この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

ビナ&ゼペタル

ヨズア還魂記

木場田/ビナ. > (───────灰が混じった、横薙ぎの風は重たい。) (────────まるで、嵐の中にいるようだった。) (天罰の渦中に、二人はいた。) (粗視にしかできぬ環境に、ビナは、その男の、今の総てを見透した。) 「な、なんて……………………………」 (──────なんて、様) (そう形容するしかない。抽象的にも、描写できる言葉を、まだ、ビナは知らない。あんなの、知らない。) (不死は、その存在自体が、呪われている。 この世すべての悪意を濃縮して、腐敗し、さらに度し難く、どす黒い、膿のような思考が、彼の正常な思考を上塗りしていく過程を、100%共有し、観測してしまったビナは、飲み込まれそうな頭を振り絞った気力で持ち堪えた。)   (9/29 11:31:29)
木場田/ビナ. >  (どこにそんな精神力かあったのか、もはや自分でもわからないが、目を背けてはならないという、ある意味自分の存在意義に従って、本能が本能であるうちは、もはや何を見せられても目を背け無い決意を、無意識下で抱かせていたためだ。彼の、唯一の観測者なのだから。絶対に、最期まで観測して見せる。) 「─────────っっっッッッッッッッ!!!」 「ガフ───────ッッッッッッッッッッ! ! ! ! ! ! ! 」『メェェエエエエエエッッ』(思考を読み、一足先に彼の掴みかかる行動を観測したビナは、反射的にガフの名を叫び、ガフの巨大な体躯と、野生の力を以て、男に体当たりするだろうか。)   (9/29 11:31:53)


マリア/ゼペタル > 「しまっ……!」(ビナはどうしてくるのか。次の行動をと開いた瞳孔を一点に集中させていたゼペタルは、その羊の体当たりに気づけなかった。いや、戸惑ったのだ。『ガフ』という、言葉-真名-の意味が解らなくて。ただの家畜に、名があるなんて思わない。未来を読む事が出来ていたところで、だ。)「………っぐ!」(巨大な白いかたまりがこちらへ飛んでくる。ビナの髪から手を離し、衝撃と共に横へ吹っ飛ぶ。地を転がるように受け身を取り立ち上がるが、腰のあたりに鈍い痛みが走る。)「……エフタ、ローザン…!!!…俺を呪うが良いッ……!!」(ローブの上に羽織っていたマントをばさりと脱ぎ捨てその場に捨てる。火山灰が舞い上がり、煙のような狼煙を上げていた。)「貴様らの弟子は、今ここで俺が殺す……ッ!!!」(ゼペタルはビナに向いながら咆えた。所詮小柄な少女だ。人は殴り続ければ死ぬのだ。どこにそんな執着があるのか、もはや自分でもわからない。黒い殺意が己を呑み込み、どくどくと支配するのを感じた。……力任せに殴り倒し、地に組み伏せ、馬乗りになれば、負けるはずがない。一発目の拳を頬目掛けて放った。)   (9/29 11:50:18)


木場田/ビナ. > (ガフによって、男の体は吹き飛ぶが、それだけでは決め手に欠ける。) (ましてや、小柄な少女にできる事は少ない。しかし、こちらには『知恵』がある。彼の悍ましい思考は、普段ならば読みたくもないものだったが、その中に『未来』という言葉を見透した。そうか、あの男の異能は『未来視』らしきもの。それだけではないだろうが、『すべてをみとおすめ』の名に違いは無いのだろう。) (彼の能力が判明したところで、体の利は向こうにある。力の差は歴然で、まともに受ければこちらが危ない程の膂力を、彼は持っている。) (ならば───────────)「……………ッッツツ」 (迫る拳)「旅人を…………………」「────甘く」 「『見』ないことね……………っっ!!!!」 (伊達に女身一つで長い旅をしているわけではない。自衛能力を、あの賢明な二人がビナに教えぬ筈がないのだ。)    (9/29 12:11:44)
木場田/ビナ. > (誰よりも言葉に詳しかった二人は) (無論、言葉だけではできない事を誰よりも知っている。) (そのための体技で、彼の拳を振り上げたところに腕を差し込み、腕と腕が擦り合うようにして、結果、彼の拳はビナの頬に届く事はなく受け流される。しかし、大の男の拳を受け流すのは、簡単にできることじゃぁない。ビナの擦った左腕の関節や、肉に、痺れるような痛みが迸り、思わず歯を食いしばる。) 「くぅっっ……………!」(だが、痛みに甘えて止まっていられない。次の一手は、予め決めてあったのだ。彼が先を見通すのならば、見通すという工程が必要な以上、その分の空白を与えなければいい。) (───────キュポン………………) (間髪入れず、ビナは腰から瓶を取り出し、コルク栓の封を切れば、その内容物を、『あなたの狙いやすい、巨大な目』、目掛けて、投げかけるだろうか。濃縮に濃縮を重ねた、ビナ特製、強烈な成分の植物薬液だ。)    (9/29 12:12:03)
木場田/ビナ. > (どうせ、ロクでもないものばかり写すんだったら、せめて目薬で労ってやるよ。) 「ウィンクさせてあげる───────っ っ っ ッ ッ ! ! ! ! 」   (9/29 12:12:19)


マリア/ゼペタル > (ゼペタルの拳はビナの頬に一歩届かなかった。危なげに受け流され、ちっと舌打ちをした。ゼペタルは元より体術が得意な訳ではない。そのはずだ、誰よりもヨズアの神々を信仰し、神罰を恐れて来たのは他ならぬゼペタルであったのだ。――”人の力で人を殺めてはならない。人を殺すものは、神の力のみである。”――生前の信仰、また今生の罪過が仇となった。構うものか。異能を使うまでもない、もう一発……そう拳を振りかざした時。)「……ッッッ…!!!???」(自ら詰めた距離がまた、ゼペタルを追い詰めていた。いとも簡単に”何か”を目に浴びせかけられ、走る激痛。熱、いや、冷たさ。違う、痛みだ。痛み、痛み、痛みが目を覆い、異形の眼球をぐるぐると動かせば動かすほど、まぶたの中がそれで満ちてゆく。)   (9/29 12:40:32)
マリア/ゼペタル > 「……っっぐ、あ、ア゛ァ゛アアアッ!!???アアァアッ、グウウウッッ、ア゛ァッ、ア゛アァッ…!!」(真っ黒な両手で目を覆い、その場に膝から崩れ落ちた。目を抉った時よりも鈍くどうしようもない不快感。いっそ刃を突き立てられたのなら、こうはならなかっただろう。誰かを助ける為に作られたのであろう敵意の無い薬が、ゼペタルの目を開けられなくしてしまった。黒目を内側へぐりんと動かす。目の痛みを通り越して頭の奥がじくじくと傷んだ。)「見えぬ、見えぬッ…な、に、も……い、いま、いま、しいッ………また、俺から、光を、奪……ア、アァッ、」(焼け付くような痛みに、まぶたの中で粘膜が、蛆の群れのようにぐちゅぐちゅと蠢く。まぶたという”己”の中に閉じ込められて、ゼペタルはまた、己を”見せつけられる” ――『シュクロズア、俺を連れて行ってくれよ。……何でだよ、足手まといだって言うのかよ!』 ――『…殺してくれよ、なぁ……!こんな目じゃ戦えない……あんたの弟子と言えないじゃないか!』)   (9/29 12:40:43)
マリア/ゼペタル > 「シュ………ク……ロズ…ア……」(枯れて、掠れた声を絞り出す。大気を揺らすような、震えた響きだった。)「……おもい、だしたぞ、お、お、おれの、たった、ひとりの、師………」(俺は、あの人を、あ【崇拝】していた。)『「俺は、弟子を、やめない。……シュクロズアは生きている、絶対に生きている。』」   (9/29 12:40:49)


木場田/ビナ. > 「……………はぁ……………はぁっ………………」(記憶が、流れ込んでくる。) 「んぐっ……………はぁっ…………はぁ」 (セピア色の、旧い、埃が被った、天罰に隠された記憶が、甦り、そのままビナにも流れ込んでくる。) (かつて、崇拝していた師がいた事を。かつて……………かつて、未熟な青い果実だった頃の話を。) (今のあなたは、もはや熟れ、地に落ち、腐るばかりであるが、青臭い記憶を見返し、彼は己を取り戻しつつあったのだ。) 「あなたは………………………」 「一つ一つ、思い返すの………………」 「あなたは、独りなんかじゃなかった─────────」 (彼の奥底まで、最期まで観測したのだから、確信持って言える。) 「その時のあなたは、『追う側』だった。陰が陽を求めて、月と太陽が、巡るように。月は太陽を追うけど、闇に引きづられて、決して追いつくことは無かった。」    (9/29 13:02:49)
木場田/ビナ. > (しかし、ビナはけど、と言葉を繰り出す。) 「あなたは、いつの間にか、追われる側になった。あなたに、近づこうと、あなたについていこうと、─────────ついに、隣に立とうと、してくれる人が、いたんじゃない………………?きっと、そこには、愛が、家族愛があった筈………………………」   (9/29 13:03:16)


マリア/ゼペタル > (両目を手で覆いながら縮こまって震えるその様は、かつての雄姿からは到底結びつかないものであろう。背中を丸めて、目から血と涙を流しながらゼペタルは魔術師ビナの言葉に聞き入っていた。)「……【俺】、は───……。」(俺はたった一人で死んだはずだった。俺が忘れているのか、それとも、この幻のほうが間違っているのか。)「………ッ……!?」(神罰の異形は、脆く、この瞬間内側から崩壊を始めた。愛という言葉が、たしかにこの世にあった気がする。俺は”言葉を識る者”で、”魔術を紡ぐ者”だったはずなのに。意味はわからないけれど、ぼたぼたと、閉じた瞳から大粒の涙が落ちた。まだ、目の奥がひどく痛んでいる。)「………………儂を殺すのか。……殺さないでくれ……………」(耐え難い痛みの中、ゆっくりと目を開いた。)「娘が、まっているんだ………。」(黒い手をぱさりと投げ出した。ここにかつてあった刺青は、もう見えない。)   (9/29 13:25:00)
マリア/ゼペタル > 「……うまいものを、食わせてやりたいのだ。……服を買ってやりたいのだ。……世界を見せてやりたいのだ。……焚き火を囲んで、沢山、おとぎ話を、聞かせてやりたいのだ。」(かつて、シュクロズアが自分にしてくれたように。俺は何もできなかった。嘗ての【弟子】に、何もしてやれなかった。)「……お前さんと同じくらい、いや、お前さんのほうが、歳が上かもしれん。」(知らない言葉が、俺の中に殺意を今この瞬間だけ凍りつかせているようだった。どちらが本当の儂なのか、もう自分自身でわからない)「ビナ」(ぐしゃぐしゃになった顔をビナへ向ける。助けを乞うような瞳は、人間のそれに似て、光が混じり合っていた。)「儂を殺すなら、あの子の、アビゲイルの…………………………母親に、なってくれ」(ビナは思考を読めると言った。ゼペタルは、守山の麓の洞窟で待っているはずのアビゲイルの姿を思い浮かべた。)   (9/29 13:25:11)


木場田/ビナ. > 「はぁっ…………はぁっ…………」(ズキン、と、右脳と左脳が真っ二つに引き裂かれそうな頭痛に、体の軸がぐらついた。瞳の長時間の開眼は負担が大きすぎる。見えない物を見る魔術は、言葉の魔力と相性が悪い。元より、言葉に魔力を持ち、体に魔力は宿らない。しかし、額の入れ墨を媒介に、自身に魔力的な現象を体現しているのだ。神の力で、自分の存在を書き換える行為は、消費が激しい。しかし、目を逸らせない。決意が、ビナを突き動かし続ける。) (だが、なにより───────) (あなたの変化を共有すること自体が、大変危険な痛みを伴っている。) 「くぅっ……………………」 (考えたことはあった。) 「………………………ぅ」 (もし) 「…………………………─────────────────────」 (イモータルを、殺める時) (それは罪な事なのだろうか、と。) (………………………神よ。 ) 「あ、あぁ…………………………」    (9/29 13:47:24)
木場田/ビナ. > (凍りついた、あなたの殺意に、ビナは揺れる。) 「それは」 (答えは、答えはない。 きっと、答えなんかなくて、 どちらを選び、進んでいくかの選択だった。) 「え」 (言葉を紡ぐ) 「えろ」 「ひむ。」 ──────────「エロヒムエッサイム……………エロヒムエッサイム………………ああ、どうすれば──────────」 (あなたの思い浮かべた、その少女の姿に、ビナはもう泣きだしてしまいそうだった。) (なみだは、流せない。) (雫は、目を、ぼやかせ、真を偽に挿げ替えてしまう。) 「…………………っ」 「かさね つむぎ うたう───────」 「わがみは まよいし ちいさき こら」 「おかあさん…………………」 「おとうさん………………………」 『めぇえ………………』 「が、ガフ───────」 (ビナも、また。一人ではない。) (   (9/29 13:47:47)
木場田/ビナ. > ひつじは、無垢な、黒真珠のような目を向ける。 どこまでも、透き通る目。そして──────────) 『ビナは、ビナの道を、進むべきだよ。』 『今まで、そうだったように───────』 (ビナは、ガフの思考を────────) (よんだ。) 「無念を晴らし、約束の日まで、待ちます──────────」 「あなたが終わる時、あなたは父であれば────────」 「あなたは………………………また戻ってくる事もないでしょう。」 『めぇえ。』 (これで、良かったのよね────────ガフ。)   (9/29 13:48:04)