この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

花崗&瑞希

黒助/花崗 > (かつ、かつ。とブーツの音が、遊歩道に敷き詰められた練磨石を踏み締める度に、規則正しい足音に続いて鳴る。そうして一歩を踏み出す度に秋の涼風が頬を撫で、その冷たさに少しだけ身を震わせながら、体が冷えぬように重ねた上着の裾を棚引かせながら歩みを進めていく。季節は秋頃、半ば過ぎ。残暑は秋雨に浚われ消えて、生命が息を潜める冬へと近付き、擦れ違う人々の服装も既に厚手か二枚重ねという寒さに耐える為のものになり、大通りを通りすぎていく馬車の業者が寒そうに身を震わせる。そんな街並みの中を菓子折の入った袋を片手に進んでいく。足取りは軽く、しかし菓子が崩れぬように体を揺らさないように――その菓子折を届けるのは、かつて出会った花売りへのお礼のため。迷わぬように受け取った名刺の住所を探り、近頃行われるある会議のために重なった書類や関係各所への連絡を終わらせてから掴み取った休暇。それ故に今日の服装は半ば普段着となり始めている軍服ではなく、着なれた桜色の和装と寒風避けの外套。頭にはいつぞやの髪留めを着け、気が付いて貰えるように注意した。そうして、冷える街並みをあまたの人とすれ違いながら   (10/22 16:36:22)
黒助/花崗 > ――彼女が営む、花屋の前へとやって来ていた)   (10/22 16:36:24)


愁空/瑞希 > …っぷしゅ、(花の香り満ち満ちる一室、その大気を揺らす小さなくしゃみ。彼女の肺から漏れた空気が花の大気を乱し、揺らし、かき混ぜて。香りの波がゆらりと引いて、戻る頃にもう一度鼻腔を擽る秋の色。部屋に飾った金木犀が一番に、他の花々も負けじと主張する秋の香り。嗚呼。もう花籠で背を蒸らす時期は終わったようね。と心の内で漏らしながら、手元の花に視線を落とす。秋桜。秋の代表花と言っても過言ではないそれは、花屋瑞希においても秋の売れ筋となっていた。丁寧に花を整え、一輪々々に魔術を施す。枯れにくいように、長く愛してもらえるように。その瞳は試合に満ち、静かな部屋に僅かに彼女が作業する音のみが交ざる。その美しさといえば、流石は本業者、といったところになるのか。───さて、暫く。作業を続け、ふう、と一息。不意に、人の気配を店先に感じる。おや。花を直接店で買いたいなんて言う人は、今までにいなかったけれど。もしかして、私の評判も上々、鰻登りなのかしら。と弾む胸を足音に宿し、たん、たん、と小気味良く、店先まで顔を出す。)いらっしゃいませ。花屋瑞希で御座います。……あら?   (10/22 16:50:35)
愁空/瑞希 > (と、顔を出して驚く。店頭に立っていた人物には見覚えがある。あれはまだ、夏の日照りが厳しかった頃。“誰より素敵な貴女へ”として、名刺を渡した彼女だ。姿を認めると、ぱあっと表情に花を咲かせる。ただ、その喜びをそのままに口に出すことは叶わなかった。何故なら、名前を知らないから。まあ、マルマルさん。来てくださったの?嬉しい。なんて言いたかった。僅かに眉を下げてから、取り直したように一言。)あの時の、素敵な軍人さん。いらしてくださったのですね?…ふふ。嬉しい。名刺、お渡ししてよかったです。   (10/22 16:50:52)


黒助/花崗 > (花屋の前は美しく、自然と幸せな気持ちになる。そんな事をかつて部下の一人が言っていたが、正しくその通りだという他ない。店の前、路面に通じるそこには艶やかな花が並び、鼻腔を擽る心地好い匂いは、連日の責務に疲れ、ささくれだった心を落ち着かせてくれた――そんな、いるだけで癒される花屋の扉が内側から開くと、そこからかつて見た彼女が現れた。そして、こちらの顔を見ると驚いたような表情を浮かべ。次いで、花が咲くような笑顔を浮かべてくれた。そうしてから、ふと何か嫌なことを思い出したような、かつての失敗を悔やむように眉を下ろす。コロコロと変わるその表情は、続く大人らしい言葉とは相反して子供らしく、可愛らしいものだった)   (10/22 17:07:16)
黒助/花崗 > お久し振り、瑞希ちゃん。息災なようで何よりだわ…これ、あの時のお花のお礼よ。瑞希ちゃんのお陰で部屋が明るくなったから、受け取ってくれると助かるわ(名刺、渡してよかったですと紡ぐ相手に微笑み、こちらこそ、と返す。あの時、彼女の名前と名刺を受け取らなければここには来れなかったのだ。こちらは軍人であるがゆえ、探せば見つかるだろうが。彼女は数多の民の、その中でも複数ある花売りの一人。探すのも、見つけ出すのも一苦労だろう――故に、その事と、部屋に似合う花を見繕ってくれたお礼と言い、片手に持った菓子折を差し出していた)   (10/22 17:07:19)


愁空/瑞希 > ええ、おかげさまで。……! そんな。いいんですか…?(名前を呼ばれたことに対しまず一つ喜び、お礼にと差し出された菓子折りに視線を移してはもう一つ喜ぶ。何を隠そう、瑞希という少女は偶然にも魔術師たる素質があり、偶然にも魔術が扱えただけの少女。菓子は好物だった。しかしそれを一番表に解りやすく出してしまっては、商人としての瑞希が廃るというもの。一つ間をおいて、問い掛ける。しかしその問いは不必要だっただろう、という事は言葉の後すぐに気付いた。花を売ったあの時も、安くしておいたのに適正の価格を渡してくれた。そしていまも「受け取ってくれると助かる」との言い方を彼女はしている。視線を花崗に移し、「あ、いや」と付け加える。)   (10/22 17:28:25)
愁空/瑞希 > ……頂きます。ありがとうございます。……その様子だと、本日はお休みですか?(やはり何処か嬉しそうな調子は抜けきれないのは、商人としてではなく、一人の少女として相対しているからだろうか。それとも、少女らしさが出てしまうのは、相手が貴女だからだろうか。どちらにせよ、瑞希は以前より砕けた態度を取っていた。相手の服装を見ながら菓子折りを受け取り、空いた手で室内の方を示す。『良かったらどうぞ』とその手のひらは言い、身体を相手の横、やや後ろ側へ半身を入れて中へ入るように促した。それに沿ってくれるかは解らない。相手は軍の方、一般市民の私とは違い、ご多忙なのだ。その中を縫って来てくれたのだから、もしかしたら素直に帰すべきなのかしら。いや、だからこそお茶の一つでもお出ししたい――などと考えつつ、嬉しそうな口調と、その瞳には期待がうっすら。――『お話したいなぁ。あの後、お花はどのくらいもったかな。』なんて。   (10/22 17:28:30)


黒助/花崗 > えぇ。近頃は平和なものでしょう?そのお陰で、簡単に休暇を取ることが出来るの…戦争も今のところは終わったところだしね(差し出した菓子折を見、年頃らしく喜びの感情を見せる可愛らしさに微笑を浮かべる。やはり、彼女には大人びたものよりも、その年齢丈と同じ可愛らしさがあった方が嬉しい。そんな風に思ってしまうのは、彼女だからか。あるいは、かつての自分と重ねてしまっているからだろうか――本日はお休みか、と問う彼女へと、笑みを浮かべながら肯定する。だが、そのあとに続くものは嘘だ。外部に漏らせぬことであるが故に、かつ、彼女を困らせぬために、三日ほど自宅に帰っていないことを隠した。そうして隠したことを彼女に悟られぬよう、言葉の終わりや声音に注意しながらだった)   (10/22 17:45:26)
黒助/花崗 > …ふふ、そうね。お邪魔させて貰うわね(体を横に、片手は店の中へと誘う彼女の姿、そして交差した視線に乗せられた隠された言葉。それを感じ取ると、やはり年相応に可愛らしいと思いながら、微笑みながらお邪魔しますと伝える。菓子折りを渡し、お礼を伝えることは終えたが。それだけで帰るのは少しばかり名残惜しい。それに、彼女自身がそう求めているのならば、断る理由はないだろう――そう、自分自身に言い訳しながら。彼女に誘われるがまま、店の外とはまた違う匂いの、艶やかな華々が彩る中へと足を進めた)   (10/22 17:45:29)


愁空/瑞希 > 平和……と言えば、平和なのかもしれません。けれど、そうですね。軍の方だって、戦争がないからといって仕事がないわけではないでしょうし。気苦労は絶えないことかと。……目の下が、そう言ってますよ。(彼女はただの花屋である。しかし同時に、共感覚の保持者でもある。相手の言葉の一つ一つを愛し、受け取り、味わい、呑み込む。その動作が、瑞希自身が意図せずとも行われる。即ち――嘘はあまり、通用しないのだ。しかしその嘘の味はあまりにも優しく、温かい。自らの悪を恥じ、恐れるが故の嘘ではなく。相手を重んじ、思いやるからこその嘘だ。だからこそ、それが嘘だとは言わずとも、遠回しに伝えた。『そんなことないでしょう。じゃなかったら、目の下にクマなんてできないんだから』。それ以上は踏み込まずとも、彼女なりの気遣いでもあった。「これから忙しくなっても、どうかご無理なさらぬよう。」と小さな声で付け加え、今時点での彼女が忙しいか、忙しくないかは敢えて濁す。   (10/22 18:01:18)
愁空/瑞希 > 相手を部屋の中に誘い入れれば、店の奥、円形の机に椅子が三脚並ぶ場の方まで連れて行き、『座って』と促した。恐らくそこは昔父と母、そして瑞希とで囲んだであろう机。そこに他人を通すのは初めてだった。瑞希が一人店を始めてからというものの、その机の周りのみは開けているが、壁沿いには様々な花や道具が並んでいて、いかにも商売用の家、といった様子。しかしながら花々の一つ一つを見てみれば、全てが瑞々しく、管理が行き届いている。だからこそ、満ちる空気は香りに溢れ、揺らす度に心を満たす。菓子折を机の上に置いてからその花々にぐるりと視線を一周させ、困ったように笑う。)…落ち着かなかったら、ごめんなさい。こんなに花に囲まれては、花に見られているようで落ち着かない……でしょうか。   (10/22 18:01:27)


黒助/花崗 > ふふ、どうやら私の目の下は主である私より、よっぽどお喋りみたいね…ごめんなさい(目の下、と指摘されれば、少し驚いた顔を見せてから諦めたように小さくため息を着く。それ以上彼女が踏み込んでくることなく、ただ心配してくれているだけなのだと理解すれば。慣れないことはしないようにしようと、今の出来事で固く誓っていた)大丈夫よ。寧ろ、昔を思い出して心地が良いわ…それに、ここにある花は瑞希ちゃんの努力の結晶でしょう?それを嫌うことなんて、貴女自身を嫌うことになるわ(相手に誘われ、辿り着いたのは――彼女の、日々の結晶が詰まっている場所だった。円形の机に並ぶ三つの椅子。昔から古い物を見続けてきたがゆえ、審美眼は鍛えられている。故に、その三脚の内二脚、扉から見て奥の物が、使われて久しいことが分かった)   (10/22 18:29:20)
黒助/花崗 > (恐らくそれは、彼女が一人で店を切り盛りしている理由なのだろう。本当ならば三人で、ここで和気藹々と、日々の出来事を語り合っていたのだろう。それが使われて久しいということは、つまり――いや、それを詮索するのは失礼だろう。見つめ続けていたそれから視線を逸らし、相手が申し訳なさそうに言うことを否定しながら華々を眺める。一房一輪、その花弁の一枚に至るまで愛情が注がれているのだろう。全く別の、色合いや匂いの違う筈のものなのに、そのすべてがこの部屋を最大限に輝かせている。そんな輝かしい彼女の努力を、嫌だというだけで否定するのは――絶対に、したくない)   (10/22 18:29:24)