この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

火津彌&ドクター

※FLAMMABLE!※

> 「ふぅ……。」(白梅元帥、鬼若大佐と共に列車に揺られること数日。騎士団本部に到着し、漸く手にした一人の時間で肺を満たしたくて、どこか物陰はないものかと火津彌はつい先程購入したばかりの紙たばこ片手にうろうろと彷徨っていた。軍靴がよく響く石畳、太陽の光がよく届く低い建造物の並び。乾いた風。ああ、真に此処は太陽の国である。)「……そうやった。こんな感じやったわ。……煙草もろくに吸えん。」(たかが煙草を吸う如き、人目を憚る程の事でもないが、人目があるとどうにも落ち着けない。この顔の火傷の事もある。せっかく一服しようと思い立ったのだからいい具合の暗がりでもあればよいものの、歩けば足音は響き渡るし、どこへ行っても開放的で明るくて、いまいちここという場所が見当たらなかった。足取りはそのまま角へ、隅へと吸い込まれてゆき、パイプと管の張り巡らされた一角をかいくぐる。騎士団の隅、機械工房のあたりだ。火気厳禁の看板に気づかないままもっと奥へと入り込み、やっと仮面を上にずらし、煙草をひとつくわえてポケットを漁ったところで、ふと燐寸が無いのに気がついた。)   (9/25 16:19:39)
マリア/火津彌 > 「……ん」(そうだった。燐寸はいつぞやの祠に置いてきてしまったのだ。普段使っている煙管であれば魔術で軽く火をつけることもできるが、紙の煙草は吸いながらでなくてはうまく火をつけることができず、燃えてしまう。加えたままでは詠唱もできないし、どうしたものかとあたりを見回した。)   (9/25 16:19:43)


ひよ。@ドクター > 機械に関しては技術才頴、筆頭の座にこそ着かず、だがその実力が確かなことは、工房では貴賤の差もなく周知であって、端麗と迄はいかず、決して醜くもない、そんな化粧ッ気のない目元に真黒く隈を浮かべた女は、時を同じく、鉄を打ち付ける工具のけたたましい音ばかり響く工房内を忙しなく右往左往する技師には“ドクター”などと呼ばれる。そんな声も然程気に留める様子も無く、羊皮紙に黒い洋墨で綴られた図面と、迚もにぶあいそな表情をして向かい合い、思えば、それを仕上げるには、どうにもパーツのうちの幾つかが工房内に存在しないことにふと気付いた。これをもし、そこらの技師が見ようものなら、およそ粗忽ッかしく絶句して、直ぐにでも注文用紙を取りに走ることになるだろうし、そうでもすれば、益々に費用ばかりが嵩んでゆくのだから、使えるものがどこかに有るだろうと、宛ら倹約家のような、無駄を惜しまない根性に以ってして駆り立てられ、ふと溜息吐く。技師らに与えられた工房を含む敷地の内に、小規模ではあるが倉庫があった。   (9/25 16:41:39)
ひよ。@ドクター > 粗、手入れなど行き届かぬ埃と蜘蛛の巣の張り巡らされるような場所であるが、それでも矢張り気付いたのだ、行くしかなかろうと、手近に有った行灯だけを手に取り、熱気の籠るような暑苦しい工房を抜け、吹き抜ける風に白衣を揺らしつつも、射し込む光にうんざりとしたような表情をした。片手を額に、空を見やり、そうして視線を下ろせば、どうにも見慣れない姿があったような気がして、不意に眼を見張る。狐のような仮面に、咥えた煙草、王国ではあまり見ない服装ではあるが、だがどうしてこうも、薄汚い場所に。迷い込んだか、或いはと、事のついでに声でも掛けようかと歩みを進めたのはドクターである。「──もし、貴方。ここで何をしているです? ……もしかして、迷いました?」   (9/25 16:41:53)


マリア/火津彌 > (『──もし』と、鈴の転がすような声がした。その声の第一印象としては、丁寧であり、物腰の落ち着いた麗しいご令嬢。不思議に思い視線を少し下げながら目線を遣ると、まるで墨のついた指で瞳を擦ったかの如く、淀んだ隈を携えた少女が居た。暗くて煤けたパイプだらけの路地のようなこの場所で、全体的に白と空色をした姿は一瞬ちかりと眩しく、はっと目を伏せて狐面に手を伸ばした。)「ああ、いえ。騎士団に用事がありまして、」(もぞもぞと狐面を被り直し、煙草は手に持ったまま、少しぎこちなく少女へと居住まいを正しながら。)「尊華帝国軍少将、火津彌と申します。……万騎長殿に用事があって参りましたが、着いたばかりでして…ご挨拶に伺う前に、少しばかり休憩でもしようかと散歩を。」(”休憩”と強調をしながら、ちらりと手に持った煙草を見せて肩を竦めた。)「貴女は、騎士団の?」   (9/25 16:55:04)


ひよ。@ドクター > 「尊華の将官とは、大層なご身分の方ですねえ。こんな薄汚いような場所ですが、まあ……どうしようもないですから、我慢するですよ」ドクターの方を見返り、そう、どこか、堅苦しく壁に見えるかのような、彼の自己紹介にもあったように、“尊華らしい”挨拶をしてみせた相手に、特に顔色も、声色も、殆どを変える様子は見せず、ただ淡々と、職務上の身分の差をも一切考慮しない、謂わば無遠慮とも言える素ッ気ない口調で返し、軈てはハッとしたように、縒れてボロボロの、白いトップハットの位置を正しつつも「失礼申し遅れました、私は聖騎士団工房の……ええと? そうですね、適当にドクターとでも呼んでください。みんなそうしてますですから」そう言って猫背の背中を、より丸めて、片手でダボダボに伸び皺まみれの白衣の裾を持ち上げ、もう片手を自らの胸元に添える、宛ら良家の令嬢と、騎士の一礼を織り交ぜたような独特な礼をしてみせた。そうして彼女は姿勢を起こし、だが背中は変わらず、不健康そうに丸まったままで、相手の手に持つ煙草を見た。その先端には火がついておらず、ではなぜそのままか、きっとドクターの訪れる以前よりも居たはずであるのに、と。   (9/25 17:19:20)
ひよ。@ドクター > ふと腰に提げた工具ポーチを徐にがさがさと漁り、手を突っ込んで暫くして、何かを探り当てたような表情で相手の方を向き、何か小さな箱のようなものを、軽く投げて渡そうと。尊華風のイラストの施されたマッチ箱、いつか風の噂で聞いた祠で拾ったものであるが、まだ幾本か残っているだろうと、「火、つけなければ休憩でもなんでもないんじゃないですか」   (9/25 17:19:31)


マリア/火津彌 > 「工房の……ああ成程、技術者の方ですか。どうもこれはご丁寧に。」(休戦の間、機械技術が発展したのには騎士団内部の組織に変化があったのも理由だと及び聞いている。嘗ては一人であった機械技師の下に何人もの技術者を囲い、研究費も騎士団から出しているのだとか。どこか中性的で独特な礼を受け、火津彌も軍帽を脱いで応える。)「あぁ……そう、ですな。いえ、ご婦人の前でぷかぷかとふんぞり返って煙を出すのも如何かと思いますので。」(騎士団の人物に見つかってしまっては、一服などよりも挨拶のほうが先決だろう。彼女は気に留めていないらしいが、此処が他所の領域ということもある。煙草をポケットにしまい込み差し出された彼岸花のマッチ箱を見ると、思わず声が漏れた。)「……おや?これは珍しい。尊華での私の行き付けの煙草屋のものですよ。」   (9/25 17:47:30)
マリア/火津彌 > (懐かしさから顔が綻ぶ。一体どこで手に入れたものだろう。)「……おっと、すみませんなあ。ついつい語るに落ちるところでした…ははっ。」(書類を抱えて、目の下に隈を作って。彼女はとても暇そうには見えない。解放してやったほうがいいだろう。ただその前に、せっかく技術者と会えたのだから何か収穫を得たいと思った。)「……ところで、貴女は技術者だそうですが。機械技師殿は、貴方達から見てどのようなお方でしょう?……なに、彼にも、ちょっと用事がありましてね。私が、ではありませんが。」   (9/25 17:47:38)


ひよ。@ドクター > 「以前に、風の噂で聞いた祠に置いてあったので、それを有り難く頂戴しただけですよ。代わりに万年筆を置いて、ですけれど。──ああ、ああ。私に婦人なんてのは、迚もではないけど似合わない。そんなものじゃあ、ないですよ」隈ばかりのどこか厭世的な心情を思わせつつも、それをかき消すような少女の声色、口調こそ悟り切った大人のそれで、しかし背丈、幼い顔つき、それらはやはり、歳相応のものだ。謙遜するといった様子でもなく、ただ、そういう扱いはあまり好まないといった様子で否定しつつ、機械技師という言葉が聞こえれば、ハッと、隈ばかりだが確かに大きな瞳を見開いた。「──機械技師ですか? ああ、彼は……私の直属の上司に当たるのですが。歳は私より上で、まあそれでも若いですけれど。技術は確か、内は歳相応に不安定で、揺れ動きやすい。そんな人と私は見ていますねえ。何方が彼に用事かは知りませんが、少しでも参考になりましたか」自らの顎に手を添えつつ、思い出すように視線を動かして、そう。   (9/25 18:12:28)


マリア/火津彌 > 「──……えっ。」(祠で?それは、つまり……。こくり、唾と共に言葉を嚥下した。言葉にこそしなかったものの、神の導きのようなものを感じずには居られない。なのだとすれば、なおさら。この出会いで何か学ばなければと気を引き締めた。)「……似合わないなどと……。そんなことはありませんよ。しかし、まぁ……。」(貴女達のいうところの聖騎士ではないにしろ、騎士団の要人の一人として扱ってほしいという事なのだろう。こほんと一つ咳払いをし、軍帽を被り直した。)「そうですね。ドクタアと呼ばせて頂きます。」(先程は確かに忙しそうな様子であったが、機械技師の名前を耳にすれば僅かに空気が変わり、何処と無くとらえどころのなかった橙色のような金色のような瞳がこちらを向いた。)「……そうですか、ふむふむ……。ほう、そうなのですか。……忌憚ない感想といいますか、とにかく助かります。どうも、おおきに。……それで、その……どう思っているのでしょう?尊華については。彼も……そうですな、ドクタア、あなたも。」   (9/25 18:42:11)


ひよ。@ドクター > 「尊華ですか? ……そうですねえ、技師の方は知りませんが、少なくとも私、何でしたっけ、あの……ああ、ああ。そうですそうです、花火大会。あれで初めて尊華を訪れ、それ以来には渡ったことはありませんので上手く表現できるかどうか分からないですが、何ともまあ。──遠回しですねえ、いろいろ。ええ、ものに対する美醜もそうですし、対人関係もそうですし。私は科学者ですから直球に物事を訴えないのは苦手でどうにも合わないところは感じますが、異文化交流ゆえに仕方ないんでしょうと、私は思うです。きっと良いところですよ」近くに一時的にと置いてあった行灯を手繰り寄せて、蓋を開き中の蝋燭に、懐から取り出したマッチを一本、適当な場所に擦って火をつけてその先端に移す。空を見れば日は彼らの真上にあり、凡そ行灯の必要性などを見えることはできないが、彼女の本来の目的そのものを思い出せば、或いは理解できるだろうか。その作業をしつつ、横目で相手を見ながら受け答えをして、ふと相手の顔の横に【火気厳禁】の張り紙を見れば、ぽけっとした表情で数秒硬直し、そして“まあいいだろう”といった様子で、徐に行灯を片手に持ち、相手の方を向き直る。   (9/25 19:04:40)


マリア/火津彌 > 「なるほど……。」(彼女の意見は、火津彌からしても尤もなものだった。回りくどく、煙に巻くような言い回し。それを鬱陶しいと思う事もあれば、また、美しいと思う事もある。逆に火津彌からすれば王国の――オウガや、トールのような人物の明朗さに戸惑う事すらある。異文化としか、言いようがないのだ。そして、答えを済ませればさっさと作業を初めてしまった。こういうところも、王国らしい。)「……どうも。お忙しい中、ありがとうございました。」(少なくとも強い敵意は感じられなかった。もしかすれば、協定は上手くいくかもしれない。)「では、私はこれで。……神の力には及ばぬ機械技術、それでもイモータルには有効になってきているのでしょう。ひとえに、日の目を見ない日陰で日々研究をしている貴方達の努力の賜物。尊敬しますよ。どうぞ、これからもおきばりやす。」(ほっと緊張の糸が緩んだせいか、口をついて出た言葉。技術者は魔術師には適わないが――これからそれが、尊華の為になるかもしれない。そんな本心が、まろび出た事に気づきもしないまま踵を返して。)   (9/25 19:42:50)


ひよ。@ドクター > ──そういう相手こそ、生粋の尊華の人間だ。正直、上部ばかり取り繕って内にどす黒いものを秘めて、それを互いに察し合いぶつけ合うといった偏見を基にした彼女の尊華像は、確固たるもので、パッと見悪い人ではないのだろうけれど、どうにもその本心は、純粋な王国の生まれ育ちである彼女には、だが難しく、故にどうにもいけ好かないのだろう。これは単純に褒められているのか、或いは、それもパッと見で見当はつかず、褒めるなら素直に褒める、そうでないならズバリと断つといった振る舞いを欲しいものだ、どうにも、彼らのやり方はネチネチと、……。だめだ、彼女はそう思った。「それはどうも。それでは私、用事があるですから、失礼しますよ。どうぞ迷わないように、お気を付けて」行灯を手に取り、その金具が微かな音を立てる。小さな背丈の少女が、より大きな男のすぐ隣を抜けて、ふわりと花の香りに近いものを残せば、白衣を揺らして、屋根と壁ばかりに囲われ昼間でも薄暗い工房のすぐ裏へ、その灯火は、だんだんと小さくなっていって。   (9/25 21:14:50)


マリア/火津彌 > (淡々と上滑りのするような挨拶だった。互いに、どこかぬるっとしたものが残るような。一瞬鼻先を掠めた可憐な花の香りも、マッチの燐の香りにかき消されて遠ざかってゆく。かちり、かちりと音を立てながら揺れる燈火が、風に煽られて一瞬大きくなった。)「……こんな怪しげな仮面の男に振る愛想など持たないか。」(貴女の姿が見えなくなった頃、聞こえるか聞こえぬかの声で、ぽつりとそう呟いた。物静かに見える彼女の腹の中にどんな火が付くのかを、火津彌はまだ知らない。いとも簡単に燃えやすい彼の本性を、貴女もまた。)【※FLAMMABLE!※】   (9/25 21:23:25)