この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

由良&獅子唐

マリア/由良 > (軍人さんの刀を鍛冶屋に預けて、由良は一度王国に帰還していた。刀が仕上がる頃には帝国に戻れるといいのだけれど……人の行き交いの多いウェントの駅で、顔を隠すように俯きながら、帝国にいる時とは打って変わって質素な格好で由良はふらふらと列車を降りた。今の姿を見て、王国での密偵時と結びつける者は居ないだろう。人混みはきらい。早く一人になりたい。そんなことを思って前を見なかったせいか、何人かと肩がぶつかってしまいその拍子に鞄が地面に落ちて荷物が散らばった。筆記用具やら財布やら、簡素な持ち物の中で、レースのハンカチだけが今の彼女の雰囲気とは合わないような華美なものだった。)「……あっ。」(ハンカチが、人の足に踏まれた。雑踏はそのまま通り過ぎてゆき、ハンカチは土に汚れた。)   (9/10 12:39:43)


山葵/獅子唐 > ……ふー…(王国と帝國が停戦協定を結び早三年。驚くべきスピードで技術の発展を遂げた王国の協力のもと、この二国の間を機関車が結び楽に行き来が出来るようになった。始めこそ機関車は貴族の乗り物だったが、月日が経つにつれ一般市民でも食事を一食分我慢すれば乗れる程の乗車賃に下がっていった。…そんな機関車に揺られ、彼がやってきたのは王国でも有名な激辛料理店。三年前から風の噂では聞いていたが、今ようやく夢が叶ったのだ。…噂通りの辛さだった、身体が今もポカポカと暖かく、言い表せない程の多幸感に包まれていた。)……あ、だ、大丈夫ですか…?!(ふと目を見やれば、そこにはしゃがみ込む女性の姿が。溢れた鞄の中身を拾うが、純白のハンカチが雑踏に踏まれ汚れてしまっている。)……失礼します、宜しければそのてぬぐ…いえ、はんかちーふ…?をお貸しいただいても…?(そう声を掛けた彼は気付いていなかった。尊華で一時だけ心惹かれてしまった、あの女性と同一人物に話しかけていると。)   (9/11 20:13:31)


マリア/由良 > 「……え。」(俄に声をかけられ面をあげると、見覚えのある顔。さっと顔を背けて、長い髪の影に己を隠した。……軍人さん、字はそう、獅子唐。忘れるはずもない。これから更に接触をはかろうと画策していた相手なのだから。)「好きにしたら。それ、わた…自分のじゃないし。」(ハンカチを拾うのはもう諦めよう。別に、自分がこんな女性らしい持ち物を持っている事が恥ずかしい訳じゃない。これは、“花蓮”の持ち物だから、由良には関係ないのは、本当のことだから。)「あなたが拾ったんだからもうあなたのでしょ。……あぁ大丈夫って聞いてくれたっけ?見ての通り丈夫なんでね。どーもありがと。」(あなたの方に一瞥もくれず、いや、むしろ目を逸らすようにしながら、由良は散らばった筆記用具やら硬貨やらを拾った。)   (9/15 01:46:12)


山葵/獅子唐. > (……ん、ふふ…それなら良かった。(素っ気ない態度に何の戸惑いも怒りも見せないで、ただただ笑みを零す。)…光煌く所に闇蔓延り、咲かすは逢魔時、散らすは黎明。雲は低迷、空は曇天。今こそ影が地を覆い尽くす時。今、純白を穢す汚れを消し去れ……(ぶつぶつと魔術を詠唱すると、彼女のハンカチに着いていた汚れは彼の影から現れた黒い何かによって消されていく。)……どうぞ、もし本当に要らないのであれば、僕が貰いますが…(分厚い眼鏡の奥。うっすらと目を細めてはそう再度確認をする。せっせと鞄に物を詰め直す姿を見れば、此方はただ立ち尽くすことしか出来ない。)……怪我が無いようで何よりです。…良かった。(そう言葉を漏らしてから、さて己も立ち去ろうと立ち上がる。ふと、ズボンのポケットから貝殻が落ちた。からん、と音を立て開かれたそれの中には、光の当たり方によっては玉虫色に輝く艶紅が覗いていた。)   (9/17 22:58:42)


マリア/由良 > (──魔術!)(由良は咄嗟に目を見開いて、あなたのその口や舌の動きにまで注視しながら詠唱を耳にした。一瞬のことではあったが、髪で隠していた顔が見られるのも厭わない様子で。魔術は、呪文の通りに発動する。彼の魔術は──闇?それとも、影?尊華らしい信仰とも言える。……これが魔術戦争の場であれば、太陽信仰の多い王国は有利のような気もするが……。)「……っあ」(声を漏らし、俯いた瞬間また、ぱさりと髪が顔にかかった。)「……ありが…」   (9/17 23:32:31)
マリア/由良 > (綺麗になったハンカチを見てお礼を言いそうになり、またはっと口を噤んだ。──駄目、どうしてこんなに無能なの、密偵の癖に自分をコントロールする事すら出来ないなんて。──由良が〝花蓮〟になる理由。それは変装だとか、尊華人の振りをすることで情報収集がしやすくなるだとか、そう言った理由も当然ながらあるが、何よりもスイッチが入るのだ。儀式みたいに、自分をゾーンに導く為のルーティンなのだ。由良は思い通りにいかない今の自分が恥ずかしくてたまらなくて、顔を真っ赤にしたまま唾をこくりと飲み込んだ。……どうしてこう、いちいち大袈裟に捉えてしまうのか。そうだ、友達に借りていたものって事にしよう。余計な羞恥心が邪魔をするなら初めからそう言えばよかった。やっぱり無能だ、由良はなんにもできない。……どう返事をしていいかぐるぐると考えながら手を伸ばそうとしたその時。)   (9/17 23:33:06)
マリア/由良 > 「……あ、……ま、まって、」(何かを落として立ち去ろうとするあなたに掛けた声は震えて、またいちいち大袈裟な自分に縮こまるような思いがした。)「……あの、ポケットからなんか、落とした、から……」(ゆるゆると立ち上がったものの、それを拾いに行けもせず、あなたの顔も、落ちたものを見ることも出来ず、自分勝手な自縛の袋小路に迷い込んだままに立ち尽くしていた。完全に立ち去るタイミングを見失ってしまった、この空気、どうしたらいい?)   (9/17 23:33:49)


山葵/獅子唐 > …?(こてん、と首を傾げる。ハンカチを見つめ口を開こうとし、また口を紡ぐ彼女にはて、と首を傾げる。立ち上がろうとして落とした艶紅に、あ、と声を漏らし)あ、ごめんなさい、落としちゃって…。…とっても大切なものなんです。ありがとうございます。(す、と艶紅に手を伸ばし、ゆっくりと拾い上げた。手の中に収まる艶紅を嬉しそうに目を細めた。オドオドとした様子を見せる目の前の女性に眉を下げ困惑し、思わず声を掛けた。)大丈夫ですか…?(彼の言葉がまた由良を袋小路に迷わせているとも知らず、勝手な言葉を掛けていく。彼もまた、同罪なのだ   (9/25 23:35:05


マリア/由良 > 「……あ。」(それが自分の預けた艶紅だと気づいたのは、拾い上げられて目線の高さに上げられた時だった。『大事なもの…』──そうか、そんなに大切にして貰って。〝花蓮〟は幸せ者だな、と思うと同時に、胸の奥がつき、と痛むような気がした。)「……そう。変なの。そんなに大事なんだ。」(腹の奥からせり上がってくるような自己嫌悪に呑まれて、絞り出すようにそう呟く。まるで辻褄を合わせるように、言葉を続けて。)「いや、なんていうかさ。男のあなたが使うものとは思えないから、そう言っただけ。ルージュでしょそれ。彼女にでも貰ったの。」(これからあげるものかもしれないのに、『貰った』と決めつけて。預けたのは他ならぬ自分なのだから、それを知っている事で、つい選択肢を狭めてしまっていた。)「ごめんなさい忘れて。関係ないよね。」   (9/25 23:51:10)


山葵/獅子唐 > …?…えぇ、よくわかりましたね…!そうなんです…。…僕、何だか…その人のこと、好き、って言うか…うーん……とにかく、とっても大事なものなんです。あ、でも、一時的に預かってるだけですから!(何だかとても照れ臭そうな、初々しい反応を見せ頬を赤くする獅子唐。目の前で胸を痛める由良の様子には気付かず、絞り出すような言葉を続けた彼女にゆっくりと頷き。)綺麗ですよね、これ。すごく高級なものなんだと思います、光の当たり方次第では…玉虫色にも見えて。だから、僕が持っていてもいいのかな、なんて気持ちも勿論あるんですが…(彼女が帰ってくるまでは、大切に保管しておこうと思うんです。ふ、と決心したような顔を見せる。二人の間を吹く風が、二人の髪を揺らして頰を撫でる。)   (9/26 00:01:03)


マリア/由良 > 「……………、……そう。」(あなたの言葉を聞いて、分かりやすく凍りついた表情をまた地面に向けて伏せた。こんなに浮かれちゃって、うぶな人。良かったね、花蓮。良かったね、由良。密偵としては上出来だよ。王国にいる時は、何にもできないけれど。)「さぁ?……高いか安いかなんて、よくわかんないや。こんなんだし、男みたいなもんだから。」(ほら、と言いながらまるで色気のない自分の服装を見せるように手を広げて肩を竦めた。)「…………あのさ、その人、そんなにきれい?」(これ以上由良として関わってはいけない、そう思うのに。朴訥としていて、素朴で、花蓮を疑いもしない純粋なあなたがあんまりにもいじらしくて。大丈夫、ばれやしない。なんて警戒心を薄めてしまっていた。)   (9/26 00:12:03)