この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

糸依

白面、水面、荒らば警鐘

清瀬/糸依 > (秋の夜は温く永く、そして風情を孕ませて。床に放られ皺を作る瑠璃色の布切れ、丑三つ時を指す振り子時計。決して過度な運動はしていないのに体は風邪にやられたようにだるく、耳先まで微かに茹だる。あれらを追い掛けなくて正解だった。目撃者が増えれば余計面倒事になるのは、すっかり頭から血の降りた今ならば容易に判断できる。)「…………バカだよなぁ」(敷布団に染み込ませるように、体をぐぐ、と沈ませて。嘲る先は誰にでもない、拡散性の言葉。そう、皆みんな大馬鹿者だ。揶揄に野次に、悲鳴と歓声を一緒くたにした周りの同僚も。まだまだお子様で、きっとあちらの国にでも行けば旗の立った定食を提供されるであろう董の小娘も。顔は丁重に隠す癖に裸体と醜態は晒した、とんちんかんな火津彌の野郎も。酔いに任せてあんなこと言いやがる、責任知らずなうつけも、この世界は罪を消せぬ阿呆だらけだ。)   (10/11 15:20:02)
清瀬/糸依 > 「──ん゛ふっ、ば…馬鹿火津彌、だって……くっ、ふはは………!!」(あまりにも鮮明な先程の出来事、一旦間を置いた今だからこそ、彼女の慌てっぷりとその罵倒の思い切りのよさに滑稽さがぶり返した。脳が衰弱しきった真夜中というのもあるのだろうが、“しらふ”でもこんなに人は情緒を揺らがせることができるのだ。ばふばふ、と布団を叩けば声を潜めて腹を抱える。ただの沸点の低い人かと思えば、成る程そういうことか。私の目と推測が正しければ、少将と彼女は所謂“主従関係”たるものを結んでいるのだろう。國と己とを天秤にかけられるとは、なんと贅沢な身か。人の色恋沙汰は見ていて愉快だ、理屈も何もかもを情緒と好意で突っ走るそれは、下手な喜劇よりも人を引き寄せ魅せるもの。土産も頼まれたのだ、うんと良いものを買ってやらないと。)   (10/11 15:20:11)
清瀬/糸依 > 「はぁ、はー……。あぁ……」(一頻り笑ったあとは、虚しさが残るもの。寝返りを打ち見るは、橙を僅かに霞ませた黒景色。瞳に腕を被せてやれば、暗闇の世界が出来上がった。嗚呼、何だっただろうか?本ばかり読んでいないで、大船に乗ったつもりで、面白いところに沢山連れていって。『この俺に一生ついてきやがれってんだ』、だっただろうか。まあクサい台詞をよくも言ってくれる。そんな愛を叫ぶなら、王国民に言ってやれば情熱的な彼らは心を奪われるだろうに。此処では場違いというものだ。……何故こんなにも引きずっているのだろう。またこれも、冗談だと一蹴して早いうちに忘れてしまえばいいのに、欠片ほどでも気に留めているということは。……恋心とはまだ遠い、人間の根本たる部分。この世界の創造者であり筆者である、神々への信仰にも通ずるそれは。──あんな言葉に一瞬でも、一抹の期待を抱いた癖に。他人への信用だなんて毛頭ない、一番の馬鹿。)   (10/11 15:20:30)
清瀬/糸依 > (睡魔にゆられ、朦朧としていてはっきりとは覚えていないが。きっと鞄に入れた筈の本が数冊見当たらず、代わりに純白の布文鳥が依然として居座っていたということは。きっと、そういうことなのだろう。)【白面、水面、荒らば警鐘】   (10/11 15:20:39)