この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

竜灯&糸依

旅は道連れ

シロー/竜灯 > (何度目かの、だが、一際大きな汽笛の音が響き渡った。長旅の終わりを告げる、待ちに待ったそれは終点である王都駅への到着を示すもので、何時間も乗り継いだ乗客達が寝惚け眼を擦ったり早く早くと無意識のうちに足踏みしたりと思い思いに、ぞろぞろと手荷物を手にごった返して客車の中で列を成す。そして、いざ自分達の番がやって来た。慣れた様子で、子供一人落ちてしまいそうな程の隙間を軽く飛び越えてホームへと着地すると、続いて降りてくるであろう貴女を振り返って待った。もくもくと煙突と車輪から吹き出した白煙が僅かに屋根の下へと入り込むがそれに咳き込む事もなく、人混みの中降り立った貴女を横目に竜灯は腰に両手を当て、楽しげに口を開いた。)「ここが王都ぜよ!!どうじゃ糸依さん、おまんが行きたがってた王都に来た感想は!」(まだホームの中だと言うのに、何を言っているのか。   (9/25 23:00:33)
シロー/竜灯 > 遅れて後ろから降りてくる他の乗客に邪魔者を見る目で見られ二人を避けるように通り過ぎていく事には目もくれず、紺色の制服に身を包んだ車掌の笛の音とざわめきと、帝都を包む木の匂いとは違った金属と石と蒸気の匂いと、線路上から差し込む淡い日差しに包まれる空間で、貴女の返答をわくわくしながら待ち、見遣った。   (9/25 23:00:35)


清瀬/糸依 > (空を覆う煤色の煙が滲んだ軌跡を線路の上に描いていく。この目で見るまではよもやこんな鉄の塊が人を乗せるとは思ってもみなかったし、阿岸へ帰省した時と同様、やはり実際に拝んでも中々に実感しづらいものだ。赤子を抱くように鞄を体の前で抱え、時折縦の振動を起こす車体に揺られる。閉塞的なこの空間からの解放を早く早くと待ちわびつつも、到着を前に並ぶ貴方の背中、大きく描かれた竜胆車を見つめ暇をもてあましていた。一歩、一歩と進む長蛇の列を練り歩き、いざ私の番。地面の隙間を見下ろしながらホームへと足を付けば、心地よい風が肌を撫でる。鼻を通るメカニカルな匂い、異色の地から身を守るように羽織の襟を上げ、貴方の問いにまずは辺りを見渡した。──全てが新鮮、という訳でもなかった。怪訝そうな目線もいつも通り、貴方と居ればどこでもこの疎外感は付きまとう。それに何せここはまだ駅の敷地内、人波で周りはよく見えない中、何を感じたか。敢えていうならばやはり……)   (9/25 23:30:49)
清瀬/糸依 > 「……頭が、黒くない」(そう、視界が鮮やかだった。尊華では見渡す限り、彩度を失った黒や茶色の髪ばかりが見えていたのに、此処では命を吹きかえしたように。金、桃、蒼。勿論、この三年間で目にする機会は増えてきたものの、やはり慣れぬものだ。感嘆に浸りつつ青の瞳を見開き暫し周りを見渡していたのだが、後ろからは咳払い。払いのけられるようにその場から退いて貴方に二歩ほど近付き、抱えていた鞄を腕に提げてはスカートの裾をぱん、と払った。)   (9/25 23:30:51)


シロー/竜灯 > 「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ふっ」(何を言うかと思えば。どんな驚きの言葉を放ってくれるだろう、どんな顔をしてくれるだろう、楽しみに胸を踊らせていたのに貴女の小さな口から漏れたのは至極当たり前過ぎる呟きで、思わず生気に満ち見開かれた瞳の力が抜けてしまった。息の抜けるような笑い声を喉から吐き出すと、近寄って屈んだ貴女の頭を見下ろして、肩を揺らした。)「ふふ、はは、他に言うことあるだろうに。まっこと糸依さんらしい。」(一頻り、しかしほんの僅かな時間に笑い声を留めて、切り替える。なればこそ、糸依さんのそれこそ見たことないような顔を意地でも見てみとうなる。いざ、駅の出口へと体を向けると、貴女が顔を上げるのを待って歩き出した。既に切符は車内で見せたから、あとは人混みを塗ってホームの外へと向かうのみ。夏が過ぎ、少し落ち着いた日差しが輝く出口へと歩みながら、竜灯は呟いた。)「やけんど、まあここで驚いていたらもっと大変なことになっていたぜよ。」   (9/25 23:51:57)
シロー/竜灯 > (そう、外に出ればそこは新世界。きっと糸依さんの見たことないような世界が広がっているに違いない。いや、間違いなく。期待に胸を踊らせると、自然と足取りも軽やかに早くなる。すいすいと間を縫って、日差しの下へと出れば、一瞬のホワイトアウトを経て、色が戻る。)「───どうぜ。」(駅の周りは王都の中でも発展しており、国外から来た余所者の瞳を奪う。今は灯っていないが、帝都ではほとんど見ることの出来ないガス灯が立ち並び、石材とレンガを組み合わせた大きく堅牢な建物が屹立し、視界の隅を横切ったのは馬に引かれずとも走る鉄の乗り物。高い建物が多いせいか見上げがちで、帝國よりも幾分か空すらも高く見える光景に瞳を細めると、隣の貴女の反応を確認しようと顔を下げた。)「これが、王国ぜ。」   (9/25 23:51:58)


清瀬/糸依 > 「さりとて、入り口で感想を述べようとも其は些か難きことでは…」(短い微笑、なんだか小馬鹿にされたような気持ちになって少し不愉快だった。誰に聞いただろうか、この竜灯も王国に興味を抱いているとは以前から聞いていた。どうやら彼が着目しているのは機械技術の方らしいが。ぼそ、っと呟いた文句は彼に聞こえただろうか。重工音と人々のざわめきに包まれ、駅の出口へと導かれる。まだ過ごしやすいとは言えずども、秋風が爽やかで天候に恵まれたようだ。目の奥をつつく日光に少し目を細め、向かってくる通行人に腕が掠める感覚と争う。)「随分と大口を叩くことで」   (9/26 00:32:18)
清瀬/糸依 > (余裕綽々、とはいかずともどこか嘲るような笑みを浮かべては、漸く外の色が見えてきた。まるで己を誇るように言ってのける貴方に、試されてみようではないか。コツ、といつもと違うブーツとの接触音を刻み、いざ拝むは望んだ地。ざわ、と一層街の音が大きくなる。)「半ばえならぬ景色に───」(出入口から五歩、吸い込まれた瞳は、いつもよりも更に上を捉えたままその色の虜になる。全て紙の上に記された、否、それ以上に煌めいて色付いた街並み。すらりと伸びた背丈の高いガス灯や直方体の煉瓦に囲まれ、この目で見ている。此所は私にとってのテーマパーク、心の痼なんてものは些細なことだ。言葉を発していた口をそのまま軽く開き、瞳孔を輝かせ頬には桃色を乗せる。)「すごい……!」(月並みではあったが、それしか言葉にできなかった。この高揚は一言で表せるようなものではない。他方を渡り歩いた、懐かしい若かりし日の頁をもう一度捲り、溢れんばかりの絵の具で着色して復元していくように。いつしか瞬きも忘れ、興奮と感慨に浸っていた。)   (9/26 00:32:21)


シロー/竜灯 > (見下ろして、数度の瞬き。視界が一瞬の闇に包まれて、景色が戻る、その度に紙芝居のように貴女の表情が変わっているように思えた。仏頂面とはいかないまでも、落ち着き払った面もちが、切り替わる度に色と光を帯びてゆくような、そんな。そう、そんなのが見たかった。にぃぃ、と心底嬉しそうに口角を吊り上げると、満面の笑みで自慢げに声を上げた。)「へへへ、だろう!だろう、糸依さん、最高ぜ!王国もおまんもまこと最高ぜよ!ははは!」(空模様と一緒に心模様も晴天、カンカン晴れの様相を呈し始めた。背中を叩いてやりたい所だが、こんな風に見とれる貴女の視界を揺らして邪魔はしたくないから、隣で笑うだけに留めた。最高の時代に生まれたと思う、戦争も終わって、こんな風に笑えるのだから。軍人としてのおまんより百倍は良い顔をしている。これだけでも価値があったというものだ。   (9/27 19:41:58)
シロー/竜灯 > 気分が良いままに、そうだ、と声を上げると貴女をちらりと見遣って「ついてきてくれ」と目配せ。そのまま鼻歌でも歌いそうな表情で軽やかに少し歩くと、そこには、いつの日か竜灯がジャケットに背中の竜胆車を染めろと無理強いをした店が見えてきた。ガラス張りのショーケースの中には、人型の人形に着せられた王国の服が飾られている。店先にやってくると、丁度、またしても前回竜灯の対応をした店員が顔を出し、印象が強かったのかぎょっとした表情を見せる。貴女に背を向けたまま、背後の貴女を後ろ手に親指で指し示すと、「こいつの買い物だ」と言わんばかりにニヒルな笑みを投げ掛け、いざ、と店を前にして振り返った。)「ほれ!糸依さん、折角に王国に来たんじゃ、ちっと王国らしい服を着てみてもええと思うぜよ。こういうのは形から楽しむべきぜ!」   (9/27 19:42:07)


清瀬/糸依 > (新たな彩飾のキャンバスが私を刺激し、世界はスクリーンに写されキラキラとセピアの薄いカーテンの向こうで何色にも移り変わる。視界の額縁に切り取った全てが違う顔を見せ、私を悦ばせるエンターテイナーとなる。本の挿し絵から、一瞬。貴方の笑い声が私の意識を奪う。)「え。ああ……忝ない」(青々と広がる空、景色に魅せられまだどこか上の空。ぼんやりと余韻に浸った頭は、どうやら誉められているようだという拙い情報を拾ってきた。差し障りのないぼやけた返答、景色にも魅力されれば酒などなくとも酔えるのだろうか。目配せの後、先導に着いていき暫く、いつもより弛んだ表情筋の存在を認知した。恐らくは、“人前で見せたことのない顔をしていた”。頬を両手で軽く挟むと火照った肌に冷たい感触。羞恥心、驚愕。色々思うところもあるが一番には疑問を抱いていた。特別親切でもない、でもお節介で阿呆で聡くもない貴方。それでも今一番近しい存在であることは、私自身の行動が裏付けていた。   (9/27 19:22:26)
清瀬/糸依 > ──彼女の代わりがこいつ、ねぇ。弾む背にまだまだ愛着は沸かない。丁寧に整備された道を練り歩けば、とある店の前で彼は止まった。)「此は……仕立て屋?」(暖簾のない入り口、淡いハイカラな色使い。透明の壁に納められたあれは確か、マネキンという名称だっただろうか。生気のない、瞬き一つしない等身大の人形には、尊華では拝むことのできない様々な衣装を纏い着飾っている。目を合わせると、遠目であるにもかかわらず悪寒が走るような何とも言えぬ気味の悪さを感じて、店から出てきた店員の方へと視線を逃がす。そちらの顔はというと、目を魚のように見開いて顔をひきつらせている。剽軽な顔の方が死人のものよりも幾分かマシだ、なんだか可哀想ではあるが。)「よ、由はわからぬでもないが……訪ねて頭から荷を増やすような真似を……」   (9/27 19:22:42)
清瀬/糸依 > (此処に自分の用があったのかと思いきや、目の前の竜胆車は私の方へと振り返り、いつも通りの面で高々と声をあげる。恐らく口振りからして、料金もこいつが支払うのだろう。考えなしか、と罵ってやりたかったがそもそもまごうことなき馬鹿だった。そうでなくとも私とは頭の造りがまるでもって異なり過ぎる。それに王国らしい服装なら既に間に合っているのではないだろうか。……そんな否定的な言葉達を溜め込みながら、ちらり。向こうに見える洋服達は魅力的で、もし着ることが叶うのなら……。鞄の取っ手を握り締め、さんざん悩んだ挙げ句の決断は。)「…………っ、お言葉に、甘えて……」(私も人間、甘い汁を吸いたい時もある。新たな服に身を包む自分を想像してしまっては負けだ。誘導された、掌握された、そんな敗北感を否めず苦い心。眉をひそめ、瞳を伏せがちにしながら。足早に店内へと入る。物も言わず佇む店員も、私と同じように何か言いたげな口をつぐんでいた。)   (9/27 19:22:54)


シロー/竜灯 > (散々悩んでいるようだが、悩む時点で既に答えは決まっている。〝迷うたらやってみる〟、だ。それに糸依さんの事だ、恐らくしょうもない事で悩んでいるのだろう、と竜灯でも手に取るように分かる程に逡巡を露わにする貴女を見つめながら、得意気な笑みを崩さずいた。)「おう、賢明な判断ぜ。」(正直予想とは裏腹に折れてくれた。もう二、三言程うじうじするとばかり思っていたが、手間が省けたというものだ。自分の予想通り興味はかなりあったのだろう。己の目は間違っていなかったとますます表情を得意げに綻ばせると、貴女の横に並ぶ忝ないようにして店内へと歩を進めた。一面の白に不規則な黒ずみが走る床は大理石製。上を見れば少し高めの天井に小綺麗なランプと、風に吹かれるかのように回る穏やかなシーリングファン。王都中央駅周辺の店を思わせる小綺麗な雰囲気が広がっていた。   (9/29 10:43:34)
シロー/竜灯 > 無論店内に羽織、ましてや尊華帝国軍服の人間など居る筈もなく、何度か奇異の目で見られたが竜灯に気にした様子は見られない。ずんずんと大股で進むと差し掛かった女性物の衣服一帯で立ち止まり、金属製のハンガーラックに並べられた服を、指先でちらちらと流すように眺めると、後ろを着いてきている筈の糸依さんに振り返った。)「ここら、綺麗なのが沢山ありそうぜよ⋯⋯ほれ、これやこれも、どうぜ、糸依さんにまこと似合いそうだ。」(掛けられた服の間に手を突っ込むと、親指と人差し指を広げて間を作り、お目当ての服を幾つか貴女に見せ、決して安いとは言えない値段の服をこれも、これも、と気にした様子を見せずに次々に眺めて行った。)「けんど、糸依さんの趣味に詳しいわけじゃあないからの。美人じゃき何着ても似合うぜよ、気に入ったのを買うちや。」((一頻り、一列分の服をあらかた見終えた所で指を止め、腕を組むと貴女を見つめて笑いかけ、貴女の様子を見届けることにした。   (9/29 10:43:45)


清瀬/糸依 > (揚々と笑みを綻ばせる貴方、悔しさを孕ませ背中に一発、店舗に入る前に。視線は店へと向けたまま、それほど力は入れず指の関節で痛みを与えるように殴ってやった。久しく忘れていた、私はやっぱりこうでないと。磨かれた大理石が、僅かに黄色のかかった照明をてらてらと反射する。入り口に敷かれた絨毯と、所々に置かれた横文字の羅列。俄に立ち止まって少し屈み、文字の解読。どうやら王国では今、こんな服が流行になっているらしい。……こんなけばけばしい模様の服が?やはり感性の違いや特産物の影響か、中々に興味深い。)「あ、っ」(気が付けば彼はかなり先に進んでいたようで、肩の荷物を一度直して取っ手を掴み、気持ち早歩きに追い付く。貴方が待っていたそこで、金属ハンガーに吊られた様々な衣装達。装飾や造りの細かさをみる限り、易々と財布の紐を弛めていいような値段ではない気がするが。   (9/30 19:58:59)
清瀬/糸依 > 試しに貴方が一番最初に見せてきた服を手に取り、値札を探す。英数字で記されたそれは、一万価はするであろう額。今私が身に付けているブラウスやスカートはといえば古着屋で発掘した安物、せいぜい高くても3000価程度だった覚えがある。物怖じしたように眉を吊り下げ、少しぎこちない手付きで服をまた隊列の中に差し込む。)「ああ、はいはい。誠有り難く存じます」(もう煽てにも随分慣れてしまった。日常茶飯事であるかのように適当な返事をしつつ、一度店内をぐるりと見渡した。ちらほらと見える他の買い物客もまたとりどりの衣装を着こなし、私達がここでは随分と浮いてしまっていることを認識させられる。何となしに背が曲がるのとは裏腹に、やはり気持ちはまだ右肩上がり。ワンショルダーのトップス、オーバーオール、モノトーンのパーカー。一つ手に取っては戻す作業を繰り返し、いつになく真剣味を帯びた瞳で餞別していく。折角買うのだ、普段着なら機能性やスッキリと纏まったデザインが良いし、キャラでもないが外出着なら少し装飾のある物でもいい。横を向いたミルフィーユのような布地達を捲っていき、ふと手が止まる。)   (9/30 19:59:20)
清瀬/糸依 > 「あ、これ……」(ハンガーを持って取り出し、目の前で広げてみる。花の刺繍が裾に縫われた、ネイビーと白の切り替えワンピース。ニット生地の長袖、きっとこれからの季節には丁度良い厚さなのだろう。質素というかモード過ぎる気もするが、これも文化と感性の違いか。荷物を提げた方とは逆の腕に服を掛けるが、両腕が不自由では何かと不便だ。)「竜灯殿、何処かに籠のような物は有らぬか、服を入れたいのだが」(少し離れた所に居る彼に向き直り服を乗せた腕を上げながら、時折鞄のズレを直すのにひょこひょこと髪を跳ねさせる。いつものような間の空かぬ声、ほんの少し色付いた頬。王国の景色や買い物に、彼女ながらに楽しんでいるのが分かる。かも、しれない、見る人が見れば。)   (9/30 19:59:30)


シロー/竜灯 > 「⋯⋯」((素っ気ない対応を最後に衣服を見始めた貴女を後ろから眺め、腰に手を当てて困り笑いとも取れる笑顔と一緒に鼻を鳴らした。なんだかんだ熱中しているのか、あれやこれやと服を出しては仕舞いを繰り返し、並ぶ衣服の列に沿って歩く貴女の背後を少し離れてついて行くと、ふと、貴女の目線が止まったのに気づいた。「お。」と声を上げて興味深そうに、背筋を伸ばすように様子を見ていると、視線が合う。気に入ったのか、と声を掛ける前に貴女が口を開いた。文句一つ言わず、寧ろ嬉しそうな笑みを浮かべて頷くと、少し後ろから植物で編まれたバスケットに近い籠を手に取ってきて、貴女の手にかかる服を受け取った。)「どれ、ええの。きっと似合うちや、他にも色々見ちょくれ糸依さん。」(どうやら貴女の片手が鞄で塞がっている事を気にしてか、荷物持ちとなるらしい。そのままバスケットを手に持って貴女の横へと付いた。更に帽子など様々な布製品が並ぶのを見やってから、再度貴女に視線を移し。満足気に顔を綻ばせた。)   (9/30 22:41:47)
シロー/竜灯 > 「楽しそうやの、良かったぜ。本の虫も悪くはないが、折角綺麗やき、もっと着飾らんと勿体ないと思っちゃったからの。」((さあさあ、もっと見るぜよ、と急かすように貴女の肩を片手で軽く押した。   (9/30 22:41:58)


清瀬/糸依 > 「あ、りがと……」(貴方に目配せをすれば、予想に反して嫌な顔一つせず籠を取ってきてくれる。丈の長い紺のワンピースは私の腕を離れ、かぎ編みのエスニック調のバスケットへ丁重に収まった。そのまま籠を此方へ寄越す素振りもなく、寧ろ荷物を持っていてくれるようだ。なんだか普通の、想像で描いていた彼らしくない“優しい”気遣いの片鱗を見せられぎくしゃくしてしまう。そもそも、こんな紳士的な振る舞いを拝む体験がまず少なかった。)「あ、でも、あまりここらを買うても着る隙の在らずして………」(見上げた貴方の輪郭、正確に言うと髪が照明で透かされた辺りだろうか。真っ黒、と形容するよりは深い深い緑を重ねた、小さな尖り帽子を集めに集めた頭部。ぐいぐいとマント越しに背中を押され、強引な案内の元に数多の帽子と対面する。所狭しと、しかし各々が己を表現し『我こそは』と手に取られるのを待ち望む、シェルフ内での必死のアピール。様々な品を見ていたからだろうか、お節介な上司に握らされた札束のことを思い出す。……それから余計な忠告まで。棚の前で屈み、視線だけをちらり。少し離れた所に居るであろう貴方を捉える。)   (10/2 22:37:59)
清瀬/糸依 > 「……いやいやいや」(あれと?私が??あり得ないあり得ない。首を振り嘲笑を顔に貼り付け、俄にフェルトのつば広帽を掴んで。あのセクハラ野郎、茶の飲み過ぎで糖尿病か膀胱炎になってしまえばいいのに。忌々しさを込めつつ、貴方をなるべく見ないように焦点を滲ませ手中のそれを籠へ放る。ずかずかと突き放すように幾らか大股で、向かうのは靴の置かれたコーナー。……いやほんと、ないから。自己暗示や洗脳の類いのように脳内を支配しつつ、マントの襟を持ち上げ気持ち高めにきゅっ、と直した。)   (10/2 22:38:08)


シロー/竜灯 > 「細かい事は気にせんでええ、俺が居るきに。おまんは自分のやりたいようにやればええぜよ、ほれほれ。」(此方へと歩み寄る貴女を視線で追いかけていくと、幾分か背が小さい貴女だから段々と顔が下がっていく。目の前まで寄った貴女の、細められた瞳を見つめて竜灯も同じように瞳を細めて笑うと、腕に引っ掛けた籠に帽子が放り込まれた。余計なことを考えさせぬよう、うんうん、と数度頷くだけに留めると、心無しか早いペースで離れていく貴女を緩やかな足取りで追いかけた。かれこれ長い間帝國軍人として肩を並べた仲間ではあったが、断言してもいい、ここまで楽しそうな貴女ははじめて見た。と内心竜灯は呟いていた。いつもいつも、暗がりで本ばかり読んでいる様なイメージを持っていたが、今は。楽しんでくれているようで少し嬉しい気持ちのまま、気持ちに突き動かされるままに、棚を見つめる貴女に近寄ると低い肩の上に前腕を預けるように手を置いて、視線の高さを合わせる為に背中を曲げた。)   (10/5 12:33:35)
シロー/竜灯 > 「どうぜどうぜ、綺麗なのばかりで目移りするがか?早う糸依さんにこの服を着て欲しいぜよ、その場で着ることも出来るきに、の。」((棚から視線をちらりと外すとそこには布製の仕切りが垂らされた小さなスペースがあり、再び貴女に視線を戻すと、にっ、と笑顔を浮かべた。   (10/5 12:33:49)


清瀬/糸依 > (流石王国といったところか。陳列した商品の一つ一つが目新しく、且つ精巧な作品ばかりだ。近くにあった赤のハイカットスニーカーを手に取り、その角度を幾度と変えて鑑賞する。強度も見た目も申し分なし。この技術は、もし仮に帝國が王国を統合してしまったら、消え失せてしまうのだろうか……?敵国とはいえ素晴らしい文明を消してしまうのは……、歴史の踏襲を途絶えさせるのは、暗黙の禁忌であり多大な損害を生むのではないだろうか。求められているのは根絶ではない、かといって共存なんて甘ったれたことは夢物語だ。併合、そして生産と創造。根絶やしにはせず、然し歩みは止めず。私達が望んでいるのはそんな世界。ふと買い物も忘れ物思いに耽っていると、肩に荷物以外の負荷が掛かる。尻もちをつきそうになるのをぐっと堪え、重心は前に前に。近付いた貴方の顔を流し見て、次にゆっくりと、水の中を漂うように実に緩慢と顔だけそちらへ。)   (10/7 23:31:11)
清瀬/糸依 > 「…………。貴殿は加減の程を知らぬのか。あまり近う寄うてくれるな、只でさへ暑苦しくて仕方なき事よ」(沈黙、さてここでよく考えろ私よ。昨夜の咆哮はあれども、此処でときめくのは乙女の仕事。反抗は即ち優位に立てぬ者の慌て。決してこんな奴に優位を渡してなるものか、それ以前に眼中に入れてなるものか。口から通す一際大きなため息、貴方が丁重に持っていてくれた籠をするりと奪い取れば、減らず口は快調。気があると思わせても、己の中で思って納得しても“負け”なのだ。信用、信頼、こんなすぐに砕けてしまってなるものか。二の轍を踏んで後悔するのはまさしく自分なのだ。貴方の希望には肯定の言葉の代わりに行動で示そう。どうせ粘られて折れるのは此方でそれをシミュレーションするのも面倒。「覗かないで下さいね」だとかはいいか、見たけりゃ見ればいい、閲覧料は貴様の目玉の寿命だ。カーテンレールをシャカリと鳴らし、今から小洒落た遠足とでも言うようなその姿で。最後に一瞥を貴方に贈って、幕を下ろして一時休戦だ。)   (10/7 23:31:20)


シロー/竜灯 > 「なんぜ、大丈夫ぜよ、そう睨まんでも、まだまだ死にとうないからの。」(小部屋に足を踏み入れたかと思えば、カーテンを手に少しばかりキツい視線を送ってきた貴女に苦笑すると、肩を軽く上げてから気の抜けた笑い声を発した。覗いたら最後、どうなってしまうのかは想像に難くない。戦争に行った方がマシとまで思えるので、我慢した。⋯カーテンの先の貴女にそう伝えるものの返答は無く、かわりに衣擦れの音が聞こえてきた。しゃあないの、と近くの壁に体を預けると足と手を組んで出てくるのを待つことにする。)「ゆっくりでええぜよ~。」(そう言って待つこと一分弱。───暇であった。もとより竜灯は待つことがあまり得意ではない。小洒落た店内を見て回るのも良いが、正直な所、この羽織に勝るものは無いだろう。何やら、遮光眼鏡も王国最近の流行りと聞いたが、どうにも眼鏡の類は心地悪い。それに宿代と酒代で懐はかつかつである。大人しく待っているのが筋か。小さく欠伸を噛み殺すと、頭の中で試着室の中を想像したり、この後はどうしようか、などと思考の海に沈んで時間を潰した。貴女が出てくれば直ぐに反応を示すはずだ。   (10/8 19:11:45)


清瀬/糸依 > (閉鎖空間の中、くぐもった揶揄を聞き流しつつ目の前の小さな反転世界に向き直る。……人を殺戮兵器だとでも思っているのだろうか、しかし振り返ればかなり野蛮なことをしてきたと思う。実際言葉の代わりに手が出ることは多少なりともあったわけだし。クスリ、と笑いを溢せば、目の前の自分も同じように苦笑を真似た。マントの紐を解いて三つ折り、金具を音立ててコルセットもその上に置いて。今度は床に掃けさせブラウスの留め具を一つ一つ外していく。波立った黒髪は肩に擦れ、時に頬を軽く刺して擽る。暫く慣れなかったこの鏡との対面も、数ヶ月も経った今では殆ど違和感もない。一番嬉しいのは何せ、洗髪が楽なことの一択、それに尽きる。金属製とも木製とも異なる軽い素材のハンガー、これにきっと衣服を掛けるのだろう。)   (10/9 19:23:16)
清瀬/糸依 > 「…………。」(こすれる布地の音、不規則に揺れるカーテンの裾。退屈をもてあます貴方が思い描くどれとも掛け離れた光景が、試着室の中に矮小に広がっている。さて次は着衣か、と自分の選んだそれらをしげしげと見るのだが。どうやって着るんだろうかと背中側を見れば見慣れぬ微細な留め具が。……後ろから留めるのだろうか、設計ミスではないか、物理的にそれは理にかなっているのか……?思うところは多けれど、何度確認したところで此方が背中であることは事実。肌着を身に付けているとはいえ、下着の見えているこんなだらしない格好で長く居るわけにもいかず。頭の方から被るようにして、左腕、次に右腕。……試行錯誤しつつわかったことが一つある、私肩周り凝ってんなこれ。肩甲骨の更に上部が聞こえぬ悲鳴をあげている、肘を壁に打ち付けてもう踏んだり蹴ったり。ゴン、と鳴った鈍い衝突音は、隙をもてあました貴方にとって十分な騒音となるだろう。)   (10/9 19:23:30)


シロー/竜灯 > (シャラ、シャラ、とカーテンが揺れる。服一つ着替えるのに騒がしいやっちゃ。腕を組んで壁に凭れ、すぐ横の試着室をぼう、と眺めながら待つ。背中越しに伝わる、どん、どんという振動がまた竜灯を急かして逸らせる。暫くして我慢できなくなった竜灯はカーテンの前に移動した。)「糸依さん糸依さん、大丈夫がか?何をやっとるぜよ。」(待つなら待つでもう少し静かにしていてくれたら待てたが、中で何が起こっているのか気にさせてくるのが悪い。ゆらゆらと揺れる布を人差し指で、ぴんっ、と何度か弾きながら笑い。いかにも楽しそうな声でカーテンに手を掛けた。)「どうせ慣れん服で上手く着れんのじゃろ。俺が着させてやろうか?減るもんじゃなし、時は金なりぜよ、俺は早う見たいちや!」(さぁさぁ!と急かすように掴まれたカーテンが揺らされてしゃらしゃらと波打った。何かしらの反応を示さなければこのまま開かれてしまうだろう。   (10/11 17:55:20)


清瀬/糸依 > 「え、いや、仔細ない。誠、大事なき故…………」(何もない、と言うには無理のある現場だというのに、見えないのを良いことに嘘を並べる。声が若干上ずっているだとか、それにしては騒々しい音が消えないだとか、そんなものは気にかけてられなくて。しゃら、と揺れるカーテンから外の光が垣間見える度に焦りが募って、益々ホックなんて留められる筈もない。カーテンが影を落とすのが鏡を通して見える。人形の薄い黒影と、端には更に色濃く。もう手をかけているんだろうな、と簡単に推測できる訳だが、さてどうしたものか、少し考えてみよう。生返事では恐らく容赦なく開けられてしまうだろう。既に手こずっていることは知られている、となれば潔く開けてしまうのが吉か。兎も角変なことをしようものなら蹴りを食らわせればいいか。半ば思考を放棄するように結論を出してしまった。七分丈の袖をもう一度直して、左手は襟に添えて決して前はずれないようにぐっとワンピースの生地を抑える。鏡の角度によっちゃ露になった背中が見えるかもしれないが、そんなことは気にしてられるか、これで怖じ気付けば負け、な気がする。   (10/11 21:28:13)
清瀬/糸依 > 乱暴にカーテンを掴み、貴方に開帳される前に自ら晒してやる、と勢いそのままに腕とカーテンレールを横へ滑らせた。)「…………ちっ」(小さな舌打ち、その後にくるりと貴方に背を向ける。白い肌着の下、肩甲骨の掘りが見える程度に開いた背中。表明はせず、「ん…」と肩の生地を摘まむ。わくわく、とオノマトペの付きそうな貴方の笑顔。私は生憎膨れっ面、できるなら何も言わず済ませてくれ。)   (10/11 21:28:23)


シロー/竜灯 > 「おお!!やっぱり俺の思った通りぜよ!よう似合っちょる。」(しゃらら!と勢いよく動いたカーテンレールに反応してぱっ、と手を離せば、そこには思った通り新調された純王国風のワンピースに身を包んだ糸依がいた。ぱちん!とにこやかな笑顔と共に腕を振りながら指を鳴らすと、背を向ける糸依にいかにも楽しそうな声で「おうおう、待っちょれ待っちょれ」と躊躇いなく開かれた背中に両手を伸ばした。)「いやあ糸依さん、この前の浴衣姿も似合いよったけんど、王国の装いもなかなか可愛いの。やっぱり元が綺麗だからかなあ」(舌打ちなんてなんのその、鏡には楽しそうに頬を弛める竜灯の姿が映っているだろう。下から順に何個かホックを止めていけば、それ完成だ。後ろから背伸びして顔を出し、鏡越しに糸依を前から見遣ると、何度か頷いて控えていた店員へと向き直った。)   (10/12 18:00:27)
シロー/竜灯 > 「これ買ったぜよ!⋯⋯⋯うんうん、そがな値段なら払えるき、ほい。釣りはいらんから、今度はもう少しまけとうせ、の?」((懐から少ししわくちゃになった紙幣を何枚か握らせて、顔を近付けて内緒話を終えると改めて糸依に向き直る。店員から渡された紙袋を開くと、元着ていた服を詰めろと目で伝えた。)「さあ行くぜよ糸依さん、荷物は俺が持ってやるきに。」   (10/12 18:00:29)


清瀬/糸依 > 「…………うん」(何への肯定なのだろうか。ぷつり、ぷつり。一人では一つも留めることのできなかったそれが、御安いご用、あれよあれよと完成する。此方の意図などつゆ知らず、貴方らしいといえばらしいのか。変に気遣われてもきっとこそばゆかったろうから、きっとこれが最善。とびきりの笑顔と、しかめっ面と。鏡が映す私達は硬貨の表裏だ。何があろうと相成れない、例えば水と油のように。朱に交われば赤くなるだとか言うが全てに該当などしない、先人もまだまだ愚かだと思っていたが。また同じように絆されたとして、応えて何になるのだろうか。会計を済ませに貴方が後ろを向く。重ねた服の一番下から羽織を取れば、包む衣の安心感。服も奢ってもらって、こんなに良くされて。ほんとに黙りでいいのか、私?今ばかりは、意地の張り時じゃあないんじゃないか。ブラウス、袴、それから胸部下部のベルトを抱えて回れ右。店の名前と装飾の印刷された紙袋、そこから上へ視線をずらせば貴方が居る。しっかり目線を合わせて、逸らさぬように。)   (10/12 21:21:38)
清瀬/糸依 > 「竜灯。……殿」(意を決した挙げ句の予防線、何を改まってと不思議がられるだろうか。自信溢れる瞳もいつしか他所へと逸れていって、苦し紛れに近寄れば衣服を袋へ強引に押し入れる。踵も返さずそのまま通りすぎたかと思えば、数歩先で足を止めて。ほんの少し振り替えって、一言。)「──色々、ありが…とう……」(尻すぼみの感謝、これも視点を変えれば進歩。年齢に見合わずあまりに幼い成長、きっとまたすぐつれない“糸依”に逆戻りだ。それでも今は一時の“従者と令嬢ごっこ”を楽しもうと、そう思える。再び背を向ければ、両手で顔を覆って生温いため息をほうっ、と吐くのだった。)   (10/12 21:21:46)


シロー/竜灯 > 「ん?なんぜ」(何を改まって。こちらを真っ直ぐ見据えてくるものだから、竜灯もそれに答えようと不思議そうに視線を向け返すと、段々と視線が逸れていった。押し込まれた服を紙袋を軽く振って揃えながら、勝手に歩いていった貴女を数歩追いかけた所で、また目が合って。────何を言うかと思えば。)「俺とお前の仲ぜよ、俺がやりとうてやっちょるだけじゃきに。」(今更本当に改まって、こそばゆい。苦笑してとん、とん、と大幅に跳ねるように追い付いては、並んで店を出た。ふわりと顔に当たる一陣の風と王国の太陽神様が心地よく感じられた。貴女にお礼を言われてるんるん気分で歩きながら、前を向いたまま呟いた。)「じゃ、宿に行くまでもう暫く遊ぶぜよ。」(お互い仕事の事を忘れて、楽しめる一日になれたらいいなと思った。   (10/14 17:38:50)