に再度口元を緩めると、片方の腕で震える肩を抱き、阻まれた方の手を包む糸依の掌をぐっ、と軽く握ってから押し込んで頬に手を当てた。そのまま椅子を軋ませて額をくっつけると眼前の真っ青な瞳だけを見つめた。)   (11/17 23:12:58)
シロー/竜灯 > 「ほうか、俺を夜中まで待っちょってくれたか。遅くなってすまんの、糸依さん。⋯けんど、寝込みか酔った所よりかは、俺、優しいと思うぜよ」(生温かい息と共に言葉はするすると出てゆく。同じ屋根の下で二人、寝込みや酔った所を襲うよりかは幾分か優しいし、純粋だろう。というのは詭弁でしかない。だがそれは糸依に抵抗の余地を残しているぞという事でもあった。暗に「嫌なら抵抗すればいい」と口にした竜灯だが意をまともに教えるほど馬鹿な真似はしないし、抵抗させるつもりも考える余裕を与えるつもりも更々無い。思いつきの冗談半分ではあったが、嘘じゃない。そのまま糸依の頬に手を当てていた手を再び下ろし、首を通って両肩を掴む。)「こがな震えて、可愛いの。〝俺に任せるぜよ〟」(そのまま激しい抵抗が無いことをいい事に、これまで何度も口にした言葉と共に口を耳元に寄せた。   (11/17 23:13:01)


糸依/清瀬 > (まこと、同じ言葉であった。手は押し返されるように頬に当てられ、みるみるうちに視界はうつけを映し出す。はく、はくと口は何かを言いたげに開くのに、そこからは途切れた呼吸が不規則に出入りするだけである。言葉の綾と呼ばれたり、時に趣を生み出すものであり、ひいては私達が神に奉るそのもの。暖色の光と、透けた緑と、影と黒と鮮明な赤が今ばかりの世界であった。)「り、ん。ど──」(たった一言だけ言えばよかったのだ。「これ以上にはなれない」と、それが尊華めいていないなら、はたまた“糸依”らしくないというのなら「貴殿はめでたい頭をしているな」と嘲ればよかった。それがどうにもできぬから、きゅうと喉が締まって声など到底出ず、今こうして目の前の字を絞り出すように呼ぶしかできないでいた。   (11/17 23:55:44)
糸依/清瀬 > 罪滅ぼしとは重すぎるが暗に恩を返せればよかったのに、いつも素直でないことがこうして二人をほろ酔わせている。上手くいかない事ばかりで、素直になんてなれなくて、だから“人付き合いは苦手”なのだ。視界のキャンバスは水彩画で、段々と水に滲んでいく。私に囁く男は竜灯でありながら、私の知る誰でもなかった。頬を伝い二人の手に落ちた、儚い似非の宝石だって、こんなに冷たい。)「────っ、あ。」(身体が痙攣してやまないのは怖いのではないし、流すのは随喜の涙ではない。喜も哀も上手く扱えず、辿り着いた一つ。拒絶とも甘受とも違う手が羽織にすがりつき、罪人が悔いる様で伏せた女が一言、放ったのは、「このまま流されたくはない」。これは一人の女である前に、糸依という人間としての誇りである。震える声で懇願が続く、「都合のよい女になりたくない」「これに、快楽以外を求めるなら、私は」。)   (11/17 23:55:46)
糸依/清瀬 > (請いは重いか、寄るは非得るか。さて、私にはもう正義も悪も、エゴも本心も見つけられない。救いの神も仏もなければ、ちゃちな生涯の今までもない。相変わらず震えは止まらないけれど、それなら暖めてやればいいだけだ。)   (11/17 23:55:57)


シロー/竜灯 > (⋯⋯己のたった一つの誇りであり、矜持であり、形作るもの。今更考えるまでもなく、ましてや戒めるまでも、回想するまでもなく自分はそうだ。───小刻みに震える糸依の肩を抱いて、顔を耳元に寄せ、そのまま抱き締めるように引き寄せて竜灯は瞳を細めた。ただ抱く、それだけの理由に何が必要なのか。好きじゃない相手を抱く訳が無い。⋯⋯それだけで十分じゃないのか、答えは。羽織が握られて皺が寄る、首元が締め付けられた。)「糸依さん」(一層揺れ動く声を耳にして、竜灯は一つ名を呼んだ。これ以上は考えるのを辞めよう。考えるのはあまり得意ではない。今やるべき事はただ一つ。腕の中の女に、思い出させることだけだ。俺の事を。)   (11/18 01:12:33)
シロー/竜灯 > 「いいか。良く見とうせ、俺は竜灯ぜよ。」(震えて俯く糸依の頬を包むように両手で挟み込むと、顔を上げさせて自分の顔を良く見させた。自分の手汗と混じっていたけれど、確かにその頬は濡れていた。何があったか分からないが、そんな事はこの後聞けばいい。今更言うまでも無い事だが、頑固な糸依さんにはもう一度、口が酸っぱくなるまで言ってやろう。)「糸依さん、俺についてくるぜよ。俺、おまんのこと好きじゃき」(何を泣いているかなんて、ちっとも読めないが、都合の良い女という一言を見過ごす訳には行かなかった。何を勘違いしているのか。挟んでいた手のうち片方を頬を伝うように下げ、顎を摘んで固定すると、その瞳を覗き込んだ。)   (11/18 01:12:35)
シロー/竜灯 > 「俺はの糸依さん、一度口にしたことは是が非でもその通りにせんと気が済まん。おまんみたいな良い女を離すもんか、俺に全て任せろ、これからおまんを愛しちゃる。」(どうしても今、この女を抱きたい。堪らなくそう思った。指切り、約束、それら有象無象より最も信じられるものを伝えよう。これまでにも何とかしちゃると大口叩いたのだ、ただ少し付け加えただけだ。なんてことは無い。吐いた唾を呑む気も更々無い。未だ震えて何かを発しようとする口は塞がずに、肩と膝の下に手を通して、小柄な体を抱き上げた。⋯以前から何度も何とかしてやりたいと思うことはあったが、今の世話の焼けるおまんを、意地っ張りで頑固で誰より弱いおまんを見てると⋯⋯⋯⋯)「まこと、おまんを見ちょると愛してやりたくなるぜ」(そう呟く竜灯の瞳は優しげに、だが瞬きを忘れる程に糸依を見つめていた。   (11/18 01:12:51)


糸依/清瀬 > (怯えたように縮こまった背中が、名を呼ばれ一つ大きく動く。頬を挟まれ目を上げたそこに居る男は、輪郭を伴わぬ軟体生物のようでいて、先程よりは竜灯の形をしていた。何度も何度も、意思ある鸚鵡の言葉のように繰り返される。私も呼応して、笑ってやれればどれ程よかったか。高鳴りは煩くて、肺の中を渦巻く怯えが身を削り、泣き叫びたく成る程痛い。もしかすると、私の声は世界に届いていないだけで、末期を迎えるが如く叫泣いているのか。)「でも、私は。」(私の声は、やけにふわふわと浮き足だっていた。今の私は、風一つでぼろぼろと朽ち果て外枠だけが歪に残ってしまうだろう。並んで歩くことは愚か、こんな調子では貴方に着いていくことだって選択できそうにない。貴方の手が口のすぐ横を降り、強張った肌は口の端を硬く結ぶ。溜まって渦巻く思いを言わせては貰えず、温い唾を飲み込めば触れて食い込んだ指の形がくっきりとわかった。)   (11/18 18:25:22)
糸依/清瀬 > (追い討つように、障りなんてものはまるでなかったように竜灯は進むのだ。秘かに憧れる程、眩しい程にまっすぐで。もうとっくの昔から、わかっていたのかもしれない。屈折という言葉を知らぬ彼に、嘘や誠を問うたところで解は簡単に割り出せると。しかしそれを認めてしまい、己の中の葛藤を一つ整理する毎に、また自分だけではどうにもできそうにない難題が落ちてくるのだ。その落ちてきた思いに、私は慙恚すら感じた。軽々と持ち上がる身体と反して、私は私という足枷に身が引き裂けそうになるばかりであった。)「───ごめん。」(拒絶か、謝罪か、なんの前置きか。その理由を貴方に提示するまでに、かなりの時間を要した。視線は段々暗い方へと吸い込まれる。背くことなく向き合う覚悟も、資格もないのは私の方であるとわかってしまった。)   (11/18 18:25:24)
糸依/清瀬 > 「面目無い、竜灯殿。私では、糸依では。貴殿のように愛づことはできず、して。」(暗い色の、しかし今までになく弱々しい声であった。この場で自分に訣別をつけることはできないし、灰色を残したままに夜を明かすこともできない。引き寄せるように掴んでいた手をそっと離す。腕の中に収まっていた身体を少し反らせて、直ぐ側にある机の上、小袋の口を結んでいた紐を片手で抜き取ると、一瞬貴方と目を合わせる。私は今から、泡沫の、卑劣な一言で貴方とを終わらせようとする。)「お願い。降ろして、竜灯」   (11/18 18:25:32)


シロー/竜灯 > (抱き上げた小さな体からはまるで重さを感じない。微風にも浮き上がりそうな羽のようだ。それとも本当に浮き足立っているのか。浮かれ気分の己とは未だ正反対に弱々しいその顔を見下ろしながら、竜灯は困り笑顔を一つ零す。⋯ 全てにおいて根拠は無いが、嫌だとは思っていない筈だ。そして〝少女〟では無いだろうと竜灯は思っていた。分からない、きつく結ばれた糸は依然として解ける様子を見せない。愛すると言っているのに黙って愛されはしないらしい。自分の言葉を耳にしておいて、ぼろぼろと黙りこまない糸依にますます、熱くなるのだった。)   (11/18 22:15:54)
シロー/竜灯 > 「可愛いのう糸依さん、俺が愛しちゃると言いよるのに。もう〝その気になってしもうた〟。おまんが何を言うても変わらん」(抱き上げたまま見下ろして竜灯は笑う。初めから糸依が突っ撥ねるのならきっと、買ってきた酒でも飲んで話し合った筈。それを煮え切らないから、〝その気になってしまった〟。口にした以上もう愛する以外他はない。すまんと謝ったところで遅い。面目無いと言うならこちらから何度でも鼻先合わせてやろう。だから今まで通り、普段は軽口を叩いて、都合の悪い時は突っぱねて、何かあった時はただ黙っていれば目いっぱい愛してやる。⋯⋯⋯⋯そう言っているのにも関わらず。黙って愛されないどころか、あろうことかこの人は、それでは嫌だと口にした───)   (11/18 22:15:59)
シロー/竜灯 > 「⋯⋯はは、ほうか。糸依さん、好きぜよ。おまんが俺を心から愛しとらんき、嫌か?全くいい女じゃ、俺だけじゃ不満か。」(そんな事を言われて降ろすつもりなどある訳が無い。まさか、愛されなくても愛してやると言っているのに、自ら愛さなければ嫌だと口にするとは思いもよらなかった。糸依の言葉は裏腹に竜灯を益々本気にさせた。糸依を椅子へ下ろすと、目の前で椅子の手すりに両手をつき。先程とは打って変わって、ギラギラと熱の籠った視線で糸依の両目を射抜く。)   (11/18 22:16:15)
シロー/竜灯 > 「俺の真名は士郎ぜよ。のう、早く抱かせてくれ、おまんが愛しくてかなわん。」(詰まる所、俺に愛されるだけは嫌なんだろう。そう結論付けた竜灯は、まず手始めにと普段通りの声色で自分の真名を口にした。もう何が何でもこの良い女を抱かなければ気が済まない。ほんの僅かに口元を緩めたまま、竜灯はいてもたっても居られないという表情でぐい、と顔を近づけると、糸依の事などそっちのけで衣服の上から太腿を擦った。)「別にいつでもええぜよ、俺を愛せるようになったら愛してくれたらええきに、いつまでも待っちょるき。けんど俺は今から愛しちゃるから、な?糸依さん、おまんを今すぐ抱きたい」   (11/18 22:16:25)


糸依/清瀬 > (ここで彼が身を引いてくれたのならば、揺蕩う水の中の砂時計を眺めるように居られたろうか。生憎と、実際は器ごと叩き割るような現実を迎えた。どうにか時間をかけて、砂岩の中の宝物を崩れぬように探しだすことを、許してはもらえない。)「え、は…何、を──」(酔いは覚めずとも、興と高揚は留まるところを知らぬまま。てっきり、易々とはいかずとも承諾されるだろうと思っていたものは蹴られてしまった。らしいといえば、そうなのだろう。そして、そうでなかったのならどれ程楽だっただろう。やがて初めて、事に臨んだ彼の正しい心境に辿り着く。彼は元から、此方からの期待なんてしてなかった。全ては私の、“憶測”のままに都合を運んでいた。   (11/18 23:48:14)
糸依/清瀬 > 静かに体が沈み、尻が椅子に着く。手は宙を泳ぎ、爪先は妙に西洋の踊り子のようにぴんと張っている。無意識のうちに、人から与えられた善意は返さないといけないと思っていた。それを表だって執行するのが善人ならば、私は愚者だ。愚者は秘匿していた本音を、あろうことか憎き善人に暴かれたのだ。これからゆっくりと露呈する筈の思いは、貴方へと向けた少なからずの正ベクトルは、無理矢理に手元から引き剥がされる。)「……し、ろう。」(逆行の中の黒い双眸は不気味な程に寂寞で、純粋な筈の独白は姑息な障りに見えた。制する腕が、真名が、私の逃げ場をどんどん奪って追い詰める。貴方の言動は配慮こそ皆無でも、土足の足跡に他への計らいを置いて残していた。しかし目の前の彼は、らしくなく獲物を着実に蝕んでいる。毒牙は腿を撫ぜ、波紋のように熱が伝っていく。恣意的な平素があるからこそ、不規則の内にはその勢力を失っていた。)   (11/18 23:48:16)
糸依/清瀬 > 「やだ、そんなの。本気じゃ、だって………。なんで、私。」(本気であるとわからせる彼を狡く思った。見合わないとも、頼りたいとも、気に食わないとも飽きる程思い知らされた。記憶に刷り込まれる一つ一つが深くなっていくから、否応なしに意識する他なくなってもどかしかった。湿る睫が瞳を隠し、肘掛けに置かれた片手にそっと重ねた手も、いじらしくいられる余裕はない。ぐるぐると重量の傾く世界で、私は斜めに座っている。もう、ただ苦しかった。二のうち一が何物も見つけられぬのなら、後はもう一つが理であり、全であり。何事かを為すには、あまりにも衰弱しきってしまった。)   (11/18 23:48:32)


シロー/竜灯 > (息遣いと椅子の軋む音に紛れて揺れ火の音さえも聞こえそうな部屋の中では、糸依のか細い声すら明瞭に届く。その名で呼ぶということは、疑いの余地など無かったがまことなのだろう。どう呼ぼうが何を思おうがこっちはお前を愛すると口にしている、ただ高まるのみだった。)「分かっちょる、あとは黙って俺に委ねれば良い、今おまんを愛しちゃる」(もう充分伝わっている。虫の声だったが呼んだその名一つだけで竜灯はもう十分であった。あとは自分が愛すのみ。何も言うなと伝えると同時に唇を塞ぐと、ただ自分の手に重ねられた無気力な細指の一つ一つに、己の指を絡めて繋いだ。短い接吻を終えて口を離せば、目の前にはただ可愛く愛しい人がいる。濡れた唇を微笑ませると裏腹に太腿を這う手は深い部分へと進んだ。)   (11/19 14:15:52)
シロー/竜灯 > 「まこと良い女じゃ、可愛いぜ」(後のことはこれから知れば良い。その全てを愛せば良いだけのこと。椅子は軋みを上げたが、壁に伸びた影は滑らかに重なっていった。〆【燃ゆ】   (11/19 14:15:53)