この世界では、
”言葉”が魔力を持っていた。

アスラン&雅螺

暁の蕾

シロー/アスラン > 尊華帝國、帝都榮郷。夜の帳の降りた帝都、帝國軍本部基地から程近い道路の隅で、口元に手を翳しながらタバコに火をつけた。深く吸って肺に染み渡る煙に、満足感では無いけれど自分に足りないものを埋める様な感覚を得る。⋯⋯やはり、満足感に良く似た気持ちを膨らませてから煙を吐き出すと石垣に凭れて、持っていた巾着を地面へと落とした。巾着の中をまさぐって少し皺のついた数枚の紙を手に取ると、再び指で掴まえた煙草を口元へと運びながら今一度視線を落とし。殴り書き程では無いが癖のある独特な字体、良く見た自分の字の羅列を目で追ってから、深い溜息を吐いて吸いかけの煙草を地面に落とした。)   (7/4 21:49:39)
シロー/アスラン > 「⋯⋯⋯ふぅ。」((溜め込んでいた金銭は既に底を尽きかけており、二年の歳月を掛けて尽くした研究の結果であり結晶がまだ己の手の中にある。日食の周期についてを纏めた学説だ。これが認められれば⋯⋯欲を言うなら報奨金が欲しい。下心も含まれるのも致し方ないと言えるだろう、研究に金と時間の殆どを費やして、この二年は以前以上に倹約に身を置いた期間だったと言える程だったから。自分の中で一区切りをつける為の一服を早めに終えると、石垣から手を離し。巾着を肩に引っ掛けもう片手には紙を持ち、突き当たりまで進むと目の前の大きな建物を見上げて、止まるのだった。)「⋯⋯⋯いくか。」((出来ることなら顔を見せずにこれを渡したい。上手く行く保証は無いがやるしかない、と帝國軍本部基地に隣接した軍事魔術研究所を見据え、生唾を呑み込んだ。   (7/4 21:49:42)

極夜@雅螺 > 「そんな石頭共の巣窟に何をしに行くんだい汝は。物好きだね、事情でもあるのかい?年中魔術に没頭し過ぎて脳が凝り固まった連中に会うなんて」(本部が存在する此の通りは、自分にとって"よく行く場所"の一つでもあった。何故なのかは置いておくとして、本日も引っ掛けた羽織を翻し顔を出す。仕事だの殊勝な事をする訳がない、散歩といえば聞こえも良いが、実際ただの暇潰しだろう。はてさて、そんな本部には魔術研究所が隣接している訳だが、軍部とは懸ける頭の場所が正反対の研究所から足早に遠ざかろうとした所で、足を止めた。人がいる。其れ自体は珍しくはないのだが、荘厳な雰囲気すら感じる彫りの深い顔立ちに、逞しく磨き抜かれた体躯は何方かと言うと軍部で見掛けるようにも思えた。──……ふぅん?場違いだね、はっきり言って。其れに見た限り、気安く入れるような人物でもないと見た。なら研究所の人間じゃないのか。いやいや、気になるだけさ、尊華の人間としてね。本当だよ。……さて、──)   (7/4 22:05:32)
極夜@雅螺 > 「何の用事か教えてくれないかい?場合によっては力になれるかも知れない。保証はしないけど」(力になれるかも知れない、というのは嘘ではないが、力になる気は毛頭ないのだから酷い男だ。微妙に上にある貴方の顔を覗き込むように前に回って視線を上げ、くい、首を右に傾ける。貼り付く笑顔は仄暗い思考を纏めて覆い隠し、心根を少しも読ませない。胡散臭いとも取れる余裕と、少しの興味に口角を捻じ曲げ、ぐいぐいと言葉を止める事なく紡ぎ落とし)   (7/4 22:05:41)


シロー/アスラン > 「⋯⋯研究所に行くんだ、俺も研究者に決まってるだろ。本日付けで天文学を担当する、暁(アキラ)だ。」((少し遠くから掛けられた声に、一瞬の沈黙を挟んだ後、顔色一つ変えずに淡々と答えて見せた。彼が軍部の人間であるとしたらばせめて怪しまれないように堂々と、という魂胆から来る行動であったがもし目の前の貴方が研究所のだったのならこの場でアスランの計画は破綻していただろう。冷静に見えても本質的には頭が回る方ではないアスランにとっては、良くやった方、であった。目の前へと回り込みどこか胡散臭い笑みを浮かべる雅螺を視線で追い掛けると、目つきの悪いとも取れる三白眼を細めて精一杯思考を回す。   (7/4 22:22:08)
シロー/アスラン > 協力的な態度だからといって簡単に信用するのは愚の骨頂、そんな事は分かっている、分かっている筈だったのだが。今となっては生意気で大雑把だが頼れる相棒も、身に宿っていた筈の魔術すら失ってしまった自分では、上手く乗り切る事は出来ないだろう。───目の前の男を信じる訳ではないが、口車に乗ってやろう。そんな気持ちで口を開いた。)「⋯⋯⋯学説の発表だ。〝日食の周期〟について。⋯⋯分かるか?お前に。」((手に持っていた髪束を眼前に押し付けるように差し向けると、あまり期待はしていなさそうな表情で鼻を鳴らし、小さく付け足した。)「⋯⋯人前に出るのが嫌いでな、顔は見せたくない。」   (7/4 22:22:10)


極夜@雅螺 > 「へぇ、暁君……研究所に新しく入るのかい?其れはすまないね、僕は生憎研究所の人間じゃない。顔触れは把握していない……嗚呼、ならさっきの俺の発言は随分無礼千万か。水の神に清い水を贈呈するようなものだ」(からから、からから、笑顔が廻る。微かな逆光に血濡れたような紅い瞳がぱちりと瞬いた。天文学。嫌になる位に晴れた、夜を殺す青空にちらりと目を向ける。天文学というならあれか、星が如何だの、天動説だの、地動説だの、そういう事か。嘗て貪欲に呑み込んだ天文学に関する知識がぱっぱと閃いては消えて行く。うっそりと目を細め、三日月に口を歪めて、無礼と手を繋いで身勝手と舞踊を舞うような気質の癖に、変に丁寧な態度で殊勝な謝罪を述べて見せた。ただの暇潰しにしては、随分な大物を捕まえたようだ。此れは僥倖。此方の暇潰しだなんて貴方は知らなくて良いから、愉しませて貰いましょう)「日食……の周期……?太陽が喰われるとかいうあれかい?月が太陽に被る所為で太陽が消える天文現象か。ウェンディアの連中なら卒倒しそうだ」   (7/4 22:46:15)
極夜@雅螺 > (──位置と距離的な関係で月が太陽を覆い隠す形で被り、其れが地上から眺めたら太陽が喰われてるように見える現象。理知で見るならそういう物で間違いないと思うけれど。周期……についてはあまり論文や学術的根拠は見た事がないな。正確な周期が判るなら、天文系の魔術を使う魔術師には有り難い話だよ。……いや、有り難い所で済む話でもないけれど──突き出された紙束を素早く捲り、重要な点だけを摘み出して咀嚼する。読んでいる内にぎゅう、と眉根が寄り、胡散臭い笑みが掻き消えた。現役時代でも此処までの学者は見た覚えがない。天文学は専門外だが、其れでも驚嘆させる論文。此れがあの魔術馬鹿共に理解出来るかも賭けに近い気はするが、もし通じなければ正しく愚か、宝をみすみす溝に捨てる行為だ。何より──)「理解は………出来る。出来るが此れは……。…………君、此の研究は此れで完成してるのかい?線画だけでは名画とは呼べない。色を付けないと。此れには色は付いているのかい?完成した名画かい?」   (7/4 22:46:26)


シロー/アスラン > 「⋯⋯無知ではないみたいだな。」((思わず〝上出来だ〟と呟いてしまいそうになって、慌てて生唾と一緒に呑み込んだ。染み付いた癖というのは中々消えないもの、長年の汚れが取れにくいのと同じように体に刻み込まれた癖というのは未だに時折、自分を勝手に動かすことがあった。かなり昔のことになるが、一人の筈なのに二人分の宿を取った時は天を仰いだ。⋯⋯懐かしい記憶に思いを馳せるのを途中で取り止めて目の前の相手に集中する。ぱらぱらと乱雑に書かれた学説の髪束を捲る男の口元からは胡散臭い笑みが消え、瞳には真剣な色が浮かぶ。⋯⋯演技だとは思えなかった。直感だが〝本物〟だと思ってしまった時点で、既にアスランの答えは決まっていた。それならば自分も隠し事はすまい。瞳を閉じ、肩を竦めながらに紙を持った手を下ろすと、口を歪ませ窄めた溜息混じりの声で呟いた。)   (7/4 23:05:02)
シロー/アスラン > 「⋯理論的には、間違っていない筈だ。⋯⋯が、俺には金も道具も満足に無い。肉付けはまだ出来るだろうが、今の俺にはこれが限界だ。」((小さく頭を振った所で、本題だと言わんばかりに一度周囲を一瞥してから、僅かに姿勢を正す。相手の顔を覗き込むようにして本心を打ち明けた。)「⋯⋯協力してくれねぇか、もしこの学説で報奨やら、利益が出るならお前にも渡す。⋯顔を見せること無くこれを使って、出来れば金が欲しいんだ。」   (7/4 23:05:06)


極夜@雅螺 > 「無茶を言う。此処までの物を見せられて馬鹿の振りをしろという方が酷だよ。君、よく今まで研究所の連中に引っこ抜かれなかったね……」(はぁあ、と長い息が零れ落ちた。目を閉じて眉間を揉みながら紙束を貴方に返し、珍しく帯刀していた刀を指で弾き、帰って来た所をまた指で弾き、最後に親指にとん、と柄を載せて目を薄く開く。やめた。此の叡智の結晶を前にして薄ら笑いで欺けという方が無理な話だ。そうする必要もない。理解出来る人間が見れば、己のように舌を巻くか、或いはあまりの情報の厚さに卒倒するか泡を食うか。論理を引っくり返しかねない宝石を、たった今まで自分が手に持って目に焼き付けていた。僅かな目眩に目を細め、貴方をちらりと一瞥し)「未完成か。勿体無い。実に勿体無い。此処まで育て上げた花を根から引き抜くような真似は出来ないよ」(──肉付けがまだ出来ると来たか。天才も過ぎれば誰にも理解されないものだよ。ただ、目にしてしまったからには此の儘、未完成で、咲き掛けのまま放り出すのは気が引ける。……さて、酔わせてくれた礼でもさせて貰おうかな──)   (7/4 23:27:02)
極夜@雅螺 > 「君の花を実らせる助けに、ね。──良いよ。協力しよう。望むだけ金銭補助はするさ。どの道使い処もない金だ、丁度良い。人脈と道具を揃える店に関してはある程度根回しも出来る。……肉付けだけじゃ足りない。昇華させたくなる」(助ける気など毛頭なかった。だが、気が変わった。尊華の為ではない。貴方の為でもない。自分の為でもない。ただ、こうして生み出された以上、折角なら完璧に叩き上げたい。其れだけの理由で良いじゃないか。現役の頃と同じ、清い水流を纏ったような真剣な表情。コツコツと人差し指を折り曲げた背で刀を叩きながら一息で貴方の要望を全て呑み込み、ぽとり、本音を零し)「お前は自分が生み出した其れにどれ程の価値があるのかしっかり理解する事だ。認めない馬鹿がいるなら性根が腐ってる。そう思って良い」   (7/4 23:27:13)


シロー/アスラン > 「⋯⋯そうか、助かる。」((たった二文の短い感謝の言葉だったが、心からの感謝の気持ちが込められている、そう感じられるような声色だった。目を閉じてぽつり、と呟いてから、初めて会ったと言うのに『珍しい』と感じてしまう程に忙しなく体の一部を動かす貴方を眺めながら、そこに胡散臭さが一切感じられない事にまた少しだけほっとした。続いた明らかに自分の要求より過剰な援助にアスランの方も驚きを隠せなかったらしく、瞳を僅かに開いて口をぽかん、と数秒の間開け放ち。そのままに息を吐き出してから肩を竦めて額を抑えたのだった。)   (7/4 23:55:02)
シロー/アスラン > 「⋯⋯はぁ⋯⋯いや、悪いな、恩に着る。そこまでして貰うつもりは無かったが、本当に助かる。帝國で主に研究を続けるつもりだ、時々会える環境は整えておきたい。また後日詳しい話をしよう。」((懐から小さな紙とペンを取り出すと、癖のある殴り書きで使っている宿の名前と場所を記してから貴方へと押し付けるように手渡し。そのまま貴方の横に擦れ違う形で並び立って止まると以前とは幾らか見え方が変わってきた星空を眺め、ぽつぽつと呟いた。)「⋯これの価値なんて、金さえ手に入れば執着はしねぇ程度のもんだ。捨てるなり破くなりしていい。───ま、趣味みてぇなもんだよ。」((巾着を背負い直し。暫くして二人は別々の帰路へ着くのだろう。たった一夜、会話を交わしただけの関係だが、不思議とアスランは男を無意識のうちに信用出来ると思っていたらしい。宿に帰ってから、貴方の名前すら聞いていない事に気付くくらいには。〆   (7/4 23:55:05)