この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

火津彌&糸依

この世願わば加味の加減

清瀬/糸依 > (正午を控えた巳の刻、腹時計もいつも通り。仕事もしない癖に一人前に腹は減るらしい。当然だ、私は生きているのだから。しかし昼食を作るにも気力が沸かない。今日は食堂で済ませてしまおうか、と寝具に仰向けにしていた身体を起こす。睡眠過多からか撞木が頭を鈍く打つような頭痛がする。空腹のせいもあるのだろう、纏まらぬ髪を手櫛で掻きながら目的地へと身を運ぶ。)「あ、えーっと。佐……違う違う、少将だった」(大繁盛とはいかずとも賑わいを見せる昼食の場。そこに居たのは、確かいつだったか。独り言を呟いてはあぁ、と溢し首を横に振る。狂い水の時に一度同任務を任された火津彌少将、その人の姿があった。今や佐官は別の人へと受け継がれ、同僚の中には呼び間違え鋭い視線を向けられた者も居るとか。その時は数人のうちで茶化し話のようにもなっていたっけ。そんなことを思い返しながら、割烹着の叔母さんから日替わりの定食を受けとる。サラダの中に大根がないことに安堵しつつ、彼の前まで歩いていく。)   (9/26 13:00:08)
清瀬/糸依 > 「本日はご機嫌麗しゅう、少将殿。坐しても構いませぬか?」(片手で盆を支えながら椅子の背凭れに手を添え、会釈と共にそのまま彼をじっと見つめる。束ねられた黒髪は艶やかで、癖の少ないからだろう、とてもすっきりと纏まっている。引きちぎってやりたいといつだか思ったものだ。……そこから、すっと横に視線を移して。やはり目を引くというか、凝視するのも良くないとはわかっていつつもそれ以外に目を惹くものがなかった。私も軍人を長く務めていれば、いずれは負傷するのだろう。遅いか早いか、それだけ……とは言えない、時間は前借りも巻き戻しもできぬのだ。)   (9/26 13:00:10)


マリア/火津彌 > (帝国軍、兵舎の食堂にて、火津彌は昼食をとろうとしていた。生野菜に質素な味噌汁に、鯨の竜田揚げ、玄米ごはん。なるべく隅を選んで座ると、)「む、糸依か。……珍しいな。」(声をかけられ、返事をした。)「あぁ、構わん。……」(火傷を晒すのは少し抵抗があるが、まぁ、彼女ならいいだろう。かつての狂い水の災害でも共に仕事をした仲であるし、どうしても嫌ならはそもそも食堂は選ばない。……とは言うものの、特別かける言葉もなく、苦し紛れに)「……そういえば、髪を切ったのか?……失恋か?」(などと宣った。この火津彌、無口で堅物そうに見えて、中身はしっかりと32歳のおじさんである。かちゃかちゃと食器の音がし、ずずずと呑気に味噌汁を啜った。)   (9/26 13:50:53)


清瀬/糸依 > 「げに、此処で食を取ることは乏しいですが。…はた、知らぬ人と相席を為す物好きはありませぬ故」(簡素な返答を残し箸を進める貴方に気抜けた笑みを向けつつ、椅子を引いて向かいに座る。そういえばこの人ももう三十路、私もすぐに二十代を折り返す。もうそんなに経っていたらしい、初めて軍服に袖を通したのはいつだったか。齢18の青春の終盤を懐かしみながら、小さく「いただきます」と呟いた。)「……はは、戯れ言を。老害になるにはいと早うあるのでは、少将殿?」(鯖の塩焼きを解す箸が止まり、口の端がひきつるのが自分でもわかった。出鼻を挫かれたような、ただの冗談に図星をつかれたのが癪に障る。一呼吸置いてから乾いた笑いを溢し、玄米と一緒に沸騰しそうな感情も飲み込んだ。)   (9/26 14:18:09)


マリア/火津彌 > 「お前は相変わらずやなァ……。この私にそんな口がきけるのはお前とどこぞのうつけくらいなもんやぞ。……まあ良い、腹に一物抱えられるよりはな。」(一瞬の糸依の表情にも気づかないまま、箸をとりまた生野菜などを口に運ぶ。)「佐官やった頃は、兵達との距離も今より近かった。変わらず接してくれるお前達は……好ましい時もある。」(中には馬鹿火津彌と呼び捨てにしてくるとんでもないのもいるが、と思いながら、茶を一口飲み。)   (9/26 15:20:54)


清瀬/糸依 > 「あれと括られるなど心外ですね。彼方の方が私より可愛げもあるといふものでは?」(全く便利なものだ、あの騒がしいうつけが居れば話に困らぬではないか。青々とした葉を食めば、若く苦い香りが鼻を通った。)「……ええ、遠くなられて。以前ならば然程気にもせぬものでしたが、私は今枷にあり。無力とはかくも憎いものなのですね。……又今も、同僚には如何して顔を会わせて良いやら」(茶を一口啜り、言葉を告げては暫し思考に浸った。先程話題に出たからか、数日前に王国へ行く竜灯に同行する旨を伝える文書を提出したのを思い出す。休暇も貰ってはいるが軍事施設内に在留し、ただ魔術が使えぬだけで至って健康なのだ。何もしない訳にはいかない、と異形の報告書提出を肩代わりすることにはした、ものの……。まるで他にすることもなく、半ば今回のことは旅行のようなものだ。上司として、彼はどう思っているのだろうか。薄くぎこちなく笑みながら、貴方の食事の様子をぼんやりと観ていた。)   (9/26 16:03:27)


マリア/火津彌 > (憎まれ口を叩いたかと思えば、随分と捻くれた言い回しをするものだ。尊華らしいといえばらしいが、なんというか、”素直じゃない”。だが彼女が部下で、一回りも年下だと思えば可愛いものだ。『そうでもないぞ』と一言、それ以上多くは語るまい。)「……何、そんな事はお前だけではない。守山の防衛では良く活躍してくれたと聞いとるしな、暫くゆっくりしておけ……」   (9/26 22:17:08)
マリア/火津彌 > (嘗て自分も、魔術の力を一度失った。その間王国の武将の真似事をして体術に精を出してはみたもののまるで才能がない事に気づき、どうしたものかと無力感に苛まされたものだ。その後魔術の力が戻ったのは偏に、自分の信仰というよりは神が信仰を集める事による霊力の問題というか、兎も角時代の風潮にあっさりと流される事が出来たせいなのだろうが。その事-自分が一度魔術を失っているということ-は公にはしてないものの、糸依が悩んでいるのなら、力になれるかもしれないなと思い、じっと目を見る。自分から相談しに来てくれるならば、手を貸せるが……はて、今はそれほど悩んでいるのだろうか。一時期の棘棘とした余裕の無い雰囲気から少しは表情が和らいでいるのではないか、火津彌の目にはそのように映っていた。ふっと目を逸らし、ひとつふたつ剣蛸の出来た自分の手を見つめながら。)   (9/26 22:17:14)
マリア/火津彌 > 「……近頃は列車もひかれて随分便利になった事だ、気晴らしに王国に婿探しでもして来たらどうだ。」(自分で言って置きながら、…おや、どこかで聞いた言葉だな、と訝しがる。火津彌はまだ、糸依が王国へ行く事を知らないようだった。)「私も何度か言ったが、興味深くはあった。お前は昔からどこか王国かぶれな服装をしていたし、興味があるのではないか?あぁ、そういえば竜灯もまた行くとか言っていたな……。」   (9/26 22:17:20)


清瀬/糸依 > 「お褒めに預りて光栄なり。……もう、その刻からは三年も経ておるのですね」(珍しい、労いの言葉をかけられるなんて。そう口に出さなかったのは先程、“かわいい部下”なんて御世辞のお墨付きを貰ったから。なんだかやけに優しすぎるような気もするが、そこもまあ、黙っておこう。箸置きをパチリ、と音立てまた茶を一口。実際あの時に大したことはしていないような気もする。私が行ったのは中将への報告や負傷人の搬送、首魁を間近に拝むことは叶わなかったわけだ。あの時より、更に無力と成り果てた。それでもこうして声をかけてくれる人が居るならば、無我夢中になり迷走する必要もないのだろう。)   (9/27 21:16:23)
清瀬/糸依 > 「…………」(その可愛げのある懐いた私に対して失恋か?等と聞いてくる無礼者な少将様だ、本当なら結婚を焦るような年なのはそちらだろうに。茶葉の香りを鼻から抜けさせ、啜り終えればそう口にしてやろう、という魂胆を抱えていた訳だが。どうやら報告書にはまだ目を通していないらしいのに、ピンポイントにも竜灯の名前を挙げるあたりは流石といったところ。寧ろ故意だろうか?どちらにせよ笑い種だ。)「はははっ、少将殿へは未だ伝わっておらなんだか。ええ、その竜灯殿と此れより、王国へ足を運ぶ事と相成りまして」(どこか気の抜けた面持ちになった貴方に対し、拳を口に添え些か楽しそうに事を話す。)「暇を頂戴しているとはいえ、軍の人間が怠け呆けるのも筋が通らぬこと。安心なされ、奴の崩れた殴り字よりも私の方が読めし字を書けます故、もう奴の暗号は見ずに済みますぞ」(というのも、宵宮の後に私が竜灯へと報告書の肩代わりを提案したのだ。何もせず王国へ向かう訳にもいかない、心はともかく身体は極めて健康体。自分にできることといえば、何か頭を使うこと。   (9/27 21:16:40)
清瀬/糸依 > 役割分担という体を使って遊びに行く、なんて捉え方もされるかも知れないが、今となってはこれぐらいしかやることがないのだ。そこで信仰も取り戻せれば儲けものだ。)   (9/27 21:16:49)


マリア/火津彌 > 「そうかそうか、はは、お前も中々言うやないか。竜灯なあ、あれこそ蚯蚓の這った……」(と軽く笑いながら答え、ぴたりと動きが止まる。)「待て、二人で行くのか?」(ようやく食べ終わった昼食を流し込んだ湯呑を机にそっと置き、しげしげとあなたを見つめる。随分と楽しそうではないか……こんな糸依は見たことがないと思うのは、気の所為か?)「……そうか、そうか。……いやいや、軍の事はそう気にするな、存分に気晴らしをしてこい。同僚が仲良くするのは良いことやしな……。」(どこかそわそわと落ち着かない腕を組み、仮面を被り直すのも忘れて目を伏せた。)   (9/27 21:55:07)
マリア/火津彌 > 「……そうや、ちょ、ちょっと待て。待っていろ……」(慌てた様子で懐をあさり、財布を出して指先で紙幣を弾く。3枚程取り出すと、それを糸依の胸元に突き出して)「小遣いや、持ってけっ。」(と言い、あなたが何かを言う前に焦って言葉をかぶせる。)「いや、これはな、土産代や!何か美味いもんでも買うてこい。だから受け取れ、解ったか!」(土産代にしては多すぎる額にこちらの意図を察しても、こういうところは生真面目なあなたのことだ。土産代だと言いくるめれば受け取るしかなくなる事だろう。ダメ押しに『上司である僕に恥をかかすなよ』と付け加えて。)   (9/27 21:55:11)


清瀬/糸依 > 「ええ。そう……。そう、ですね……」(久々に良い雰囲気で会話が進行していると思いきや、貴方の動きが止まるのを見て。どく、と一際大きく跳ねた鼓動。興が冷めるような、熱が引いていくような。まさか何かやってしまったか、特別問題視されるような発言はしていないような。……本当に?)「あの、少将殿。何か僻み給うておるのでは」(腿の上に組んだ手が汗に濡れ、今度は顔へと熱が集まるのが否応なしにわかってしまう。此方を訝しむような、何かを察しては言葉にせずニマニマと眺めるような。宵宮の騒ぎに釣られて忘れていたが、これはまさか誤解を生んでしまったか。あれは男、私は女。竜灯はともかく人をあまり寄せ付けぬ私がこう発露してしまったのだ、彼の落ち着かぬ様子から“そういう”思いを孕んでいると捉えられても仕方ない。だってセクハラ上司だし。)「ほ、火津彌殿、もし…っあ、はい……」   (9/28 19:30:33)
清瀬/糸依 > (ぎこちない動作で席を立ちかけたその時、ちょっと待っていろ、と鎮座をかけられる。ずず、と床に椅子の足を引き摺らせながら、言葉を失いそのまま大人しく縮こまる。声を荒げぬお方でよかった、いや、セクハラ上司な時点でどうなんだ。口を手で多い、一度周囲を見渡す。隅で食をとる私達に特別注意を向ける者は居ないように見える。本来なら事もなげにやり過ごすのがお互いにとって得策なのだろうが、浮き足立たぬ気持ちはおさまってくれない。)「こ、此れはいと多しかして……!!」(突き出された手に反射的に仰け反ると、そこには決して易々と人に渡す額ではない紙幣が握られていた。一体何なんだ、と思わず猜疑の視線を向けてしまう。土産代であると再三念押しし、挙げ句の果てには「恥をかかすなよ」と。彼には彼なりの矜持があるのだろう、私にそれを慮る義務はないが……なんて考えては私も終わりか。ゆったりとした動作で胸の前のそれを受け取り懐に納める。決めた、何がなんでもこれ全部使って土産にしてやろう。)   (9/28 19:30:58)
清瀬/糸依 > 「参考までに尋ねておきますが…土産は何が御好みか。話ならば立て板に水の様で聞かぬことも話す奴に任せてくれれば幸いに候」(盆を奥へと寄せ、手前にスペースを作りそこに両の肘をつく。手を組んだその向こうで貴方に向かって微笑を作り和やかを演出してはみるが。目は据わり貴方を捉える、私はお前を許さないぞ。仮に答えなければお前の部屋は気味の悪い人形だらけになっていると思え、安眠はさせてやらんぞ。)   (9/28 19:31:32)


マリア/火津彌 > (土産は何がいいかと聞かれたものだから、上手く捻ってつまりは土産話だと答えてやろうと思っていたところ、『そういうのは竜灯がする』というような事を言われてしまった。腕を組んだまま堅物そうな表情で、うーんと唸る。)「……そうやな、お前に選んで貰ったものならば何でもええが……あぁ、実は僕は茶の類が好きなんや。珍しいのがあったら買うといてくれ。竜灯の意見は聞くなよ、あれの趣味は信用ならん。」(竜灯にかかったら剣に竜が巻き付いている根付けとか、そういうものを選びかねないからな。……さて、全部使い切ってしまえと小遣いをやったつもりだったが、糸依が土産を買ってきてくれると思えばそれはそれで中々楽しみだ。流石に三万価まるまる使うことはないだろうし、あちらにつけば色々と目移りして気も変わるだろう。竜灯もいる事だし、『なんぜぇ〜しいさん、ほづみさんのそれは、のみだいにしろっちゅうことちやあ〜、よいごしのかねにするなんてえ、それこそやぼぜよぉ〜、さあさあ、のみにいくぜよぉ〜』とかなんとか言ってこいつを丸め込んでくれる気もする。……考えれば考えるほど不可解なのだが、糸依はあれのどこがいいんだ?)   (9/28 20:59:41)
マリア/火津彌 > 「……そろそろ職務に戻らねばな。お前からの土産話も楽しみにしているぞ。」(硬い椅子から腰を上げて、狐面を被り直して盆を厨房の方へ返す。最後に一言『あぁ…最後にひとつ言わせてくれ』と言い振り向いて)「これは至って真面目な話なんやが、」(と声を顰める。周りをきょろきょろと見回し人がいないのを確認した後、こほんと咳払いをし重苦しげに言葉を開く。)「……………………あのな、余計な世話かもしれんが………………………ちゃんと避妊はしとけ」   (9/28 20:59:54)


清瀬/ > (どうやら先手を打てたようで、小さな対抗心が満たされて行くにつれ口は弧を描く。今は尚更、他人の不幸で飯が旨いというものだ。)「それはそれは、善き趣味なり。彼方では紅茶なるものが親しまれておるようですね。──言われずとも、あいわかっております」(茶を嗜んでいるとは、中々に洒落ている。つい大量の茶葉に彼が囲まれている姿を想像してしまって、思わず吹き出しそうになるのを口元の手で誤魔化した。茶葉というよりは、王国の文化で表すならば“てぃーぱっく”、だったか。わざわざ同じものを贈る必要もないだろう、彼の役に立つようなものが見つかれば儲けものだ。土産屋には昼にでも一人で行こうか。)   (9/28 22:22:02)
清瀬/ > 「はい、それでは。午後の刻もどうか御体には気を付けて」(食事を終えた彼は立ち上がり狐の仮面を弄る。私も今日は喋り過ぎてもう腹が膨れてしまった。背凭れによりかかりふぅ、と一息。揚げ物でなくてよかった、油の多いものは腹に溜まるから。……とそこに、もう行ったとばかり思っていた彼がそそくさと此方へ寄ってくる。顔を上げ、やけに神妙な面付きに身体が強張って。一体何を言われるのだろうか、もしや私の知らぬ間にまずいことが起こっていたとか。)「…………うん?」(ひにん、否認?いや違う。成る程、彼の解釈違いはそういうものか。つまりは私達が身体の関係をひた隠しにしていると、とんだ笑い種だ。ぐっと体重を後ろにかければ椅子は二足で立ち上がる。いっそ“それ”だけの関係ならどれ程楽だろうか。嗚呼、恋人だとかそんなものは──)「馬鹿馬鹿しい」(そこに確かな愛もない癖に)〆【この世願わば加味の加減】   (9/28 22:22:04)