この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

火津彌

拝啓、親愛なる部下殿へ。

マリア/火津彌 > 「……どうしたものかな。」(火津彌は、尊華のとある雑貨屋にあった。部下に贈る品物を選んでいたのだが、これがどうにも決まらずに右往左往していた。――女性に贈るものといえば、それこそ花とか、着物とか、化粧品とか……”姐さん”達はそういったものを受け取っていた気がするが、どれもこれも上司の自分が贈ると思うといやらしいような気がしてならない。こんな時は董にでも買い物に付き合って貰えれば良かったのだろうが、いつぞやの事が引っかかってどうにも気まずい。……あぁ、竜灯なら酒をくれてやれば良いから楽なのに。そうして悩むこと2時間弱、ふと目に止まったのは、不思議な銅製の筒だった。)「……まるで薬莢のようやな。」(つぶやきながら手に取ると、店主がすかさず声を掛けてくる。『ああ、それは王国からの舶来で、”ボール・ペン”というものですよ。墨を使わなくても、カチリと鳴るまで押せばものが書けるようになります。』と。)   (11/10 18:34:12)
マリア/火津彌 > 「……ほう、ボール・ペンか。これも機械なのか。……ああ、良いかもしれんな。……うん、ご店主、これを包んでくれるか。」(指でつつとなぞると、ほのかに温かいようなつるつるとした手触りが心地よかった。銅は陽の光によって、桃色のようにも黄金のようにも見えた。)「……熨斗?……あぁ、いらんいらん。昔から付き合いのある部下への贈り物でな。……そう。軍人だ。」(『喜ばれるといいですねぇ』と言われながら、やはり最新の舶来だからか。少々要求されたが、苦笑いをしながら財布を出して)「どうかね。素直じゃないが、案外謙虚な奴やからな……。いいとこ鼻白むくらいが想像に難くない。」「あぁ、名入れもできるのか。……では」(そう良い、試し書き用の紙にさらさら、とその字を書いた。”糸” ”依” の二文字を。)【拝啓、親愛なる部下殿へ。】   (11/10 18:34:16)